ナビゲーションを読み飛ばす
がんを明るく生きる-前立腺癌の末期から生還した伊藤勇のサイトのホーム

末期癌より生還した伊藤勇への相談の手紙とその返信

その6
肺がん末期で治療法はないと言われました、女性ホルモンは効きますか?

Yさんより
私の祖父は末期の肺がんで余命3ケ月と言われました。以前より腎炎、肺気腫、肺水腫、糖尿病を患っており薬を飲んでおりました。半年前には肺がんが見つかりました。肝臓、リンパ腺に転移しており、他の病気がある為、治療方法が無いそうです。

投薬や放射線治療では他の病気を悪化させ、より悪い状況になる可能性があるのだそうです。食欲もなく、体の痛みを訴え、家族は何もできない状態です。

祖父は70代で一年前までは一人で全国各地を車で歩くような活発な人でした。HPを拝見して、女性ホルモンを移植したという話ですが、もし余命が少しでも長くなる方法があるなら教えて頂きたいと思います。

その6
伊藤勇 より

Yさんへ
あなたの最愛のお祖父さんに心よりお見舞い申し上げます。一年前まであんなに元気で全国各地の旅を楽しんで居られたお祖父さんが急にこの様な重篤状態になってしまって、あなたはとても納得できない心境でしょう。

医師の所見の通り、事、ここに至っては、投薬、放射線は不可能であろうと、残念ながら私も感じております。また、他の医療機関でも、同じ事が言われるのではないでしょうか。

さて、ホルモン療法についてですが、私は、前立腺がんの為に女性ホルモンを3年ほど打ちました。しかし、これも特効薬ではなく、一時抑えに過ぎず、やがて副作用が出て来て投薬を断念しました。そんな訳で、前立腺がん以外では使わないのです。

お祖父さんの現在のお苦しみは大変なもので、痛いのは我慢できません。疼痛緩和を優先し、痛みから早く解放してあげるべきです。痛みが和らげば、穏やかに話ができるし、周りのご家族のお気持も落ち着かれます。余命3ヶ月は、医師の予想ですので、それより延びるかも知れませんが早まる事も頭に入れて、ホスピス病棟での終末医療をお受けになられたらどうかと私は思っております。

お祖父さんの充実した人生を思う時、最後を痛い、痛いの苦しみのままで終わるのは、いかにも不条理に思います。少しでも、「ああ、自分の人生は幸せだった。こうして、我が子や孫たちの温かい愛に囲まれて旅立つ事ができる。これで良かった」と思われるように皆さんでお祖父さんへの感謝を込めて懸命にお尽くし下さい。

可愛い孫達にも恵まれ、どんなにか、この孫達によって、慰められ、生き甲斐を感じて来た事か・・。同じ年代として、お祖父さんもきっと、日々の暮らしの中で、励まされ、味わいながら生きる力になっていたかを考える時、人間として最高の幸せです。

ですから、もうこれ以上、薬や治療で苦しい思いをさせるのは、酷に感じます。あなたの切なる願いの一助にもなれないお返事になりましたが、担当医とも、これからをよく相談されて、残された時間の中で、ご本人が痛みのない療養生活を送られるよう何よりも願っております。

別れは誰にでも必ずやって来ます。あなたも、辛いでしょうが最後まで諦めないで悔いない看病、悔いない人生をお送り下さい。

往復書簡その7へ 
往復書簡の見出し一覧へ戻る