新・山の雑記帳 9

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 1.最 新 の 雑 記 帳
 最終的には満足して登り終えた代替の山  2017.9 記

 念願の小太郎山  2017.9 記

 目からウロコのコースを辿って天狗岩、奥千丈岳  2017.8 記

 念願の白岩岳  2017.6 記

 残雪の蝶ヶ岳  2017.6 記

 大満足の乗鞍岳  2017.5 記

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最終的には満足して登り終えた代替の山  2017.9 記

9月5日に小太郎山に登り、体力不足・運動不足を実感したが、 ここは毎日 8,000歩以上歩くことを励行するとともに、できるだけ数多くの登山を行って立て直すしかない。 そこで、9月13日は晴れとの予報であり、何の予定もないことから早速山に出かけることにする。
行き先であるが、少し身体に負荷を与えた方が良いと考え、大弛峠からの甲武信ヶ岳往復にトライすることにする。
この奥秩父の山域については、東の雲取山から飛竜山、将監峠、唐松尾山、笠取山、雁峠、古礼山、水晶山、雁坂峠、雁坂嶺、破風山、木賊山、甲武信ヶ岳と、 小間切れながらも繋いできており、また国師ヶ岳から西は大弛峠、朝日岳、金峰山、そして瑞牆山と繋いでいるので、 この大弛峠−甲武信ヶ岳間だけが未踏の山域として残っているのである。

従って、いつか歩きたいと思ってはいたものの、行程が長く山中一泊は必要なため実行は半ば諦めていたのであった。
しかし、先日大弛峠から天狗岩に登ったことで、大弛峠からの往復なら日帰りできるのではないかと思い付き、今回実行することにしたものである。 今までは標高が2,360mもある大弛峠からの登山スタートは “良しとせず” の心境であったのだが、年齢を考えると、 少し柔軟に考えても良いと思えるようになってきた次第である。
なお、地図のコースタイムでは往復 11時間40分、これならば何とかなりそうであるが、難関は復路の国師のタルから国師ヶ岳への登り返しで、 疲れてきている終盤に 460m超の高低差を克服しなければならないのが少々気に懸かるところである。

9月13日(水)、2時50分に横浜の自宅を出発する。前日が雨だったためか、空には雲が多いものの、当該山域は晴れの予報である。
いつも通り横浜ICから東名高速道下り線に入り、圏央道、中央自動車道と進んで、勝沼ICで高速を下りる。
その後も通り慣れた道を進んで国道140号線に入り、西沢渓谷方面へと進む。途中、牧丘トンネルを抜けた先で左折して県道219号線に入れば、 後は大弛峠までほぼ道なりである。
まだ暗い中、ブドウ畑が多く見られる村落を抜けて山へと進む。杣口浄水場の横を過ぎたところで 1台の車と擦れ違う。
通勤の車なのか、まだ 5時前というのに大変だなあと思ったのだが、この擦れ違いには訳があったのである。

クネクネとした山道を進み、この道が琴川ダムへの道であることを示す 「こ」、「と」、「か」・・・ (間隔はかなり空いている) と書かれた標識を順調に通過していくと、突然目の前に道路を横切っている倒木が現れる。
まさかと思って車を止め、倒木に近寄ってみると、右の法面にある木が根の部分を法面に残したまま倒れており、木の上部は左のガードレールに載っていて、 高さ 1m程のバリケードができあがっているのである。
木の直径は 20センチ近くあり、押してもビクともしない。これではこの先に進むのは無理であり、後からやって来た 2台の車に状況を説明した後、 やむなく来た道を戻ることにする。
成る程、先程擦れ違った車はこのことが理由で戻ってきたものであると納得する。

これで本日の山行計画はおじゃんであるが、高速代を払ってここまで来たのだから、 このまま引き返す訳には行かず、どこの山を代替にするかと考えながら山道を下る。
一方、あの状態をそのままにしておくのもまずいと思い、市民の義務をどうやって果たすべきか ということも考えていたところ、 ふと西沢渓谷に向かう途中、三富に駐在所があったことを思い出す。
そこで、登る山を甲武信ヶ岳か雁坂嶺・破風山にすることにして国道140号線まで戻り、三富の駐在所に車を止め、そこから日下警察署に電話を入れる。 これで一安心。その後、西沢渓谷へと向かい、道の駅みとみに車を駐めたのは 5時25分であった。

車内で朝食を食べながらこの後のことを考え、雁坂峠から雁坂嶺、破風山に登り、その後元気があれば甲武信ヶ岳まで登ることにする。
ただ、このルートは過去 2回歩いており、しかも雁坂峠までの行程は今年の 3月に引き続いてのことになるので、あまり気乗りがせず、 モチベーションが低いままに 5時34分に出発する。
振り向けば、木賊山から鶏冠山にかけての稜線に朝日が当たり始めており、本日は予報通り快晴のようであるが、 こうなると本来の計画を実行できなかったことの悔しさが増してくる。

