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河原崎ゼミナール日程表:2004年前期



2004年前期 テ−マ / キーワード

00 刑罰法規の解釈

  最高裁平成8.2.8
  鳥獣保護及び狩猟に関する法律を受けた環境庁告示
  「弓矢を使用する方法による鳥獣の捕獲
  捕獲の語の意味、多義的であるが、
  捕獲行為・・
  捕獲・・占有取得
  刑法8条
  未遂形態
  目的解釈
  立法目的


01. 不作違犯 保証者説、不作為による放火、判例の変遷

作為義務
保証(保障)者(人)説・・義務あるもののみが構成要件該当
作為義務の根拠(判例)
法令、夫婦の扶助義務:民法752、親権者の監護義務:民法820
大審院大7.3.23
子が親を放置、
最高裁34.7.24
加害運転手が雪中の薄暗い車道上まで運び遺棄
契約
大審院大5.2.12事実上の養父が2歳の子を世話をしない。
事務管理、病人を引取った者
条理、先行行為に基づく防止義務
最高裁昭和631.19
堕胎医師が幼児を放置し
最高裁平成1.12.15
覚醒剤注射をした者の保護義務
東高裁判昭45.5.11
被害者(歩行者)を誘って助手席に同乗させて走行中、被害者が、しきりに下車を求めたのに走行 を継続したため、被害者が路上に飛び下り重傷を負つた場合
岡山地裁昭和43.10.8
同行中の同 僚が刺されて重傷を負つた場合の同行者

管理者の管理義務・・・家屋の占有者・所有者の消火義務
慣習、同居者(雇主と同居従業員)、
大審院大正8年8月30日
一般慣例または当事者の黙契があるときは、雇主は疾病にかかつた同居の雇人を保護すべき義務を負う

轢き逃げ救護義務
法令・・道交法、判例
先行行為・・学説が多い。・・過失がなくとも法令による救護義務がある、
けがが軽くとも救護義務がある。

判例の変遷
大審院大正7.12.18:自己の占有、所有する家屋の管理者、間接的先行行為(義父が投げた燃木尻)、罪証隠滅する意思、容易に消せる。既発の火力を利用する意思
大審院大正13.3.11:自己の所有する家屋の管理者、不完全に蝋燭を立てた先行行為、保険金獲得する意思、容易に消せる。既発の火力を利用する意思
最高裁昭和33.9.9:他に宿直員がいたので、家屋の管理者ではない、大量の炭火をつけた先行行為、驚きと失策の発覚をおそれ、容易に消せる。焼毀を認識、認容
利用する意思はない

判例の類型:殺人
1 嬰児に対する食物の不給付、不救助
2 置き去り:
3 轢き逃げ:
4 医療の不給付

学説
支配下に置いた上での生命の危険が伴う遺棄/救護を引受け他の救護を排除した・・殺人
義務の程度・・・平野
等(同)価値性・・殺人

殺人
保護責任者遺棄、殺人との違い
殺意の有無
義務の程度・・・平野・・批判:両者とも死の防止
同価値か否か

02. 因果関係 
結果的加重犯を中心に因果関係の判断基準を明らかにする。特に、被害者の特異体質や、
行為後の行為者ないしは第三者の行為の介在が、因果関係の判断にどのような影響を及ぼしているのかを検討する。

意義
結果犯の場合、行為と結果の間に因果関係が必要

条件関係が必要
実行行為との間で因果関係
現に発生した結果
仮定的因果関係の排除

因果関係の断絶
因果関係の中断

合義務的な択一的挙動
昭和4.4.11大審院判決:業務上過失致死、京踏み切り事件
結果回避可能性がない場合。犯罪の証明がない

不作為犯の因果関係
期待された行為がなされたならば、結果は阻止できたであろう」との関係が必要
H1.12.15最高裁決定:保護者遺棄致死罪
保護責任の根拠
先行行為・・注射、同行?
注射との因果関係、作為犯ではないか。
傷害の故意はない。過失傷害になってしまう。

相当因果関係

判断の基礎事情
一般人が認識可能な事情、行為者が特に認識していた事情
社会生活の経験に照らして、その行為から、その結果が生じることが相当である
他人の行為の介入
S42.10.24最高裁決定;傷害致死、業務上過失致死
同乗者が引き摺り下ろすことは、経験則上予想し得ない

H2.11.20最高裁決定;傷害致死、大阪南港事件
死期を早めた。

H4.12.17最高裁決定;業務上過失致死、スキューバダイビング
補助指導者、被害者にも過失あったが、因果関係あり

S53.3.22最高裁決定;業務上過失傷害と殺人
T12.4.30大審院判決、殺害も目的で首を絞め、反抗発覚を恐れ、10数町離れた海岸に運び放置したところ、
被害者は砂を吸引し、死亡した。ウエーバーの概括的故意

