「草野球の窓」

第67章
「打ち込まれる」

【質 問】
 僕は草野球をはじめて10年以上になるのですが、本格的な指導を受けたことがありません。ただ、もともと肩が強く結構速い球を投げるので、ピッチャーをやっています。
 一度肩を壊してしまったのですが、今でも120km/h位は調子が良ければでます。ある程度自信を持っていたのですが、つい先日ものすごい勢いで連打をくらってしまいました。
 自分よりレベルの高い(かなりの差があります。)相手と対戦したときどうしたらいいのでしょうか。(投手として) それと切れの良い球を投げるにはどうしたらいいのでしょうか。よろしくお願いします。

 今回も読者からの質問に答える。直球の球速が120km/h程度で、かつカーブとスライダーも武器にしている投手が、力が上のチームに連打された。力がかなり上の打者を相手にする時、投手はどうすればよいのかというご質問である。これまでにも、ピッチングに関して断片的には色々述べてきたが、本章でまとめてみよう。

 連打される原因として、球威が落ちた、球が真ん中に集まった、配球が単調になったなどが考えられる。
 「球威がある球」とは球にスピンがかかり、揚力が働き打者の手元で伸びる球を言う。このため、打者からは低めボール球のように見えても、手元で伸びてストライクとなるため極めて打ちにくい。高めは逆にストライクに見えてもボールとなるため、凡フライになりやすい。球威のある球を投げるには、肩の強さも勿論だが、体全体を使い、球に体重を乗せることが大事である。また、一球毎に、特に勝負球は気迫を込めた投球をすることも大事である。しかし、疲れてきたり、我を忘れると、体全体を使った投球ができなくなり、気迫を込めた投球もできなくなる。
 球威があるうちは少々真ん中に球がきても打者は打てないものだが、球威がなくなったのに真ん中に球が集まれば、それはもうバッティング投手である。球威の低下は投球を受けている捕手が一番よく分かるので、捕手が制球に十分気を配るべきである。時には、大胆な構えをしてあげることも必要である。
 強打者はバットスイングのスピードが速く、手元に球を引きつけて打つことができる。それ故に、同じコースに同じ球を続けるとミートされてしまう。打者に狙い球を絞らせない配球が重要になる。「緩急をつける」「高低内外を使い分ける」「ボール球を利用する」等々配球を組み立てる。
 強打者は一般的に自信を持っており、打ち気満々であることが多い。したがって、打ち気をはぐらかす、あるいは逆に利用する配球が必要になる。例えば、「ボール球を打たせる」「緩い球を利用する」「ファールでカウントを稼ぐ」などが有効なことが多い。

 連打されると、バッテリーは平常心を失うことが多い。冷静に打たれた状況を把握し、直球を狙われたのなら、直球は見せ球に使い、変化球を打たせるようにするといった配慮が必要である。特に、中途半端な球速の速球は、球威が落ちていれば丁度打ち頃になる。十二分に考えた投球をしなければならない。また、走者を牽制したり、内野手が投手に声をかけたり、捕手のサインにわざと首を横に振ったり、ちょっとした「間」で打者に迷いを誘うことができる。

 このように、その時々の自分の力を認識し、それに応じた投球を行なえば、それなりに立ち直れる。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成10年7月20日掲載)


【幹事補足】
 師のおっしゃっていることは、つまり、「投球の極意は配球術にある」ということです。
 球速の早い投手は確かに価値があります。でも配球に工夫がなければ、打つ方にとってそれはピッチングマシーンとなんら変わりがなくなります。1順目に凡退しても、2順目、3順目には慣れてきて、タイミングがピッタリになることが往々にしてあります。
 よく草野球では、どうみても40歳近いという投手に出くわすことがあります。試合開始前の投球などを見ていると「楽に打てそうだな」と楽観視してたのに、いざ試合が始まると凡打の山を築いてしまうという経験はないでしょうか。あれこそが配球の妙なのでしょう。だからこそ速球がなくとも投手生命が長続きしているのだと思われます。【関連章:第65章
 球速が早いのは魅力的ですが、球速の早さは配球の幅を持たせるための一手段と考える方がよろしいかと思います。



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