前回と同じく、国道140号線を少し戻り、途中から釣り場の方へと進む。 釣り場の横、コンクリートの坂道を登っていくと、『 → 雁坂峠登山道入口 』 と書かれた立派な標識と案内図が現れ、道はそこから山道に入る。
まだ暗い樹林の中を一登りすればすぐに林道に飛び出すので、道を左にとって国道140号線の鶏冠山大橋の下を潜る。
すぐに飯場跡が見えてくるが、その手前に新しい工事用の現場事務所が立っている。鶏冠山大橋の耐震補強工事を行っているようだ。
林道を進み、やがて 5時56分に雁坂トンネル手前の駐車場横を通過する。しかし、この傾斜のある林道歩きに息が上がる。
士気が下がっていることもあるのだろうが、それにも増して身体が怠く感じられる。1週間前に登った小太郎山の疲れが残っている訳でもなかろうが、 とにかく身体が重く、もし本日の計画がそのまま実行されていたら、途中で引き返すことになったかもしれないという状況である。

それでも黙々と林道を歩き、沓切沢橋を渡って、6時27分に山への取り付き口に到着する。
やはり体調は芳しくなく、この時点で、どこで折り合いを付けて戻ることにしようかと考えるまでに至る。
山に取り付きジグザグに登る。この辺は山の陰になるので、陽が当たらず、まだ薄暗い感じである。
6ヶ月前の記憶通りの道を進む。異なっているのは足下に雪がないことだけで、この道は良く踏まれていて歩き易い。
さらには途中から道はほぼ平らになるので怠い身体には大変ありがたい。
前回はその飛沫で周囲が凍っているために通過がかなり危うい場所であった沢を横切りさらに進んで行くと、 やがて左下方の久渡沢がいくつかの滝によって徐々に高さを上げ、登山道との高低差が縮まってくる。
そして、右からの沢を横切ると、道は久渡沢の河原に入る。時刻は 6時54分。

2分程久渡沢の左岸を進んだ後、丸木橋を渡って右岸へと渡る。すぐに道は左手の斜面に取り付き、その斜面を横切るように進む。
この頃には、雁坂峠まで登れば一応メンツが立つので、雁坂峠までにしようと考えるまでになっており、ただ惰性で足を進める。
やがて、道の両側に紫の花が咲くトリカブトの群落が現れる。トリカブトは有毒であるが、その花は美しく、その名の通り兜を被っているようである。 さらに兜の下方は嘴のように飛び出ていてやや黄色く、その姿はペンギンを彷彿させる。あまり花には興味がないが、 今回はこのトリカブトの姿に癒やされ、少し元気をもらう。
ほぼ平らに近い道を進んでいくと、やがて井戸ノ沢を横切ったところからは暫く登りが続くようになる。やはり、本日の身体には登りが辛い。
おまけにこの先の状況もよく分かっているため、ため息が出る始末、やはり本日は調子が最悪である。

道は沢から離れて高度を上げていく。この頃になると、周囲に陽が当たり始めるが、意外に空には雲が多い。
足下にササが多く見られるようになると、やがて道は斜面をジグザグに登るようになる。少し登れば富士山が見えてくるが、期待に反し、 富士山はその縦半分が雲に隠れてしまっている。
そして、富士山の右手に見える毛無山付近には全く雲が無いものの、さらに右手の黒金山方面には雲がかかっている。
これでさらにテンションが下がり、本日は雁坂峠までと再度決心して登り続ける。

ここからは何回か富士山が見えるようになるが、見る度に富士山にかかる雲は変化しているので、 どうやら富士山本体が雲に巻き込まれているのでは無く、その手前側に雲が湧き上がっているということが分かる。
ということは、うまくすれば富士山が良く見えるようになる可能性もある訳で、確かに、途中で富士山の頂上部分をしっかりと見ることができたのだった。
この富士山頂上が見えた所で少し休憩する。余程水分が不足していたのであろう、500mlのビタミンウォーターを一気飲みしてしまう。
その後、道は斜面を横切って進むようになるが、冬場に比べて足下のササがかなり煩くなっている。
前方を見れば、水晶山と思しき高みが見えている。

道はやがて、左手のササ原の斜面をジグザグに登るようになる。
息を切らせ、喘ぎつつ登る。もうすぐ雁坂峠と分かってはいるものの、足がなかなか進まない。
途中振り返れば、富士山はスッカリ雲に隠れてしまっており、黒金山、国師ヶ岳、北奥千丈岳にも雲が多く絡んでその頂上が確認できない。
怠い身体に鞭打って何とか登り続けると、やがて先の方にベンチと標示板が見えてくる。漸く雁坂峠に到着である。時刻は 8時46分。
倒れ込むようにしてベンチに腰掛け、暫し休憩する。

