■FR−010■
日本海  直江津→岩内航路・小樽→敦賀航路  夜の小樽散策
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写真 <すいせん>船上で迎えた日本海で初のご来光

1999年 中秋 富山・糸魚川経由直江津から北海道へ 富山からの帰り道に初めての日本海航路

●航海 往路・日本海 復路・日本海
@★☆☆☆☆ 往路 直江津→岩内 東日本界フェリー<ばるな>特等室 夜昼行便
A★★★★★ 復路 小樽→敦賀 新日本海フェリー<すいせん>スィートルーム 夜昼行便
 総トン数:17,329.00 全長:199.45m 旅客定員:507名 航海速力:29.4ノット 車両積載台数:トラック/122台・乗用車/80台

●旅程 船中一泊+船中一泊 二泊三日
第一日目 京都→富山→直江津 直江津港23:55→
第二日目 →17:55岩内港→岩内バスターミナル→小樽 公園通りで夕食&散策 小樽港23:30→
第三日目 →20:30敦賀港→敦賀→京都

 

 これぞ極めつけ、思い立っての船旅か・・・?(^^) 富山にちょっと用事がありました。夕刻用事は済みました。JR「サンダーバード」で京都へはその日の内にゆっくり帰り着けるのですが、ちょっと心地よい秋の夕暮れ時、富山駅のターミナルビルで美味い寿司で腹ごしらえができるとついつい思い立ちました。
 そうだ、日本海航路初制覇のグッドチャンス! 北海道経由で帰ろう!

 

【第一日目】

 そうなんです。今回はとりあえず富山への所用があって出かけたのでした。ところがですね、やっぱり折角富山まで来たのですから、それに富山での知人の情報では何でも糸魚川の蕎麦がうまいという話でもあり、夕方所用を済ませると駅ビルで話題の美味しいお寿司をたらふく食って早めの夕食として、普通列車でひとまず糸魚川へ向かいました。富山駅を出発して間もなく黄昏時が迫ります。やがて時折見え隠れする日本海に夕陽が沈み糸魚川駅に到着。
 駅前広場は閑散としたローカル駅ののどかさがただよっていた。その広場を渡ると駅前商店街の通りが続いています。こざっぱりとした印象で、あちこちに掲げられた「村おこし」(失礼、町おこしなのかも・・・)の看板やポスターなどが目立つ。聞きおよんでいた情報を元に脇道へ入り、美味しいと噂のお蕎麦やさんを探す。幾度かその道を行ったり来たり。やっと見つけたそのお蕎麦やさんは残念なことに休業でした。半ば諦めたものの、どうも旅の時には不思議に普段になく食い気旺盛となる。食欲がわき上がってくる。あんなに寿司をたらふく食ったのに、と思いながらも来がけに見かけたお蕎麦屋さんへ向かう。
 暖簾を掻き分けて入った駅前通りに面したそのお蕎麦屋さんは、結構お客さまも多くて何ともいい薫りが漂っていました。おもしろそうなセットメニューが色々あって、悩みながら天ぷらどんぶりとセットのものを注文。程なく運ばれてきた横長の綺麗な塗りのお弁当箱のような食器には、小さめの天ぷらどんぶり、突き出しに香物、山菜蕎麦が入っていた。以外というか期待に反して旨い! 特にお米が美味しい。しかもお代は1,000円と感激!
 もうこれ以上はお腹には入りそうもない満腹の腹を抱えて駅前へ戻り、まだ開いていた本屋さんへちょっと立ち寄り文庫本を買い求め、駅に戻ると、ちょうどいい時刻で、直江津行きの列車が入線しているようであった。で、そのままホームへ。ローカルの普通列車は国鉄が分割されて以来色々な趣があって楽しいものだ。乗り込みゆったりとした向かい合わせの四人掛けボックスに座り、辺りを見渡すと何となく記憶が甦ってきた。確かこの車両の雰囲気は数十年前電車寝台列車として、華々しくデビューした大阪から九州方面へ向かう特急寝台列車用のものであったはず。出入り口付近などが改装され塗装も変えられているが何とも懐かしく思う。
 やがて糸魚川駅を出発した列車は殆ど暗闇ばかりの夜景を車窓に流しながら、やがて直江津駅へ到着。ばるなの出航は23:55。まだ二時間近くも時間があるので直江津駅からは連絡バスにでも、と思いながら駅前辺りを探してみた。が、連絡バスはある様子がない。向かいの大きなホテルに入りフロントで訪ねてみると、やっぱり連絡バスはないとのことで止むなくタクシーで港へ。

