PART 2 「自然観察する散歩師」,歩く!


「自然観察する散歩師」の撮影エピソードなど……。

 1.初撮影!……「代々木編」
 2.都心で逆説的自然観察……霞ヶ関・日比谷編
 3.ベッドタウンの意外な歴史と素顔……我孫子編
 4.住宅地に武蔵野の面影を求めて……久我山・烏山編
 5.東京湾の最奥部に残る豊穣の海……船橋・三番瀬編
 6.昔,夢見た「近未来」を歩く……多摩ニュータウン編
 7.春を探して……見沼田んぼ編
 8.「散歩の王道」にも意外な側面……両国,深川編
 9.今回は正攻法「冬の自然観察の散歩道」……石神井・大泉編
 10.この街は,意外と奥が深いぞ……取手編
 11.知る人ぞ知る「野鳥」の聖地……善福寺編
 12.緑の時間(とき),緑の街……駒場編


 1.初撮影!……「代々木編」

・初撮影は雨

 初撮影予定日は1月下旬の休日。ところが,天気予報は雪か雨。「自然観察」と言う特性上,降水はかなり厳しい。撮影を延期するかどうか,ギリギリまでやり取り。結局,朝7時時点で雨が上がったので,実行との連絡。靴の選択に悩みつつ,現場へ出発。
 待ち合わせの代々木駅で,Wさんを見つけ,合流。撮影クルーに挨拶。もちろん,初対面。……しかし,なんだかんだと,スタッフが多い。私の数少ない経験では,ドキュメンタリーとかレポートの類は,出演者のほかにディレクターとカメラマンぐらいの少人数で撮影してしまうように思っていたのだが(さらに,ニュース映像だと,記者とカメラマンの2人だったり,1人で撮影もインタビューもしてしまう人がいる),撮影クルーは私を含めて8人ぐらい。ドラマ並みの手厚さに驚く。
 ちょこちょこNGを出しながら(苦笑),明治神宮へ歩く。
 ところが,ここで雨が降り出す。
 止み間を待つが,動きが取れず。他の取材の予約も控えているので,自然観察の撮影は,後回しに。

 お店の取材を先にすることになる。まずはステッキ専門店「チャップリン」。ディレクターのWさんが見つけたお店。恐らく東京で唯一であろう,ステッキのみを扱ったお店。こじんまりとしていながら,すごくお洒落。ここで店長さんにインタビュー。店長さんもお洒落な方。自然観察スタイルのボクとは不釣合いなこと……(苦笑)。事前に訪問するお店の名前と場所は聞いていたので,こっそりネットで下調べをしておいた。ディレクターさんが,ざっとインタビューした後,「それじゃ,お店を訪問したお客さんが話を聞くような感じで」と,シナリオ無しで撮影。……緊張しつつ,いくつか質問して,品物を見せてもらうシーンを撮影(結局,質問する部分はカットされた。結果的には良かったのかも(苦笑)。)。
 店の撮影が終わって外に出たら,晴れ間が覗いていた……。

 その後,何ヶ所かで撮影。ときどき道端のものをネタに自然解説。これに関しては,こちらで適当にエピソードを選び,後でディレクターさんにチョイスしてもらうことに。途中で,お茶するシーンも撮影。天然酵母のパンの店「ルヴァン」。人気店のため,脇の喫茶室の店内はお客さんでいっぱい。予約してある席,と言うのが,入口脇のオープンエアのテーブル(と言っても,小さなテーブルと椅子2脚が,店と道の間の狭いスペースに置いてあると言う,ものすごく狭い空間)。真冬の空の下,天然酵母のヨーロッパ風のしっかり固いパンで口の中をあちこち切りそうになりながら,お茶をすすった姿は,TVではどの程度,綺麗に映し出されるのだろう?……(その後しばらく,口の中が痛くて,喋るのに苦労した…)

 お店撮影の後は,北風が強くなる中,ひたすらアウトドア。…そりゃ,お散歩がメインなんだから……。
 山手通りで街路樹を観察。ここはニセアカシアの比較的太い木がある。すぐ近くの放射23号線に,都内ではちょっと珍しい木が街路樹になっている所があるのだが,こちらはパス。さらに,代々木八幡の森へ。ここでは竪穴式住居(もちろん復元品)の中に入るところなどを撮影。竪穴式住居は,かび臭かった。普段,あまり風を通していない様子。他にも小ネタはあったが,オンエアされていない。
 代々木八幡の辺りは,縄文時代には海に突き出た半島だった(代々木八幡からは貝塚や土器も出土している)。八幡神社の小高い森を迂回するように,小田急線が谷沿いに急カーブを描く。そのカーブの端っこ辺りに,童謡「春の小川」の碑がある。いまは線路脇の暗渠でしかないが,この歌が作られたときには,まだ小田急線も無かった。「元・春の小川」沿いに,野草や生き物のかすかな息吹を探して歩く。
 その後,谷から離れ,代々木の住宅街へ。軒先をくりぬいて木を切らないようにして家を建ててある,イチョウの大木がある,とのことで,行って見ると,ケヤキだった(^_^;)……でも,ネタとしてはじゅうぶん。いや,むしろ,ケヤキのほうが,元々この土地に普通にあった樹種なのだから,古木がケヤキであることのほうが,自然史的にも面白いのである。

 だんだん夕暮れが迫る。明治神宮の西参道の入り口,昔の街の名で言えば角筈あたりで,都市に暮らす鳥について解説。最近,都市部に増えたハクセキレイを撮影。さらに,崩れかかったカラスの古巣も。これは街路樹のイチョウの上にあり,小枝と針金ハンガーなどを組んで作られている。イチョウの葉が落ちている今の季節でないと見つからない。もちろん,繁殖期には,葉の陰にすっかり隠されていたのだ。ロケハン時には,西参道の参宮橋から甲州街道までの間の数百mで,5,6箇所の巣が街路樹上に見つかった。これだけのカラスが養えるだけ,東京の街は飽食しているのだ。
 上空をカラスが数羽ずつの集団で,明治神宮に向かって飛ぶのが見えた。明治神宮の森をねぐらにしているカラスの「帰宅風景」だ。

 なんだかんだ撮影しているうちに夕方。冬の日暮れは早い。都庁をバックにラストコメント。
 「中抜き」状態の撮影で,なんか,不完全燃焼。でも,全てのことが良い経験になった。

・リターンマッチ

 翌週,残りの撮影。人件費は大丈夫なのか?他人事ながら,少し心配になる。主として明治神宮の自然を紹介。それこそ,通い慣れたフィールドだから,こちらから,何を撮りたいか,聞いてしまう。都会に生きるカワセミ,コゲラ(小型のキツツキ)を重点的に撮影。この2種,1980年代頃に都市部に定着し,実は結構普通に見られる鳥だが,一般の人には,まだ「都会にこんな鳥がいるのは意外だ」と言う印象を与えるため,撮影チャンスが多くて演出効果の高い鳥である。
 境内の撮影には社務所の人が同行。粗相の無いように,気を使う。ここは神域なのだ。
 カワセミを撮影中の待ち時間に,ヤマガラを手に乗せて見せる。実は野鳥マニアが餌付けしているのだが,野鳥が手に乗るなんて,めったに出来ないことだから,ディレクターさんにもインパクトを与えたかな?(このシーンは未撮影)

