紙芝居はアニメの原点で、芝居は映画の原点だ。
子どもは紙芝居にもアニメにも夢中になり、演劇も映像も見る。子どもは大人への原点で、いつも始まりと進歩の中にいるからだ。
昭和初期、紙芝居屋もたくさんいて、昭和十年ごろの東京市内には二千人もいたという。関東発生の子ども文化だ。
「坊や、こりゃもう使えないよ駄目だ!」ちいさな掌を広げて五厘玉を出したら、あっさり断られた幼児期のわが紙芝居屋事始めだった。
うちへ来ていた客が、一銭玉より大きいんだぞ、とからかい半分にくれたのだ。
そのショックで、紙芝居屋での買い食いは一度もせず、ずっと無料見の辛さに耐えての見物なのだった。でも、そのおじさんは、それを咎めなかった。その寛容さも敏感な子どもたちからの人気を決めるのだ。
チャンバラは活動写真、洋画はシネマとか映画と、子ども心にきめていたのは妙。その映画もカツドウも子どもには瞥沢、やっぱり紙芝居だ! でも、人気・不人気イロイロあった。よれよれの袴に学帽の・…大学は出たけれど・職が無い……無精髭、ぶっきらぼうで下手なセリフで子どもが寄り付かないとか……。日独防共協定のヒトラー人気で、ドイツ式流線形の帽子に長靴をはき、軍楽隊式ドラムで颯爽と現れるのとか……。
時を越えての紙芝居が、アニメや仮想現実ハイテク映像の中でも子どもの心を捉える魅力があるのは、アニメが原画(セル画)枚数の少ない安価な作品でも子どもを夢中にさせるのと同じ原理だ。
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