小楢山( 小楢山 :1,712.5m ) 2007.2.04 登山


  幕岩から小楢山、黒金山、乾徳山を望む ( 2007.2.04 )
【小楢山登山記録】

【小楢山登山データ】

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小楢山登山記録

乾徳山の南西に位置する小楢山に登ってきた。
山には雪もかなり積もっているであろうこの時期、それほど高い山には登らせてもらえず、毎年 2,000m以下の山を楽しむことにしているのだが、 逆にこういう時期は普段 人が多くてどうしても尻込みしてしまう山に登るチャンスでもある。
この小楢山もその 1つで、焼山峠から高低差わずか 190mという手軽さと、山頂直下に広がる錫杖ヶ原のレンゲツツジ、アヤメなどに人気があって混雑しているようで、 普段はとても登ろうという気にはなれない山である。しかし、この積雪期であれば登る人の数は絞られ、またちょっとした雪山気分が味わえるはずで、 この 2月4日、この日快晴との予報を聞いて急遽出掛けることにしたのであった。

自宅を 4時26分に出発。カーナビに、今は休業中のオーチャードヴィレッジ・フフの電話番号を入力して目的地にセットする。
いつも通り 16号線を走って八王子ICからは中央高速を飛ばし、勝沼ICで降りる。
乾徳山や西沢渓谷へと向かう時に通る 140号線を北上し、 室伏トンネル手前の交差点を左折、後はナビ任せだが、途中から周囲に目を凝らすと オーチャードヴィレッジ・フフへの案内板が所々に見つかるので、 やや複雑な道も迷うことはない。
小高い丘の上に立つ オーチャードヴィレッジ・フフの広い敷地の中を進み、道が舗装道路から林道に変わる手前にあった駐車場に車を駐める。

流石に 2月初め、外は寒い。身支度をして駐車場を出発したのが 6時56分。
振り返れば、富士山 の姿がまだ薄暗い空に白く浮かんでいる。また、右手、 東方面には大菩薩嶺 のシルエットの向こうが明るく輝きだしている。
林道歩きは小生の足で 46分程。クネクネとした道が赤松やカラ松の林の中に続く。展望は利かず、面白みのない道だが、道路脇には石像や石碑などがあって歴史を感じさせる。

林道にはもう少し雪があるかと思ったが、全くと言って良いほど雪はなく、 登り始めてから 40分ほどで着いた父恋し路への分岐からようやくチラホラ見え始めた程度である。父恋し路への分岐を左に見て、さらに林道を登っていくとすぐに二股の分岐となり、 左はそのまま林道が上まで続き、右はすぐに母恋し路の登山口であった (7時42分)

この母恋し路の入口の標識には立派な地図が書かれており、地図の端には 「母恋し路・父恋し路の云われ」 も書いてある。
林道歩きに丁度嫌気が差してきたところだったので、なかなか良いタイミングで山に取り付くことになったのだが、身体的にも林道を歩くことで身体がほぐれ、 登山の助走として丁度良いといったところである。

さて、ここから山道と言っても、傾斜は緩やかで全くと言って良いほど楽な道程 (ミチノリ) であった。 前述の 「母恋し路・父恋し路の云われ」 に、「母恋し路はやさしい峠道」 と書かれていたが、 まさに 易しすぎて物足りないといったところで、もう少しキツイ登りを求めるのであれば、父恋し路を登る方が良いと思われる (私にとっては結果論)
暖かい日差しが差す中、落ち葉を踏みしめながら山道を登る。この道は登山道というよりはまさに古道といった感じで、それはそれで雰囲気は良く結構楽しめる。

期待した雪の方は所々に見られる程度で、それも以前の雪が融けてしまって岩や地面が露出しているといった感じである。 オッ、雪が現れたなと思っていると、すぐに雪の全くない道になる といった感じで、いくら日当たりが良い登山道とは言え、今年の暖冬は異常である。
それでも、さすがに小楢峠に近づくにつれて雪は地面を覆うようになり、峠では 15センチほどの積雪が見られたのであった。