#明治神宮の自然史については,こちらを参考にしてみては?
#都会に生きる野鳥の横顔については,こちらこちらに,少々まとめてある。

・フォローアップ

 平日の肩書きを出さないと言いつつも,ボクは生物系のことで飯を食っている人間である。こっち方面の「プロ」として,ミスの無いようにしたい。撮影後も,メールで細かい点を詰めたり,撮影時にいい加減なことを口走った点にフォローを入れたり,しつこいほどフォローアップ作業をする。こちらから提供した情報に関しては,「プロ」として,きちんとしておきたい。映像作りの「プロ」に対して,生物学系の「プロ」として,十分にお応えしなくては…。

・緊張のオンエア

 実はオンエアを見るほうが,撮影より緊張した。情報ミスは1点あったが,「喋り」に関してはド素人の「散歩師」を,きちんと番組に組み上げてくれる力量は,さすが「プロのお仕事」だ。今にして思えば,ホント,ひどい喋りだった(いまだにあまり進歩していないが…)。
 全体の印象だが,「自然観察」を知らない人が作ったことがハッキリ感じ取れるような作りだ。自然を観察し,生き物に出会うことが,なにか特別なことのように取り上げられている。こちらもかなりの気負いがあって,とにかく「自然観察」をアピールしようと,躍起になっているように見える。本当は,日常生活のすぐ隣りに,さりげなくいろんな生き物が暮らしていて,それをさりげなくピックアップしながら歩くつもりでいたのに……。撮影時,内心,ボツネタだと思っていた自然観察ネタが採用されていた(さて,どこだったでしょう?)。
 カラスの問題に少し触れさせてもらったのは良かった。ほんの少しだけ,学問畑の住民としての顔を覗かせたようでもあった。これが無ければ,ただの生き物好きの変なオッサンでしかない(笑)。ボクのような人間は,キャラで売るよりは,情報の面白さや情報の正確さぐらいしか,売り物になるものが無いわけだし。


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 2.都心で逆説的自然観察……霞ヶ関・日比谷編

・早く撮影しないと,春が去ってしまう!

 2002年の春は,いつもの年より半月ぐらい早く進んでいた。しかし,「春の自然観察」をネタに相談が始まったのは,4月に入ってから。ついつい,「撮影日を出来るだけ早く!」と急かしてしまう。……まぁ,季節が進めば,進んだなりにネタを変えれば済むことなのだが……(自然観察は,「旬」のものを狙うのが基本だ)。お散歩コースは駒場界隈も候補に上がっていたが,ここはひとつ,意外性を狙って,都心部へ。実は都心部,特に皇居周辺や官庁街などは,あまり大規模な再開発も無いため,郊外よりも古い植生が残っている部分もあって,野草観察には非常に面白い空間なのである。道端にさりげなく,日本在来のタンポポが咲いていたりするのだ。都心で自然観察,などと言うと,随分無理をしているように聞こえるが,実は自然観察的には,都心部は見どころが結構多い。

 コースは四ツ谷−永田町−霞ヶ関−日比谷を提案。四ツ谷近くの弁慶堀なら,八重桜が間に合うかも知れないと思ったが,最終的には,永田町スタートに短縮。途中で立ち寄る場所も,こちらから提案させて頂いた。日比谷公園の緑に面したテラスのある場所を2ヵ所提案し,ディレクターのWさんのチョイスで松本楼に。このチョイスはストレートと言うか,「王道」だと思う。もうひとつの立ち寄り場所は,「丸の内さえずり館」。三菱地所と野鳥の会が合同で作った,ボランティア運営による自然情報の発信基地。あまり運営予算も無く,ほとんどマスメディアに出たことの無い場所だが,「自然派」なら要チェックの場所。これはもちろん,ボクの提案。
 「さえずり館」は土日が休みなので(今は土曜の午後も開いている),平日に休暇を取って対応(ボクはこれでも,一応,サラリーマン)。
 あとは自然観察的に面白い場所を,事前にいくつかピックアップしておくことに。

・永田町は人の波

 今回は距離も短いので,撮影は9時半スタート。ラッシュを避ける意味もある。地下鉄の永田町駅の,国会図書館に近い出口から撮影開始。ところが,人の流れの少ない出口を選んだはずなのに,結構人が多い。通行人と重なって,なかなか上手く撮れず,NGを出すこと数回。人の流れの隙間を縫っての撮影。
 国会周辺は警備が厳しい。撮影隊は,あらかじめ警察で道路使用許可を取ってある。時折お巡りさんのチェックを受けるが,許可証を見せてパス。外国のVIPでも来ていたら,撮影どころではなかったと思う。

・国会前庭は自然観察の超穴場

 永田町近辺で,どうしても紹介したかったのが,国会前庭。北地区は洋風庭園で,憲政記念館がある。ここから皇居方面の新緑が見渡せて気持ちいい。足元には春の野草の花もいろいろ。上手いこと,「なんじゃもんじゃの木」(ヒトツバタゴ)が満開。いつもの年なら5月の連休の頃に満開になるのに,今年は2週間早い。東京ではちょっと珍しい,シロバナタンポポも撮影。
 ここで,撮影クルーが風景を撮影している間に,アメリカハナミズキの樹皮を丁寧に観察……セミの卵を探し当てた。この辺りは夏にはミンミンゼミが大量発生する場所だから,狙いをつけていたのだ。カメラは望遠撮影になったりマクロ撮影になったり,ボクの担当回は忙しい。カメラのTさんには,毎度毎度,お手数をかけている(いつもすみません…)。
 南側の日本庭園のエリアは,下見の時にはちょうどアカハラがさえずっていたり,小鳥類の水浴びが見られたが,本番の日は見られず,ボツ。

・警視庁の前で撮影!

 桜田門。言わずと知れた,警視庁の庁舎のある場所。こんなところが,実は面白い。皇居はあまり土を掘り返すことのない場所だから,お堀端にはいろいろな花が咲き,それを求めて虫も来る。桜田門の交番のすぐ裏で,日本在来タンポポ(カントウタンポポ)とセイヨウタンポポが並んでいるところを撮影。ありきたりな観察ネタだが,映像が綺麗だと説得力がある。
 警視庁の前の街路樹はユリノキ。Tulip Treeと言う英名の通り,チューリップのような花がついている。見上げれば青空に浮かぶ街路樹の花……と言う構図。
 このすぐ近く,農水省前の街路樹はトチノキが花盛り。農水省の北側の,日比谷公園に抜ける道沿いは,クスノキの紅葉が終わりかかっている(クスノキは常緑樹で,春先に古い葉を落とす)。「春に紅葉」の意外性を説明。

