●太平洋フェリーの航路初乗船、北の大地への船旅!

■FR−005■
太平洋  名古屋←→仙台←→苫小牧  新千歳空港散見
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写真 仙台港に停泊中の<きたかみ>

1999年 真冬 冬の北海道ちょっと、初上陸・・・

●航海 往路・伊勢湾→太平洋 復路・太平洋→伊勢湾
@★★★★★ 往路 名古屋→仙台→苫小牧 太平洋フェリー<きたかみ>スィートルーム 昼夜便
A★★★★★ 復路 苫小牧→仙台→名古屋 太平洋フェリー<きたかみ>スィートルーム 昼夜便
 総トン数:14,000.00 全長:192m 旅客定員:842名 航海速力:24.0ノット 主機 (最大出力):28,800馬力 車両積載数:トラック176台・乗用車150台 就航:1889年10月

 

旅程 船中二泊+船中二泊 四泊五日
第一日目 京都→名古屋→金山→名古屋港金城埠頭20:00→
第二日目 →17:00仙台港20:00→
第三日目 →10:45苫小牧港→苫小牧 束の間の北海道上陸 苫小牧→新千歳空港→苫小牧→苫小牧港→
第四日目 →09:00仙台港12:00→
第五日目 →09:00名古屋港金城埠頭→名古屋→京都

 

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 <きたかみ>は普段は仙台・苫小牧航路に就航しているようで、ここ数ヶ月の就航予定船舶一覧表(太平洋フェリー配布のチラシ)によると、この時期、ちょうど<きそ>のドック入りの間、三往復半だけ名古屋発で往復できるチャンスがあった。そこで今回は急遽、この希有な乗船を思い立ち空席状況を問い合わせてた。幸い往復ともスィートルームが取れるとのことで即決定。予約を確保。名古屋港での乗り場は先日の<飛龍>試乗紀伊半島一周(RF−004参照)の時と同じく金城埠頭フェリーターミナル。
 今回はのんびり夕方四時過ぎに京都を出発。ものは試しと、名古屋駅から金山駅経由で、地下鉄で築地口、そしてタクシー乗り継ぎで悠々一時間以上も前に港へ到着。非常に乗客は少ない様子で窓口での手続きも難なく終了。後ほど乗船客数を訪ねたところ何と僅かに二十八名とのことであった。太平洋は波が高いのでは、との心配も何のその全く波は穏やか、凪の湖の上を行くような順調な航海で一路仙台経由苫小牧へ。翌日17:00仙台着、20:00仙台発、翌々日10:45苫小牧到着。束の間の北海道上陸を果たし、新千歳空港をのんびり見学して再び苫小牧に舞い戻った。17:00過ぎには再び<きたかみ>に乗船。16:30定刻出港、相変わらず、ますますベタ凪の太平洋を一路帰路に就いた。またもや太平洋の船旅を満喫することができた快適な船旅となった。

 