往路 直江津→ 東日本海フェリー<ばるな> 日本海航路初乗船
 東日本海フェリー<ばるな>で直江津港から出港・船は綺麗だがサービスには幻滅となるのだが・・・。
 直江津駅を後にしたタクシーは暗闇の中を走ること暫し。港を遠目に眺める辺りから明るい光の固まりに照らし出された<ばるな>が岸壁に接岸している様子が遠望できる。程なく十分あまりで埠頭ターミナルビルに到着。
 発券窓口には並ぶ人もなく難なく最上級船室をゲット! 特等室それにしても既に秋というのに蒸し暑いことしきり。北国の夜ならすっかり冷え込むのではとの懸念はあっけなく吹き飛び、汗を滲ませながら二階の待合室へ上がる。と、そこには冷房が入っていて正に驚き。果てさて、まだ乗船時刻まで小一時間あまりはありそうなのでコーヒーでも飲もうとスナックコーナーへ行くと早々と店じまいの様子。コーヒーも既に売り切れとの表示に自販機で買い求めた缶コーヒーを飲む。船内での食事もおぼつかないのではと心細くなり売店を物色。ここにもありきたりの土産物程度で大して求めるモノもなく、やむなくわさび味の野沢漬けを買い求める。この先が思いやられそうな気配。
 岸壁は待合室の窓から目の前で、ボーディングブリッジは無い。船腹から飛行機のドアから地上に降りるタラップのような乗船口がターミナルビルから続く乗船通路の先に見えていた。船腹は真っ平らで垂直にそそり立つ壁そのもの。まだ就航一年にも満たない新造船であるからなのだろうか、輝くような際だつ白さが印象的な見た目には美しい船体である。
 待合室には百人くらいの団体客が団体旅行のバッジを胸に付け一角を占有して賑わっていた。やがて迎えた乗船時刻。構内アナウンスは団体旅客優先の乗船を案内している。一般徒歩での乗客は幾人居るのかわからないが、団体客が一階へ下りて行きアリの行列の如くに乗船口へと向かう様子が待合室の窓から眼下直前に見下ろせる。ひとり、ふたり、さんにん・・・暇つぶしに頭数を勘定し始めると、途中で止める気にもなれず数え続ける。で、次に一般客乗船のあんない。辺りを見渡せばせいぜい数人、この分じゃドライバーを入れても乗船客は百五十名足らずではないかと思われる。先ほどから積み込んでいるコンテナやトラックの数も大した数ではない。乗船を待っていた乗用車の列にも精々十台前後が並んでいたにすぎない。
 とにかく直江津出港定刻時刻23:55の二十分くらい前に、ようやく後回しの一般先客乗船あんないに従いターミナルビルを出て乗船口へ向かう。13,654トンさすがに大きな船である。乗船口では愛想のない係員に出迎えられ? 乗船券を渡すと半券を引きちぎり返してくれる。それから左側へ回り込みエスカレーター二本を昇り次ぐと案内所のあるフロアーへ。案内所では微笑みひとつもない係員に迎えられ船室の鍵を頂戴した。それにしても船内の綺麗さには目を見張る。敷き詰められた絨毯、既に団体客は船室に落ち着いているのか、乗船が少ない精かもしれないがエンジンの響きや振動も殆ど感じない静けさに覆われている。発券窓口に引き続き乗船口の乗船券もぎり、ここの案内所とどうも何とも無表情というか客商売とは思えない素っ気なさに何とも気が滅入りそう。乗せていただいてもいいのだろうかと心配になってくる・・・。
 とにかくちょっと不安になるような様々な印象を抱きながら特等室に落ち着く。並のユニットバストイレにロッカー、ツインベッド、ライティングデスク、窓際におかれたコーナー三点セット。まぁこんなものだろうとそれなりに納得しながら旅装を解いて一服。デスクの上に置かれた案内パンフレットのたぐいに目を通しデッキプランを発見!
 あるではないか! 最上級船室「特別室」 キーと乗船券を手に案内所へ引き返ししばし問答。
 「特別室というのもあるのですね! 事前にお伺いしたときには特等室が最上級船室だと伺ったのですが? 空いていれば変更していただけませんか?」
 「はい、ありますが使っていませんし販売はしていません。」
 「そうなのですか、駄目ですか?」
 「ええ、会社からの指示がなければ使用できません。VIP用ですから、私たちはオーナールームと呼んでいますが。」
 そうなんだ、私はVIPじゃないから・・・。ボソッ
 「実は私は長距離フェリーの最上級船室の船旅が大好きであちこち乗船していまして今回は初めて日本海側の長距離フェリーに乗るのですが、先般仙台で御社の方から頂戴した<ばるな>のカレンダーを連日眺めていてやっと今日乗船した次第ですが・・・。」
 「・・・。」
 とりつく島もない。それになによりも冷たい表情、冷ややかな視線、僻みかなぁ。ではと矛先を変えて・・・。
 「それなら明日にでもデッキ見学はお願いできますでしょうか?」
 「予約されていなければ駄目です!」
 そんな案内はどこにもなかった・・・。ボソッ
 「ええ、そうですか? では今お願いして明日では?」
 「乗船前にご予約いただかなければ駄目です・・・。」
 ふーん、そうなんだ、素っ気なくとりつく島もない状況が続く。諦めました。
 意気消沈残念無念で船室へ戻ると程なく出港。こんなにいい船なのにどうしてまぁこうも慇懃無礼お偉い船会社なのかと感心しながら再びデッキプランに目を通す。前方ブリッジ下のフロントビューの良さそうな部屋は総て乗組員室<何となく少し納得。展望風呂は程なくクローズ、夜が遅い精でもあるのだろうが出港時にもレストランは営業していない。何となくさすが日本海<ロシア船のサービスでも見習っているのだろうか?>と諦め半ばで感心しきり。とにかく夢に見た<ばるな>乗船の現実に期待はずれへの 諦め+意気消沈=腹も立たず 腹は横にしてまずは就寝。例により今回も全く殆どなぎ状態で滑るような日本海初航海はとにかく始まりました。夜空には満天星が輝いていた。

