ホーム > 刑事事件 > 演習 > 日程表2004年前期
河原崎ゼミナール日程表:2004年前期
2004年前期 テ−マ / キーワード
00 刑罰法規の解釈
最高裁平成8.2.8
鳥獣保護及び狩猟に関する法律を受けた環境庁告示
「弓矢を使用する方法による鳥獣の捕獲」
捕獲の語の意味、多義的であるが、
捕獲行為・・
捕獲・・占有取得
刑法8条
未遂形態
目的解釈
立法目的
01. 不作違犯 保証者説、不作為による放火、判例の変遷
作為義務
保証(保障)者(人)説・・義務あるもののみが構成要件該当
作為義務の根拠(判例)
法令、夫婦の扶助義務:民法752、親権者の監護義務:民法820
大審院大7.3.23
子が親を放置、
最高裁34.7.24
加害運転手が雪中の薄暗い車道上まで運び遺棄
契約
大審院大5.2.12事実上の養父が2歳の子を世話をしない。
事務管理、病人を引取った者
条理、先行行為に基づく防止義務
最高裁昭和631.19
堕胎医師が幼児を放置し
最高裁平成1.12.15
覚醒剤注射をした者の保護義務
東高裁判昭45.5.11
被害者(歩行者)を誘って助手席に同乗させて走行中、被害者が、しきりに下車を求めたのに走行
を継続したため、被害者が路上に飛び下り重傷を負つた場合
岡山地裁昭和43.10.8
同行中の同
僚が刺されて重傷を負つた場合の同行者
管理者の管理義務・・・家屋の占有者・所有者の消火義務
慣習、同居者(雇主と同居従業員)、
大審院大正8年8月30日
一般慣例または当事者の黙契があるときは、雇主は疾病にかかつた同居の雇人を保護すべき義務を負う
轢き逃げ救護義務
法令・・道交法、判例
先行行為・・学説が多い。・・過失がなくとも法令による救護義務がある、
けがが軽くとも救護義務がある。
判例の変遷
大審院大正7.12.18:自己の占有、所有する家屋の管理者、間接的先行行為(義父が投げた燃木尻)、罪証隠滅する意思、容易に消せる。既発の火力を利用する意思
大審院大正13.3.11:自己の所有する家屋の管理者、不完全に蝋燭を立てた先行行為、保険金獲得する意思、容易に消せる。既発の火力を利用する意思
最高裁昭和33.9.9:他に宿直員がいたので、家屋の管理者ではない、大量の炭火をつけた先行行為、驚きと失策の発覚をおそれ、容易に消せる。焼毀を認識、認容
利用する意思はない
判例の類型:殺人
1 嬰児に対する食物の不給付、不救助
2 置き去り:
3 轢き逃げ:
4 医療の不給付
学説
支配下に置いた上での生命の危険が伴う遺棄/救護を引受け他の救護を排除した・・殺人
義務の程度・・・平野
等(同)価値性・・殺人
殺人
保護責任者遺棄、殺人との違い
殺意の有無
義務の程度・・・平野・・批判:両者とも死の防止
同価値か否か
02. 因果関係
結果的加重犯を中心に因果関係の判断基準を明らかにする。特に、被害者の特異体質や、
行為後の行為者ないしは第三者の行為の介在が、因果関係の判断にどのような影響を及ぼしているのかを検討する。
意義
結果犯の場合、行為と結果の間に因果関係が必要
条件関係が必要
実行行為との間で因果関係
現に発生した結果
仮定的因果関係の排除
因果関係の断絶
因果関係の中断
合義務的な択一的挙動
昭和4.4.11大審院判決:業務上過失致死、京踏み切り事件
結果回避可能性がない場合。犯罪の証明がない
不作為犯の因果関係
期待された行為がなされたならば、結果は阻止できたであろう」との関係が必要
H1.12.15最高裁決定:保護者遺棄致死罪
保護責任の根拠
先行行為・・注射、同行?