客観的帰属論?・・論文を見る
事実的因果関係・・実際に発生した場合
規範的因果関係・・不発生の因果関係?
合義務的行為の不作為危険増

客観的帰属:objektive Zurechnung 、因果関係
主観的帰属:subjektive Zurechnung,責任

山口厚「相当因果関係と客観的帰属」法学教室176-66
山中敬一「刑法における客観的帰属の理論」

積極的加害意思と正当防衛の成否に関する判例を起点に、
防衛の意思の内容およびその判断構造、自招侵害に対する正当防衛の限界、
防衛行為の必要性・相当性の要件の意義について検討する。
03. 正当防衛、誤想防衛、民法との関係を含む
刑事法演習T第2回
テーマ:正当防衛

参考文献 @)松生光正「刑法判例百選」p54
A)須之内克彦「刑法判例百選」p56
B)大島一泰「刑法判例百選」p58
C)曽根威彦「誤想過剰防衛と刑の減免」法曹時報49-1-18
D)船田三雄「最高裁判所判例解説:刑事編」昭和42年度、p110

参考判例:東京高裁平成6.7.20判決(判例時報1537-181)

次の事例を読み、以下の設問に答えなさい。

事例被告人Xは、四人の男兄弟の長男であるが、自宅一階八畳の間で横臥中、前夜
来同じ室内で飲酒しながらテレビを見ていた実弟A(三男)が、聞こえよがし
に被告人Xに嫌がらせを言っているのに対し、立ち上がって、早く寝るように
言ったところ、逆に同人から食ってかかられたため、「何が気に食わないんだ。
文句があるなら殺せ」と言い返した。すると、同人は、立ち上がって被告人X
に近づき、いきなり右胸を足蹴りし、被告人Xは、後方に倒れ込んだ。
その後、立ち上がろうとした被告人Xに対しAが?みかかり、立ち上がった被
告人Xと?み合いとなった。物音を聞きつけて隣室から入ってきた末弟Bが引
き離そうとしたが、両名は離れず、移動しながらさらに揉み合った末、押入れ
の前あたりで再度倒れ込んだ。
Bは、両名を仲裁するつもりで、倒れ込んでいる被告人Xを上から押さえつけ
たところ、その後方からAが被告人Xのスエットパンツを脱がそうとして引っ
張り、また、股間を殴打したりしたため,両名から共同して攻撃されるものと
考えた被告人Xは、自己の身体を防御すると共に、日頃のAに対する恨みをも
晴らすため、咄嗟に同人殺害の意を決し、上から押さえ付けられたまま、腹這
いの姿勢で必死に押入れに付き、襖を開けてその中の段ボール箱から、刃体の
長さ約14・5センチメートルのハンターナイフを取り出して鞘を払うや、後
方に向きを変え、両膝を布団に付けた前かがみの姿勢で同人と正対し、峰を上
にして、右手に持ったナイフでAの胸を2、3回突き刺した。
被告人Xは、ナイフを持っている手で、自分を押さえつけているBを払ってど
かせ、右手首に切創を負った同人が父親に応援を求めるために立ち去った後、
なおもしがみついてくるAの胸部及び腹部を右手のナイフでさらに思い切り突
き刺し、よってその頃同所において、同人を左右肺刺創に基づく失血により死
亡させて殺害した。

設問
1 刑法上の正当防衛の意義について述べよ
2 正当防衛の要件について述べよ。
3 けんか闘争と正当防衛の違いは何か。
4 防衛行為の「相当性」と何か。
5 Aに対する関係と、Bに関する関係で、Xの責任を論ぜよ。
6 Bが仲裁するつもりではなく、Xを攻撃する意思があった場合のXの責任は、どうなるか。
7 Xがナイフを使用しないで、AおよびBを攻撃し、傷害を負わせた場合のX
の責任は、どうなるか。
8 過剰防衛で、刑法36条2項の適用される理由は何か。

【復習課題】
下記判例を読み、防衛者に積極的加害意思があった場合に、
正当防衛の規定を適用できるかについて論じる場合の問題点を整理しなさい。

判例百選p50、p48

誤想過剰防衛侵害についての誤想・・・・36U
減刑、免除の根拠
違法性減少・・・正当な利益の防衛
責任減少・・・・精神の動揺
防衛行為の過剰性についての誤想・・・過失犯


最高裁S52.7.21、積極的加害意思があるときは、急迫性を欠く
最高裁S50.11.28、積極的加害意思があるときは、防衛意思を欠く

03-2 緊急避難

緊急避難では、自招危難等の問題を検討することで、
非難行為の相当性の意義を明らかにする。

意義
要件
現在
危難
生命、財産・・列挙・・貞操、国家法益
避難の意思
やむを得ず
補充性、法益権衡
S57.11.29東京高裁判決道路交通法違反、
酒気帯び運連
避難行為
効果
違法性阻却
責任阻却
2分説
自招危難
否定説・・判例
肯定説
木村説・・故意の危難は否定、過失による危難は肯定
野村説・・原因と相当因果関係にある危難については否定
大審院T13.12.12判決、業務上過失致死
誤想避難
過剰避難