【第一日目】

●往路 名古屋→ 太平洋フェリー<きたかみ> 名古屋港金城埠頭で乗船
 今回は夜に出港する船なので夕方自宅を出ればよく、時間に余裕があったので、名古屋駅からJRで金山へ、そして地下鉄に乗り換えて築地口へ、という経路を試みた。
 新幹線で名古屋へ、在来線東海道線に乗り替えひと駅、金山駅は名古屋市内の駅なのに、出口で改札機がピンポ〜ン。近頃のJRの切符は不可解(130円支払)。地下鉄築地口はかなり地下深い駅で、地上まで延々と続く階段には参った参った。ここで、さらにバスに乗るわけだが、ここでダウンしてタクシーに乗り金城埠頭へ、運賃2,000円弱。蛇足ながら、名古屋からの乗船時には、名古屋駅からフェリー埠頭(名古屋港金城埠頭)へ直通のバスがあるようだ。
 それでも港には思いのほか早く到着した。すんなり乗船券も入手、速やかに乗船でき、出港一時間前には船室に落ち着いていた。夜間出港の便なのでフロントビュー、サイドビュー共に窓のカーテンは閉ざされていた。出港三十分前を知らせる銅鑼の音。同十五分前を知らせる銅鑼の音、そして定刻20:00出港。汽笛を響かせながら<きたかみ>は静かに離岸してゆっくりと大きく船首を旋回させた。工業地帯の中にある港の夜景は神戸や横浜のような絢爛さ賑やかさはない。けれども上下線が分離した二本の橋を一体化したような高速道路の大吊り橋が夜空に優美な姿を浮かび上がらせ、港界隈の倉庫群や工場群の照明が明るく輝いている光景はやはり美しいものである。
 暫くは港の夜景を眺めながらゆったりとしたリビングのテーブルに店開き。まずは湯を沸かし持ち込みのカプチーノ、愛機のPC・librettoM3、デジカメ、船旅ファイルなどを壁際のデスクに並べる。船室の位置が高いところである精なのだろうかエンジン音が遠い。微かに響く感じもするのだがかなり静かなものである。熱いカプチーノはこんなひとときに、ゆったり飲めばインスタントでも、どうしてこうも堪らなく旨いのだろう。
 船内案内のアナウンスがレストランの営業終了が近いことを告げている。午後九時前、腹ごしらえは何よりもこの際最重要とばかりにレストランへ急ぐ。船旅愛好者の間では名高いこの航路での太平洋フェリーご自慢バイキング料理である。レストランは二百席くらいもあり広々とゆったりとしている。入り口で料金1,800円を前払いすれば我天下アルコール類以外はすべてが食べ放題、飲み放題である。小生はアルコールをたしなまないのでどうしても追加料金を払う手だてがない。(^^)
 それにしても小生のほかにはパラパラ数人の客、それでもちゃんとバイキングスタイルの料理はステーキ、焼き肉、魚貝類のフライ、春巻き、餃子の唐揚げ、和え物、煮物、茶碗蒸し、おでん、お寿司、みそ汁、漬け物、コンソメスープ、パン、バター、ジャム、野菜サラダにフルーツまで和洋中華折衷で何ともバラエティー豊かにたっぷりと用意されている。さらに食後のデザートにはケーキからアイスクリームまで、ソフトドリンク類は氷、水、お茶は元よりジュース、コーラ、紅茶、ハーブティー、コーヒーまで至れり尽くせりである。ゆっくりと窓の外を眺めながら十二分に空腹を満たして余りある。
 船足が極めて緩やかになり殆ど停船状態、どうやら伊良湖岬沖の海峡辺りらしい。ここを通過すればいよいよ太平洋へと航路は繋がっている。大満足の夕食を済ませておしぼりと箸を頂いて(係の人に断りましたよ。(^^) どうぞ、どうぞ、と何とも愛想がいい)レストランを後にした。
 レストランの前はラウンジ、そこでは何時もならスターダストラウンジで開催するらしい食後のひとときをくつろいで楽しめるようにとの心遣いのピアノ演奏と歌のショーが開かれていた。鑑賞しているお客は小生を含めてこれまた僅かに三名。超豪華版独占ショーである。
 食後のひとときを暫くくつろいで後、デッキを経由して部屋に戻った。相変わらず海上は結構穏やかで大した揺れもない。テレビの天気予報では波高は2m強とのことであったが横揺れは90%を吸収するというスタビライザーのせいなのだろうか殆ど感じない。縦揺れは少々感じるものの気になるほどでもない。部屋でもコーヒーブレイクのひとときを過ごした後、浴室のバスタブに湯を満たす。ここでも感激、当然のことと言えばそれまでだが混合栓の湯音を適温に設定し蛇口をひねると即座に程良い加減の湯が勢いよく出てくる。まず水を出してから徐々に湯温を上げるようにとの親切な注意書きもされているがその必要もないのである。今までに乗船した船の船室では急激に熱くなったり冷めたりして悩まされたものだが快適そのものである。ちなみに洗面台の蛇口からも同様に何時でも適温のお湯が即座に出てきた。何とも心地がいいものである。
 バスタブに満たした湯にゆったりと浸かりシャンプーを済ませて、乾燥気味の部屋が気になるのでバスタブには湯を張ったまま浴室のドアを開け放ち、湯上がりはバスローブを羽織ってくつろいだ。
 普段宵っ張りの小生だがこの夜は何とも心地よく、何時しか深い眠りについた。

 