 

【第二日目】

往路 →岩内 東日本海フェリー<ばるな>
 翌朝、目覚めると窓の外は曇り、それでも海は相変わらず静か。辺り一面全く船影も認められず。ひたすら海、海、海の連続、広大な日本海、船室は左舷海側であった。
 朝食は南フランスのような印象を伴った優しく暖かなインテリアの開放的な綺麗なレストラン。それに引き替え素っ気なく味気さはここにもまた充満していた。自販機で買い求めさせられる和か洋の朝定食、とにかく食べる。セルフサービスで入れたグラスの飲料水は冷えてはいるモノのかび臭いような変な臭い。どうも異様なまでの素晴らしい<ばるな>そのもののハードと、何とも筆舌に尽くしがたい 失望+期待外れ 連続のソフトに幻滅。すっかり驚きは募るばかり。朝の洋定食は1,050円(消費税込み)全く旨くない!
 それでも<ばるな>という船のハード面の美しさと素晴らしさは絶賛するが、船旅は港へ到着した瞬間から始まるものと信じる我が信念からして失望、諦め、期待はずれのソフト面満載の乗船記はグチばかりになりそうなので中略!!!
 折角の昼行航路だが半ばふて寝の昼寝続きで夕刻、日没時に岩内港入港。雲間から僅かに漏れる夕焼けは素晴らしい。真新しい岩内港ターミナルビルに迎えられ無事北海道に到着した。岩内港はこの航路のために新設されたようで何もかもが新しく綺麗。相変わらず船内での下船時の案内ではターミナルビルから連絡バスが運行されて居ますと言うだけで、そのバスの案内もなくビルの中にも何の(乗り場や時刻)案内も無い。やむなく窓口の係りの人に尋ねてようやく岩内バスターミナル行きのバスの所在を確認し時刻と発着場所を知る。
 さようなら<ばるな>東日本フェリーさん=いずれ日本の全長距離定期航路制覇のために他の航路にも乗船させていただきたいのだが何とも先が思いやられる・・・。
 夕方、黄昏の岩内港に入港。心地よい爽やかな風を受けながら岸壁に接岸する様子を眺めようと甲板から身を乗り出し食い入るように見つめていた。ゆっくりと岸壁に近寄る本船から係留のための太いロープの先に付いた引き綱が岸壁へ向かって投げられます。岸壁でそれを待ち受けていた係員が拾い上げると軽四輪トラックに繋いで引き太いロープを引き上げ引きずって係留杭の側まで引くとそこにいた係員がその先のわっぱを杭に掛ける。本船でウインチの稼働する音がし、そのロープが引かれていく。その光景を眺めている内に本船はあっけなくもスムーズに既にぴったりと岸壁に接岸していた。この着岸の見事さはには感激!