03-3 自救行為
自救行為の合法性が認められた判例
自救行為が認められた例、百選P41佐世保簡裁S36.5.15、器物損壊罪を否定
大阪地裁S40.4.23、器物損壊犯人を逮捕
岐阜地裁S44.11.26、建造物損壊罪を否定
福岡高裁S45.2.14、器物損壊、不動産侵奪を否定
4日後に回復、侵奪者の占有は未確立

03-4被害者の同意
違法性阻却の理由
@社会的相当・・・行為無価値
A優越的利益の存在・自己決定の自由
B法益性(要保護性)の欠如・個人に委ねられている

最高裁S55.11.13、保険金詐欺目的の傷害の同意
違法な目的の承諾なので、違法性を阻却しない。





04 責任
責任主義
故意、過失
責任の本質
道義的責任論・・自由な意思決定を行えるものが道義的に非難できる・・応報刑
社会的責任論・・社会にとって危険な者が、社会防衛のため刑罰を受ける地位にある・・教育刑
心理的責任論
規範的責任論・・義務違反・・期待可能性

心神喪失、心神耗弱の概念規定
生物学的方法・・精神の障害
心理学的方法・・弁識能力と統御能力
混合的方法・・生物学的方法と心理学的方法
刑事未成年・・可塑性に富む

責任能力 限定責任能力、原因において自由な行為を含む
心神喪失・・精神の障害により、@弁識能力を欠くか、A行動制御能力を欠く場合
心神耗弱・・精神の障害により、@弁識能力が著しく低い、A行動制御能力が著しく低い場合

判定基準
中田、平野:分裂病なら、原則として、無条件に責任無能力
福島:分裂病=責任無能力を否定、個別的検討が必要
判例: 心神喪失、心神耗弱に当たるかの判断は法的判断、鑑定の結論が心神喪失の状況でも、
鑑定書の記載内容、被告人の犯行時の病状、犯行前の生活状況、
犯行動機・態様を総合して、判断する。

判例の傾向: 分裂病(旧称、早発性痴呆症、統合失調症)の場合
病気が重い場合、犯行が幻覚、妄想に直接支配された場合・・・心神喪失
それ以外は・・・・・心神耗弱

分裂病で、完全責任能力を認めたのは、次の2件ある、
東京高裁昭和59.7.10、
常習累犯窃盗、分裂病は治癒・・鑑定をしていないようだ
仙台高裁昭和63.2.16
業務上過失致死・・・鑑定している

覚醒剤の場合、・・・幻覚、妄想に支配されたか、完全に支配されたら、責任無能力
覚醒剤による幻覚妄想がある場合は、精神分裂病の幻覚妄想と同じ・・・・・・責任無能力
症状は分裂病と似ているが同じではない。幻覚妄想に動機付けられた犯行を幻覚妄想に支配された犯行と見ることはできない・・限定責任能力、あるいは、完全責任能力

判例は、心神耗弱、心神喪失(覚せい剤精神病)、完全責任能力、
 
  飲酒酩酊 
  酩酊犯罪の責任能力に関しては、酩酊を単純 酩酊と異常酩酊に分け、後者をさらに複雑酩酊 と病的酩酊に分類し、単純酩酊には完全責任能 力が、複雑酩酊には限走責任能力が、病的酩酊 には責任無能力が、それぞれ原則として対応す るという考え方がこれまで一般的である(判例タイムズ854号285頁 )責任無能力・・・・強盗傷人、強姦殺人
 
  原因において自由な行為
                                                                                                                                                                                                             行為、責任同時存在の原則
間接正犯類似説・・自己を道具
行為、責任同時存在の原則修正説・・責任能力ある状態で行為を決定している
有責に無能力所帯を招いた。
弁別能力はあった。
1つの意思決定に貫かれた行為全体の責任・・西原
責任能力状態での犯意がそのまま実現されたときは、実行行為のときに責任能力なくも、責任を問える・・平野
未遂には具体的な危険を要する・・山口

限定責任能力の場合・・・減刑しない・・飲酒の際、運転意思がある場合:43.2.27最高裁決定
故意犯の場合・・・減刑しない
過失犯の場合・・・減刑しない
実行途中で心神喪失、心神耗弱に陥った場合・・・減刑しない・・激情犯
続く

05. 0527故意、事実の錯誤 法定的符合説を含む 

規範的構成要件要素の認識
最高裁昭和32.3.13:わいせつ文書の認識に関して、記載の存在の認識で足り、記載された文書がわいせつ性を具備することまでの認識は不要。
学説
裸の事実の認識、社会的・規範的意味の認識の違い。
エロ本、いやらしい、一般人であれば性的にいやらしいとかの認識が必要。


(虎ノ門)弁護士河原崎弘 電話 3431−7161