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31.倒れるときは前のめり 32.アンマーとぼくら 33.イマジン? 34.みとりねこ 35.物語の種 |
【作家歴】、空の中、海の底、図書館戦争、図書館内乱、レインツリーの国、クジラの彼、図書館危機、塩の街、図書館革命、阪急電車 |
別冊図書館戦争1、ラブコメ今昔、別冊図書館戦争2、三匹のおっさん、植物図鑑、フリーター家を買う。、シアター!、キケン、ストーリー・セラー、シアター!2 |
県庁おもてなし課、もう一つのシアター!、ヒア・カムズ・ザ・サン、三匹のおっさんふたたび、空飛ぶ広報室、旅猫リポート、コロボックル絵物語、明日の子供たち、キャロリング、だれもが知ってる小さな国 |
「倒れるときは前のめり」 ★★ | |
2019年09月
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有川さんの初エッセイ集+掌篇2作。 電撃小説で作家デビューした頃から始まり、自衛隊の皆さんにいろいろ世話になったこと、阪神淡路大震災ならびに東日本大震災のこと、今は亡き児玉清さんとの忘れ難い対談のこと、好きな小説や好きな映画(その中には自作解説、自作の映画化のことも含まれます)のこと、勿論故郷である高知のこと、等々。 肩肘張らずに、有川さんのお喋りを聞くような楽しさあるエッセイ集になっています。 「空の中」や「海の底」、「図書館戦争」シリーズなど、こうして読んでいて振り返ると懐かしいなァ。 また、自作の映画化について作家自身はどう思っているかについて語っている部分は、ちょっと注目です。 特別収録の掌篇小説2作は、いずれもささやかなラブ・ストーリィ。気持ち良さは相変わらずです。 なお、カバーおよび書籍内のイラストは、土佐旅福の「土佐酢みかん手拭い」の図案を拝借したものだそうです。 有川浩ファンにとっては楽しいことしきりの一冊。 書くこと、読むこと、生きること/この本大好き!/映画も黙っちゃいられない/いとしい人、場所、ものごと/ふるさと高知/ 特別収録小説・・・・彼の本棚/ゆず、香る |
「アンマーとぼくら」 ★★ | |
2020年08月
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題名の「アンマー」とは沖縄の言葉で母親のこと。 本書は沖縄を舞台にした、血の繋がらない母と息子+父親の家族物語。 かりゆし58の名曲「アンマー」に着想を得た作品とのことです。 冒頭、那覇空港で主人公であるリョウ32歳が、迎えに来た母親から声を掛けられ目を覚ますところから始まります。 母親と言っても実は継母。北海道の札幌で親子3人暮らしていた小学4年生の時に実母は癌で死去。それから僅か1年しか経たないというのにカメラマンの父親は沖縄の那覇でガイドをしていた晴子さんと再婚したという経緯。 今は東京で暮すリョウ、中々帰郷することはなかったのですが、今回は、その母親の3日間の休暇を共に過ごすため帰郷したという次第。 それから3日間にわたり、今は亡き父親と3人で巡った沖縄の各所を巡っては、思い出を新たにするというストーリィ。 沖縄、大好きです。ですから、沖縄の各所を巡り、沖縄らしい食べ物を食する展開は、私にとっては楽しい限り。 そしてその時々で不思議なことが起きるのも、沖縄という舞台には如何にも似つかわしく感じられます。 その不思議な出来事が生じた理由は、最後で明かされます。 実母の影が薄くなってしまったのは少々気の毒な気がしますが、血の繋がらない息子に広く深い愛情を注ぎ続けた義母の優しさ、思いの深さに胸が熱くなる思いです。どうかその愛情が、新しい家族に引き継がれていって欲しいと願うばかりです。 心洗われる、抜けるような青空を思わせる家族ストーリィ。有川さんらしい爽快さ、ファンには是非お薦めです。 一日目/二日目/三日目 |
「イマジン?」 ★★ | |
2022年08月
