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がんを明るく生きる-前立腺癌の末期から生還した伊藤勇のサイトのホーム

末期癌より生還した伊藤勇への相談の手紙とその返信

その9
寝たきり状態の父にすべてを告知すべきでしょうか?

Uさんより
現在私の父は原発不明の骨転移癌で入院しています。転移している部位が腰にあたり、ほとんど寝たきりの状態です。これまでにした治療は放射線の照射です。原発が不明なため今のところ治療はしておらず、痛みをとる為の薬を投与してもらっています。排泄についても介護が必要です。

父は自分が原発不明の骨転移癌であることは知っています。父が知らないことは骨転移が症状として現れている腰(仙骨)だけでなく他の部位にもみられることです(骨シンチによる)。さらに腹腔内に転移の可能性があるのではないか?という2点です。父は自分の癌が今のところ腰部だけだと考えています。

私が悩んでいるのは父への告知についてです。
今現在わかっていることをすべて父へ告知するべきなのでしょうか?ほかの癌の方のように身辺整理も好きなことも旅行もそれどころか部屋の中にある物一つ取ることが自分の思うようにならない父に言わねばならないのでしょうか?

姉はすべてを告知しホスピスへ入ったほうがいいのだという考えです。私は酷過ぎるのではないかと思います。あまりにも希望が無さ過ぎます。父は自宅への退院を希望しており、医師もそれを勧めています。母は10年前に乳がんで亡くなりました。
伊藤さんの考えをお聞かせください。よろしくお願いします。

その9
伊藤勇 より

Uさんへ
お父さんに心からお見舞い申上げます。
さて、お父さんへ転移についての告知ですが、現在寝たきりで、排泄も介護が要るような現状のお父さんに更なる告知は、苦しみに追い討ちをかけるようで、これは辞めたほうが良いように私も感じます。

お父さんご自身、原発は不明でも骨転移癌である事は認識され、放射線照射、疼痛緩和の薬の投与を受けて、これだけでも大変な苦しみである事は、私には十二分に理解出来ます。

ホスピスについては、ホスピス=死・・・とは必ずしも言い切れるものではなく、ホスピスで精神的にも改善されて一般病棟へ帰られる人も居られますがこれも数少ない確率ですから、一般的にはホスピスは、最終段階としますので、まだ62歳という若さのお父さんですし、ご本人のショックも大きいのではないでしょうか。

半年以上の入院生活、検査、検査の連続も大変な苦しみである事は私も痛いほど解ります。そんな入院生活も、ホトホトいやになって家に帰りたい、自分が暮らした家に帰ってまだまだやりたい事など整理したい気持も、それがこのような身体で帰って果たして出来るかどうかも解らないけれど、とにかく家に帰りたい・・・・・このお気持もほんとうによく解ります。

お父さんの今やりたい事は、「家に帰りたい」という事ですから、先生も勧められている事であり、私も一旦は、お父さんの希望を叶えてあげる事だと思います。

家での療養中は、もちろん先生からの疼痛緩和療法は施される事と思いますがそれらがどうしてもコントロール出来なくなったら、その経過の中で、お父さん自身が家で、もう限界であるとか、病院へ戻りたい等の意思表示があるでしょう。その時は先生と相談されてホスピスなどの方法を考えるという風に段階的にやられた方が良いと思います。

お母さんの乳がん治療などで、お父さんもガン知識は普通以上にお持ちでしょうから、「一時退院」のご希望を先ず叶えてあげた方がお父さんとしても満足され、納得もされると思います。

力を合わせて一生懸命親孝行をして下さいね。
私も、心からお祈りいたします。

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