「敵を知り、己を知る」ことの重要性は誰もが知っている。戦いの場合には、自分よりはるかに強い相手とは戦わなければよい。逃げるが勝ちということもある。しかし、草野球ではそうはいかない。大会などでは強力なチームと対戦することもある。この場合の戦い方はすでに第59章で述べた。
プロ野球のように同じチームと何回も対戦する場合には、相手チームの戦力分析をすることができるが、草野球では殆ど初めてのチームと対戦するから敵戦力の分析はできない。であるならば、自分達の戦力分析だけでもしておくべきである。これは、チーム全体として「己を知る」ことも勿論だが、選手各自が「己を知る」ことも含まれる。 先日NHKで「二軍」という番組を放送していた。ダイエーの二軍監督をやっている石毛の苦悩と二軍選手の葛藤をまとめたものである。その中で、石毛はまず選手各人の欠点を認識させることを育成の基本に置いていた。二軍といえども、社会人や学生野球のエースや四番打者として活躍してきた彼らのプライドをかなぐり捨てさせ、己の欠点を悟らせるのは大変なことであろう。だが、プロ野球でも己の欠点を知るところから上達が始まるのである。まして、欠点だらけの我々が自分の欠点を知らないで上達などあり得ようか。
草野球をやっている仲間に「貴方の欠点は何か」と問えば、「変化球が打てない」「スローイングが定まらない」「インコースに詰まる」「セットから投げるとコントロールが悪くなる」などとすぐ答えが返ってくるであろう。だが、何故変化球が打てないのか、スローイングが定まらないのかを分かっている人は殆どいない。適切な指導者がいて助言してくれれば別だが、草野球では多くの場合自分で答えを見つけることは極めて困難である。
「己を知る」ということは、言い換えれば「己の欠点を知り、それを克服するために自ら工夫する」ということだ。 これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。 (平成10年10月13日掲載) |
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