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ずいぶん久しぶり、という感じの有川浩、改め有川ひろ作品。 久々とは言っても一旦読み出してしまえば、そこはもう有川ひろ世界、全開です。 主人公は良井(いい)良助、27歳。元々映像制作会社で働くことが目標でしたが、就活であくどい計画倒産に巻き込まれ、望んだ業界での就職が困難となり、フリーター生活。 そんな良助の前に道が開けたのは、先輩フリーターで制作会社<殿浦イマジン>に正社員として採用されたばかりの佐々賢治が、現場仕事のバイトに声を掛けてくれたことから。 初めて経験する現場は分からないことばかり。「とにかく走れ」「イマジン(想像)しろ!」と指示されるまま、現場を元気に明るく、そして迅速に走り回る良助、それなりにスタッフや主演俳優たちからも気に入られたようです。 しかし、どの現場も、クセのある問題人物や、トラブルごとには耐えない。そこで良助、どこまで頑張れるのやら。 個性的な登場人物たち、明るく溌溂とした主人公、思わず元気が出てくる面白さは、有川ひろさん本来の持ち味でしょう。 ただし、本作で描かれるのはあくまで、良助のスタート物語。 制作の現場で働くのは良助の目標でしたけれど、いざその世界に入ればそこはもうスタート地点に他なりません。 良助や島津幸、そして殿浦力率いる殿浦イマジンの面々、皆のこれからの前進に心からエールを贈りたくなるストーリィです。 1.「天翔ける広報室」/2.「罪に罰」/3.「美人女将、美人の湯にて〜刑事真藤真・湯けむり紀行シリーズ」/4.「みちくさ日記」/5.「TOKYOの一番長い日」 |
「みとりねこ」 ★★ | |
2024年04月
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猫を愛する人たちには堪らない魅力の7篇。 「旅猫リポート」の延長線上、同作に連なる物語と言って間違いではないでしょう。 こうして猫を家族として暮らしてきた人たちの話を読むと、良いものだなぁと思いますが、思うだけで留まります。 実家も今も、生き物は苦手な方でペットは飼ったことがありませんので。読んでその気分を味わうので充分です。実際には、猫の人の如き内心を知ることはできませんし。 ・冒頭2篇は“旅猫レポートの外伝”。 「ハチジカン」は、サトルが拾って初の飼い猫となったハチとの物語。「こぼれたび」は、サトルとナナが辿った旅の一幕。 ・「猫の島」:リョウ、カメラマンの父、再婚相手の晴子という3人による竹富島への撮影旅。野生猫との出会いは・・・。 ・「トムめ」:トムと私の、夜中の攻防を語る掌篇。 ・「シュレーディンガーの猫」:佃香里が里帰り出産を終えて帰宅すると、何と家事能力ゼロである漫画家の夫=啓介が仔猫を拾って飼い始めていた! 赤ん坊+仔猫、子育て負担を二重に抱え込んだこの夫婦関係の行く末は如何に? 本書中、私としては最も楽しかった魅力ある篇。 ・「粉飾決算」:勝手気ままな父親、貰い猫にも無関心だったのに何故か懐かれていて・・・。 ・「みとりねこ」:桜庭家では、浩美が次男、猫の浩太が三男という位置づけだが、浩太曰く、自分こそ次男と・・・。 ハチジカン〜旅猫リポート外伝〜/こぼれたび〜旅猫リポート外伝〜/猫の島/トムめ/シュレーディンガーの猫/粉飾決算/みとりねこ *初版限定特典 ・・・ 徒花スクモ(宮澤ひしを)作 書き下ろし漫画付き。 |
「物語の種」 ★★ | |
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久しぶりの有川ひろ作品、という感じ。 担当編集者や読者が、物語の<種>を提供。それを元に有川さんが短篇小説を仕立てる、という趣向からなる短篇、10篇。 有川さんらしい小説を読みたい、と思うとちょっと物足りない思いもありますが、それなりに心をくすぐる上手さはやはり有川さんらしい処でしょう。 様々な人が登場するという点では、ふと「阪急電車」に似た味わいを感じます。 まず、冒頭の「SNSの猫」が素敵です。 「タキシード仮面」と名付けられた保護猫が登場しますが、その名前、分かる人はどの程度いるでしょうか。(※「美少女戦士セーラームーン」に登場する人物名) 「ぷっくりおてて」は、子供時代の夏休みの思い出が、大学時代のある出来事に繋がっていく、という展開が好きだなぁ。 「Mr.ブルー」と「恥ずかしくて見れない」は連作。宝塚ファン繋がりを描くストーリィですが、ファンの蘊蓄が聞ける上に、後輩男子社員の登場に胸をくすぐられ、楽しい限りです。 多彩かつ気の利いた短編小説集がお好きな方に、お薦め。 はじめに/1.SNSの猫/2.レンゲ赤いか黄色いか、丸は誰ぞや/3.胡瓜と白菜、柚子を一添え/4.我らを救い給いしもの/5.ぷっくりおてて/6.Mr.ブルー/7.百万本の赤い薔薇/8.清く正しく美しく/9.ゴールデンパイナップル/10.恥ずかしくて見れない/おわりに |
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