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21.県庁おもてなし課 22.もう一つのシアター! 23.ヒア・カムズ・ザ・サン 24.三匹のおっさん ふたたび 25.空飛ぶ広報室 26.旅猫リポート 27.コロボックル絵物語 28.明日の子供たち 29.キャロリング 30.だれもが知ってる小さな国 |
【作家歴】、空の中、海の底、図書館戦争、図書館内乱、レインツリーの国、クジラの彼、図書館危機、塩の街、図書館革命、阪急電車 |
別冊図書館戦争1、ラブコメ今昔、別冊図書館戦争2、三匹のおっさん、植物図鑑、フリーター家を買う。、シアター!、キケン、ストーリー・セラー、シアター!2 |
倒れるときは前のめり、アンマーとぼくら、イマジン?、みとりねこ、物語の種 |
●「県庁おもてなし課」● ★★ |
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2013年04月
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観光立県を目指して高知県庁観光部内に設置されたのが、“おもてなし課”。 村起し小説なら、荻原浩「オロロ畑でつまかえて」、桂望実「WE LOVE ジジイ」等々結構あると思いますし、お役所仕事を揶揄した小説なら桂望実「県庁の星」がありますが、本作品は主役が県庁であり、高知県全部をレジャーランド化するという発想等々、スケールのデカいところが魅力。お役所仕事ぶりにしても、まさに気持ちの良い突っ込みの上に成り立ったパロディ、という面白さがあります。 有川作品らしく、ストーリィはテンポ良く、ツボは外さず、そして各登場人物のキャラクターが個性的かつ魅力溢れています。 なお、“おもてなし課”は高知県庁に実在するそうです。そこから観光特使を依頼された有川さん、お役所仕事に呆れ果て、小説を書いて応援する方が早いとして出来上がったのが本作品とのことです。 |
※映画化 → 「県庁おもてなし課」
●「有川浩脚本集 もうひとつのシアター」● ★★ |
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弱小劇団の実態を描く「シアター!」番外編、脚本版。 劇団シアターフラッグ、地方都市の高校から公演依頼を受け、初経験ということもあって千歳を含む皆が勇んでその高校に乗り込みます。 春川司・巧の兄弟、千歳、牧子、スズ等、常連メンバーのキャラクターはいつも通り魅力的。舞台が前提の脚本だけに、小説以上にテンポよく、実際の舞台を想像しながら楽しめます。 ※巻末の付録として、大和田伸也氏と有川さん、春川司を演じた“演劇集団キャラメルボックス”の阿部丈二氏と有川さんの対談を収録。これらもまた、楽しい。 |
●「ヒア・カムズ・ザ・サン Here Comes the Sun!」● ★★ |
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2013年10月 2015年11月
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演劇集団キャメルボックスが演じる予定の劇、その7行だけのあらすじから有川さんが触発され、自ら企画書を持ち込んで成ったという、演劇と小説のクロスオーバー作品。 たった7行のあらすじから劇、小説と、どう異なる物語が生まれたのか興味尽きないところですが、残念ながら現時点で知っているのは本書ストーリィのみ。 「ヒア・カムズ・ザ・サンParallel」は、上演された舞台から有川さんが着想を得て執筆された作品とのこと。 2篇とも中篇という作品ですが、それはそれで有川さんらしい物語、ファンとしては十分に楽しめます。 ヒア・カムズ・ザ・サン/ヒア・カムズ・ザ・サンParallel |
●「三匹のおっさん ふたたび」● ★☆ |
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2015年01月 2015年02月 2015年10月
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還暦を過ぎた幼馴染の元悪ガキ3人による、地域限定版正義の味方“三匹のおっさん”の再登場。 第一話:キヨの嫁で祐希の母親である貴子が主人公。じーばー世代と孫の世代に挟まれた専業主婦で、とにかく頼りない。一念発起した貴子の苦労と、ちょっぴり成長が描かれます。 面白さは前作よりパワーダウンした印象ですが、理屈なしに楽しめ、かつ身近な困った問題を考えてみたという点に拍手。 第一話/第二話/第三話/第四話/第五話/第六話/好きだよと言えずに初恋は、/あとがき |
25. | |
●「空飛ぶ広報室」● ★★ |
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2016年04月
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有川さんの主要題材である自衛隊もの、防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室を舞台にした長篇小説。 自衛隊という組織、自衛官という人々の姿を、自衛隊についてよく知らない人たちにも判り易く伝える、というのが本作品の主眼だろうと思います。その意味で杉山隆男“自衛隊”シリーズのリアルさを求めるのはちと無理というもの。 ※なお、最終章「あの日の松島」は、東日本大震災発生時の自衛隊の活動について語った追加の章。 1.勇猛果敢・支離滅裂/2.はじめてのきかくしょ/3.夏の日のフェスタ/4.要の人々/5.神風、のち、逆風/6.空飛ぶ広報室/あの日の松島 |
26. | |
●「旅猫リポート」● ★★☆ |
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2015年02月 2015年03月 2017年02月
