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がんを明るく生きる-前立腺癌の末期から生還した伊藤勇のサイトのホーム

末期癌より生還した伊藤勇への相談の手紙とその返信

その8
舌がんから社会復帰した夫がタバコを吸う姿を見ると足がすくみます

Nさんより
主人が舌癌の手術を受けました。ありがたいことに早期で手術範囲も少なくて済み手術後すぐに回復し、現在は会社にも復帰しています。
でも、本人よりも私が神経質になっているようで、一人の時間にはどうしても不安になってしまいます。タバコをすっているのを見ると足がすくむように不安になり、つい注意をしてしまう。若いのに、こんな病気にしてしまったと自分を責めることもあります。

主人に感謝して彼をもっと信じていこうと思います。今は主人はまだ疲れやすく、仕事以外で活字を読むのを嫌いますが、体力が戻り、機会があれば伊藤さんのページを見てほしいと思います。私も、気持ちが後ろ向きになったらまた遊びに来ます。

その8
伊藤勇 より

Nさんへ
ご主人に心からお見舞いを申し上げます。
幸いにもご主人は、快復目覚ましく職場へ復帰されたとの事。ご本人にとっては、こんな世情ですから「先ずは、席に戻れた」という安堵感はおありでしょうね。

舌癌については、発症の原因は、医師からも聞いておられると思いますが、私の知る範囲では、タバコ、香辛料、アルコール、熱い飲食、又、歯が欠けている部分などに無意識に舌が触れていると、その刺激で炎症が起き、更に、仕事や諸々のストレスが加わると癌になって行くと一般には言われております。

今回、手術範囲が少なくて済んだことは良かったですが、もともと癌体質であることは間違いなく、その素質が充分あるということですから、これらの生活習慣を見直して改めない限り、他の部位にも癌が発症する可能性は充分にあります。癌の性質は、自覚症状が出た時には、すでに手遅れという例が少なくありません。若いから、治りも早い反面、進行も早いのです。

以上、あなたのご心配に更に火をつけるような私の返信になっておりますが、本当に心配しております。ご主人に私のメッセージを以下に付け加えさせて頂きますので、お伝え下さい。

---ご主人へのメッセージ---

タバコは即刻止めて頂きたい。
がん発症は、あなたのこれからの人生に赤信号が出たと言うことですから、治ったからと言っても甘く見ないで欲しい。
油断大敵、手術後は、少なくとも3年〜5年は禁煙を守って頂きたい。
わたしは、もちろんキッパリと辞めることが一番だと思います。

ドクター側としては、人権問題とやらで患者に辞めろと、ハッキリ申し渡すこともできない時代と言われておるので、ドクターが明言しないからと言って、自分の心の要求に甘く流されてしまっては、結局、自己責任では済まされない最悪の事態が待っていることをどうぞお忘れなく毎日を油断無く過して頂きたい。

最愛の奥様が、・・・よくなる、よくなる、きっとよくなる・・・と祈り、あなたの喫煙に気を揉んでおられるご様子は痛々しくお気の毒です。
家長として仕事が第一とお考えでしたら、その一角に、自分一人ではない自覚と責任感を少し加えて、周りを不幸にしない生活習慣を是非、心がけて頂きたいと思っております。

タバコは、日常起きるストレス解消に、一時の気休めで良いように思われがちですが、麻薬ですから、良い訳がありません。ガンが治った解放感から、抑えていた麻薬の誘惑につい手が出てしまうのでしょうが強い意志で禁煙を実践して下さい。

また、治ったと言っても、再発の不安や怖れは絶えず付きまとう事も当然です。しかし、心の動揺をタバコで紛らわすことは無意味ですし、かえって将来的に大きなリスクを抱えることですから自重して頂きたいと私は心から思います。
長年がんと向き合い、自分も苦しみ、周囲の子供や身内にも心配をかけて来た者だからこそ、敢えて苦言を呈します。

どうぞ、奥様を悲しませないためにも、お身体を大事にお暮しください。
失礼の段はお許しください。

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