しかし、ユックリ休み、食事をしてアミノバイタルも飲んだことで少し元気が出てきたのか、 山の頂上を踏まずに戻るのは悔しいという思いが強くなり始める。とは言え、体調に自信がないため、散々迷ったものの、結局 頑張って雁坂嶺まで足を延ばすことにする。
ところで、本日は大弛峠−甲武信ヶ岳を目差していたため、手元の地図 (2009年 金峰山/甲武信) にはこの雁坂峠が載っていない。
辛うじて右端に雁坂峠から破風山 (西破風山) まで 2時間20分との記述があるのだが、当然 雁坂峠−雁坂嶺間の時間が分からない。
道の方は明瞭のはずであり、何回も歩いているので心配ないのであるが、やはりこの先の時間の目安を知りたいところである。
と思ったら、この雁坂峠には 『 奥秩父案内図 』 が掲げられていて、そこに時間が書かれていることに気が付く。
そこに書かれている時間を見ると、雁坂峠−雁坂嶺間は 30分、雁坂嶺−東破風山間が 50分、東破風山−西破風山間が 25分とある。 これなら何とかなると思い、9時5分に峠を出発する。

少し登ると、右手に岩場の高みがあったのでそちらに進んでみる。 そこから振り返れば、唐松尾山が見え、さらにはその左後方、北へと延びる尾根上に東仙波、そして和名倉山が見えている。 また、目の前には 3月に登った水晶山が大きい。
緩やかに尾根を登っていく。足下にはササが多く、周囲はあまり背の高くないコメツガなどが生え、また所々に露岩が現れる。
傾斜はさほどキツクないので、このまま何とか登って行けそうである。
樹林の切れ間から左手を見ると、富士山を覆っていた雲が少し左に移り、うっすらではあるが再び山頂が見えるようになる。

傾斜の方はさらに緩やかになるが、一方で樹林は密度が増し、その中に立ち枯れの木々が目立つようになる。
足下のササも密度を増して、なかなか気持ちの良い斜面であるが、やはり立ち枯れが多いことが気になるところである。
一時、奥秩父近辺の立ち枯れは酸性雨が原因といわれていたが、どうやら今はその説は一般的ではないようで、 花崗岩が表土の下に多いために保水性が弱いところに、日当たりの良さ、風の強さ、そして残雪が根を不活性にするなどの要因によって、 木々が乾燥ストレスにかかるためとの説が有力とのことである。
立ち枯れの中、傾斜がほぼなくなったので もう頂上かと思ったが、それ程甘くはなく、先の方に新たな高みが見えてくる。

道はその高みに向けて再び傾斜が出始める。
道の左右には相変わらず立ち枯れが多いが、一つ気になるのは幼木が全くといってよいほど見られないことである。 このままでは雁坂嶺は禿げ山、否、ササ原の山になってしまうのではないかとの危惧さえ抱く。
再び傾斜も緩み始めたので、そろそろ頂上かと思ったのだが、なかなか頂上標識は現れない。先程の 『 奥秩父案内図 』 によれば、 雁坂嶺まで 30分とのことであったが、既に 30分以上経過している。
自分の足の衰えはここまで来たのかと少々悲しい気持ちになりながらほぼ平らな道を進んでいくと、道は再び傾斜がつき始め、 その登り着いた先が三等三角点のある雁坂嶺頂上であった。時刻は 9時47分。

頂上はほぼ樹林に囲まれているが、一部樹林が切れて南面が少し開けている。
しかし、ほとんどガスと雲に覆われていて、毛無山だけがうっすら見えただけであった。
さて、先程までは雁坂嶺の頂上を踏んだら引き返そうと思っていたのだが、少し身体の調子も良くなってきたこともあって、 このまま引き返すのは勿体ないという思いと、あの道を戻るのは面白味が全く無いように思え、そのことに心理的抵抗感さえ覚えるようになる。
一方、このまま先に進んでしまえば、何とか破風山を乗り越えたとしても、破風山避難小屋から木賊山への登りがかなりキツイので、 それも厳しいかなと思えてしまう。

どうしようかと迷っていると、ふと破風山避難小屋から林道へと下るバリエーションルートがあることを思い出す。
このルートは西沢渓谷から破風山避難小屋の直下まで延びている鶏冠山林道 (東線) まで下り、暫く林道を下った後、 林道をショートカットして西沢渓谷まで下りるというもので、時々ヤマレコにもその記録が載っている。
このルートに前々から興味があったので、これは良い機会と思い、もう少し頑張って進むことにする。
しかしそれにしても、気分の良い稜線歩きが続いたことによって、登りも苦痛ではなくなり、登高意欲が出てきたのには我ながら驚いたのであった。

頂上で 2分程休んで下りに入る。少し進むと展望が開け、東破風山へと続く尾根、そして東破風山、西破風山の姿が見えるようになる。
その尾根上には立ち枯れ、ササ原などが見え、それ程アップダウンがないようなので気持ちよく歩けそうである。 ただ、東破風山への登りは少々厳しいかもしれない。
また、西破風山の後方に見える木賊山にはガスが掛かっており、その頂は見ることができない。従って、 ますますバリエーションルートによる下山を成し遂げたいとの気持ちが強くなる。