・巨木に囲まれて

 さて,日比谷公園。100年の歴史を持つ,洋風都市公園の元祖。公園の歴史より古い,通称「首賭けイチョウ」を見る。野草の花もいろいろ。ネタには事欠かない。ここで,シランの花の受粉戦略を説明。シランの花は,花粉を粘液に包まれた塊で持っていて,花に潜りこんだ虫の背中に,まるごとくっつけて,虫に「動く花」になってもらう。花粉を渡すチャンスはたった1度だけ。無理矢理花粉を預けられた虫が,再びシランの花を訪れれば,受粉に成功するが,その確率は決して高くない。実際に指で,花粉塊を取り出して見せていたら,ちょうど,ハナバチが背中に花粉を背負っているのを発見!素晴らしい幸運!さっそく,撮影してもらう。もう,まるで科学番組のノリ。

 シランの受粉戦略について,詳しい解説はこちら

 コーヒータイムの撮影は,松本楼のテラス。飲食のシーンはあまり得意ではないが……と,撮影中に,目の前の木の樹洞にムクドリが出入りしているのを発見。お願いして,ムクドリの巣作りも撮影。但し,場所が特定出来ないようにオンエアしてもらうことに。こうしたことに非常に気を使うのは,「自然観察」関係では常識になりつつある。観察者によるトラブルを未然に防ぐためだ。もし,もっと珍しい生き物が見つかったとしたら,撮影を止めていたかも知れない。
 ウグイスやセンダイムシクイも鳴いていたが,周囲が賑やかで,音声を拾うのはちょっと難しいようだった(即座にボツ!)。

・「さえずり館」でインタビュー

 「丸の内さえずり館」は,日比谷と丸の内の境い目ぐらいにある。実はここの館長さんとは知り合い。根回しは十分(笑)。てきぱきと対応してくださる。さすが,企業人のOBだ。撮影も快調。館長さんや三菱地所サイドの担当者の方のコメントを撮っている間に,撮影風景をデジカメで撮らせてもらう(これは後で「さえずり館」に送る)。アメリカのテロ事件の影響か,建物の外観の撮影はNGで,訪問シーンは「さえずり館」入り口からの撮影となる。実は別のビルでの撮影もひとつ提案してあったのだが,こちらは建物内の撮影もだめでボツになった。都心部のビル管理者は,どこも神経質になっているようだ。

・ゴールは東京駅

 ラストコメントは東京駅の赤レンガをバックに。都心でも自然が残っている意外性,皇居とか官庁街は,場合によっては郊外よりも古い植生が残るので,面白い観察が出来ることなどをコメント。都心は自然観察の穴場なのだと言うことで,締め。恐らく,自然観察に興味の無い一般の人が見れば,かなり意外性のあるストーリーだと思う。ボクとしても,面白い自然ネタの絵が撮れたと思っている。山のように紹介した春の花を,どう編集するか,ここから先は,ディレクターさんの腕の見せ所だ。



都心での自然観察についての参考コンテンツは,こちら

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 3.ベッドタウンの意外な歴史と素顔……我孫子編

・夏を撮る?秋を撮る?

 ディレクターのWさんから連絡が入ったのが7月半ば過ぎ。今回は我孫子まで遠征してくださると言う。ありがたや。
 我孫子は地元の街。地元と言っても,居住歴10年の,まだまだ「新住民」。しかも,地元でのコミュニティが拡大したのは,子供が生まれて保育園に通い始めた頃からで,その頃から,やっとこ我孫子の街をじっくり歩くようになった。つまり,我孫子お散歩歴は,せいぜい6,7年。
 もちろん,他の場所よりは遥かにたくさんの情報を持っている場所だから,準備は楽だ。お盆休みを避け,お盆前にロケ予定を入れる。しかしオンエア予定は9月。盛夏に秋のネタを撮るの?……自然観察に限って言えば,それはごまかしが利かない。自然観察の楽しみの1つは,その季節ごとの「旬」を楽しむこと。秋のネタを撮りたいと思っても,8月の上旬では,なかなか見つからない。マイクは嫌でもセミの声を拾う。必然的に季節感重視となる。オンエア日を9月1日に調整してもらい,晩夏と初秋を意識して歩くことで折り合った。ちょっとわがまま言い過ぎ……(反省)。

・我孫子と言う街の面白さ

 我孫子を,「東京のベッドタウン」ぐらいにしか認識していない人は多いと思うので,ちょっとだけ我孫子を歩くことの面白さについて触れておこう。
 実は我孫子には,歴史散歩や文学散歩のネタが多い。手賀沼を見下ろす段丘の上には,6世紀頃の古墳群がある。江戸時代には水戸街道の宿場町として街が作られ,また,成田詣での道である成田街道が,水戸街道から分岐している。明治以降は鉄道のジャンクションとしての重要な場所となり,今も常磐線と成田線の分岐駅として,賑わっている。
 大正時代,手賀沼を見下ろす高台は,風光明媚な別荘地として知られていた。この地に「民藝」運動の柳宗悦をはじめ,志賀直哉,武者小路実篤,中勘助ら,白樺派の文人たちが移り住み,さながら「白樺村」の様相を呈した。陶芸家バーナード・リーチの窯も,柳邸内に作られていた。今はあまり知られていないが,この時期,我孫子のことを「北の鎌倉」と呼ぶ人も多かったと言う。
 昭和30年代までは水泳も楽しめた手賀沼は,今は有機物のドロリと溜まった桶のようになっているが,まだ漁業も行われていたり,水鳥の越冬地としても有名な場所である。昭和50年代以降,山階鳥類研究所が渋谷から移転してきたり,日本で唯一の,鳥専門の博物館が作られたり,手賀沼の自然を利用した街作りは,今も続いている。

 こうした,歴史の薫り高い場所が,往時を偲ばせる水と緑の風景の中にちりばめられているのが,我孫子の街歩きの大きな魅力だ。


・斜面林は夏のオアシスだ!

 スタートは我孫子駅。……朝から猛暑。う〜……。
 日差しも強ければ風も強い。晴天の割には苦しい条件。まずは森へ!木陰の気持ちいいシーンから。

 駅から徒歩10分少々の,船戸の森。夏休み真っ盛りの晴天。昔だったら,虫取り網持った少年の1人や2人,見つかっただろうけど,今は犬の散歩ぐらいしか,歩く人もいない。ヒグラシ,カナブンと,虫を中心に自然観察ネタを拾う。真剣に探せばカブトムシぐらい見つかるのだろうけど,場所が特定できる状態でオンエアされるので,乱獲される危険のある生き物は避ける。

 ここで痛恨の解説ミス!
 カナブンの飛翔についての話。昆虫の翅は4枚だが,甲虫は前2枚が硬くなり,後ろ2枚の翅で羽ばたく。前の硬い翅は飛ぶときに邪魔なのか?と思いきや,カミキリなどは前翅を全開して,飛行機の翼のように利用していたり,コガネムシの仲間は半開状態で,空力特性を稼いだり,フラップのように使ったりして,飛行に役立てている……と,ここまでは良いのだが,コガネムシの中でもカナブンは例外で,飛翔時に前翅を完全にたたむ。多分,このほうが空気抵抗が少ないのだろうけど,この翅をたたむと言う「例外」を忘れて喋ってしまった。みみっちい話だが,甲虫好きの人ならこの間違いにはすぐ気づくだろう。

 コガネグモの仲間の「かくれ帯」。渦巻状で面白い。これは若いクモの作ったものだが,肝心のクモの姿が撮影時には無く,結局,どんなクモが作った網なのか,同定できず。なんか,中途半端な気分だが,この網の造形を気に入ったディレクターさんの判断でオンエア。

