「草野球の窓」

第65章
「打てそうで打てない」

 たいして速い球ではない。変化球が多彩で鋭いわけでもない。針の孔を通すようなコントロールでもない。安打、四球、あるいは敵失で走者は散発的には出るものの、得点圏内に走者が進むのは二死後、あと1本が出ない。こんな投手だったらいつでも打ち崩せると考えていたら、結局肝心の一本が出ないまま試合が終わってしまう・・。こんな経験をよくする。

 相手投手が意識的に球を散らしているのか、無意識に荒れ球になっているのかは別として、狙い球を絞れない、あるいは絞らせてくれないのである。つまり、相手バッテリーの術中にはまってしまったのだ。その上、相手に先制点を奪われると、イライラし始め、やがて焦りとなり、気づいたときには打席で力み、悪球に手を出し、凡打を繰り返すという最悪の状態に陥ってしまう。冷静になり、ボール球には手を出さず、好球必打だと自らに言い聞かせても、いざ打席に立つと、やはりボール球気味の球を打たされている。自分だけでなく、チーム全体が浮足立っている。誰かが適時打を打てば、一変にチームのムードは変わり平常心に戻れるのだが、その1本が出ない。

 こんな時は、まず守りでリズムを取り戻すのがよい。そのためには大きな声を出す。前に述べたように、声を出すことによって雑念を排除できる。前の打席で凡打したことが頭にひっかっかっていると守りにリズムが出ない。エラーするわけではないのだが、簡単な打球を難しく処理してしまう;ヒット性の当たりを捕れないということになる。声を出し、守備に集中すれば好プレーが生まれる。好プレーが出れば、投手も調子に乗れる。三者凡退に打ち取ることができる。そして、チームのムードが盛り上がる。

 相手のムードが盛り上がるということは、敵にとってはものすごいプレッシャーとなる。当然、攻撃に移っても全員で声を出し、味方打者の気持ちを盛り上げる。今まで調子良く投げていた相手投手の調子がほんの少しだけおかしくなる。すると不思議なものである。それまで力んで悪球に手を出していた打者がじっくり球を待てるようになる。打席で粘りが出てくる。こうなれば、盗塁やバントも決まるようになり、相手にタイムリーエラーが出るようになり、適時打も生まれてくるようになる。

 野球には「流れ」がある。「流れ」が悪い時は、いい当たりが野手の正面を突く。逆に「流れ」がいい時は、当たり損ねの打球が内野安打やポテン安打になる。この「流れ」を成り行きに任せたままでは、運がいい時しか勝てない。流れを変えることが大事であり、そのためには工夫しなければならない。

これ、ゆめゆめ忘れることなかれ。  (平成10年7月12日掲載)



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