古地磁気学と岩石磁気学の基礎

現在の地球磁場

現在の地球磁場は過去の地球磁場(古地磁気)の典型であるとする考え方が主流です.2020年の磁気図から容易に分かるように,地球磁場は地球中心に位置する仮想的な棒磁石の作る磁場(双極子磁場)でよく近似できます.

IGRF2015 における,伏角・偏角・全磁力の分布.

地球磁場は一般に双極子の性質を持つので,過去の地磁気は仮想的な磁気双極子で表現できます.仮想的磁気双極子モーメント(VDM; virtual dipole moment)とは,地球表面のある地点で観測される磁場から,地磁気がすべて双極子磁場であると仮定して計算した磁気双極子モーメントのことです.この図はVDMのダイナミックレンジが全磁力のそれよりもずっと小さいことを示します.全磁力の標準偏差は平均値の25%であるのに対して,VDMの標準偏差は平均値の16%に減っています.このことは地球磁場が双極子的性質を持つことを示しています(全パワースペクトルの90%).

IGRF2015 における,全磁力と VDM の分布の比較.