 サワガニを探すシーンは,一応,今回の自然観察の「目玉」と目されていたエピソード。斜面林の下の「はけ」に住むサワガニは,ここの水が決して枯れないことを物語る。この場所は今では湖面から数百m離れているが,かつては手賀沼の水面と,もっとしっかりと水のつながりがあったことも想像される。巣穴からそーっと顔を出すサワガニは,なかなか撮影しにくい。かなり時間をかけて,やっとこ撮影出来た。

 船戸の森の脇には,武者小路実篤邸が残る(現代も居住者がいるので非公開)。そのお隣にある,「小綬鶏」でひとやすみ。森の中の隠れ家,と言った雰囲気の漂う,静かで感じの良い店。


・手賀沼公園でネタ探し

 手賀沼公園。実はここ,自然観察ネタがあまり多くない。目の前には沼が広がり,ポプラ並木が気持ちいいのだが……。結局,セミの抜け殻と手賀沼に浮かんでいるホテイアオイの「水質浄化プラント」をネタに,少々撮影。なんだかんだ言いつつも,汚染日本一で有名な沼だし……(注:あくまでも調査対象となっている湖沼でのCODがワースト1であると言うこと。また,有機物は多いが毒物が入っているわけではないので,誤解の無いよう……)。


・バス通りは暑過ぎ

 かつての手賀沼の名産と言えば,川魚。特にうなぎは高級品として有名だった。江戸時代から魚の仲買をしていたお店が開いたうなぎ屋が「西周」。もちろん,今は手賀沼産のうなぎではないが,かつては手賀沼のうなぎを使っていたと言う。このお店は我孫子駅から手賀沼へと下ってゆくバス道路の途中にある。お店のお客さんがいなくなるまで待機。さらに,うなぎを焼く様子やお店の人のコメントを撮る間,外でずっと待ちぼうけ。交通量の多い舗装道路,夏の昼下がり,南向きの斜面,と言うことで,暑い暑い……少々熱射病気味になって,気分が悪くなる。これからお食事のシーンだと言うのに……。顔を洗って頭を冷やしつつ,着席。う゛〜………ところが,うなぎを一口食べたら,なんか,スルスル胃に入る。結局,撮影後もぱくぱく食べて,ごちそうさま。すっかり調子も良くなった。恐るべし,西周のうなぎ。


・自然観察散歩,ときどき文学散歩

 柳宗悦邸へと続く,巨木に囲まれた石段。ここは最も「絵になる道」だったりする。蝉時雨の中,素手でセミ取りしながらここを紹介する奴は,ボクぐらいのものだろう(笑)。近くには杉村楚人冠邸跡が公園になっていて,手賀沼の眺望が良いのだが,杉村はアサヒグラフの創始者としても有名な人。TBSは毎日新聞系なので,ちょっと配慮してパス(苦笑)。この近くの「大正煎餅」(今日のお土産で紹介)を撮影。レトロな雰囲気が,白樺派の文人たちの住んでいた時代を偲ばせる。
 白樺文学館を訪問。ここは2001年にオープンした民営の博物館。資料展示のほか,公開講座なども行われている。ちょっと来館者が少ないのが気になる。
 その斜め向かいが,志賀直哉邸跡。ここは他の文人達と違い,斜面の下に家を構えている。今も湧き水が敷地内にあるが,かつては台所で利用していたのだろう。


・勝手知ったる「鳥の博物館」

 最後は,「手賀沼親水広場」と「鳥の博物館」エリア。親水広場と,その中にある「水の館」は県の施設。鳥の博物館は市営。日本で唯一の鳥専門の博物館は,市営と言う点も面白い。このすぐ裏に,山階鳥類研究所がある。
 鳥の博物館で,学芸員のTさんにインタビュー。実はTさんは友達なので,気楽なもの。答えやすい質問を振って,少々サービス? 館長さんに博物館の趣旨などを語ってもらうより,リラックスした雰囲気で,博物館の姿が伝えられれば,と思う。ここで面白いのは,体験学習室。さわれる剥製が用意してあったり,教材もいろいろ。子ども達がたくさん遊んでいたので,いい感じの撮影になった。

 このエリアから撮影する手賀沼は,とても綺麗に見える。手賀沼沿いにはいい風景が残っている。なんだかんだ言っても,やっぱり手賀沼,なのである。

 親水広場で,秋の気配を探すべく,バッタかトンボを……と思って,ウロウロする。バッタの幼虫ぐらいなら何とかなるが,あまり一般向けでない。普段なら,赤トンボが……我孫子はこの時期,ノシメトンボが乱舞しているはずなのだが,……風が強くてトンボが飛んでくれない……(汗)。やっとこ,石にしがみつくシオカラトンボとノシメトンボを見つけて,辛うじて撮影。

 手賀沼の水辺で,ラストコメントを撮り,酷暑と強風に悩まされた撮影が,なんとか終了した。


・その後……

 例によって,撮影後は観察したものの情報再確認,ミスのチェックなど,あれこれメールで。
 なんか,たくさん撮った割には,ちょっと掘り下げが足りないかな,と言う感じ。ディレクターのWさんも,似たような印象を持って,編集に苦労されたようだ。
 オンエアを見ると,とにかく風景が綺麗で,救われる部分が大きかった。
 でも,結構ふつうの紀行番組のような,「通り一遍」の紹介っぽい雰囲気も強い。文学散歩に,もう少し自然史的な時代考証のような,「自然観察する散歩師」ならではの視点を加えていったほうが良かったと思う。自然観察ネタ的にも,ちょっとひねりが少なかったかな。