●北海道上陸六時間
 岩内港→岩内バスターミナル→小樽の路線バス移動 小樽のさかなやさんが経営するめしやさん。
 路線バスでJR小樽駅に到着、一応は下車する予定で居たのですが既に腹ぺこ夕食時を過ぎていました。運転手さんにちょっと声を掛け
 「小樽では何処か美味しいモノを食べられるところご存知ありませんか?」
 と尋ねると
 「ここで降りるよりもうひとつ向こうの緑公園で降りればいいでしょ。公園通りには地元の人たちが行く繁華街がありますよ。寿司や通りよりはお勧めです・・・。」
 と微笑んでくれた。言葉に従い小樽駅では降りずに次の緑公園で下車。
 繁華街が近いというか、あるというのに、あるいは既に繁華街に差し掛かっているのか・・・。よく分からないが案外に街灯りも大したモノではなく何だか薄暗く一通りも少ない。一通り坂を下がり界隈を行き交い何処か旨そうな食い物やさんはないかと探索。一巡し再び緑公園に向かって坂を逆戻り。はじめに見かけたさかなやさんの経営するお店を店先から覗く。
 これが大正解。魚屋直営の「魚一心」という店で、お通しが何とカニ半身! あわびの造り二個1,500円! 満腹したうえに、夜食用に銀タラ味噌漬けの焼いたのとおにぎりを包んでもらっても3,000円でした! でも一皿の分量が多すぎる。もっといろいろ食べたかったのに・・・。
 その後、有名な運河の倉庫まで腹ごなしの散歩。途中、バスの運転手さんが言っていた寿司屋街を通る。でも、こちらはどうやら観光客相手の様子。あまり期待できそうに雰囲気であった。それに北海道はお米が駄目と、あとでタクシーの運転手さんが言っていた。
 倉庫群の端からタクシーに乗り、レトロな建物がある通りをまわってフェリー乗り場に行くように頼んだら、これがまたヒットで、観光案内がとっても楽しい運転手さん。小樽の街は、昼間にみても薄汚くて、夜のライトアップを見る方が綺麗らしい。
 小樽のフェリーターミナルは、コンテナやトラックでいっぱい。船は眼前に見えているのだが、乗船口までの通路と平行にかなり歩道が続く。ここを歩いて戻るのはしんどいなぁと内心思いながら、立派なターミナルビルに到着した。 港の施設は新しくとても綺麗、人気も殆どない。このビルは、文章ではちょっと表わしにくい独特な格好で、最上階には小樽市街を見渡せる展望風呂があるとか。時間が遅かったので営業はしていなかった。