峠には牧丘町の立てた立派な標識があり、右が小楢山山頂・焼山峠、左が幕岩・大沢山、 そして妙見山となっている。
当然右に進み、前日以前につけられた雪の上のトレースを追う。多くの人が通るため、雪が踏み固められ、踏み跡部分が溝のようになっているので全く迷うことはないが、 所々強い風に雪が飛ばされてくるのであろう、その溝がサラサラとした雪で埋もれているところがある。こういうところを歩くのは結構楽しい。
しかし、風が強く寒いことこの上ない。樹林の中だけにさほど日も差してきておらず、強い風に耳がちぎれそうである。
峠から樹林の中を歩くこと 8分。樹林帯の先が開け、そこに鉄製の四阿 (アズマヤ) が見えてきた。小楢山頂上である (8時45分)
先日の毛無山竜ヶ岳に続いてこの日も頂上一番乗り。 雪の山だからこそ確認できる一番乗りの証。これも冬山低山の楽しみの一つである。

頂上からの展望は素晴らしい。南側は完全に開けていて、富士山まで何も遮るものはなく、 御坂黒岳釈迦ヶ岳といった御坂山塊の上に富士山が美しい姿を見せている。 富士山 の右手には毛無山が大きい。
西の方に目をやれば、やや木々に邪魔されるものの、真っ白となった農鳥岳と 間ノ岳 がまずは目に飛び込んでくる。 農鳥岳の左にポッコリとしたドーム状の突起が見えるが、塩見岳 かもしれない。 間ノ岳の右手には当然 北岳 が見えるのだが、やや木の枝が邪魔をしている。 少々場所を移動すれば、今度は樹林の間に 甲斐駒ヶ岳 の特徴的な姿が見え、その左にアサヨ峰、 そして真っ白な 仙丈ヶ岳 が見える。
振り返って北に目をやれば、雪原となった錫杖ヶ原があり、シラカバ林の向こうに五丈岩を頂上に抱く 金峰山 の大きな姿が見え、 その左には 八ヶ岳 も見える。
とにかく気持ちの良いことこの上ないが、少々風が冷たいのが玉に瑕。南側斜面を少し下って風をよけ、富士山を眺めながら腹拵えをした。 頂上にいた時間はおよそ 25分。次は幕岩を目指すべく、小楢峠まで往路を引き返す (9時9分発)

小楢峠から先は雪の量も些か多くなる。さらに踏み跡も風に飛ばされてきた雪で覆われてしまってルートを探すのに苦労したり、 ツボ足歩行を強いられたりと、短い距離ではあったが なかなか面白い雪上歩行が楽しめた。
しかし、何と言っても素晴らしいのは幕岩であろう。登山道の途中、左手に大岩が現れ、そこに登るには岩の間に付けられた鎖を使う必要がある。無雪期であれば何と言うこともない鎖場であるが、 足場となる岩のデコボコに雪が積もり、それが凍っているのだから少々始末に悪い。慎重に岩場を登っていくと、目の前にチョックストーンが現れ、 そこを潜るのを避けて右から岩の上に登り着けば、そこは幕岩の一部で、北へと進むと素晴らしい展望が待っていた (9時37分)

まさに 360度遮るもの無し。先ほど 小楢山頂上では木々に邪魔されて全体を見ることができなかった 南アルプスの山々をほとんど見ることができる。
西の鋸岳から始まって、南に 甲斐駒ヶ岳、アサヨ峰、仙丈ヶ岳鳳凰三山北岳間ノ岳、農鳥岳、塩見岳悪沢岳赤石岳聖岳と続く山々の姿には声を上げずにいられない。先週の竜ヶ岳では見られなかった無念を一気に晴らした といったところである。
目を鋸岳に戻せば、その右手下には茅ヶ岳、金ヶ岳とかつて登った山が続き、その更に右手には真っ白な八ヶ岳連峰が見えるが、 その金ヶ岳と八ヶ岳の間にボンヤリとではあるものの真っ白な山塊が見える。恐らく北アルプスの山々と思われるが、 乗鞍岳 であろうか。
八ヶ岳の右手には金峰山から国師ヶ岳甲武信ヶ岳へと続く奥秩父の山々、そして先ほどまで頂上にいた小楢山を挟んで黒金山、乾徳山へと続く。 後は少々逆光で見えにくいが、大菩薩連嶺、御坂山塊を経て富士山へとつながり、 富士山の右手にはこれから登る大沢の頭が近く、頂上の標識まで見える。
イヤー、兎に角素晴らしい。このような大展望を独り占めできる幸せは、まさに言葉には表しがたい。