その尾根歩きであるが、思った通り気持ちが良い歩きができる。
立ち枯れの中、時々差す日差しを浴びながら気分良く進んで行く。体調の方はすっかり回復したのか、身体の怠さもなくなり、 登ることが億劫とは思わなくなる。
このルートは 2回ほど通っているにも拘わらず、意外と新鮮に思えることもプラスに作用しているようである。
考えたら、前回 (2010年12月) は初冬で雪が積もっていたので、今回は前回とは全く雰囲気が違うからなのかもしれない。
道はほぼ平らになり、正に木の墓場といったような立ち枯れの木のみが何本も立つ中を進むようになる。展望もあり、気持ちが良いが、 これ程の立ち枯れはやはり問題であろう。救いは、先程と違って幼木が足下に見られることで、しっかり代替わりして欲しいものである。
なお、木の隙間から見える富士山であるが、やはりガスというか雲が絡み気味で、時折その一部が顔を出すといった状態である。

やがて立ち枯れの林は終わりとなり、道は緑濃いシラビソの林に入る。
と思ったら、またまた立ち枯れの林が現れる。道の方は小さなアップダウンはあるものの総じて歩き易く、身体の方も楽である。
左手を見れば、いつの間にか富士山がその頂上部分を雲の上に出している。やはり、この縦走路には富士山の姿が不可欠である。
また樹林帯に入った後、そこを抜け出すと、展望が開けて前方に東西の破風山が見通せるようになる。 しかし、その後方の木賊山はガスで姿が全く見えない。富士山も頂上部分が見えているが、先程よりも下の雲が上がってきている。
その後、また暫く樹林帯に入り、そこを抜けるとまたまた立ち枯れの林が現れる。立ち枯れが多いのは問題であるが、 足下にはササ原が広がっていて全体的に明るく、歩くのには気分の良い場所である。

樹林帯、立ち枯れの状態が交互に繰り返される中、何回目かに樹林帯を抜けると、 目の前に東破風山が見えてくる。やはり遠目に見た時よりも斜面は急に見え、厳しそうである。
振り返れば、先程通過した雁坂嶺が見えており、そのボリューム感には少々驚かされる。富士山の方も再び周囲に雲が多くなり、 もはや頂上部分を残してアップアップの状態である。
なお、富士山の手前に鉄塔らしきものが頂上に立つ山が見えるが、もしかしたら三窪高原かもしれない。 また、さらに目を手前に引けば広瀬湖が見えている。

周囲に大きな岩が現れ出すと、やがて道は東破風山への登りに入る。
途中、ササ原の中に四等三角点を示す白い表示杭が立っているのが目に入る。ササ原に入って杭に近づいてみると、そこには金属標があり、 しっかり四等三角点の文字が刻まれていた。
ここが手元の地図の端に辛うじて書かれている 2,180m (正確には、四等三角点は 2,178.2m) ということになるのかもしれない。
東破風山の標高は 2,260mなので 80m程の高低差しかないが、傾斜が徐々に急になるとかなり厳しく感じられるようになる。 原因は体調の方ではなく、登りがほぼ一直線だからで、ここは兎に角ひたすら登り続けるしかない。足下には岩も現れ息が上がる。

四等三角点の所から 20分弱登り続けると、漸く傾斜が緩み始め、前方の樹林の間に頂上標識の一部が見えてきてホッとする。
東破風山到着は 10時47分。雁坂嶺からここまで 1時間を要したことになるが、先程の 『 奥秩父案内図 』 によれば、 この間のコースタイムは 50分ということなので、またまた自信をなくす。
この東破風山の頂上も樹林に囲まれて狭い場所ではあるものの、木々の隙間から展望は得られるはずであるが、今や周囲はガスで真っ白、何も見えない。
岩に腰掛けてノドを潤し、10時49分、先へと進む。前方を見ると、西破風山の頂上部分が見えており、かなり高く感じられる。
遠くから見ると東破風山・西破風山は台形を為しているように見えるが、その上底部分は平らとはいかないようである。

それでも出だしはほぼ平らな尾根道が続く。
シャクナゲやシラビソの木々の中を 2分程進むと、展望が開けて、背の低いクロベ (ネズコ)、ハイマツなどが生えている、 岩がゴロゴロした場所に飛び出す。ここはいつ来ても日本庭園のようで雰囲気が良い場所だと思うのだが、実際は岩が多く少々歩きにくい。
道は再び樹林帯に入った後、再度岩がゴロゴロした場所を過ぎると、一旦下り、そこから目の前の高みに向かっての登りが始まる。
一登りして傾斜がほぼなくなると、今度はまたまた岩が重なった中を進むことになる。岩は先程よりもかなり大きく、少々歩きにくい。
漸く岩の道が終わったかと思うと、またまた岩が現れ、少々煩わしい。

