トーナメント戦で勝ち上がっていくことは大変なことである。実力は勿論、運もないと勝ち残れない。高校野球などにおいて、地方予選を勝ち抜き、さらに甲子園で勝ち抜いていくことは至難の業である。トーナメントの恐ろしさ、あるいは面白さは、強豪チームでも初戦でコロッと敗退することがたまにある点だろう。それも、強豪チームどうしがたまたま初戦で対戦したのではなく、実力的には劣るチームに負けることがある。実力が劣るチームが強豪チームと対戦するために必要な「奇襲戦法」については第59章で述べた。ここでは、強豪チームが何故敗退するのかを考察してみたい。
第一の原因はメンバーの欠落である。病気、怪我、仕事、所用のためどうしても参加できない場合がある。強豪チームは一般的に選手層が厚いため、一人や二人レギュラーが欠場しても十分な戦力を保つことができる。しかし、エースやチームの要となる選手が欠場すると、チームが心理的に不安定になる。例えエースが投げなくてもよい。いつでもリリーフできる状況にあればチームは安心できる。しかし、欠場していると先発がこけたらどうしようと考えてしまうのだ。この不安感がプレッシャーとなり、動きが固くなってしまう。 第二は油断である。相手チームの動き、ユニフォーム姿、人数などを見て、たいしたことないと勝手に判断してしまう。すると、普段は制球に気を配っているのについつい甘くなり、先制点を許してしまう。「こんなはずではなかった」と思ったときは時すでに遅く、相手バッテリーの術中に嵌まっている。 第三は疲れである。強豪チームの中には、トーナメント戦を控えて猛練習を行なうチームがある。決勝戦をベストコンディションで臨めるように調整するのはいいが、初戦は疲れが残っており、バットの振りが鈍かったり、肩や肘の調子がいまいちだったりする。このような状況で、相手投手が思った以上に好投すると、打ち崩せそうで打ち崩せない。これが「あせり」につながり、悪球に手を出したり、走塁や守備でミスをするようになる。 すなわち、強豪チームにとっては、メンバーの欠落、油断、疲れなどが弱点となっているのだ。そこを巧みに衝くことができれば、実力的には劣っていても勝機を掴むことができる。強豪チームに勝てば弱小チームにとって大きな自信となる。波に乗れるのだ。しかし、対戦が進んでいくと、ベストコンディションの強豪チームと対戦するようになる。こうなるとやはり実力差が出てしまう。だから、トーナメントは大変なのだ。だが、強豪チームと対戦すると学ぶ点は多い。それらの一つでも身につければ実力は向上する。 これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。 (平成10年12月8日掲載) |
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