 結果として,見やすいけどインパクトがちょっと不足,と言う番組になっていた(それでも視聴率はけっこう取れたらしい)。

 暑くて頭ボーっとしていて,あまり頭が回転していないようなコメントもあり,なんか,けっこう恥ずかしい。

 次回は,もう少し自分らしい切り口で,目から鱗が取れるような,いや,鱗をふっ飛ばすくらいのネタを考えよう。



参考ページ「自然観察で我孫子を歩く」……こちらこちら

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 4.住宅地に武蔵野の面影を求めて……久我山・烏山編

・自然観察ネタは「旬」が命

 今回,ロケのお話があったのは,11月下旬。……となると,撮影は12月に入ってから,オンエアは早くても12月中だ。巷ではイチョウの落ち葉がニュースの画面に出るような時期。オンエア時期から考えて,初冬の匂いを漂わせるネタが良い時期である。自然を相手にしていると,どうしても,撮影とオンエアの間のタイムラグを考慮してネタを選ばなければならない。
 今回の担当ディレクターはOさん。いつも担当してくださるWさんが,別のドラマ制作で多忙なため(この業界は年末年始番組のために,11月から超多忙となる,とのこと),今回,初めてOさんと組んで撮影となる。
 最初に提案があったロケ地は四ツ谷,新宿エリア。ん〜,外苑のイチョウ並木は,つい最近,オンエアがあったし,12月のロケでは既に葉っぱは落ちているし……などと考えつつ,新宿に行く用事があったので,少しロケハンしてみる。……観察会を開催するときもそうだが,ある程度現地の環境と周辺情報を頭に叩き込み,モチベーションを上げておかないと,なかなか面白い自然解説は出来ない。……そうこうしているうちに,皇室で御不幸があり,東宮御所周辺が騒然となって,街歩きの撮影には,ちょっと難しい状況に……。
 そこで,前から暖めていた,玉川上水ネタを提案。
 Wさんとの間で話していた案では,久我山から井の頭を歩き,江戸の2大上水道である神田上水(=神田川)と玉川上水を見比べながら,エピソードをつないでゆくと言うストーリー。自然の河川である神田川と人工の水路である玉川上水の自然環境の違いを読み解きながら,秋から冬の武蔵野の自然を楽しむと言う趣向。井の頭で,紹介したいエピソードがあったのだが,撮影時期が間に合わず,こっち方面はキャンセル。ま,季節が良くなってから,また考えることにしよう。代案として,芦花公園,烏山エリアを提案。「冬」,「武蔵野」と来たら,冬枯れの雑木林をモチーフにしたい。武蔵野が,一番武蔵野らしく見える風景だと思う。これに,冬の透明な空気の晴天と,梢越しの夕焼けがあれば,最高なんだけど……。
 ……とまぁ,いろいろと紆余曲折があって,調整した結果,ディレクターさんが決めたコースは,久我山から玉川上水を越え,烏山寺町を抜けて千歳烏山駅へ抜けるコース。寺町は最近,少し有名になってきた場所だが,それ以外は,あまり「お散歩」のモデルコースで紹介される機会の多くないルート。このぐらい「ひねり」を効かせたほうが面白いだろう。


・クリスマスムードの商店街を抜けて…

 久我山は渋谷から急行で10分少々。都心から近いが,昭和30〜40年代の雰囲気を残した商店街がある,落ち着いた街。駅前の神田川の上から撮影開始。川の上にはクリスマスの電飾。橋の上にはペットボトル再利用のクリスマスツリー。結構手作り感があって面白いけど,これがクリスマス以後のオンエアだったら,えらく面倒なことになるだろうな…。ちなみに,撮影スタッフは,みんなボクの担当は初めて。いつものペースで行けるだろうか……。
 商店街に,謎の建物。敷地いっぱいにモルタル外壁の建物が建っているのだが,建物はツタに覆われ,建物と道の間のわずかな隙間には,ハゼノキ,イチョウ,ミカン,カキ,ムクノキなど,さながら紅葉の見本園のよう。オンエアはツタのみ。


・「さとやま」の気持ち

 商店街のはずれにある「さとやま」を訪問&インタビュー。ここは,国産天然素材でリアルな日本の野生動物のぬいぐるみを作る「やまね工房」の直販ショップ。すぐ近くには玉川上水があり,武蔵野の雑木林の片鱗が残ると言うロケーション。「里山」と言う,日本に昔からあった「人と自然との接点」に,新たな価値を与えてくれるお店だ。ここの「こだわり」と面白さは,上手く紹介出来ただろうか?オンエアは1分ぐらいだったしなぁ……(やまね工房を主宰する落合さんは,博物館にも展示用ぬいぐるみ作品を納入すると言う,すごい腕前の人)。


・冬枯れの玉川上水を歩く

 久我山駅から坂を上りきると玉川上水。坂を登りつめると水が流れていると言う,不思議な感覚も紹介したが,オンエアされていない。このエリアの玉川上水は,既に1965年に水道用の水路としての役目を終え,現在は景観保護のためにわずかに水を流している(しかも,水には鯉を放してある…)。水の中をコサギやゴイサギが歩いている。太宰治が入水自殺した頃は,水路いっぱいに轟々と水を流す,あぶない場所だった……。シジュウカラとコゲラの混群に出会う。冬らしい,生き物の風景だ(←但し,ボツネタ)。ゴイサギは,醍醐天皇に従五位の官位を与えられ,鳥の中で唯一,清涼殿に上がることを許された,由緒正しき(?)鳥(このエピソードの出典は「平家物語」)。
 道端には二年生/多年生植物のロゼットや,ハコベ,ヒメオドリコソウなどが,春を待つ姿。ハコベのみオンエア(正確には「コハコベ」)。……あれ?ハコベは2月にもオンエアしたよなぁ……。
 ムクノキの実が辛うじて残っていたので,試食実演(笑)。……干し柿にちょっと似た風味が面白い。これはスタッフの人たちにも半強制的に(笑)試食してもらう。自分で感じた感覚や感動が,「生きた情報」になる(…と思う)。
 条件的にはちょっと苦しかったけど,コナラの根元の枝分かれの理由を紹介。かつて雑木林の木は,20〜30年に1回ぐらい切り倒され,薪や炭焼きの材料に利用され,その切り株からまた,新たな幹が育つ,と言うことを繰り返しながら,人と共に生きてきた。その名残で,木の根元は太く,根元から数本の幹が生えていると言う,独特の樹形となる。武蔵野の人々の暮らしが,雑木林と共にあったことを偲ばせる,確かな証拠。


・寺町の不思議

 烏山寺町は,不思議な町。道の両側にずらーっとお寺が並ぶ。地図を見ると,大体同じくらいの区画。まるで分譲住宅のよう。ここは,関東大震災で焼け出された下町のお寺が「集団疎開」してきた場所。この地で約75年の歴史がある。石碑を見ると,江戸時代のもあるから,移転時に持ってきたのだろう。お寺は他の場所に比べ,頻繁に工事が入ることがないから,昭和初期の植生が残っている可能性が高い。事実,ケヤキやエノキなどの古木をたくさん見つけた。葉を落としたエノキの巨木にヤドリギも発見。これも冬らしい自然観察ネタ。寺町の一番北のほうにある高源院には池があり,コガモが越冬に来る……はずなのに,カルガモしかいなかった……(苦笑)。裏話だが,人が餌付けを頻繁に行う水面では,コガモが他のカモに負けて劣勢となって,姿を消すことが多い。おそらく,参拝者による餌付けが進んでいるのだと思うが,コメントは控えておいた。高源院の池は,烏山川の源流に当たる。このあたりでエノキやケヤキなどが目立ち,クヌギやコナラが少なめなのは,エノキ,ケヤキ,ムクノキなどのニレ科の樹木が,クヌギ,コナラよりも水辺に近い環境を好むからで,このあたりの原風景をきちんと反映した植生なのである。この手の「自然を読み解く」お話は,ほとんどオンエアになっていないので,ちょっと補足しておく。ビデオに撮っている人は,こういう話を知った上で,見返してみると,また興味が膨らむと思う。
 このエリアで,野生のヒラタケを発見。食菌のことは喋りにくい。番組を見て取りに行く人が現われても困るし,番組を参考にして,間違えて毒菌でも食べてしまったら,大変だ。…と言うことで,コメント出来なかった……。市販品から胞子がこぼれたのかと思ったが,その後調べたら,市販のヒラタケは若い菌で,胞子を出さないのだとか。……とすると,かなり確実な「天然モノ」だったようだ。ヒラタケは初冬でも発生する,寒さに強い菌だから,これも初冬の風物詩なのだ(この様子は,さりげなくタイトルバックに使われている)。