岩に登って前方を見れば、西破風山が結構な高さで見えている。
何回か断続的に現れる岩の障害物を抜けると、暫くは平らな道が続くものの、すぐに西破風山への登りに入る。
この登りも厳しいかと思ったのだが、意外に簡単に登ることができ、道が平らになってきたかと思うと、先の方に破風山の標識が見えてくる。
頂上到着は 11時20分。東破風山から 31分要しており、『 奥秩父案内図 』 記載のタイムよりも 6分ほど多くかかってしまったことになる。

ベンチに腰掛けて地図を見ると、先程も述べたように、 雁坂峠からここまで 2時間20分とある。一方、『 奥秩父案内図 』 記載のタイムの方は合計すると 1時間45分になる。 『 奥秩父案内図 』 の方がかなり厳しめの所要時間になっていると納得する。
因みに小生は 2時間15分 (休憩含み) を要しており、やはり時間がかかっていることは間違いない。
なお、この三等三角点のある西破風山頂上も樹林に囲まれていて展望はほぼ無い。

ユックリ休んで 11時28分に出発。 暫くシャクナゲ、シラビソ、コメツガなどの生えるほぼ平らな道が続くが、樹林帯を抜けると展望が一気に開けるとともに、 そこからは急坂の下りが待っている。
下った先には破風山避難小屋が見え、その周囲はササ原が広がっている。そしてその後方に目を向けると、木賊山は相変わらず頂上部分がガス (雲) に覆われてしまっている。
もし、破風山避難小屋からのバリエーションルートが見つからなかった場合には、そこを登っていかねばならず、 急であることに加えて展望の無い登りを考えると気が滅入る。是非ともバリエーションルートを見つけたいところである。

ここからの下りは、露出した岩の上を進むのだが、 一方で道の周囲はコメツガ、クロベ、ハイマツ、シャクナゲといった背の低い植物がビッシリと覆っていて、 遠くから見たら草地の斜面を下っている様に見える面白い場所である。
ということは展望も素晴らしい訳で、高度感ある下りにワクワクする場所でもある。
滑らないように慎重に岩の上を伝って下る。木賊山を見れば、右側からガスが上がってきて山全体を覆っており、 ますます木賊山を回避したくなる。

気持ちの良い斜面もやがて終わりとなり、道は樹林帯を下る。
傾斜も緩み、土手状の道を進むようになると、左手に今まで見えなかった黒金山が見えてくるが、その周囲は相変わらず雲である。
富士山の方も今や雲が頂上の真下まで上がってきており、頂上の一部が少しだけ見える程度である。
周囲にササ原が目立つようになると、立ち枯れが現れ、そこを過ぎて少し下れば破風山避難小屋の前に飛び出す。時刻は 11時58分。
なお、『 奥秩父案内図 』 では西破風山からこの避難小屋まで 30分とあり、この下りだけはそのコースタイム通りであった。

小屋前のベンチにて休憩。周囲を見回すと、南に下るササの斜面にピンクテープが点々とつけられているのが見える。
どうやらあのテープを辿っていけば林道に下れるようだと分かりホッとする。ただ、水場もほぼ同じ方向にあるはずなので、水場への道標かもしれず、 そこは用心せねばならない。

12時4分に小屋を出発。左手を振り仰げば、西破風山が高い。
ササ原に足を踏み入れる。テープは 2つのルートがあるようで、最初は左手のルートを進んでしまったものの、 あまりにも足下が良く踏まれている感があり、さらにはテープの中に古いものも混ざっているので、これは水場へ通じるルートと判断し、 右手の斜面上にあるテープの方へと移る。ヤマレコに、上側 (右手) のテープを辿れば良いとあったとことを思い出したためである。
しかし、こちらはササが煩い。足下 2〜30センチ程のササ原の中、斜面を横切って進むのだが、あまり踏まれていないことで足下が平らではないため、 谷側の足 (左足) が滑りやすく、さらにはササの下に枯れ枝などが隠れていて、足を取られることが多い。

バランスに気をつけながらササ原を下って行く。
踏み跡は薄く、あまり人が通っていないことが分かるが、ありがたいことにテープの方は短い間隔でつけられているので、迷うことはない。
静かな樹林帯の中、クマでも現れるのではないかとビクビクしながらテープを忠実に追っていく。
ササに悩まされながら下って行くと、急にササの密度が低くなり、ササの中に道らしきモノが現れる。ホッとするが、逆にそのことが、 突然 『 水場 』 ということになりはしないかとの心配をもたらす。
しかし、手元の地図 (避難小屋の記載はある) には、小屋から水場まで 20分とあったので、現在 20分を過ぎても水場に至っていないことから、 どうやらこのテープを辿っていけば間違いないようである。

