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がんを明るく生きる-前立腺癌の末期から生還した伊藤勇のサイトのホーム

末期癌より生還した伊藤勇への相談の手紙とその返信

その32
余命の少ない父にとっては、自宅で日々を送るほうが幸せなのでしょうか?

Uさんより
伊藤様、初めてお便りします。ホームページを読ませていただきいつも前向きに生きていらっしゃる伊藤さんの生き方に、勇気とエネルギーを頂いております。

私の父は67歳で去年の9月、肺小細胞癌と診断され今まで化学療法で治療をしてまいりました。肺小細胞癌は手術に向かず、化学療法が効きやすいと言うことでしたが、なぜか私の父は副作用がひどく、3クールで断念せねばならない状況に陥ってしまいました。

効果もいまいちで、お医者様は、これ以上続けても意味がないと判断されたようです。今やお医者にも見離されたような感じで、父はともかく母のほうが非常に参っています。いつやってくるか分からない死を目の前に在宅で癌と闘い、すべての責任を負うことに母は抵抗があるようです。

娘の私は外国に離れており、心配だけはつのるものの実際には何もできないでおります。主治医からは、直接の余命は聞いておりませんが、治療がうまくいかなかったため、本に出ているような2年3年と言う生存率は望めないとのことをいわれております。

私はまだ自分の余命が少ない、というような状況におかれたことがありませんので想像するにとどまるのですが、残された余命の少ない父にとっては、長年住んだ自宅に帰り、日々を送るほうが幸せなのでしょうか?

先ほど書きましたとおり、抗がん剤の副作用のため、父の肺にはなんと言う菌かはお医者様も分からないのですが、それが住み着いており、肺炎になりやすい体です。そんなことからも母が、自分ひとりでは不安と言う気持ちも分からなくはないのですが・・・。

長くなりまして、申し訳ありません。伊藤さんにすがりつくような感じで、吐き出してしまいました。お忙しい毎日でしょうが、お時間のあるときに、ご意見いただければ幸いです。これからも、たくさんの方々を励まし続けていってください。遠く離れた外国からですが、応援しております。季節柄、ご自愛くださいませ。

その32
伊藤勇 より

Uさんへ
お父さんへ心からお見舞い申し上げます。わたしのHPへお立ち寄り下さり有難うございます。 遠く母国を離れての生活の中では、何よりも、ご両親の健康が一番気に掛かる事でしょう。そんな中での、お父さんの肺小細胞癌という病気の知らせですから、大変なショックだったと思います。あなたのご心痛は如何ばかりかとお察し致します。

お母さんも、厳しいご病状のご主人と一人で向き合い、いつ肺炎になるやも知れない抵抗力の落ちたご病人との在宅看護に日夜明け暮れる事を考えれば、当然、不安一杯になるでしょうし、心身ともに限界あり、と感じられるお気持はよく理解出来ます。

現在、お父さんは最後の望みの化学療法をも途中で断念せざるを得ない状態では、一縷の希望も持てない淋しい、やり場のない苦しさ。私も体験しましたので、良くわかります。しかし、このような時、もう一度冷静に考えて見ましょう。
以下ご参照下さい。

(1) セカンドオピニオン制度があります。
既にご存知かと思いますが、他の複数の病院での医師の診断を受け、治療方法等についての意見を聞く。生死の関わる重篤に限らず、いま浸透しつつある制度です。遠慮なく提案される事をお勧めします。

(2) セカンドオピニオンの結果でも厳しい告知でしたら、それは素直に受け入れ残された毎日をどう過すかを考える。

(3) ホスピス病棟は、患者の状態に合わせて、疼痛緩和など優先され、穏やかな療養が出来るような配慮がされていますので、ご本人はもとより、ご家族の心のケアにもなります。

(4) 治療方法が無いとなれば、私の様に自宅で療養する。患者さんの自覚が肝心なのですが、自分自身の強い精神力で、決して諦めないで、わたしの「自分を信じる」の詩の様に生き、現実をしっかりと受け止め身体は病気でも心は健康に、明るく、感謝の気持で穏やかに大切な一日を送る。

(5) これも、患者さんの心がけで大事な事です。「身辺整理」・・これを済ませると心は意外と落ち着きます。

(6) 医師の告知は、あくまでも予想です。逆読みすれば、「ウソヨ」ですから見放された・・と感じても逆転の発想で癌ちゃんと共に暮らし、自然退縮に追い込むぞーとの心意気を持つ。HPの本の紹介でも、多くの癌患者は、癌に向かう強い気持で克服して居られます。心配や、焦りや、諦めは禁物。心を楽にして、自己免疫力を上げる事です。クヨクヨせずに、きっと治る事をイメージして心のトレーニングを実践。

誰でも必ず死は訪れます。 お父さんにとっても、最後に「自分の人生は幸せであった」と思われるように残された日々を過して頂きたいし、あなたにとっても、悔いない親孝行であったと云えるような心掛けで尽くして下さい。 又、孤独になりがちなお父さんへの温かい声掛けは何より大事です。

そして、疲れて居られるご様子のお母さんを孤立させない配慮など考えて助けてあげて下さいね。奇跡をお祈り致しております。

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