【第二日目】

往路 →仙台→ 太平洋フェリー<きたかみ> 目覚めたのは六時過ぎであった。
 目覚めると間もなく、ご来光・・・。本船<きたかみ>は三戸の沖辺りを航行している頃であろうか。やや北寄りに東へ向かっているようであるが、フロントビューの窓のカーテンの隙間から外を見ると空が朝焼けに染まっていた。ゆっくりと朝食。
 一通り船内探索をし、デッキでの外気の深呼吸、デッキから船内へ入るドアを開けるとスィートルーム専用デッキの廊下で直ぐ目の前が小生の船室である。船室でまどろむこと幾時か、ゆったりとした時の流れに船旅を実感するひとときでもある。
 昼食はレストランでのバイキング、広くゆったりしたスペースでまるでホテルのバイキングと同様にかなり豪華な感じ。
 昼食後暫くするとブリッジ見学が出きる。(様子は後述、第四日目を参照)仙台から名古屋へ向かう僚船<いしかり>と離合する。
 黄昏を迎える頃<きたかみ>は静かに仙台入港に入港。
 港前の公園を散歩して運動不足を解消? 船の中って結構運動不足には成らないものなのです。むしろ日頃から比べると何から何まで自分出やらなければならい船内での生活は、小生にとってはかなり充分に運動不足解消効果は有ったように思えるのだが、折角の停泊三時間は有効に活用しなければと黄昏の公園を散歩したわけである。それでもまだ出港時刻までには充分に時間がある。
 ターミナルビルに戻り売店をウロウロ。太平洋フェリー直営の売店の傍らのラーメンスタンドから何やらいい香り。食い気をそそられスタンドに座す。ラーメンを注文、これが何とも美味いのには驚いた。
 東日本フェリーのカウンターがあったので<ばるな>をはじめとする
「貴社の各船のパンフレットをいだだけませんか?」
 と言ったら、おまけに<ばるな>全景の入った一枚物のカレンダーまでプレゼントされてご満悦。(^^)
 ちょっと早めに再び乗船し、暫し部屋でまどろみ仙台港出港後、豪華バイキングディナーで満腹。この夜は少々揺れてはいたが、丁度いい子守歌代わりのようなもので何時の間にやらすっかり夢の中であった。

 

【第三日目】

●往路 →苫小牧 太平洋フェリー<きたかみ>
 再びご来光を迎える頃には下北半島手前辺り沖合だったと思う。定かでないが航海は穏やかな海を順調に続いていた。やがて定刻10:45<きたかみ>は苫小牧港へ入港、北海道初上陸! とりあえず下船してJR苫小牧駅へ向かうこととした。

●回転寿司&束の間の新千歳空港
 苫小牧は約七時間の上陸時間。ターミナルビル前からの連絡バスでひとまず苫小牧駅へ。ウトナイ湖に白鳥でも見に行こうかなどと思っていたのだが、うっすらと雪化粧して、歩道は凍結状態。予想どおり、雪のない街で売っている靴ではスケート状態。
 とりあえず、昼食を・・・、と駅前のバス停で下りがけにバスの運転手さんに寿司屋を聞いてみれば、夕方からでないとめぼしいところはないようで
 「駅前の回転寿司が結構美味しいですよ・・・。」
 との運転手さんの言。まず駅前のショッピングビルの最上階をひとまわりしてみるものの、食指を動かされるものはない。都会と違って、漁港のある街の回転寿司ならネタがいいだろうと、意を決して回転寿司へ。皿の色で100円、200円、300円と区別された寿司が回っていて、他にカニ汁200円がありました。これが何とも美味い。十数種類、腹いっぱい山盛り食った。まだ食べられなかったネタが心残り。それで1,500円でおつりが来るとはあ驚き。メニューにはなかった300円の大きな甘いエビ(赤エビ)が特に絶品であった。
 昼食を終えると残り時間は五時間ほど。寒いからとりあえず千歳空港へ飛行機でも見に行くことにしJRの普通列車を乗り継いで行った。ました。途中の景色は、どこまでも広く白く、やっぱり北海道。
 千歳空港では、もうラーメンを食べるだけのキャパがなくて残念。コーヒーブレイクのひととき離着陸する飛行機を眺めながら一時を過ごす。レストランにどうして腹が減っていたわけでもないのだが北海道なら「イカそうめん」とばかりにメニューに見つけてそれを食う。
 ピカチュウの飛行機を見たかったが、到着が16:45。帰りのバスの時刻は16:50ということで、これも断念。バスはウトナイ湖のあたり、JRとは反対の岸を走る。雪景色の雑木林の中、湖に続いているであろう小道を見ながら、白鳥見物はやめておいて良かったのかなぁ・・・、と思っているうちに、苫小牧駅に帰着。今度は雪のない季節に来て、少しは北海道観光らしきこともしてみたいものと思う。
 駅前のスーパー(デパ地下風で売場は巨大)で食糧を買い込む。
 そして、タクシーで苫小牧港へ。港湾地区へ至る国道からライトアップされた<きたかみ>の雄姿を前方に見ながら接近、ターミナルビルへ帰着。