注射との因果関係、作為犯ではないか。
傷害の故意はない。過失傷害になってしまう。
相当因果関係
判断の基礎事情
一般人が認識可能な事情、行為者が特に認識していた事情
社会生活の経験に照らして、その行為から、その結果が生じることが相当である
他人の行為の介入
S42.10.24最高裁決定;傷害致死、業務上過失致死
同乗者が引き摺り下ろすことは、経験則上予想し得ない
H2.11.20最高裁決定;傷害致死、大阪南港事件
死期を早めた。
H4.12.17最高裁決定;業務上過失致死、スキューバダイビング
補助指導者、被害者にも過失あったが、因果関係あり
S53.3.22最高裁決定;業務上過失傷害と殺人
T12.4.30大審院判決、殺害も目的で首を絞め、反抗発覚を恐れ、10数町離れた海岸に運び放置したところ、
被害者は砂を吸引し、死亡した。ウエーバーの概括的故意
客観的帰属論?・・論文を見る
事実的因果関係・・実際に発生した場合
規範的因果関係・・不発生の因果関係?
合義務的行為の不作為危険増
客観的帰属:objektive Zurechnung 、因果関係
主観的帰属:subjektive Zurechnung,責任
山口厚「相当因果関係と客観的帰属」法学教室176-66
山中敬一「刑法における客観的帰属の理論」
積極的加害意思と正当防衛の成否に関する判例を起点に、
防衛の意思の内容およびその判断構造、自招侵害に対する正当防衛の限界、
防衛行為の必要性・相当性の要件の意義について検討する。
03. 正当防衛、誤想防衛、民法との関係を含む
刑事法演習T第2回
テーマ:正当防衛
参考文献 @)松生光正「刑法判例百選」p54
A)須之内克彦「刑法判例百選」p56
B)大島一泰「刑法判例百選」p58
C)曽根威彦「誤想過剰防衛と刑の減免」法曹時報49-1-18
D)船田三雄「最高裁判所判例解説:刑事編」昭和42年度、p110
参考判例:東京高裁平成6.7.20判決(判例時報1537-181)
次の事例を読み、以下の設問に答えなさい。
事例被告人Xは、四人の男兄弟の長男であるが、自宅一階八畳の間で横臥中、前夜
来同じ室内で飲酒しながらテレビを見ていた実弟A(三男)が、聞こえよがし
に被告人Xに嫌がらせを言っているのに対し、立ち上がって、早く寝るように
言ったところ、逆に同人から食ってかかられたため、「何が気に食わないんだ。
文句があるなら殺せ」と言い返した。すると、同人は、立ち上がって被告人X
に近づき、いきなり右胸を足蹴りし、被告人Xは、後方に倒れ込んだ。
その後、立ち上がろうとした被告人Xに対しAが?みかかり、立ち上がった被
告人Xと?み合いとなった。物音を聞きつけて隣室から入ってきた末弟Bが引
き離そうとしたが、両名は離れず、移動しながらさらに揉み合った末、押入れ
の前あたりで再度倒れ込んだ。
Bは、両名を仲裁するつもりで、倒れ込んでいる被告人Xを上から押さえつけ
たところ、その後方からAが被告人Xのスエットパンツを脱がそうとして引っ
張り、また、股間を殴打したりしたため,両名から共同して攻撃されるものと
考えた被告人Xは、自己の身体を防御すると共に、日頃のAに対する恨みをも
晴らすため、咄嗟に同人殺害の意を決し、上から押さえ付けられたまま、腹這
いの姿勢で必死に押入れに付き、襖を開けてその中の段ボール箱から、刃体の
長さ約14・5センチメートルのハンターナイフを取り出して鞘を払うや、後
方に向きを変え、両膝を布団に付けた前かがみの姿勢で同人と正対し、峰を上
にして、右手に持ったナイフでAの胸を2、3回突き刺した。
被告人Xは、ナイフを持っている手で、自分を押さえつけているBを払ってど
かせ、右手首に切創を負った同人が父親に応援を求めるために立ち去った後、
なおもしがみついてくるAの胸部及び腹部を右手のナイフでさらに思い切り突
き刺し、よってその頃同所において、同人を左右肺刺創に基づく失血により死