短い間隔でつけられているテープを追っていくと、突然左手上方からのテープの流れと合流する。
傍らの木には赤ペンキで左上方への矢印も書かれている。もしかしたら、水場からの道なのかもしれない。
ピンクテープを追うのを楽しみながら下って行くと、道はやがて支尾根に入り、足下の道もかなり明瞭になってくる。
右下には川の流れがあるようで、一時、樹林越しに滝のようなものが見えたが、これが地図上にある幻の滝なのかもしれないなどと思いながら下る。
そして、いつの間にか足下のササはなくなり、シャクナゲが多く目立つ様になって、ところどころにシャクナゲのトンネルが現れる。
そのシャクナゲが切れた所にて左手下方に林道が見えたが、まだそこまでかなり距離がある。
また黒金山も見えるようになり、確実に西沢渓谷方面へと進んでいることが分かりホッとする。

やがて道は崖の縁に飛び出す。崖の下は広場になっているので、どうやら林道の終点のようである。
道の方は崖を直接下るのではなく、右側から崖の際を通って下って行く。そして、12時55分、林道終点に下り立つ。
ここからは荒れた林道歩きが始まる。ガードレールに沿って崖の縁を左に回っていくと、こちらは崖が大分崩れており、崩れた岩の横を通って橋を渡る。
橋には 『 昭和50年12月竣巧 』 とあるので、42年前にできたことになるが、いつ頃からこの林道は使われなくなったのであろう。
橋を渡って少し進むと、崖の上から水が流れ落ちている。立ち寄ってノドを潤し、顔を洗ってサッパリする。

未舗装の林道歩きが続く。先程、林道が使われなくなったのはいつからかと書いたが、 林道には新しい轍がいくつも残っているのでまだ現役らしい。 また、林道脇には五輪塔のように石を積み重ねたものがいくつか見られるようになる。どういう意味があるのであろう。
なお、少し進んで振り返ると、西破風山、そして避難小屋のある笹平の鞍部が見える。そして、その鞍部の左手下方に滝が見えている。
恐らくあれが幻の滝と思われるが、遠目でありながらも急峻な岩肌を幾筋も水が流れている姿はなかなか見事である。

さて、林道歩きが続くが、次の懸案は、林道からの下降点が見つけられるかということである。 尤も、そのまま林道を歩き続けても、歩く距離は長くなるものの西沢渓谷には辿り着けるのだが・・・。
20分程歩いたところで、右のガードレール脇の木にピンクテープがつけられているのが見えてくる。これが下降点かと思ったが、 下を覗いてみるとピンクテープなどは見られない。ここは林道を歩き続ける。
さらに数分後、右のカーブミラーの所に手作りの五輪塔もどきが 2基並んでいるのが見えてくるが、ここも下降点ではないようである。
その後もピンクテープが 2回ほど現れたが、どちらも下降点ではないようなのでそのまま歩き続ける。
もしかしたら下降点を見落としたのかもしれないと思いつつ歩き続けていくと、今度は右手のカーブミラー、そしてその手前の木にいくつものピンクテープがつけられているのが見えてくる。
どうやらここが下降点のようで、確かにそこから右に下る緩やかな斜面にピンクテープが見えている。これで一安心。時刻は 13時29分。

カーブミラーの所から樹林帯に入り、ピンクテープを追いながら斜面を下る。
テープは先程の避難小屋からのルートに比べてかなり疎らではあるものの、下草の全く生えていない地面には踏み跡らしきものも見え、 またテープが見つからない場合は少し身体の位置を変えたりすると、テープのついた木が見つかったりする。
展望の無い、退屈な下りが続く。道は途中から細い緩やかな支尾根上を下るようになるので、道間違いの心配はほとんどない。
早く新たな展開が現れることを願いつつ黙々と下って行くと、前方にテープが 2段に巻かれている木が現れ、 そこからは今まで下って来た支尾根を外れて右側の斜面を下るようになる。時刻は 13時48分。

これでもうすぐ近丸新道 (登山道) に合流かと思われたのだが、 そこからも暫くは緩やかに下り、支尾根のさらに支尾根を下るように進む。
その支尾根が急斜面にて行き止まりになったところで左に下り、そこからは斜面を横切るように下っていく。
いつまでこの道は続くのかとイライラし始めた頃、右下方に林道が見えてくる。林道というのもおかしいなと思いつつ、テープを追っていくと、 道は斜面途中で折り返して戻るようになり、やがて林道がかなり近くに見えてくる。

この辺はやや道が不明瞭なので、傾斜の緩そうなところを選んで林道に下り立つ。時刻は 14時2分。
林道を下っている方向に少し進むと、前方に工事用の現場事務所が現れ、そこから少し進むと、下方に、 西沢渓谷の 『 ねとりインフォメーション 』 の特徴的な屋根が見えてきたのであった。
どうやら、近丸新道に下り立つのではなく、先程の林道をショートカットして林道起点に出たようである。
その 『 ねとりインフォメーション 』 の前には 14時5分に到着。そこからは暫く舗装道を歩き、道の駅みとみには 14時24分に戻り着いたのであった。