・ちょこっと虫ネタ

 寺町のすぐ南側に中央道が通っている。その側道の街路樹でアブラゼミの抜け殻を発見。街路樹周りの土はわずか。よくもまぁ,こんな場所で……。抜け殻があったのは,イチョウの木だが,イチョウでアブラゼミが育つのは珍しい。……と思ったら,すぐ近くに,サンゴジュの植栽。おそらく,こっちの根っこを利用して育ったのだろう。いずれにしても,したたかなこと……。


・白首大根のプレミアム性

 大蔵大根の生産農家にインタビュー。この訪問先は,ディレクターさんのチョイス。
 農学系は,ボクの守備範囲でもあるので,あまり怪しい裏話を引っ張り出さないよう,気を使っていたら,なんか,すごく当たり障りのない,ありきたりな内容になってしまった……(ーー;)。
 元々,関東地方は白首大根の生産地だった。練馬,三浦などと並ぶ,白首系の地場産品が大蔵大根。そのルーツは練馬系で,実は久我山あたりで品種が固まり,世田谷地区で広く生産されるようになったと言う経緯があり,世田谷の「大蔵」の地名を取ったネーミングになっている。今回のお散歩コースは,大蔵大根の来た道でもある。大蔵もそうだが,白首系は根っこの中ほどが太くなりやすく,寸胴に仕上がる青首に比べると,抜きにくい。葉っぱも横に広がりやすく,耕地面積を食う。煮崩れしにくい,固めの肉質のため,煮物用途が中心で,煮物そのものの需要がジリ貧の昨今では,どうしても劣勢になる。青首のほうが,作りやすく,売りやすいのだ。
 しかし,野菜も「ブランド」志向の時代。ブランド力と希少性があれば,多少,余計に手間がかかったとしても,価格的にペイすれば,商売として成り立つ。昔は「普通」だった品物が,プレミアム性を持って復活したのだ。単価の高い作物は,耕地面積の小さい都市近郊農業には有利でもある。
 ……ってな話を喋ったら,あまりにも番組的には夢がないので,オンエアでは違う話題を中心に喋っている(笑)。


・賑やか!えるも〜る烏山

 …せっかくなので,大蔵大根を1本購入して,歩き始める。200円ナリ。青首よりちょこっと高めの価格設定だった。大根をぶら下げて歩く散歩師は,番組初か?(笑)……スタッフに受けてしまったので,大根を持ったまま,その後のシーンを撮影。
 ゴールは千歳烏山。ここの商店街「えるも〜る烏山」は,商店街スタンプの草分け。大規模スーパーに負けない,元気な街だ。
 元気過ぎて,ストリートの放送が賑やかで,ラストコメントを撮る場所探しにてこずる。
 何とか収録し,午後4時少し過ぎにロケ終了。ボクの担当回としては,過去最速だ(いつも遅くてすみません……)。

 なんだかんだ言いつつも,やたらといろいろ紹介し,コメントをつけた。しかし,ちょっと物足りない気も。……でも,観察会では,案内する側がちょっと物足りないくらいで,聞く側は頭の中がオーバーフロー寸前まで行ってしまうことが多いので,提供する情報量としては,そんなもんかな。いずれにしても,正味10分半に圧縮されるわけだし…。


・……で,オンエア

 例によって,オンエアのチェック。
 う〜ん………ひとことで言えば,ちょっと「ありきたり」かな。あんまり武蔵野台地の匂いもしなかったし…。
 例えば,自然解説をする場合,モノを見せて名前を教える。そこまでは誰でも,ちょっと勉強すれば出来る。多少慣れている人なら,自分で図鑑を引けば済む。自然解説者の個性と腕前は,その,紹介したモノに,どんな解説を加えて,どんなストーリーを展開し,どうゆう形で自然を読み解いてゆくか,なのである。アメリカではでは自然解説者のことをインタープリターinterpreterと呼ぶ。「通訳」と同じ意味である。「自然のコトバ」を,いかに分かりやすく面白く読み解くかが,インタープリターの技術だ。それは,辞書と翻訳家や通訳との関係に似ている。どんなに辞書が発達しても翻訳業や通訳と言う商売が成り立つように,図鑑で調べること以上のモノを,自然解説者は語る。いや,そうでなければ,自然解説者の存在意義がないとも言える。
 …そういう観点でオンエアを見ると,多少は生き物のことを知っている人から,「これなら自分にも出来るよ」と突っ込みを入れられそうな状況だ。自然解説者としてのビジョンとか,目から鱗が落ちるような,ツボを押さえた部分とか,なかなか見えてこない。「自然観察する散歩師」ならではの視点を,もう少し押し出すべきかな。放送時間が短いから,どうしても,「生き物の名前を教えること」以上のモノを喋っている部分が削られてしまうことも多いし,難しい……。コンパクトに,インパクトのある解説を出来るよう,もう少し研究しなくては……。

 今回,担当ディレクターがOさんだったが,Wさんとの個性の違いは感じる。大雑把な印象としては,Oさんは「てきぱき」,Wさんは「きめ細やか」。「散歩師」のコメントを取る時も,Oさんは散歩師の個性を引き出そうとし,Wさんは散歩師の個性を見出そうとする。ディレクターの意志がより強く反映されやすいのは,Oさんのほうだろう。「散歩師」の言葉がディレクターの代弁になってしまっては放送内容が面白くないし,「散歩師」が勝手に喋ってしまっても番組として成り立たない。このあたりのバランスとコラボレーションを楽しみつつ,見る人のツボにはまるようなコメントを出せればなぁ,と思う。そんなに容易なことではないのかも知れないが……。

 ……と言うことで,次回はおそらく春先。春の自然観察を堪能できて,しかも,ちょっと意外性のあるロケーションを研究中。都心から遠くない場所で,しかも一般にはあまり知られていない,意外な場所から春の自然を紹介したいと思う。

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 5.東京湾の最奥部に残る豊穣の海……船橋・三番瀬編

・お久し振りで…

 12月オンエア以来,半年の沈黙……ってことも無いけど,お声が掛かればハイハイと出てくるだけなので,私の都合には関係無いから,悪しからず。まぁ,この春は図鑑の執筆・監修をしていたので,結構忙しくしつつも,自然観察的生活は送っていた。
 5月も下旬になろうと言う頃,ディレクターのWさんより「散歩師」のお話。Wさん御自身も,年末年始は他のドラマ等に関わっていて,この番組から遠ざかっていたわけだが,いずれにしても「お久し振り」の顔合わせとなる。