復路 小樽→ 新日本海フェリー<すいせん>
 長距離フェリーのターミナルとしては、今まで見た中、知る限りでは一番豪華な建物ではないかと思う。 船の模型などが展示された待合室でしばらく待っていると、案内アナウンスがあり22:45に乗船開始。ターミナルビルから乗船口まで、外から見るとうんざりするほど長い通路には、ムービング・ウォークがあり、ほとんど歩く必要はない、やれやれ。 ボーディングブリッジから直接エントランスホールに乗り込める。三層吹き抜けのホールは豪華フェリーと言われている船の中でも、また一段と豪華な感じ。鍵を受け取り最上階に向かう。
 スイートルームは特等スペースを抜けブリッジのすぐ後ろの独立した区画に四部屋あった。入った003号室は内装がすべてペールグリーンでまるで青虫部屋・・・。写真で見ると<すずらん>の方には真っ赤な部屋もあるようで長時間過ごす際の心理的快適さが考えられていない様子にちょっとがっかり。後で他の部屋を見せてもらったら、ピンクベージュの部屋もあったので、もし次に乗る機会があったら部屋の位置(陸地側の左舷を指定した)ではなくて、部屋の色を指定しないと思った。
 部屋は四十畳くらいとフェリーでは最大級の広さ。テレビ、冷蔵庫、案内所に通じるインターホン、90cm角くらいの書き物のできる机、半円形の大きなソファと一人用ソファ一個、セミダブルベッド二台(これがくっつけて置いてあるので、船内図を見たときはほんとのダブルベッドかと思えたのだが)。空調は個別調節可能。サニタリーは、ユニットではなくて、浴室、洗面、トイレが独立している。ドライヤーはありましたが、アメニティは石鹸と歯ブラシのみ。寝具は毛布のみ。日本人感覚にすれば掛け布団がないというのはどうも落ち着かない。ゆかたとバスローブも用意されていた。
 冷蔵庫の中は
 「ご自由にお飲みください。」
 と案内してくれたお嬢さんの言葉であったが、ミネラルウォーター、きりり、緑茶が各一本、でも、もちろん無料。(^^) 部屋に入ると、すでに湯沸かしポットにお湯が湧いていた。ターミナルから見たときには既に右舷側のスイートルームに電気がついていて、あれ? と思ったが(この日はスイートにもう一組お客がいた!)、こうやって準備をして電気もつけて暖かく迎えよういう心が感じ取れるのが嬉しい、ほんとにちょっとしたことでも。コーヒーパック四個、紅茶パック四個、緑茶パック多数が用意され、すぐに暖かい飲み物でくつろげた。
 エントランスホールには、客室部分の三つの階を移動できるエレベータがあり、船内は完全にフラット、パブリック部分には身障者用トイレも備えられていてバリアフリーが行き届いている。特にスイートルームはサニタリー部分も含め室内に一切段差がない。特等洋室はユニットバスだと思うので、その部分のみ段差があるかも知れない。
 某所で見た<すいせん>乗船記で振動がひどいとあったので<ばるな>往復も考えてたが<すいせん>のスイートは、ブリッジのすぐ後ろという位置のせいか、船室はいたって静か、そして海も穏やかで熟睡。

 