十分にパノラマ展望を満喫した後は、大沢の頭へと向かう (9時45分)
凍った岩肌に、登る時よりやや苦労しながら幕岩を下り、再び樹林の中を進んで少々登れば大沢の頭であった (9時50分)。 ここからの眺めも素晴らしいが、周囲に木々がある分、幕岩には負けるところである。狭い頂上で景色を堪能すること 12分。後は父恋し路を下るだけである (10時2分発)

この父恋し路は特徴的な岩、石仏などがあって変化に富んで面白い。
頂上から一気に下っていくと、すぐに羅漢岩という大きな岩と出会う。続いて岩のトンネルが左に現れるが、これは薬石門であろうか。ここでこの門を潜らずさらに先に進むと岩を挟んで V字ターンすることとなり、 結局 門を潜るのが正解となる。周辺には右に下る踏み跡も見られ、「迷い道」 の標識もあるので要注意である。
屏風岩を過ぎ、スピードを上げて下っていけば、やがて大きな岩の下に 2体の優しい顔をしたお地蔵様が現れ、その先少し下ったところが白雲の滝であった。 どうということのない小さな滝であるが、滝の最下点から先、水が消え伏流水になっているようでなかなか興味深い。

白雲の滝からすぐに首のない姫百合地蔵となり、次に寛政四年の文字が見える石仏が現れたが、 一つ気になるのがその横にある 「右 達磨石」 の標識である。まだ時間は 10時5分。時間に余裕があるので、踏み跡を頼りにその達磨石なるものを探すべく左斜面に取り付いた。 雪は全くないので、今度は地面の踏み跡探しだが、途中でよく分からなくなってしまった。一応丸っこい大石とその後ろに、その石より大きな石が組み合わさっているのを木々の間に見つけたが、 これが達磨石なのだろうか。よく分からないまま登山道に引き返す。

やがて林道に飛び出すこととなるが、登山道は林道を横切って更に斜面を下ることとなる。 左手に苔むした石仏を見れば、すぐに雪の階段を下りて、今朝通り過ぎた父恋し路と林道の分岐点であった。後は今朝登ってきた林道を下れば良いだけで、 小楢山開山碑を過ぎ、11時14分、オーチャードヴィレッジ・フフの駐車場に戻ったのであった。
振り返れば、先ほどまで登っていた大沢の頭と幕岩、そして双耳峰のようにその右に小楢山が見える。
高さ 1,713m、オーチャードヴィレッジ・フフからの高低差 900m弱の低い山であったが、短いながらも雪山を味わい、また素晴らしい展望を得て、 なかなか楽しませてくれる山であった。登山中 誰とも会わなかったことも良かった。この時期の登山は大正解と言えるであろう。


小楢山登山データ

上記登山のデータ 登山日:2007.2.04 天候:快晴 単独行 日帰り
登山路:オーチャードヴィレッジ・フフ駐車場−母恋し路登山口−小楢峠−小楢山−小楢峠−幕岩−大沢の頭−薬石門−白雲の滝−林道−父恋し路分岐−オーチャードヴィレッジ・フフ駐車場
交通往路:瀬谷−国道16号線−八王子IC−(中央高速道路)−勝沼IC−塩山−オーチャードヴィレッジ・フフ駐車場 (車にて)
交通復路:オーチャードヴィレッジ・フフ駐車場−塩山−国道20号線−高尾−橋本−国道16号線−瀬谷 (車にて)


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