亡させて殺害した。
設問
1 刑法上の正当防衛の意義について述べよ
2 正当防衛の要件について述べよ。
3 けんか闘争と正当防衛の違いは何か。
4 防衛行為の「相当性」と何か。
5 Aに対する関係と、Bに関する関係で、Xの責任を論ぜよ。
6 Bが仲裁するつもりではなく、Xを攻撃する意思があった場合のXの責任は、どうなるか。
7 Xがナイフを使用しないで、AおよびBを攻撃し、傷害を負わせた場合のX
の責任は、どうなるか。
8 過剰防衛で、刑法36条2項の適用される理由は何か。
【復習課題】
下記判例を読み、防衛者に積極的加害意思があった場合に、
正当防衛の規定を適用できるかについて論じる場合の問題点を整理しなさい。
判例百選p50、p48
誤想過剰防衛侵害についての誤想・・・・36U
減刑、免除の根拠
違法性減少・・・正当な利益の防衛
責任減少・・・・精神の動揺
防衛行為の過剰性についての誤想・・・過失犯
最高裁S52.7.21、積極的加害意思があるときは、急迫性を欠く
最高裁S50.11.28、積極的加害意思があるときは、防衛意思を欠く
03-2 緊急避難
緊急避難では、自招危難等の問題を検討することで、
非難行為の相当性の意義を明らかにする。
意義
要件
現在
危難
生命、財産・・列挙・・貞操、国家法益
避難の意思
やむを得ず
補充性、法益権衡
S57.11.29東京高裁判決道路交通法違反、
酒気帯び運連
避難行為
効果
違法性阻却
責任阻却
2分説
自招危難
否定説・・判例
肯定説
木村説・・故意の危難は否定、過失による危難は肯定
野村説・・原因と相当因果関係にある危難については否定
大審院T13.12.12判決、業務上過失致死
誤想避難
過剰避難
03-3 自救行為
自救行為の合法性が認められた判例
自救行為が認められた例、百選P41佐世保簡裁S36.5.15、器物損壊罪を否定
大阪地裁S40.4.23、器物損壊犯人を逮捕
岐阜地裁S44.11.26、建造物損壊罪を否定
福岡高裁S45.2.14、器物損壊、不動産侵奪を否定
4日後に回復、侵奪者の占有は未確立
03-4被害者の同意
違法性阻却の理由
@社会的相当・・・行為無価値
A優越的利益の存在・自己決定の自由
B法益性(要保護性)の欠如・個人に委ねられている
最高裁S55.11.13、保険金詐欺目的の傷害の同意
違法な目的の承諾なので、違法性を阻却しない。
04 責任
責任主義
故意、過失
責任の本質
道義的責任論・・自由な意思決定を行えるものが道義的に非難できる・・応報刑
社会的責任論・・社会にとって危険な者が、社会防衛のため刑罰を受ける地位にある・・教育刑
心理的責任論
規範的責任論・・義務違反・・期待可能性
心神喪失、心神耗弱の概念規定
生物学的方法・・精神の障害
心理学的方法・・弁識能力と統御能力
混合的方法・・生物学的方法と心理学的方法
刑事未成年・・可塑性に富む
責任能力 限定責任能力、原因において自由な行為を含む
心神喪失・・精神の障害により、@弁識能力を欠くか、A行動制御能力を欠く場合
心神耗弱・・精神の障害により、@弁識能力が著しく低い、A行動制御能力が著しく低い場合
判定基準
中田、平野:分裂病なら、原則として、無条件に責任無能力
福島:分裂病=責任無能力を否定、個別的検討が必要
判例:
心神喪失、心神耗弱に当たるかの判断は法的判断、鑑定の結論が心神喪失の状況でも、
鑑定書の記載内容、被告人の犯行時の病状、犯行前の生活状況、
犯行動機・態様を総合して、判断する。
判例の傾向:
分裂病(旧称、早発性痴呆症、統合失調症)の場合
病気が重い場合、犯行が幻覚、妄想に直接支配された場合・・・心神喪失
それ以外は・・・・・心神耗弱
分裂病で、完全責任能力を認めたのは、次の2件ある、
東京高裁昭和59.7.10、
常習累犯窃盗、分裂病は治癒・・鑑定をしていないようだ