 例によって,「旬」の自然散歩の出来そうな場所をいくつかピックアップ。6月に自然観察的に面白くてロケしやすい場所,となると,春でもなく夏でもなく,かと言って「アジサイ」なんかを紹介しても,ありきたりだし,ひとひねり欲しいところ。一方,Hプロデューサーの提案で,「谷津干潟あたり,どう?」と言うお話。んー……,谷津干潟と組み合わせるべき,自然ネタのエピソードが拾いやすい場所って,谷津バラ園ぐらいかな。谷津干潟に隣接した施設と言ったら,他には競馬場,オートレース場,ららぽーと……。干潟はちょっと魅力がある。この時期,水辺に行くのも良さそうだし。
 そこで,「干潟」のアイデアは生かし,三番瀬または新浜(行徳)を提案。三番瀬は自然保護的に話題の多い場所である割には,ちゃんと現地の自然を紹介した番組は少ない。干潟に降りて歩けるのも,谷津とは違う魅力。新浜は,行徳野鳥観察舎があり,顔が利く。皇太子殿下がプロポーズに使ったと言う新浜鴨場があるのもここ。ま,どっちでも自然ネタには事欠かない場所だし,私のことを知っている人物も少なくない場所だから,後は判断をおまかせにする。
 ……で,あっという間に三番瀬に決定。ここの弱点としては,船橋市街と干潟の間に埋立地があり,そこにはネタが極めて少ないこと(もし,実際にこの散歩コースを歩いてみたいと思ったら,三番瀬と船橋旧市街地の間をバスでショートカットすることをお勧めしたい)。まぁ,埋立地の荒涼としたところを三番瀬と古い町並みでサンドイッチにすれば,ちょっとしたコントラストもついて,面白いかな。

 ロケ予定日は6/1に決定。ちょうどこの日は,大潮。しかも,千葉県野鳥の会と日本野鳥の会東京支部が共催する観察会のある日。この観察会には,三番瀬保護活動の中心的人物を含め,干潟観察のスペシャリストがいる。こっちのギョーカイには顔が利くので,ボクの名前を出せば,取材は楽勝だ。……と言うことで,この観察会に便乗することを提案。きっと,干潟の面白い話も聞き出せるだろう。


・またもや天気の心配

 撮影予定日の前日は,なんと,季節はずれの台風。雨は何とか上がってくれたとしても,風が強いと海辺はきつい。しかも,海が濁っていたら,撮影どころじゃない……過去に天気の心配をしなかったのは,「霞ヶ関・日比谷編」ぐらいだ。うーん……。
 ロケ当日,「ふなばし三番瀬海浜公園」にて現地集合。ちょっと早めに現地入りし,観察会のスタッフたちと軽く打ち合わせ。現地へ向かうバスの中から,ボクの顔と名前を知っている人に会う。観察会の集合場所でも,声が掛かる。う〜,狭い業界だなぁ……。こういう所へ出て行くと,いつの間にか自然解説をやらされていることが多いので,今回は参加者の立場に徹し,かつTV取材と言うことで,了解してもらう。とは言うものの,あちこちの観察会に出ている常連さんは,屈託無く話しかけてくる。……まさか,ボクが今回のこの番組の「主演」になっていることは,知るまい……このことは黙っていたほうが良さそう。
 間もなくカノックスの車も到着。撮影隊も全員,長靴姿に。長靴を履いて機材を抱えたあやしい集団が,観察会の後ろからついてゆく……。


・干潟を延々と,ひたひたと歩き……

 ロケ日はちょうど大潮。海がどんどん沖へ離れてゆく。そこを長靴でひたひたと,沖へ沖へ,海を歩く。
 三番瀬は,「ふなばし三番瀬海浜公園」の前に広がる広大な干潟。広大に見えるが,東京湾の90数%を埋めた残りに他ならない。この公園自体も,埋立地上にある。かつては,本当にだだっ広い干潟が,東京湾に広がっていたのだが,それを知っている年代は,もう50代以上かな……。
 公園の目の前の海には,干潟を柵で囲った「潮干狩り場」があり,大潮とあって,かなりの賑わい。それを横目に,潮干狩り場の脇を抜け,干潟を沖へ沖へと歩く。こちらは人も少なく,別世界。遠くに工業地帯や海沿いの高層マンションが見える以外,視界をさえぎるものは何も無い。360度,浅い海が広がる。干潟の生き物をいろいろと教えてもらいながら,こまごまと撮影。貝もカニも多いが,ニョロニョロ系の生き物も多い。拒絶反応を示されない程度にしておくべきか?……それ以前の問題として,撮影隊にこの系統の生き物が苦手な人がいたら,今日は地獄だ……(苦笑)。
 ちなみにオンエアではニョロニョロ系は,タマシキゴカイのみ。干潟に砂の「モンブラン」が点々と目立つのだが,これがタマシキゴカイの糞。この不思議な光景と,掘り出したタマシキゴカイをちょこっとオンエアしている。あとは無難な(?)生き物でまとめている。ちょっと砂を掘れば,いろいろな稚貝がたくさん出てくる。干潟は海の生き物の「ゆりかご」であることを実感。また,干潟の生き物たちは,水中の有機物をどんどん吸収してくれる。干潟の残った水がとても綺麗になっていることを紹介。ここが東京湾の最奥部であることを忘れさせる,澄んだ水だ。
 この時期,野鳥は少ないのだが,オーストラリアから飛んできたコアジサシが水面にダイビングして魚を取る様子がよく見えた。コアジサシはレッドリスト掲載の絶滅危惧種だが,もっと希少なカラシラサギも見られた。カラシラサギはコアジサシよりオンエア時間が短く,コメントも無かったので,野鳥ファンには,ちょっと物足りなかったかも知れない。他にミヤコドリもいたが,遠すぎた……。
 観察会の中心的人物,田久保さんにインタビュー。田久保さんはもちろん,私のことは知っているので,気楽なもの。三番瀬の自然環境について,この環境を保護することの意味について,熱く語ってもらう。
 ちょうど11時半ぐらいが干潮だったので,午前中一杯,干潟で遊んで,撮影。浜に戻ってくると,潮干狩りの喧騒が……このギャップ,すごいなー。俗世間に戻ってきたと言うか,文明社会に戻ってきたと言うか……。

 
 海から上がってきた撮影隊の足元。干潟では座る場所も機材を置く場所もない。陸に上がってほっと一息。おつかれさまでした。


 向こうには,潮干狩りの喧騒。……しかし,すごい人出だなー。
 お金を払ってアサリを掘るより,たまには,ゆったりと広い干潟で,たくさんの生き物と遊ぶのも,いいと思う。出会える生き物の種類も数も,潮干狩り場よりも格段に多い。潮干狩りとは全く違った楽しみを与えてくれるはず。


……しかし,曇り空だったが,けっこう日焼けしていた……。

 三番瀬の沖のほうには,海苔の養殖網が見えていた。「今日のおみやげ」は,地場産の海苔で決まり!


