読者から「肩を強くするにはどうすればよいか」という質問を頂いた。野球をやっている人なら全員肩を強くしたいと願い、強肩の持ち主に憧れる。イチローが矢のようなバックホームで封殺するのはチョーカッコイイし、内野手も三遊間や二遊間の深い位置で捕球し、振り向きざま矢のような送球で刺殺するのが憧れだ。ゲッツーを取れるか取れないかも二塁手や遊撃手の肩の強さにかかっている。投手や捕手は強肩であることが前提であることは勿論である。 では、どうしたら肩を強くできるのか。昔はよく遠投を行ったものである。キャッチボールの際、徐々に距離を伸ばし、80〜90mの間隔で遠投する。毎日、遠投を繰り返していれば、確かに肩は強くなる。ただ、無理に届かせようと45度の角度で投げているのでは効果は少ない。低い弾道で投げることが必要である。肩を強くすることで飛距離が伸びることよりも、球速が上がることのほうが重要だからだ。ノーバウンドでもワンバウンドでも、要するに走者を刺殺することが目的であるから、捕球−送球−捕球の一連の時間が短縮されなければ意味がない。 肩を強くするためにどのような筋肉をどのように鍛えなければならないか。昔はもっぱら二の腕から肩にかけての三角筋が重要だと考えられ、そのために腕立て伏せやバーベルを使ったトレーニングを行っていた。しかし、私は専門家ではないのでこのようなトレーニング法が最適かどうかは分からない。ある雑誌に、「ローテーターカフ」という筋肉が重要だと書いてあった。この筋肉は、肩の関節の中に入り込んでいる小さな一群の筋肉で、最近投手のトレーニング法として注目されているそうである。ゴム(自転車のタイヤチューブのようなもの)の一方を柱にくくりつけ、もう一方を手で握る。肘を直角にして、二の腕を体の横にピタリとつける。ゴムを握った拳を腹にぶつけるような動作を繰り返すのだそうである。このトレーニング法は五十肩の解消にも効果的なのだそうである。 球速を上げるには、肩だけの問題ではない。スナップの使い方、腰の回転、投球フォーム、球の握り方など様々な要素がある。遠投をする前に、これらを一つずつ修正することの方が大事だ。悪い投げ方で遠投練習ばかり繰り返すと肩を壊してしまう危険がある。普通のキャッチボールで相手の胸に投げられない;球がシュート回転したり、カーブ回転する;という人はまずこれらを直す必要がある。 一週間も病気で寝込むととたんに足の筋肉が落ちる。肩も同じだ。筋肉は使わないと衰える。普段からの真剣なキャッチボールが強肩を造る。 これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。 (平成10年7月17日掲載)
【幹事補足】 |
前項に戻る | 「まるドの目」メニュー | 次項へ進む |