「草野球の窓」

第88章
「たたみかける攻撃」

 今季のプロ野球はベイスターズが38年ぶりに優勝した。攻撃面でいえば、「マシンガン打線」と呼ばれたように、たたみかける攻撃が特徴だった。一人が出塁すると、後続打者もヒットを打ったり、四球を選んだり、盗塁したり、悪くても走者を進塁させる。そして、得点圏内に走者を置いたら、キチンと安打で走者を返したり、悪くても犠打で得点する。チャンスと見たらどの打者も自分の役割をキチンと果たす。攻撃の手を緩めない。チャンスが訪れたら徹底的に攻撃する。相手に大量点を奪われていても、決して諦めることなく、相手のチョットしたスキにつけ込んでチャンスを作りだし、途切れることなく攻撃する。これが「たたみかける攻撃」だ。
 やられた方はたまらない。どんな球を投げても打たれる。繰り出す投手が次々と打ち込まれる。攻撃に回っても気持ちが萎えてしまう。こんなことが二度、三度と続くと強烈な印象となって相手チームに植えつけられる。マスコミも書きたてる。だから、走者を出して盗塁されたら、今回もまたやられるのではないかという不安な気持ちになる。これが投球の威力や制球を低下させ、配球を乱す。故に本当に打ち込まれてしまう。そして、ベイスターズはますます自信を持つ。

 「たたみかける攻撃」はどうしたら可能になるのか。自分の役割を果たすことに自信を持つことである。前に何回も書いているとおり、走者を置いた場面では攻撃側が有利な立場にある。均衡したゲームでは、バッテリーは打者、走者双方に神経を払い、攻撃側の作戦を読むことに懸命になる。だから、走者がいない時より打者に対する投球内容は劣ることが多い。まして、得点圏内に走者を置いた時は尚更である。したがって、打者は「自分は有利なんだ。だから、自分の仕事を果たすことは難しくはない」と思って打席に立てばよい。必ずしもヒットを打てなくてもよい。ヒットしようと思うと難しいが、バットをコンパクトに振って芯に当てることを考えればいいのだ。その結果がヒットになるか凡打に終わるかは時の運である。凡打になっても、いい当たりの打球であれば、相手バッテリーに「なかなかやるなー」という印象を持たせることができる。これが、次の打者をさらに有利にする。このような好循環によって「たたみかける攻撃」が実現する。

 「たたみかける攻撃」ができるようになるとあえてバントのサインを出す必要はなくなる。権藤監督はあまりバントのサインを出さなかったと伝えられているが、バントを使わなくても各打者がヒットを打ったり、そうでなくても走者を進塁させる。バントのサインを出さなくても、それ以上の攻撃をするから必要がないのだ。

 草野球ではなかなかこうはいかない。だが、強いチームと対戦して勝てるようになってくると、チームに自信が芽生えてくる。この自信がチームをさらに強くする。個人の技量は大して変わってはいない。ちょっとした自信をチーム全体が持つことで、チームに「勢い」がつき、上手くなったような気にさせてくれる。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成10年12月23日掲載)



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