●復路 苫小牧→ 太平洋フェリー<きたかみ>
 
程なく再び<きたかみ>に一時間前の乗船。
おかえりなさい。」
 の笑顔に迎えられ買い込んだ食料を手に部屋へ。出港三十分前、十五分前の銅鑼の響きの中でのんびりコーヒーブレイク。やがて静かに離岸して夜の帳が降りた苫小牧の夜景を背後にゆっくりと太平洋へと航跡を描いていった。そのころには我が船室では豪華な夕食・・・?(^^)

 

第四日目】

復路 →仙台→ 太平洋フェリー<きたかみ>
 気づけば朝、三度目のご来光は三陸沖からサイドビューの窓の向こうの東の空を赤く朝焼けに染めていた。
 何とも不思議なものだが、のんびりゆったりした時の流れに身を任せていると、どうやら退屈という言葉を忘れてしまうものらしい。出発からすでに四日目と言うのに全くそんな時の流れを感じることもなく名古屋を出港したのが、まるで今し方のような感じ。船室では船内探索で撮影したデジカメの写真を整理したり、このHPをいじるのすら結構忙しく感じるくらいにおっとりとした時の過ごし方の心地よさにすっかり身を委ねていた。
 程なく仙台、空はあくまで青く雲一つない快晴。海上は往路にも増してのベタ凪。人工的に掘削されて作られた仙台港内に入ると正に鏡面を滑ると言う表現が相応しい。それにしても毎度のことではあるのだが定刻ピッタリに、この巨体が岸壁に近づいたかと思えばあっと言う間に綱が引かれてピタリと接岸するのには驚くばかりである。
 仙台入港は09:00、出港は12:00なので三時間あるわけだが、往路に港の前の公園も散歩していたので、のんびり朝風呂を浴び、またまたバスローブ姿のままリビングでコーヒーブレイク。部屋の外が何となく騒がしく、ローカル色を感じさせてくれる東北弁の甲高い女性たちがおしゃべりをしている様子が伝わってくる。ブリッジ見学の時間でもないし、このフロアにはスィートルームが四室あるだけだから乗船客にしては変だなと思いながら、ターミナルビルの売店の美味しかったラーメンを思い浮かべ、着替えて一時下船することにした。
 部屋を出ると十名近いおばさまたちの集団。一瞬視線を一斉に浴びて何事かと思いきや、おばさまたちは船内パブリックスペースの清掃をするひとたちで、おしゃべりに勤しみながらも手に手に清掃用具を持って通路の床や壁面を丁寧に掃除していたのである。小生に気づくと盛んに騒がしかっただろうと詫びることしきり。笑顔で答えながら階段を下りて下船した。道理で<きたかみ>の船内がどこもかもピカピカに磨き上げられた謎が綺麗に解けた。