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愛猫ナナとその飼い主であるサトルが辿るロードノベル。 ナナは元々野良猫。交通事故に遭って大怪我をしたときにサトルに助けられ、それ以降飼い猫となって早や5年。 本ストーリィの中心的な語り手は牡猫のナナ。サトルの飼い猫となった今も、野良猫の誇りをずっと高く持ち続けている猫です。 Pre.僕たちが旅に出る前のこと/1.コースケ/2.ヨシミネ/3.スギとチカコ/3.5.最後の旅/4.ノリコ/Last-Report |
27. | |
「コロボックル絵物語」 ★☆ |
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2014/05/22 |
佐藤さとるさんによる「コロボックル物語」全6巻。 |
28. | |
「明日の子供たち」 ★★☆ |
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2018年04月
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90人余りの児童を収容する大規模児童養護施設「あしたの家」を舞台に、そこで働く職員たち、そこに暮す児童たち、各々の立場から児童養護施設の実情、課題を描いた長編小説。有川浩さん久々の快作です。
ストーリィは、児童養護施設を扱ったドキュメント番組を見て感動し、ソフトウェア会社の営業マンから児童養護施設職員に転職した三田村慎平が「あしたの家」に着任するところから始まります。 90人もいれば児童側の事情、思いも千差万別。そして職員の考え方にしても個人差があります。そんな中で一人一人の児童に向かい合うという苦労は並大抵のものではないだろうことが、本書を通じてつくづく感じられます。まして子供たちは、職員一人一人を試し、どんな人間か見極めようと観察しているというのですから。 ユニークな登場人物を配し、シビアな実情と重い課題を上手く織り込み、面白く読めるストーリィに仕上げているところは、流石有川浩さんならではです。 |
29. | |
「キャロリング」 ★★ |
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2017年12月
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大和俊介32歳が勤める僅か社員5人の子供服メーカー「エンジェル・メーカー」は、業績不振のため12月25日をもって倒産することが決まります。副業として行っていた学童保育も同時に閉じることになり、その倒産日まではあと僅か。 カウントダウンが始まった残り少ない日々の中、最後まで学童保育として預かることになったのが小学生の田所航平。 その航平、海外栄転が決まった母親と新年早々には出国予定で、それまでに別居中の父親と母親の間を何とか元通りにしたいと焦りを募らせます。 そんな小学生の思いに引きずられて荷担することになったのが、エンジェル・メーカでの同僚にして元恋人という折原柊子と俊介の2人。さらに借金取立業からスピンアウトして犯罪に手を染めた暴力団員たちが、田所親子と元恋人同士の2人に絡んで、クリスマス前の騒動記を繰り広げます。 有川さんらしく、登場人物一人一人のキャラクターが魅力いっぱい。そしてストーリィにもすんなり入り込めてしまうことから、面白く読めるのはいつも通り。 題名から想像がつくように、一つのクリスマスストーリィだと思いますが、最後はかなり苦味も入り混じったハッピーエンド。ですから大人向けのビターな物語と言えます。 自分の力ではどうしようもない不幸を感じた時、諭し支えてくれる人がいてくれたら、辿る道は大きく変わるかもしれない。それは何も子供の頃だけでなく、きっと今の状況についても言えることでしょう。 登場人物一人一人につき、幸せだったのか、果たして幸せはもたらされたのか、これからはどうなのか。考えている内に何時の間にか温かい気持ちに満たされていることに気づきます。 有川浩版クリスマス・ストーリィの秀作です。 1.オラトリオ/2.もみの木/3.コヴェントリーキャロル/4.もろびとこぞりて/5.ホワイト・クリスマス |
「だれもが知ってる小さな国」 ★★☆ | |
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佐藤さとるさんから児童文学の名作“コロボックル物語”のタスキを受け取った有川さんによる「コロボックル物語」第1弾。 基礎知識としておさらいしておくと、コロポックルとはアイヌの伝承に登場する小人で、「蕗の葉の下の人」という意味だそうです。 「コロボックル絵物語」で有川さんのお披露目は終わっていますので、本書が本格的な有川版のスタートという次第。 なんとはなしに読み始めてしまいましたが、流石に有川さんは上手い! 読み進むうちにどんどん物語の中に引き込まれ、まさに一気読みです。 主人公は、「はち屋(養蜂家)」の子供である比古(ヒコ)、小学3年生。両親と共に日本中を蜜蜂と共に転校しながら回る日々。 ある日突然、ヒコは「トマレ!」という声を聞く。その声のおかげでヒコはマムシに噛まれずに済みます。 そして毎年のように北海道の小学校に転校した日、同じはち屋の女の子=比売(ヒメ)と出会います。 やがてヒコの目の前に、中指くらいの大きさの小人=ハリーが現れ・・・・。 全国を旅して回る養蜂一家、そんな家族をもつ少年と少女の出会いという設定が楽しい。 加えて、思うに任せないヒロとコロボックルとの交流にはスリリングな魅力があります。 また、ミノルさんという無邪気な人物との出会いには心温まるものがありますし、その一方でトシオさんという少々怪しげな人物との対決にはサスペンス要素もあり。 そして、一時の物語に終わらず、今後さらに広がっていくだろう物語になっている処が、何より嬉しい。 楽しい要素がふんだんに盛り込まれている辺りは、さすが有川さんらしい面白さです。是非、お薦め! ※こうなると、佐藤さとるさんの「コロボックル物語」も是非読んでおかなくては、と思う次第です。 1.はち渡り/2.シナノキの夏/3.新しい友だち/4.騒がしい夏/5.ありがとう |
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