仙台高裁昭和63.2.16
業務上過失致死・・・鑑定している
覚醒剤の場合、・・・幻覚、妄想に支配されたか、完全に支配されたら、責任無能力
覚醒剤による幻覚妄想がある場合は、精神分裂病の幻覚妄想と同じ・・・・・・責任無能力
症状は分裂病と似ているが同じではない。幻覚妄想に動機付けられた犯行を幻覚妄想に支配された犯行と見ることはできない・・限定責任能力、あるいは、完全責任能力
判例は、心神耗弱、心神喪失(覚せい剤精神病)、完全責任能力、
飲酒酩酊
酩酊犯罪の責任能力に関しては、酩酊を単純
酩酊と異常酩酊に分け、後者をさらに複雑酩酊
と病的酩酊に分類し、単純酩酊には完全責任能
力が、複雑酩酊には限走責任能力が、病的酩酊
には責任無能力が、それぞれ原則として対応す
るという考え方がこれまで一般的である(判例タイムズ854号285頁
)責任無能力・・・・強盗傷人、強姦殺人
原因において自由な行為
行為、責任同時存在の原則
間接正犯類似説・・自己を道具
行為、責任同時存在の原則修正説・・責任能力ある状態で行為を決定している
有責に無能力所帯を招いた。
弁別能力はあった。
1つの意思決定に貫かれた行為全体の責任・・西原
責任能力状態での犯意がそのまま実現されたときは、実行行為のときに責任能力なくも、責任を問える・・平野
未遂には具体的な危険を要する・・山口
限定責任能力の場合・・・減刑しない・・飲酒の際、運転意思がある場合:43.2.27最高裁決定
故意犯の場合・・・減刑しない
過失犯の場合・・・減刑しない
実行途中で心神喪失、心神耗弱に陥った場合・・・減刑しない・・激情犯
続く
05. 0527故意、事実の錯誤 法定的符合説を含む
-
故意
-
未必の故意
- 表象説・・・修正:蓋然性説
- 意思説・・・修正:認容説
- 故意説:厳格故意説、制限故意説、責任説
-
具体的事実、抽象的事実
- 法律の錯誤:狸、狢事件
- 事実の錯誤、
法定的符号説 ----- 故意の個数
-
最高裁S53.7.28、鋲打ち銃
- 数故意説・・無傷の者に対する未遂は認めないのでは?
- 一故意説・・
- 具体的符合説
-
抽象的事実の錯誤:
法定的符合説
構成要件的符合説・構成要件の重なり合いを実質的に考える
法益、行為の共通性
客体の共通性
違法な薬物との認識では足りない。
-
最高裁S61.6.19麻薬(コカイン)と誤認して、覚醒剤を所持
軽い麻薬所持罪の故意が成立
-
最高裁S54.3.27覚醒剤と誤認して麻薬輸入、禁制品輸入罪ではなく、無許可輸入罪が成立
-
-
規範的構成要件要素の認識
最高裁昭和32.3.13:わいせつ文書の認識に関して、記載の存在の認識で足り、記載された文書がわいせつ性を具備することまでの認識は不要。
学説
裸の事実の認識、社会的・規範的意味の認識の違い。
エロ本、いやらしい、一般人であれば性的にいやらしいとかの認識が必要。
- 違法性の意識、必要説、不要説
- 法定犯、自然犯の区別
- 法律の不知05-1 過失論
旧過失論・・違法性の本質を法益侵害の結果の惹起危険と言う結果無価値に基づき、故意と過失は責任形式、予見可能性、結果回避可能性
故意・・構成要件該当事実の認識・予見
過失・・構成要件事実の認識・予見可能性
故意過失は、構成要件、違法性では同じ、故意過失は、責任要素ないし責任形式
新過失論・・行為無価値、結果義務違反との違法要素
一定の基準行為からの逸脱。義務違反(法益侵害の、危険の予見可能性を要求しているので、折衷的理論)
行政取締り法規違反の結果的過重犯
新新過失論・・
危惧感説:結果の具体的予見可能性不要、結果は、客観的処罰条件
|
実行行為の内容 |
処罰の限定 |
予見可能性 |
|
行為無価値論 |
結果回避義務違反 |
結果回避義務違反の判断/予見可能性、結果回避可能性判断 |
結果回避義措置を選択特定するための基準を提供。
