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2014.4.24mf訂正

回帰分析、近似曲線を使用した高額所得者の基礎収入率計算
(より適正な養育費、婚姻費用算定のために)

弁護士河原崎弘
平成15年4月、 裁判官グループは、給与所得年2000万円(自営の場合は1409万円)までの義務者の場合の、養育費、婚姻費用について簡易な算定表を発表しました。しかし、それ以上の収入のある方、高収入の方の場合の基礎収入の計算方法、従って、養育費、婚姻費用の算定方法がわかりません。高収入の場合の基礎収入率(割合)が発表されていないため、(租税公課、職業費、特別経費を控除した)基礎収入の 計算ができないからです。
いくつかの審判例では、家庭裁判所は、基礎収入率(割合)を使わず、基礎収入を個別的に計算 していました。
弁護士としても、高額所得者が支払い義務者である養育費、婚姻費用の額が予測できないと、困ります。

そこで、2000万円以下の基礎収入率をデータとして使って、2000万円超の場合の、基礎収入率を予測できないかと考えました。法律の世界にエクセルの分析ツールが使用できないかを試みました。具体的には、エクセルに搭載されている回帰分析、指数近似曲線、対数近似曲線を使いました。
この予測の最大の欠点は、サンプル(データ)の少ないことです。高額所得者の養育費、婚姻費用の審判がいくつか出てくれば、このツールを利用して比較的正確な基礎収入率を予測できます。

回帰分析、近似曲線の作成過程は次の通りです。 以下の例(指数近似曲線まで)は、給与所得者の基礎収入率です。

回帰分析

下に回帰分析を使った結果を示します。


回帰分析の結果とグラフ
上記係数を使う   

得られた計算式

回帰分析で得られた計算式は、下記の通りです。 基礎収入率は下記数式で算出できます。

基礎収入率=40.607 - 0.0047×年収(単位・万円)

この数式の欠点は、描く線が直線であり、グラフでわかるとおり、いずれ、基礎収入率がゼロになることです。
収入が0から2000万円までの人の基礎収入逓減率が、2000万円以上の人の基礎収入の逓減率と同じになり、不都合です。
手作業で計算すると、次の通りの結果が出ました(小数点第3位で四捨五入)。
x = 40.604 / 0.0047 の計算式において、 基礎収入率をゼロ、すなわち、x にゼロを代入( x = 0 )して計算すると、年収 8639 万 7872 円で、基礎収入率は、ゼロになり、以後、はマイナスになります。これでは、実用になりません。

年収・万円基礎収入率・%
3,00026.51
5,00017.11
8,0003.01
1億0,000- 6.39

指数近似曲線

下に指数近似曲線を使った結果を示します。R2 の値が、対数近似曲線の場合より低いです。信頼性は低いです。
収入と基礎収入率についての指数近似曲線

得られた計算式

近似曲線作成過程で得られた計算式は下記の通りです。

基礎収入率=40.644 e-0.0001x

自然対数の底 e のマイナス乗です。e^ - x で、計算可能です。
関数電卓で、2ndF ボタン ex ボタン +/- ボタンで計算可能、exp では計算不可。
エクセルでは、exp 関数で計算可能。
手作業で計算すると、次の通りの結果が出ました(小数点第3位で四捨五入)。

この数字は、実際の基礎収入率とは、ずれている感じがします。

年収・万円基礎収入率・%
3,00030.11
5,00024.65
8,00018.26
1億0,00014.95
1億2,00012.24
1億5,0009.07
2億0,0005.50

対数近似曲線

対数関数の描くグラフが、性質上、初め急激に減少し、その後、緩やかに減少することを利用しただけで、数値が一致しているわけではありません(サンプルが多くなれば、一致します)。それが欠点です。
対数近似曲線は、R-2乗値(R2の値)が1に近く、指数近似曲線の場合より信頼性は高いのです。

給与収入の場合

収入と基礎収入率についての対数近似曲線

事業所得の場合

自営の場合の所得と基礎収入率についての対数近似曲線

得られた計算式

上記近似曲線を作成する過程で計算式が得られます。その計算式は、下記の通りです。
対数近似曲線を使った場合、基礎収入率を下記の通りの数式で算出します。
この方式は、2000万円前後で累進税率が最高になり、以後、税率が同じであることは、考慮されていません。

給与収入(単位:万円)
基礎収入率=- 2.3285 Ln(x) + 51.521

事業所得(単位:万円)
基礎収入率=- 2.6726 Ln(x) + 66.873

Ln は、関数です。 y = ln (x) は、x = e ^ y と同じです。e は自然対数の底ですので、x = exp (y) とも書けます。
関数電卓では ln(x) ボタンで、エクセルでは ln(x) 関数で、計算可能です。
手作業で計算すると、下記表の結果が出ました
給料1億円で基礎収入率 30.07%、給料1億5千万円で基礎収入率 29.13%です。ある程度妥当です。しかし、裁判官が、これを使って審判をすることには、まだ、抵抗があるでしょう。
支払い義務者が高額な収入のあることは明確だが、基礎収入算定に必要な資料提出を拒否する場合に、1つの計算方法として裁判所に提出したら、どうでしょう。

高額所得者の基礎収入率表
年収入(給与)
年所得(事業)
万円
給与
基礎収入率
事業
基礎収入率
3,00032.8845.5
4,00032.2144.7
5,00031.6944.1
6,00031.2643.6
7,00030.9143.2
8,00030.5942.9
9,00030.3242.5
1億0,00030.0742.3
1億2,00029.6541.8
1億5,00029.1341.2
1億8,00028.7140.7
2億0,00028.4640.4
3億0,00027.5139.3
5億0,00026.3338.0
10億0,00024.7136.1
50億0,00020.9731.8
100億0,00019.3529.9

以上を資料として 高額所得者用の基礎収入率計算機を作りました。


登録 2013.9.16

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