流行色の予想が当たらない。"自分色"の時代に入ったからだ。 業者が来シーズンに流行るはずのカラーを、長年の経験や研究で仕掛けても、ユーザーは自分好みの色を勝手に選ぶようになった。 型のほうは、半世紀前からその自由選びの兆候は見せていたが、いまではスカート丈の長い短いなんか個人の好み次第。長い服装史にそんな時代はない。 流行色のほうはしぶとく続いたものだ。でも、欧米のファッション・デザイナーたちは流行色にとらわれず、自分の個性で決めたカラーで作品を発表するようになった。 太平洋戦争初期、それはまさに戦時色のカーキ色が主流だ。 終戦となるや、反動的に巷は女性の服飾ファッション大流行のお色直しに変化した。 服装史の講師を続けていたころから、ファッション・ショウはいまも時代の鏡代りに見続けているが、多様な混迷時代を見せている。 そんなカラフル世界に迷い込み、行き詰まるや、白か黒の無彩色で一息つく流行の時があり、世の中混乱の時でもある。