内容は、結果回避義務を基礎付ける程度でよい |
|
結果無価値論 |
法益侵害の危険性ある行為 |
予見可能性の判断 |
結果を規制するための条件。
内容は、違法結果責任を基礎づける高度な予見可能性が必要 |
|
業務上過失(判例百選P121の説明)
作為に危険性が含まれる
不作為に危険性が含まれる
- 社会生活条の地位に基づき・・・社会と接点のない日常家事、育児を除く
- 反復、継続性・・・・
- 生命、身体に危険な行為・・・当該被害者ではなく、社会一般に被害が及ぶ
重過失
06. 0603違法性の意識 故意の要件か、法律の不知
- 違法性の意識は故意の要件か
- 不要説---判例 38条の法律とは違法性を意味する
- 必要説
- 厳格故意説
- 自然犯・法定犯区別説 法定犯では必要
- 準故意説 法律の過失は故意に準ずる
- 可能性説
違法性とは
事実の錯誤と法律の錯誤
- 鑑札のない犬
- 鑑札のない犬は他人の所有物ではない
- 鑑札のない犬は殺してもよい。
判例
- 可能性説 一般違法性説
- わいせつの認識 38条3項の問題
- 狩猟法違反、狸、貉(むじな)
動物学上は、狸は、狢を包含する。
習俗では、区別
- 事実の錯誤:判例 おかしい 法律の錯誤
- わが国では古来狸と貉を区別してきた
- 両者を別物と思うのは無理からぬ
- 犯意を阻却・・・事実の錯誤
- むささび もま
- 法律の錯誤:判例
むささびが捕獲を禁止されているが、もまは別物と信じてもまを捕獲した
- 公衆浴場法違反
- 営業許可申請変更届受理された
- 営業の譲渡、相続の場合・・・新たな許可が必要
- 最初の営業名義の変更
- 無許可営業の故意がない
07. 教唆犯 、間接正犯
S58.9.21最高裁決定
12歳の幼女の顔にタバコの火をつけて窃盗をさせた--間接正犯
畏怖し、意思抑圧されている
H13.10.25最高裁
母親が12歳10月の子に具体的指示を与えて強盗--共同正犯
計画、教示、道具与え、領得命令
平成13年10月25日最高裁
上記認定事実によれば、本件当時Bには是非弁別の能力があり、被告人の指示命令はBの意思を抑圧するに足る程度のものてはなく、Bは自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処し
て本件強盗を完遂したことなどが明らかである。これらの事情に照らすと、所論のように被告人につき本件強盗の間接正犯が成立するものとは、認められない。そして、被告人は、生活費欲しさから本件強
盗を計画し、Bに対し犯行方法を教示するとともに犯行道具を与えるなどして本件強盗の実行を指示命令した上、Bが奪ってきた金品をすべて自ら領得したことなどからすると、被告人については本件強盗
の教唆犯ではなく共同正犯が成立するものと認められる。したがって、これと同旨の第一審判決を維持した原判決の判断は、正当である。
未遂の教唆・・未遂に終わらせる意思で教唆・・結果発生の可能性なし・・結果が発生したら過失犯
教唆の未遂・・共犯の従属性・・未遂犯処罰規定があれば、犯罪成立
08. 共同正犯 過失の共同正犯を含む、
共謀共同正犯
共謀共同正犯
S33.5.28最高裁
共同意思主体の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議
共謀共同正犯
@ 知能犯・・恐喝罪
A 実力犯
B 法定犯
1 共同意思主体
2 間接正犯類似・・・藤木・・互いに相手を道具として利
用
3 正犯者として行為支配
4 共同実行に意思に基づいた犯罪実行
5 自分の思うように犯罪実行
6 優越支配共同正犯
7 実行の分担に指摘する役割分担
8 実質的な共同惹起、共同実行
存在理由・・背後の大物、実質的主犯、63条で、従犯が必要的減刑になっている
ことに対する対処
幇助犯との区別
見張り
判例
自己の犯罪か、他人の犯罪か.
