ナビゲーションを読み飛ばす
がんを明るく生きる-前立腺癌の末期から生還した伊藤勇のサイトのホーム

末期癌より生還した伊藤勇への相談の手紙とその返信

その18
肝臓転移の母を治したいが高価な健康食品には手が出ません

Aさんより
現在70歳の母は、5年ほど前、大腸の進行癌の手術を受けました。
その後4年半、至って元気に過ごし、「5年生存率」という言葉を頭に、家族に明るさが戻り始めた昨年暮れ。肝臓への転移が発覚しました。

その後20回ちかくにも及ぶ辛い抗がん剤治療の成果もあまりなく、ラジオ波治療を受けました。担当医の「ラジオ波手術は成功。すぐには再発等の恐れはないと思うが、気をつけていきましょう」という言葉に安堵しましたが、その3ヵ月後には、肝臓と肺に新たに腫瘍が見つかり、現在再び抗がん剤治療を受けています。

・・・辛くてなりません。まだ幼い孫の成長を見せてあげたい一心です。免疫学について本などを読みましたが、私共にとっては健康食品ひとつとっても高価すぎます。免疫療法など手がでません。ご助言をお願い致します。

その18
伊藤勇 より

Aさんへ
お母さんに心よりお見舞い申上げます
お便りを拝見して、あなたのお母さんに対する切ないご心情は充分に理解出来ます。
ご家族始め先生も、この数年間懸命な治療を試みられた結果、現在のラジオ波治療に至ったという経過を考えますと、やはり、対症療法の一つとしての段階で先生も充分気をつけながらやって居られたんでしょうが、一方で更なる腫瘍の発生で再び抗癌剤治療が始まり、お母さんとしても、苦しいでしょうし、傍のあなたもさぞお辛いでしょうね。

このような状態を拝察しますと、お母さんは相当厳しい病状に居られる様に思われます。辛く悲しい現実は、何時までも否定し続ける訳には行きません。

あなたにとって私は、所詮第三者的な立場ではありますが、私なりにこの7年間、次々に発生する病気に対して、その事実は事実として、その都度受け入れて次に進むしかなく、その結果こんなにもオマケの人生を頂いて来た訳です。

私自身の闘病生活を分析しますと、自分の病気は先生の助けを借りながら最終的には自分で治すんだ!という強い精神力でやって来れたのだと思って居ります。

色々相談をお受けする中で、「何で自分が、何にも悪い事などして来なかった自分が、何で・・何で・・」と現実を中々受け入れられない人も多く居られます。 ご家族にしても、「あんなに真っ直ぐに真面目に生きて来た父が・・母が・・夫が・・」と。
体験者として、本当にお気持は痛いほど解るだけに、早く次の一歩へ進まれる事に発想を転換して頂くようお伝えして居ります。

あなたも最愛のお母さんの為に、奔走されて居られる様ですね。娘として当然のことではありますが、健康食品や巷で宣伝されている色々な療法などは値段も相当高価であり、何時までも続く訳ではありません。

これらは、どちらかと言いますと、初めての手術直後からの免疫力向上の為の補助手段として、再発防止にはそれなりの効用があると言われて居りますが、高齢のお母さんとしては、現在の治療でも相当負担は大きいと思われます。体力や食欲が衰えているお身体に加えて、色々な薬や健康食品を入れる事での怖い複合作用を、むしろ私は心配します。

ガンを治すよりガンとの共存期間をどれだけ延ばせるかという方向に発想を転換されて、現在のお母さんが如何に苦しみのない穏やかな療養生活を送る事が出来るかを先生と充分相談されながら是非考えてあげて下さい。

お母さんには、絶えず明るく声を掛け、皆さんの協力を得ながら孤独にさせない配慮が大事です。お母さんが今、したい事、言って置きたい事などは、会話の中から聞き出して、出来得る限り叶えてあげるようにして下さい。

何時までも元気で、孫達との楽しい日々を過ごさせてあげたい娘ごころは当然の願いではありますが、必ず別離の日が来る事も事実あって、思う様に行かないのが人生です。

しかし、諦めろではなく、私のように奇跡が起る事を心からお祈りしている私でもあります。病床からあなたに、お母さんに応援の一念を送らせて頂く私のお便りが、少しでもお役に立つ事が出来ましたら、嬉しく思います。

どうぞお身体に気をつけて一所懸命、親孝行をしてあげて下さいね。

往復書簡その19へ 
往復書簡の見出し一覧へ戻る