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がんを明るく生きる-前立腺癌の末期から生還した伊藤勇のサイトのホーム

末期癌より生還した伊藤勇への相談の手紙とその返信

その16
入院して気力がなくなった義父。伊藤さんは自暴自棄になりませんでしたか?

Yさんより
義父のことで検索しておりましたところ、伊藤さんのHPに出会いました。ジーンとしました。涙が出そうでした。このままページを閉じようかと思いましたが、義父の症状が急激に悪化し私自身気持ちが動揺し落ち込んおります。私ごとで申し訳ないのですが書き込むことで少しでも自分の気持ちがおさまればと思いました。

義父は前立腺癌から骨(脊椎)に転移してしまい、手に痺れががあったため3ヶ月前に手術し、手の痺れはなくなりました。しかし安心したのも束の間、今度は足に痺れが出て、その痺れから数週間で足が動かなくなってしまったのです。

医者は今度は手術をしても直る見込みはなくリスクが大きいとのことで、手術をしないという方向に決まり、本人にもその旨伝えました。入院してからというもの、気力がみるみるなくなり、新聞や本も見る気がしないとのことで、テレビをボーっとみているだけです。病気には向き合おうとせず、知ろうとしません。もちろんとても怖いのだと思います。

そのくせ義父はとても偉そうな人で、「ナースコールボタン」は離さず、些細なことでも看護士さんを呼びつけ、看護士さんたちは手をやいています。こういった様子を見ている限り、義父は告知や宣告に耐えられる人ではないと、家族をはじめ医師もその様に思っています。

伊藤さんは当時、余命宣告をご自身で希望されたのでしょうか?
その当初は自暴自棄に陥らなかったのですか?
ご家族はどうやって受け止めてくれたのですか?
逆境を力にかえた伊藤さんのような方も大勢いらっしゃるのですよね。

伊藤さん、お加減はいかがですか?
貴方が元気だった今日の1日が、何百、何千、何万の人々に勇気を与えているのですね。価値ある誇り高い命です!素敵なメッセージをありがとうございます。
またHPのぞいてみます。元気な笑顔が見られることを心より期待し、応援のメッセージとさせていただきます!

その16
伊藤勇 より

Yさんへ
義父さまに心よりお見舞い申上げます
また、あなたさまにも、ご苦労様、お疲れ様です、とそのご心労に対し、心からお見舞いを申上げます。又、私への応援メッセージも頂き、本当に有難うございます。

さて、義父さまの現在は、下肢のほうもガン性で、かつ疼痛があるという事ですね。このような状態を考えますと相当厳しい段階に来て居られる様に思われます。 64歳という若さで医師から治る見込みのない事を宣告された義父さまにして見れば、どんなに悔しい事かとその辛いお気持もお察し出来ます。

病室で一日中天井を眺めていますと、今後はどうなるかと不安になり、孤独感が募ります。私の病室にもナースコールのボタンを常に離さずにいる、義父さんの様な患者さんもよく見掛けます。
そんな或る患者さんに、私の「自分を信じる」の詩(HPに掲載しています)をお渡しして読んで頂いた事があります。すると、ご本人や、ご家族から、心が充分落ち着いた、との嬉しい反応が返って来ました。表情も見違えるほど明るくなられ、その様子を見て私も共に嬉しくなり、確かな反応に吃驚した事があります。

身体の健康な人が書いたのではなく、私自身が患者の身、その心の叫びを思うままに飾らず、素直に表した詩が同じ患者として共感を頂いたのだと思います。

私の場合、事業をしていましたので、ガンの告知については、始めからはっきり先生に申し出ては居りましたが、末期がんとの告知には大ショックでした。 しかし、当時、多くの従業員やその家族の生活が私の肩の掛かっている立場にありましたので、自暴自棄になるより先に、先ずは、社長という社会的責任を強く感じ、HPにもありますように数時間で次の行動に移って行った次第です。

家族(妻は既に死亡)に告げた時、二人の娘夫婦は非常に冷静に対処して呉れ、入院中でもお互いに連絡を取り合いながら気持を一つにして私に尽くしてくれた事は大変嬉しく感謝の気持で一杯です。

患者さんのタイプも色々で、例えば義父さまのような、先生や看護師、家族に当り散らして居られる人も良く見受けます。それも、どうにもやり場のない、泣きたくなる様な正直な気持のはけ口と思いますので、周りも大変でしょうが温かく理解して受け止めてあげて下さい。

このような方が、急に大人しくなられたら旅立ち寸前と思われたほうが良いかも知れません。
義父さまも、心の中ではきっと感謝されて居られる事と思いますので、せめて最後に「自分は皆に愛されて旅立つ事の出来る」という満足感をお義父さまに味合わせてあげる事が、悔いの残らない親孝行だと私は思います。
あなたが倒れたら被害甚大になりますから、あまり落ち込まないで下さいね。

ご家族と力を合わせて、分担し合いながら看病してあげて下さい。

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