学説
主観説
自己の犯罪をおこなう意思
他人の犯罪に加担する意思、
形式的客観説
実行行為の一部を分担したもの
実行行為以外の加担行為
実質的客観説
犯罪の実現に重要な役割
従属的な役割
共同正犯か幇助犯か
主観説、自己の犯罪か、他人の犯罪か
形式的客観説
実行行為の一部を分担したか
実質的客観説
実質的に見て、重要な役割を果たしたか
共同正犯 実行行為、すなわち構成要件に該当する行為を行なうもの
共同正犯 犯罪を共同して実行するもの
共同実行
意思の連絡
「甲は殺意をもって、乙は傷害の意思で、
行為をともにする意思で、丙に対して発砲したところ、乙の1発だけが命中して丙が死亡した」
命中した玉が誰ものか不明の場合
- 行為共同説ー 甲 殺人既遂、 乙 傷害致死罪の共同正犯
- 犯罪共同説 共同正犯が成立しない。 傷害致死の範囲内
過失の共同
法定の除外量以上のメタノールを含有する液体を、これを含有しなないものと軽信して
販売した。 判例あり
有毒飲食物取締令違反
過失にも実行行為あり(不注意行為の共同)
理論 不注意行為の共同
実定法上の解釈
実益
両名どちらの売った液体によって死傷の結果が生じたか不明の場合
販売行為の共同あり
名古屋高判31・10・22
失火の共同正犯
佐世保簡裁
過失往来妨害
京都地裁
業務上過失致死罪
名古屋高判61・9・30
原審 業務上失火罪の同時犯
業務上失火罪の共同正犯
溶接作業中に他方は火花飛散を監視
共同実行の意思が根拠
結果発生の危険を伴った行為の共同
作業の相互監視が必要な場合であろう。
同時犯でも責任問える事件である。過失の共同正犯を認めると、過失による教唆、幇助、過失犯に対する教唆、幇助を認めるのか
共同実行の事実 実行行為の分担
強盗 一人が暴行脅迫、1人が物を取る
見張り 判例 共謀共同正犯
一般的には幇助犯
強盗現場でも佇立 監禁罪 実行行為
過失の共同正犯
犯罪共同説
新過失論
危険行為の共同・・違法行為の共同
行為共同説
間接幇助・・従犯の従犯
最高裁S41.7.17決定、認める。
旧規定、61条1、正犯に準ず
62条2 従犯を教唆したるもの従犯に準ず
この規定が改められた意味
片面的共同正犯・・否
片面的従犯・・・・肯
最高裁平成4.6.5決定
共犯と過剰防衛・・個別的に判断
共犯と錯誤最高裁S25.7.11
抽象的事実についての錯誤でも重なり合う限度窃盗教唆で、強盗
09. 実行未遂、着手未遂、中止犯 減刑の根拠は何か
着手
主観説・・犯意の成立が遂行的行為で確定的に認められた
形式的客観説(厳格な形式的客観説:構成要件の一部が行われた、修正形式的客観説:構成要件該当行為に密接な行為、
実質的客観説、法益侵害ないし構成要件実現の具体的危険
行為危険説
結果危険説
予備と中止
自首を条件とした必要的減免内乱予備
私戦予備
情状による任意的減免
殺人予備
身代金誘拐予備
減免規定なし
外患予備
強盗予備
通貨偽造準備
中止未遂
1意義 自己の意思で
政策 後戻りのための黄金の橋
違法性が減少
責任が減少
2 要件 必ずしも、道徳的な悔後でなくも、積極的、自発的にやめればよい。
フランクの公式
目的到達することができたとしても、これを欲しない。