【第三日目】

●復路 →敦賀 新日本海フェリー<すいせん> 日本海で迎えた二度目のご来光
 午前六時頃目覚めたら、ちょうど綺麗な日の出を見ることができた。もっとも、水平線を出た太陽はすぐにまた雲に隠れてしまいた。その後、小さな気圧の谷が通過するということで揺れを覚悟したものの、思ったほどには揺れなかった。フェリー最上級船室乗船の旅も多分十回目くらいになると思う。それにしても天候にはいつも恵まれているのはやはり日頃の・・・、なのか?(^^)
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 持ち込んだ弁当で朝食を取り、部屋でくつろいでいると九時半頃
 「間もなく姉妹船の<すずらん>とすれ違います」
 という放送が入りました。右舷が見えるレストラン横のプロムナードまで急いで出て、持参の双眼鏡ですれ違いを楽しむ。その後、お風呂に行き、船内探検をして部屋に戻ると、案内所から電話で
 「ブリッジ見学なさいますか」
 とのこと。十一時に部屋に迎えに来てくれた笑顔の素敵な係のお嬢さんに尋ねると
 「スイートルームのお客様だけ、特にご案内しています」
 ということ。
 普段は鍵のかかったドアの向こうに行くだけで、もうブリッジ。当直の航海士、甲板員、そして船長の三名が迎えてくれた。そして、すぐに記念写真の撮影。制服を着せられ、帽子をかぶせられて、案内の女性がポラロイドカメラで撮り、ちゃんとケースに入れたものに船長さんがサインしてくれる。ここまでサービスされたのは初めてで感激。
 普段は航海士、甲板員の二名が三時間交代でブリッジにいて、すべてコンピュータ制御の現在、仕事はひたすら見張りだそうだ。 この日の船長さんはとっても話好きな方で、ふだんは<らいらっく>に乗船されているそうだが、最新鋭の船に乗って嬉しくてたまらないというように、懇切丁寧に船の設備について説明していただいた。レーダーの表示の意味、海図、航路、コンパス、舵、プロペラなどなど・・・。
 フィンスタビライザーは格納式で、通常は速度優先で使っていなくて、コンピュータ制御により、舵を揺れを消す方向に切ることで、横揺れを抑えているとのこと。 着岸時の操船はジョイスティックを使ったコンピュータ・ゲームのような感じとか。ブリッジの右の端にあり、これは船長自ら行う。 海図は下からライトで現在位置が表示されるような設備の上に置かれていた。これもコンピュータ制御で海図番号を入力するだけ。積丹半島を回ったら、敦賀まで一直線、陸からは100kmも離れたところを航行するという説明がありました。ちなみに水平線まで天気がよくても20kmしか見えないそうなので、航海中、陸地はほとんど見えないらしい。
 水についても興味深い話があった。小樽でも敦賀でも三時間しか停泊しないので、その間に積める量に限りがあるから、一日100トンの水を海水から作る装置を備えているとのこと。
 この日の乗組員は三十六名、船客は九十名ほど。貨物は満杯だそうで、やはり貨物で稼いでいるらしい。定時運行が大切なお話なども聞くことができ楽しくお話を伺っているうちに二十分と言っていたブリッジ見学は五十分あまりも経っていて、その間に舞鶴からの<らべんだぁ>とすれ違い、ブリッジ備え付けの双眼鏡でじっくりと船影を見ることもでき大満足のブリッジ見学であった。
 昼食はレストランで。レストランは真ん中のフロアの後方、営業時間が短いので案内されている時間内に必ず食べないと食べ損ってしまうのが難点。カフェテリア方式で、たとえば、ラーメンとミニ・カルビ丼というようなセットが780円。アラカルトもちゃんと調理されたものがいろいろ出ていて楽しく食事できた。振動がひどいのと全席禁煙なので、あまり長居ができないのが少々難点。
 展望風呂は一番下のフロアの後方、珍しく男女とも左舷側に並んで配置されていた。浴室には特筆すべき設備はなく大きい湯船がど〜んと。でも、窓が低いので、ゆっくりつかりながら海を見ることができる。敦賀から小樽への逆コースなら夕陽が綺麗なことでしょう。ここにもドライヤーはったが、シャンプーはなく石鹸しかない。 スポーツサウナは時間を限ってオープンしていたようだが後部外甲板のジャグジーはカバーをかけてすでに冬眠の様子。
 太平洋航路とは異なり日本海航路は小樽から敦賀まで一直線に航行する。従って航行中は沿岸部からは遠く離れていて正に大海原の真っ直中を行く航路である。辺り一面、海、海、海・・・。ブリッジから見える視界は前方20km程度らしいが見渡す限り四方どの方向も海である。しかも深海のために漁場もないのであろう漁船などの船影も全く見かけない。大航海そのものだ。
 夕食もレストランで取った。さんま竜田揚げ、ビーフシチュー、鯖味噌煮などが昼食夕食あわせて食べた中でのベストスリー。ラーメンは焼麩が入っているのが北海道らしいところ。味付けの程は個人の好みの差異もあろうが小生としては可もなく不可もなくといったところか。

 新日本海フェリーの誇る高速フェリー<すいせん>の印象としては豪華で洗練された感じ、一言であらわすなら「スマート」か。客室、パブリックともに清掃は行き届いている。客室乗務員の対応も暖かく、気持ちのよい船で、また、機会があれば同社の他の船にも乗ってみたいと思いました。

 順調に日本海を一直線に航海して来た<すいせん>は夜の帳がおりた敦賀港へ定刻20:30より十五分早く20:15に敦賀港に入港着岸した。タラップを降りるとすでにJR敦賀駅への連絡バスが待っていて、数名しかいない利用者が乗り込んだのを確認すると、すぐに発車。おかげで敦賀駅からは予定より一本早い列車、特急「雷鳥」で帰途につくことができた。

 

■後日追記 2001年 秋 10月中旬
 残念ながら東日本海フェリーの直江津・岩内航路は今はもうありません。あの岩内港入港時の黄昏の光景が甦るのですが・・・。

 

@東日本フェリー  A新日本海フェリー

 

1998 H10
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1999 H11
■FR−003■  ■FR−004■  ■FR−005■  ■FR−006■  ■FR−007■  ■FR−008■  ■FR−009■  ■FR−010■  ■BANGAI-1999■
2000 H12
next02.gif (38489 バイト)■FR−011■  ■FR−012■  ■FR−013■  ■FR−014■

思い立っての船旅 前世紀・1998-2000