「草野球の窓」

第66章
「肩」

【質 問】
 「肩」はどうしたら強くなるのでしょうか。メジャーリーガーみたいに体が大きくて筋骨隆々の選手が強くて速いボールを投げるのは納得できますが、イチロー選手のような細い選手が、あんなに速い送球できるのは不思議です。どうしてでしょうか。肩の強さは体のどの筋肉で決まるのでしょうか。

 読者から「肩を強くするにはどうすればよいか」という質問を頂いた。野球をやっている人なら全員肩を強くしたいと願い、強肩の持ち主に憧れる。イチローが矢のようなバックホームで封殺するのはチョーカッコイイし、内野手も三遊間や二遊間の深い位置で捕球し、振り向きざま矢のような送球で刺殺するのが憧れだ。ゲッツーを取れるか取れないかも二塁手や遊撃手の肩の強さにかかっている。投手や捕手は強肩であることが前提であることは勿論である。

 では、どうしたら肩を強くできるのか。昔はよく遠投を行ったものである。キャッチボールの際、徐々に距離を伸ばし、80〜90mの間隔で遠投する。毎日、遠投を繰り返していれば、確かに肩は強くなる。ただ、無理に届かせようと45度の角度で投げているのでは効果は少ない。低い弾道で投げることが必要である。肩を強くすることで飛距離が伸びることよりも、球速が上がることのほうが重要だからだ。ノーバウンドでもワンバウンドでも、要するに走者を刺殺することが目的であるから、捕球−送球−捕球の一連の時間が短縮されなければ意味がない。

 肩を強くするためにどのような筋肉をどのように鍛えなければならないか。昔はもっぱら二の腕から肩にかけての三角筋が重要だと考えられ、そのために腕立て伏せやバーベルを使ったトレーニングを行っていた。しかし、私は専門家ではないのでこのようなトレーニング法が最適かどうかは分からない。ある雑誌に、「ローテーターカフ」という筋肉が重要だと書いてあった。この筋肉は、肩の関節の中に入り込んでいる小さな一群の筋肉で、最近投手のトレーニング法として注目されているそうである。ゴム(自転車のタイヤチューブのようなもの)の一方を柱にくくりつけ、もう一方を手で握る。肘を直角にして、二の腕を体の横にピタリとつける。ゴムを握った拳を腹にぶつけるような動作を繰り返すのだそうである。このトレーニング法は五十肩の解消にも効果的なのだそうである。

 球速を上げるには、肩だけの問題ではない。スナップの使い方、腰の回転、投球フォーム、球の握り方など様々な要素がある。遠投をする前に、これらを一つずつ修正することの方が大事だ。悪い投げ方で遠投練習ばかり繰り返すと肩を壊してしまう危険がある。普通のキャッチボールで相手の胸に投げられない;球がシュート回転したり、カーブ回転する;という人はまずこれらを直す必要がある。

 一週間も病気で寝込むととたんに足の筋肉が落ちる。肩も同じだ。筋肉は使わないと衰える。普段からの真剣なキャッチボールが強肩を造る。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成10年7月17日掲載)


【幹事補足】
 筋肉を造るにはその基となる蛋白質の摂取が重要です。栄養的にも配慮が必要でしょう。筋肉組織は、運動によって程度の差はありますが破壊されます。それらは我々が摂取した蛋白質や体内合成したアミノ酸などによって修復されます。この破壊と修復が繰り返されることによって筋肉組織は増強していきます。ですから運動の後は修復のための蛋白質をなるべく早く摂取した方が筋肉の修復には有利です。これにはホルモンも絡んでいます。運動後には体を造るための成長ホルモンの分泌が上昇します。この成長ホルモンは運動負荷が大きいほど分泌量が増加します。野球ではポジションによって運動負荷が大きく異なりますから、試合中の運動負荷が少ないと思われる場合は、試合前の準備運動や練習などで十分に筋肉に負荷をかけておくといいでしょう。もちろんその前にストレッチを忘れずに。
 この成長ホルモンの分泌が一日のうちで最大になるのは睡眠中で、いわゆるノンレム睡眠中に最大に達し、体の組織の合成が盛んに行なわれるようになります。「寝る子は育つ」といいますが、これは嘘ではありません。これを利用して、寝る前に蛋白質を摂取しておくことは十分有効な方法です。【関連:「草野球の科学」第9章



前項に戻る 「まるドの目」メニュー 次項へ進む


草野球カレンダーチーム名簿リーグ名簿チームリンク集スポーツ安全保険草野球資料室草野球フォーラム
人材募集「まるドの目」「くまの穴」「草野球の科学」「マネージャーの声」「拝啓 新興チーム様」トップ