中止犯 目的到達することを欲したとしても、できない。
障害未遂
ドイツ 必ず不処罰
判例 外部的原因がないのに内部的原因により、即ち犯人に意思にかかわらざる事情により、強制せられることなく、任意に実行を中止もしくは結果の発生を防止した場合
短刀で胸を刺し流血を見てやめた 障害
目的物の不発見 障害
驚愕 障害
止めた場合
実行行為の中止 結果の発生の防止
障害未遂
着手未遂
終了未遂: 実行未遂
3 効果
減刑 必要的
予備・陰謀の中止
A判例・一部の学説 否定 放火予備、殺人予備、誘拐予備には、裁量的免除規
定あり
強盗予備には、免除規定なし
B一部の学説 予備・陰謀にも、中止未遂の規定を適用すべき
強盗の予備で着手しないと2年以下の懲役
着手して中止すると刑の免除可能
中止の場合は、必要的免除
基準になる刑は予備の刑、既遂の刑
大塚
共犯と中止
共犯の離脱:着手前に離脱は予備の共犯?
10. 不能犯 危険説
古い客観説、相対不能、絶対不能
具体的危険説
客観的危険説
11. 予備罪 予備の共同正犯を含め
他人予備
基本的構成要件の実行があるか。
予備の共同正犯
79条、153条
予備と中止
最高裁判決昭和37.11.8
12. 共犯と身分、必要的共犯
- 主観的な目的も身分、営利目的のない者には通常の刑を科す:最高裁42.3.7判決、営利目的の麻薬輸入、身分は継続的なものではないかとの疑問あり、
- 最高裁32.11.19:65条1項で、業務上横領罪の共同正犯が成立、業務上占有者との身分のない共犯者には、2項により単純横領罪
- 窃盗犯人は事後強盗罪において身分、大阪高裁昭和62.7.17、不真性身分は、通常の刑は、暴行、脅迫、既遂、未遂は、窃盗で決める。しかし、身分犯説だと、実行行為は暴行、脅迫となり、これで、既遂、未遂を決めるのではないか。
238条所定の目的をもって、暴行脅迫を行ったものが結果的に財物を取ったかで決める。事後強盗罪を、非身分犯・結合犯とし、暴行、脅迫だけの関与者は承継的共同正犯とする説もある。ただし、
65条1項、2項の解釈
- 1項は、構成的身分の連帯作用、2項は、加減的身分の個別作用を・・判例、通説
- 1項は、共犯の成立、2項は、加減的身分の刑の個別作用・・団藤
- 1項は、行為の違法身分の連帯作用を、2項は、行為の責任身分の個別作用・・平野、山口
13. 罪数
牽連犯
主観的牽連・・・少数
客観的牽連・・・判例、通説
普通に用いられる手段、当然の結果
主観的客観的牽連・・一部の判例・・折衷説
犯罪構成要件上、手段、目的、原因、結果
犯罪目的が実現せず、他の罪に発展することが予定されている罪
包括一罪
従前は、同一構成要件に該当する複数の犯罪であった
混合的包括一罪:異なる構成要件の包括一罪
最高裁昭和61年11月18日判決:覚せい剤を窃盗あるいは詐欺で奪った後、拳銃を発射して重症を負わせた。
窃盗罪あるいは詐欺罪と、2項強盗未遂罪の包括一罪として、重い後者の刑で処断する。
共犯と罪数
幇助犯の罪数は正犯の罪数で決め、処断上の幇助犯の罪数は、幇助犯による
・・・最高裁昭和57.2.17決定
演習ホーム
登録 2004/4/13
(虎ノ門)弁護士河原崎弘 電話 3431−7161