「草野球の窓」

第59章
「奇襲戦法」

 古来、兵法には「優勝劣敗」という法則がある。これは、力の弱いものは必ず負け、力の優るものが勝つという当たり前のことを意味している。これに対し、弱者が勝つために「奇襲戦法」というのがある。相手の弱点を見出し、そこの戦力が充実しないうちに攻撃をしかけて局部的な勝利を得たり、こちらが大軍であるかのように見せかけて、敵戦力を分散化させ、手薄になった戦線に攻撃をしかけ局部的な勝利を得る戦法である。

 草野球でも、投手力、守備力、攻撃力、何をとっても相手の方が一枚も二枚も上手だというチームと対戦しなければならないことがある。こういうチームと対戦する場合、普通に戦っていては「優勝劣敗」の法則にしたがって必ず負けてしまう。よって、「奇襲戦法」を採用することになる。

 さて、相手の弱点が見出せればそこを徹底的に衝くがよい。例えば、捕手の肩は強いのだが、コントロールが悪いということが分かれば果敢に盗塁してみる。相手にしてみれば弱点を衝かれることが最もイヤである。あるいは、相手の3番打者はよく振れており、我が投手からヒットを打っているが、4番打者は大振りでタイミングが合っていないというのであれば、3番打者との勝負を避け、4番打者と勝負する。

 では、弱点が見つからなかった場合にはどうすればよいか。力が上で弱点も簡単には見つからないチームと戦う場合には絶望的だ。だが、諦めてはいけない。弱点がなければ弱点を作りだすことを考える
 上記したように、大軍に見せかけるのだ。例えば、二死走者2塁で、打者が9番といった場面で、無理を承知で3盗させる。走者が2塁にいれば3盗するかもしれないという可能性を相手に示しておくのだ。あるいは、相手チームの走者が2塁にいれば、投手、遊撃手および二塁手との間のサインプレーで厳しい牽制をする。アウトを取れなくても、この投手には厳しい牽制球がある;よってうかつには離塁できないということを相手チームに知らしめる。同様に、バントをするチームだ;ヒットエンドランしてくる可能性がある;この場面ではスクイズしてくるかもしれない、といった不安を相手に与えるのだ。
 すなわち、相手注意力を分散化するのである。相手バッテリーの注意力をバッターに集中させてはならない。相手守備陣の注意力を打球のみに集中させてはならない。投手が集中すればますますすごい投球となり、打てる可能性は尚更下がる。しかし、注意力が分散すればするほど失投の可能性が高くなる。そこをつけこむのだ。

 所詮優勝劣敗である。普通に戦って負けるよりも、やれることを全てやり、相手を苦しめて、わずかな勝機を作りだす。これが「奇襲戦法」である。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。

(平成10年6月1日掲載)


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