本日は倒木による道路封鎖により目的地変更を余儀なくされ、急遽 雁坂嶺、破風山に登ることになってしまった。
従って、モラールの上がらない、気乗りのしないスタートとなってしまい、また途中での体調不良もあって雁坂嶺、破風山には申し訳なかったが、 それでも登っている内に徐々に身体の調子も出てきて、稜線に出てからは結構楽しむことができたのであった。
加えて、気になっていたバリエーションルートも辿ることができ、代替の山ではあったものの、最終的にはかなり楽しめた登山であった。


念願の小太郎山  2017.9 記

7月19日に天狗岩、奥千丈岳等に登ったものの、その後、家のリフォーム完了に伴う引越、 そして引越後の荷物の整理に追われてしまい、さらには引越疲れが溜まったところに天候不順が続いたことで体調を崩し、 とうとう 8月の山行はゼロに終わってしまった。
漸く体調の方は回復したものの、それでも背中と肩がかなり重く感じられるため行きつけの整体治療院に行ったところ、背中がカチカチの状態で指が入らない程だそうで、 年を取ったら 1ヶ月に 1回ほどは整体に通った方が良いとのアドバイスまで戴く始末。
当然、この 1ヶ月半ほどは運動不足に陥っており、一方で食欲は一向に衰えないことから、自分でも腹の肉が邪魔だとハッキリ感じるようになってしまい、 何とかせねばとの焦りを覚える。

ということで、体調も回復した今、リハビリを兼ねて山に行くチャンスを窺っていたのだが、今度は天候の方がスッキリしない。
そんな中、漸く 9月5日は秋雨前線も少しおとなしくなり、晴れ間が出そうだとのことなので、早速 山に出かけることにする。
さて行き先であるが、ここは是非とも南あるいは北アルプスに登りたいところである。しかし、1ヶ月半ぶりの山であることから少し不安もある訳で、 あまり山奥に入り込むのは無謀と考え、最終的に南アルプスの小太郎山に登ることにする。

小太郎山は北岳から北に派生する尾根 (小太郎尾根) 上にあり、北岳に登る度に気になっていたのであるが、 一般的にこの小太郎山だけを目差すことはないようで、小生も近くに日本第二の高峰があるのを無視して、 この山だけに登ることに少々抵抗を覚えていた次第である。
無論、健脚な方は日帰りにて北岳とともにこの小太郎山にも登っているのだが、小生の今の体力では日帰りにて二兎を追うことはとても無理なため、 リハビリを兼ねた登山であるならば小太郎山のみに登るのも “ あり ” と自分を納得させた次第である。

9月5日(火)、2時40分に横浜の自宅を出発する。
前日の雨の名残か、空には雲が多く、星は全く見えない状態であるが、ここは天気予報を信じるしかない。
いつも通り横浜ICより東名高速道 (下り線) に乗り、海老名JCTからは圏央道へと進んで、八王子JCTにて中央自動車道に入る。
空模様は相変わらずの状態の中、甲府昭和ICにて高速を下り、国道20号線を長野方面へと進む。暫く国道を進んだ後、 竜王立体手前から側道を進んで左折し県道20号線に入る。後は芦安まで道なりである。

芦安の第三駐車場には 4時58分に到着。車内で朝食を食べ、タクシー乗り場へと進む。
平日にも拘わらず、駐車場は 6〜7割程埋まっており、タクシー乗り場にも 20人近くの登山者が並んでいる。
本日は小太郎山と決めているので、あまり慌てず、自ら 4番目のタクシーを選んで乗る。
相変わらず空には雲が多く先行きに不安を覚えたものの、広河原へと進むに連れて少しずつ青空が広がり始め、 さらには林道途中にて青空をバックにした北岳、間ノ岳が見えて不安が一気に吹き飛ぶ。

広河原到着は 6時14分。トイレなどを済ませて 6時26分に出発する。ゲートを過ぎ、少し進むと左手に北岳の姿が見えてくる。
林道で見たとおり、その後方には青空が広がっているが、稜線の背後に薄い雲が見えているのが少々気になるところである。
吊橋を渡り、広河原山荘の横を通って山に取り付く。かなりゆっくりの出発であったため、小生の後ろにはあまり人が居らず、前方に数人の登山者がいるのみである。
久々の登山とあって体力が心配であったのだが、意外と足が進み、数人を追い抜く。しかし、後から考えると、これは久々の登山であるためにアドレナリンが多く分泌されていただけのようである。

樹林の中を緩やかに登っていくと、登山道上に水の流れが現れ、さらに進んで行くと、 白根御池分岐点に到着する。時刻は 6時47分。
帰りはいつも通り、草スベリ、白根御池小屋経由にてここまで戻ってくる予定であるが、まずは真っ直ぐ進んで大樺沢二俣を目差す。
水の流れに沿って樹林帯を進む。この道は 5回ほど歩いているのでもう慣れたものである。
やがて、樹林が切れて再び北岳が見えるようになる。背景にうっすらと雲が流れているものの、本日はほぼ天気予報通りで、 久々に山頂からの展望も期待できそうである。また、振り返れば、高嶺、赤薙沢ノ頭が良く見えている。