●仙台出航後、午後二時過ぎからブリッジ見学会。
 仙台港出航後、昼食を済ませひとときのまどろみの後、仙台→名古屋間を航行中の午後二時半頃、僚船<いしかり>とすれ違う時間に三十分間のブリッジ見学の時間を迎えた。ブリッジにいた乗組員は、二等航海士と機関士、案内の近藤パーサーと若い客室乗務員の計四名だけ。巡航中は二名で運行しているらしい。遠くにかすかに見える<いしかり>と航海士が無線で汽笛の鳴らし方を打ち合わせていたりする。双方20ノットを超える速度だから、みるみる近づいて来る。ブリッジ後方の甲板に出て待っていると、すれ違う瞬間、突如、頭の上で大音響の汽笛が・・・。
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写真 離合する僚船<いしかり>仙台から名古屋へ向けて航行中の<きたかみ>から
 ブリッジの窓は当然のことながら、一点の曇りもなく磨かれていた。客室の窓が潮で曇って残念と言ったら、
「ブリッジは簡単に窓拭きできるように、外に人が通れるスペースが取ってあります。」
 と説明された。なるほど・・・安全第一か。復路のブリッジ見学の後、かねてよりパーサーにお願いしておいた客室見学をさせていただいた。スィートルームはAデッキの四室の他にBデッキ前部の角に少し狭い二室。これも同じ料金だが説明では、一等室以上はグループごとに各室占有だそうで相部屋にはしないとのこと。ただし、繁忙期に定員未満で利用すると、空ベッド料が必要とのこと(閑散期は取らない)。ちょっと面白かったのはA寝台がカプセルホテルのような感じで専用テレビがあること。
 また、後部の二等和室(大部屋)はエンジン音が少々気になる。B寝台は前部と後部にあり、後部は同じくエンジン音が響くだろうと思う。Bデッキ前部のミーティングルーム(501)(大部屋)は、閑散期は使用しせず繁忙期には二等和室になるそうで、ここは周囲を特等室に囲まれた良い位置にある。これらのことはブリッジ見学会終了後、近藤パーサーのご厚意で船内の客室を案内していただいた時に伺って知ったことである。
 その後、フェリカクラブのカウンターでコーヒーブレイク<マンデリン(インドネシア産)コーヒー、結構美味い本格的な味300円。
 そして最後の夜、豪華バイキングディナーで船上の夕食を満喫満腹。すでに四度目の夜を迎えるにしては余りにも時の流れが早すぎたような気がする。まるで名古屋を出港したのが昨夜のような錯覚を覚えるくらいにとにかく時の経つのが早い。

 

【第五日目】

往路 →名古屋 太平洋フェリー<きたかみ> 四度目の朝、ご来光・・・
 目覚めたのは午前六時前であったようだ。まだ船窓の向こうは闇の世界であった。熱いコーヒーを入れ窓際のソファに腰を下ろす頃に夜は白み始めた。コーヒーが何とも美味い。やがて窓の外が明るくなるとサイドビューの船窓の後方の空が一気に明るさを増してきた。海面がキラキラと宝石を散りばめたように輝く。この船旅四度目の朝、輝くご来光を見た。御前崎辺りか、あるいは少し過ぎた頃か・・・。何処でも良かった、う〜ん、これぞ大満足船旅の醍醐味、そんな思いに包まれながら昇る朝日に感謝を込めて美味しいコーヒーを飲み干していた。(^^)
 昨日、乗船前に買い込んで置いた食糧はまだ充分に残っていた。室内の一角に設えられたカウンターバーの内側で冷蔵庫から取り出した野菜サラダ、チーズにパン、牛乳などを取り出し朝食を準備する。コーヒーももちろん新たにまた熱いのを入れる。ゆっくりとした時の流れの中で朝から不思議に食欲が沸いていた。遠州灘は静か、水面を滑るように航行する我が<きたかみ>とともに迎える四度目の朝は今回の船度の最期の朝・・・。
 朝食を終え、朝風呂を浴びガウン姿でまどろむ。こんなことが船上でできるのもこのスィートルームなるが故のことと思うが、これはまた船度ならではの醍醐味のひとつ。やがて<きたかみ>は渥美半島を巡り伊良湖岬沖に差し掛かっていた。間もなく伊勢湾へ入る。船旅に乾杯! またしてもコーヒーを飲み干し気分爽快。やがて伊勢湾を北進して名古屋港を目前にしていた。
 ありがとう! 乗務されているクルーのみなさんの気持ちよい対応、快適な設備、そして不思議と静かな海のおかげで、四泊五日の船旅は、終ってみれば僅か二日間くらいにしか感じられないほど時間の経つのが速く感じられた。
 名古屋港金城埠頭に帰港したときは、もう一往復したい気分でした。太平洋フェリーのみなさん素敵な船旅をありがとうございました! 是非<いしかり><きそ>にも乗船したいと思っています。

 

●船室 <きたかみ>スィートルーム101号室
 乗船するとBデッキにある案内所で鍵を受け取り係のお嬢さんがAデッキにある部屋まで荷物を持ってくれ案内してくれる。Aデッキの客室は、最前部に101〜104のスイートのみ。他は乗組員の部屋となっていて、今回の部屋は右舷角部屋の101号室。広さは四十畳ほど。セミダブルのツインベッド、長いソファ二つ、チェア二つ、バーカウンタと小さい高い椅子二つ。バーカウンタの裏側に冷蔵庫と湯沸かし器。奥にグラス類の入った透明なキャビネット。テレビはソファから見られる位置に大型一台とベッドから見られる位置に小型一台の計二台。室内にはセンスのよいガラス彫刻のスクリーンも配され、入り口から室内を見渡せないようになっている。窓はフロントとサイドに一つずつ。バス・トイレのスペースもゆったりしているし、強力なドライヤーも備えられていた。