・見どころのない場所で見たもの

 さて,三番瀬を後にした撮影隊は,昔の海岸線まで戻らなくてはならない。「ふなばし三番瀬海浜公園」を出ると,殺風景な埋立地の風景ばかり。この御時世,遊休地や廃墟も多い。遠くには閉鎖したザウスの残骸が見える。解体するにも大変な費用がかかるらしく,営業していた頃のままの形で残っている。ザウスのお隣りでは「ららぽーと」が人を集めている。ここも,かつての「船橋ヘルスセンター」を模様替えした施設。そう言えば,ディズニーリゾートも埋立地の上にある。埋立地は巨大なカネが動く場所でもある。
 そんな埋立地で見たものは……何故か牧草。どこから表土を持ってきただろう?想像力を掻き立てられる。道端や中央分離帯の植物を丹念にチェックすると,そのほとんどが外来植物。ついでに,埋め立てた年代が違うと,植生も微妙に違ってくる。国内はもちろん,海外との流通も盛んな場所だから,何が生えてくるか分からない。さすがに樹木は,人が植えたものばかりだが,道端や空き地に生えてきた草にとっては,まるで「無法地帯」のようだ。


・貿易港の中の漁港

 千葉,市原,船橋エリアは「千葉港」と呼ばれ,日本でもトップクラスの荷扱いを誇る貿易港だ。そんな港湾施設の中に,小さな漁港がある。海老川河口に位置する,船橋漁港。ここがかつての海岸線。港には,小型漁船のほか,釣船もけっこう係留されている。漁港と東京湾は水路で繋がっているが,数km先までは埋立地。海老川河口の水門に立つと,海岸線の変遷が良く見える。港の周囲には何故か大麦が自生している。地図を見たら,近くに飼料会社とか製粉会社がある。何か関連がありそうな雰囲気。
 船橋で水揚げされるのは,東京湾の魚や貝。ロケ日は台風の翌日で日曜日だったので,港はひっそりとしていた。船でちょっと沖へ出て海底の貝を掘るための,柄の長い鋤簾(じょれん)が並べてあったり,水産加工場でアサリやアオヤギを選別している音が聞こえてきたり,漁港の雰囲気たっぷり。

 船橋の網元や水産関係の名士たちには,「内海」さんという姓が多い。この姓は徳川家康にもらったものだそうだ。その経緯はこちら

 港の前にあるお店,「たいこばし」(良い情報が他局のHPしか無かった……申し訳ない…)。お店と言うよりは,普通の家の客間に通される感じ。その客間で,地物の魚介類を使った食事が出来る。「おまかせ」で頼むと,刺身などの,鮮度を生かした料理が中心で,純和風の調理だけでなく,若い人に喜んでもらえるように一工夫した品物も取り混ぜて出すのだそうだ。三番瀬の豊かな海を見てきた直後だけに,感慨もひとしお。鮮度も味も極上。三番瀬に行く前にこのお店に寄っていたら,こんなに感動しなかっただろうなぁ……。
 人を撮影する前に料理を撮影するのだが,今回のスタッフには,「料理バンザイ!」を担当した人が多くて,やたらと気合いを入れて料理を撮影。さすがに綺麗に撮れている……人間を撮影するときより気合いが入っていた……(笑)。ちなみに,撮影のために料理の内容を良くしたり,盛り付けを綺麗にしたり,と言うような「やらせ」は無いので,安心してTVで紹介したメニューを注文してみて欲しい(日によって素材が変わるので,全く同じものは出ないと思うけど)。

・海の匂いのする町,しない町

 船橋漁港から北側は,もともと陸地だった場所。やっと,本来の「陸」に上がってきた。港の周辺は,道も狭く,家並みもゴチャゴチャしていて,漁師町の匂いが漂っている。実はここいら辺から船橋駅までは,徒歩10〜15分。駅前の,ちょっとした都市にありがちな,ビル街や商店街の雰囲気と比べると,まるで別世界の町並み。意外と緑も多い。埋立地と違って,大木も結構ある。船橋,市川地域は,「名木」と呼ばれるような大きな木があちこちに点在し,ちょっとした観光ポイントにもなっている。東京に比べ,太平洋戦争での被災が少なかった,と言う理由もあるようだ。
 三番瀬,船橋漁港と歩いて,ふと気がついたことが一つ。意外なほど,海から「潮の香り」がしないのだ。もちろん,ヘドロ臭などもしない。おそらく,下水道の普及によって有機物の流入が抑えられ,干潟の浄化作用もかなり効いているのではないかと思われる。干潟の無い,川崎,横浜エリアよりも,海にイヤな臭いが無いのだ。干潟の埋め立ては,海の臭いにまで影響するらしい。


・内陸で「海」を見た

 旧市街をさらに内陸へと歩く。
 京成線の線路を越えると,船橋大神宮。参道の両脇にはイチョウなどの大木があり,この樹齢から見て,埋立地ではないことを物語る。周囲の町並みも,埋立地とは様子の違う,歴史を感じる。戦災を免れたような感じの町並みだ。大神宮の本殿の近くには,クロマツの木が参道とは直角に並んでいる。……クロマツは海岸線を代表する樹種。しかもこの並び方は,かつての海岸線と平行になっている。さらに,境内にはちょっと高台になっている場所ガあり,そこには灯明台がある。
 かつてはここから海に灯りをともし,海の安全を確保していたのだろう。この神社は名実ともに「海の守り神」なのであった。しかし現在,ここから海は見えない。灯明台よりも明るい光を放つイルミネーションが溢れる街。海の匂いは,ひっそりと境内に閉じ込められている……。

 結局,船橋市の中心部をかすめるようにコースを取ったわけだが,いわゆるタウン情報的なもので紹介されるスポットをあえて外し,船橋の違った横顔を見ることが出来たと思う。この番組的な「ひねり」が良く効いているとも言える……。

 夕方,資料撮影のために立ち寄った「船橋Face」の三番瀬情報室。ここでまた,顔バレ(汗)。……今日はよく顔がバレる日だなぁ……自然観察,野鳥観察関係の業界が狭いのも事実なんだけど……。ま,知ってる人が出る番組なら,ちゃんと見てくれる可能性が高いので,視聴率には貢献するか??(笑)


・……で,オンエア後……

 例によって,ビデオにとってオンエア確認。
 田久保さんのほうが喋りは上手いよなぁ……(ぼそ)。やっぱり,喋り方が学校の先生っぽいし……。
 いかにも梅雨空の暗い空。ちょうど梅雨入り後のオンエアだったから,まぁ,いいんだけど,彩りが少ない風景になってしまって,ちょっと勿体無い。

 ボクのところに来たレスポンスで多かったのは,「たいこばし」について。それから,干潟の自然についての感想。「カラシラサギをもっとアピールして欲しかった」と言うのは野鳥ファンのコメント。ん〜,個人的には,干潟の生物叢について,もう少し掘り下げたかったかな。一般的な人から見れば,「見たことの無い生き物」がどんどん出てくるのはインパクトがあって面白いかな,などと……。

 ところで,オンエア後,ボクのことを捕まえて,「東京マリン,見ましたよ!」と言う人が……一瞬,かつて西新井にあったプールのことを思い出して,何でそんなことを言い出すの?などと思ってしまった……よっぽど「海」の印象が強かったのだろうか……。
 ……しかし,そんなに覚えにくい番組名かなぁ……。


 今回の教訓。

 「旬」のネタを選ぶべし。
 あまり得意でない分野の自然解説は,他力本願が吉(苦笑)。
 脱・「ありきたり」なものをネタに選ぶこと。但し,マニアックにならないよう,はほどほどに。
 「他人が考えないような視点からの観察」を常に考えるべし。
 番組名はちゃんと覚えてもらおう(笑)。

 ……さて,次回は,どんな季節に,どんな自然ネタを織り込むか……それ以前の問題として,次回予定は未定なんだけど……

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……以下,出演依頼があれば増える予定。


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