図版 <きたかみ>スィートルーム101号室の間取り概略
 照明器具はたぶんイタリア製であろう、なかなか見事である。いくつかのダウンライトやスタンドとともに、全部で四系統の配線に分かれていて、気分に合わせたライティングが可能。ダウンライトのあたる位置二ヶ所にあるアートフラワーが豪華に映え、インテリアの配色も落ち着いて良い雰囲気。
 アメニティは、トナカイマークの素敵なプラスティックケースに入った洗面セット、ゆかた、バスローブ、サンダルという内容。冷蔵庫の中身は自己申告制で有料。ビール、ジュース、お茶などが入っている。ミネラルウォーターがあればいいのだがこれはないので売店で買い求めることになる。茶櫃あって茶器とともに、茶筒の中には粉末のほうじ茶と緑茶のパックがぎっしり入っていた。(無料) 一室四十畳程度とはさすがに広く、この部屋で四泊を過ごしても全く息づまるということはない。充分かつ快適な広さと雰囲気である。直角に配された二つのソファそれぞれ三人掛けに充分な長さで、くつろぐには誠に好都合、占領し寝そべるのぴったり。(^^) ひとりではもったいない感じ。通常の定員は二名だが、室内の表示には定員四名となっているのも頷けた。フロントの窓もブリッジの真下という好位置にあるので、すぐ下のBデッキの展望ラウンジより眺めはいい。
 沖縄行きの<飛龍>は個室毎の空調は出来ず寒かったのに。船室の空調はデジタルで0.5度単位で調節可能。
 すべてにおいて全く申し分のない部屋と言えるのだが、枕だけはどうもイマイチ、スポンジ製のポワポワで寝ている間に肩が凝ってしまう。往路二晩は我慢したものの、帰路はダメモトで一応聞いてみようと、受付に電話した。
 「探してまいります。暫くお待ち下さい。」
 との返事で、間もなく適度な弾力のビニールパイプチップの枕を届けてくれた。お陰でぐっすり眠れるようになった。

●船内 パブリックスペース
 パブリックスペースには、レストラン、コーヒースタンド「フェリカクラブ」、売店、バー、展望大浴場、ゲームコーナー、ミニシアター、展望室、展望通路、ショーラウンジなどがある。変わったところでは、浴室前のコインロッカー。今回の楽しみのひとつはCデッキの展望浴室であった。広い浴槽の半分はジャグジーになっていて、ゆったりとお湯につかりながら、窓の外を楽しめる。サウナもついていて、二十四時間いつでも利用可能とのこと。
 ミニシアターでは、午後と夜に映画を上映していた。復路の仙台出港後に「アポロ13号」をやっていたことが後でわかって、見ていなかっただけにちょっとがっかり。ちなみに、部屋のテレビは、NHKの衛星放送の他、独自のビデオチャンネルが二つ、そして、ときどき各地の地上波が入っていた。ビデオでは「釣りバカ」などをやっていたようだ。
 船内での食事は、Bデッキのレストラン。三食ともバイキング形式(ソフトドリンク類フリードリンク付き)で、朝1100円、昼900円、夜1,800円(税込)。往路の夕食一回、昼食一回、復路の夕食一回を利用した。往路の夕食は、午後八時の出港直後、しかも旅客が二十八名ということで、レストランは閑散。お客が少ないと品数が少ないのでは、と心配していたが、やや少ないものの、それぞれの料理を味見する程度の分量ずつを取っただけでも充分に満腹する品数はあった。夕食で旨かったのは、ビーフステーキ、揚げたてのかきフライなど。夕食にはデザート(ケーキ、アイスクリーム)もふんだんに用意されている。
 昼食は一番値段が安い。これは肉のかたまり料理がないからだろう。お客の少ない便での利用なのに手を抜かずに作ってあって食べ得な感じ。朝食は持ち込んだ食料で済ませてしまって利用しなかったが、やはりバイキング形式で和食と洋食の両方が用意されているらしい。

 実はこの航路は<いしかり>に乗船する予定でいたのだが<きたかみ>での往復のチャンスについつい心動かせてしまっての思い立ちでした。(^^) <きたかみ>は普段は仙台〜苫小牧間の夜行便として就航している船だが、僚船がドッグ入りしている間だけ、名古屋・仙台・苫小牧間に就航する。つまり、名古屋から苫小牧束の間上陸で同日に折り返す往復乗船のチャンスは年に数日しかないわけ、そこを狙って、あえて人気の<いしかり>ではなく、この日程を選んだ。往復船中四泊、船内滞在時間八十時間あまりの船旅となった。
 とにかく大満足の船<きたかみ>まぁ、欲を言えばきりがないのだが、着替えて食事に出るのが面倒なことがあるのでなどなど・・・。
@食事・喫茶のルームサービスがあればいい。(食事はすべてバイキングなので難しいのか・・・)
Aカップやグラスの数を倍にしてほしい。(二日過ごす間には皿洗いが必要でした)
B乗船時に船内アトラクションのプログラムを渡してほしい。(受付に掲示してあるものの、自室が一番快適なので、乗船時に見落とすと知らないままになってしまう)

 

●余談
 売店では「M.S.KITAKAMI」と書かれた半袖Tシャツも売られていた。船内は何処も暖房が行き届いていてTシャツで過ごしたい気分であった。ところで、「M.S.」の意味を尋ねようと思いつつ聞くのを忘れていた。ロゴの下にある四枚の旗の意味も。仮名の旗ってあるのだろうか? だとすれば、「き」「た」「か」「み」だと思うのだが。何方かご存じの方いらっしゃいましたら教えてください。
 ところで四日間も船に乗ったら揺れることもあるだろうと思っていたのに、往路は高気圧を追いかける形で頭上はいつも晴れ。復路は冬型で安定してしまったのか、さらに波静かで、ちょっと揺れてると感じたのは、往路深夜に津軽海峡の横を通り抜けるときだけであった。
 乗務員のみなさん話によれば
 「台風でも来なければ、そんなに揺れない」
 と言っていました。と言うわけで、思い立っての船旅はこれで五航海目となるわけだが、一体全体どうしたことか、まるで優しい女神様に見守られているようで毎回毎回不思議なくらいに、海上の様子は穏やかで心地のいい船旅の連続となっている。
 幸運の女神様に感謝!感謝! これからの航海も宜しく!(^^)

 

■後日追記 2001年 秋10月中旬
 北海道へ行ったのはこの時が初めてでした。束の間、七時間弱の上陸。新千歳空港ではあの飛行機に乗れば数時間後には・・・、と思いながら苫小牧港へ戻り二泊三日の船旅で戻ったのは申し上げるまでもありません。どうも小生は船好きのようです。(^^)
 以来、今日まで、北海道へは毎年船旅。今年も二月に雪祭り鑑賞十五分の旅、六月にはふらっと富良野へ。しかも現地二泊<二泊とは言うものの夕方到着翌々日朝出発で正味中一日であった。これからも時折に北の大地への旅は重なりそう。何とも心地よい太平洋フェリーでの船旅はさすがに毎年フェリーオブザイヤーでグランプリを獲得し続ける<いしかり>の為せる技なのでしょう。どうも<いしかり>ばかりがかなり有名なようだが<きたかみ>も素敵だ。<きそ>も名古屋航路には就航する機会が少なく上船の機会に恵まれることは希ですがあの周回できるデッキのプロムナード? これまた船を満喫させてくれる嬉しさがある。また近々きっと間違いなく幾度も幾度もお世話になる航路・・・。(^^)
 なお、記事中の航行時刻や船舶、乗船料金などは現在は異なっていますのでご注意下さい。詳しくは太平洋フェリーのHPでお確かめ下さい。

 

太平洋フェリー

 

1998 H10
■FR−001■ ■FR−002■
1999 H11
■FR−003■  ■FR−004■  ■FR−005■  next02.gif (38489 バイト)■FR−006■  ■FR−007■  ■FR−008■  ■FR−009■  ■FR−010■  ■BANGAI-1999■
2000 H12
■FR−011■  ■FR−012■  ■FR−013■  ■FR−014■

思い立っての船旅 前世紀・1998-2000