木橋にて沢を渡ると、今度はすぐに鉄パイプの橋を渡ることになる。ここからは北岳の他、八本歯ノコルも見ることができる。
このパイプ橋付近からは暫くの間 北岳を見続けることができるが、やがて道は樹林帯に入り、また展望の無い登りが続くようになる。
小さな岩がゴロゴロした道を登っていくと、道は少し下って再び沢を横切った後、またまた登りが続く。
歩き始めてから 1時間以上経っており、この辺から少し疲れを感じ始める。やはりスタミナ不足のようである。

7時40分に 『 二俣・チップ制公衆トイレ 約1時間 』 と書かれた標識を過ぎ、 その後すぐに河原に飛び出して鉄パイプ製の橋を渡る。
少し登って振り返れば、高嶺の右後方に白き花崗岩が目立つ赤抜沢ノ頭も見えている。
そして、そこから 10分程樹林帯を進んで行くと、前方がパッと開け、再び北岳が姿を現す。
薄い雲が混じっているとは言えその後方には青空が広がり、またすぐ目の前には黄色い花のハンゴンソウの群落、そして北岳の左には八本歯ノコルとその下方に雪渓が少し見えている。
なかなか絵になる光景に心躍り、本日は北岳を目差すのではないことが非常に残念に思われるが、ここは初志貫徹である。

さらに高度を上げて振り返れば、赤抜沢ノ頭の右手に鳳凰三山の 1つである観音岳も見えるようになる。
道の方は大樺沢の河原沿いを進んでいく他に、そこよりもやや上の斜面を横切る道もあり、いつもは河原沿いを行くのだが、本日は大樺沢二俣から右俣コースを登るつもりなので、 上側の道を進む。
前方を見れば、八本歯ノコルへと向かう左俣コース上に雪渓が良く見えるようになるが、さすがにこの時期、雪渓はかなり小さくなっている。
少し息を切らせつつ緩やかに登っていくと、やがて、前方にバイオトイレが見えてくる。二俣はもうすぐである。
そして 8時19分、大樺沢二俣に到着。岩に腰掛けて暫し休憩。
出だしは良いペースできたものの、さすがに運動不足のためスタミナは持たず、かなりくたびれてしまった。

少し長めに休憩し、8時28分に出発。
この二俣からは道が 3つに分かれており、右に戻るようにして斜面を登っていけば白根御池に至り、右手に見える大樺沢右俣沿いの道を進めば北岳肩ノ小屋へと至り (右俣コース)、 そしてそのまま直進して大樺沢左俣を進めば八本歯ノコルへと進むことなる (左俣コース)。
小太郎山を目差すには右俣コースを進むことになるのだが、ここからは全く初めてのコースとなり、ワクワク感が増してくる。
右俣左岸沿いに登る。こちらは左俣コースに比べて緑も多くて明るく、北岳を左に長めながら楽しく登っていくことができる。
但し、見上げれば目差す稜線はかなり上方に見え、そこまでの距離に少々怯んでしまう。

オンタデと思しき黄白色の花が咲く道をジグザグに登る。
こちらへ進む人がほとんどいないのは予想通りであったが、逆にこちらを下山路に使う人が多いようで、結構 人と擦れ違う。
確かに草すべりを下るよりは、こちらの方が下りやすく、また景色も良いので、然もありなんといったところである。 本日は完全にピストンになってしまうが、小生もこのコースを下山に使うことに方針変更する。

道はこのままずっと右俣を詰めていくのかと思っていたところ、 残念ながら気持ちの良い景色とは分かれ、途中から道は右に曲がって林の中に入っていく。これは少々残念。
しかし、樹林帯に入っても所々で展望が開けるので結構 楽しませてくれる。鳳凰三山方面も良く見え、 観音岳の右には薬師岳が見えるようになるが、地蔵岳の方は赤抜沢ノ頭に隠れてしまっていて見ることができない。
道は急斜面をジグザグに登っていく。先に述べたように、こちらのコースは遅い時間ならば北岳肩ノ小屋を目差す人が使うことが考えられるものの、 今の時間帯に登りに使う人はほとんどいないと思っていたのだが、やがて下方から足の速い若者 2人がやって来た。
かなりのスピードで羨ましい限りであるが、こちらのコースを使うとはどういうことであろう。もしかしたらこの後 小太郎山を往復した後、 北岳まで登って日帰りするのかもしれない。

と思っていたら、今度は 7、8人程の若者が登って来た。こちらも先程の 2人程ではないが、かなり早い。
全員がほぼ同じペースで登っているので、それなりの経験者なのであろう。
一方、小生の方はやはり運動不足がたたってペースが上がらない。時々樹林が切れて姿を見せる北岳に励まされながら登り続ける。
天候の方は快晴といっても良い状況で、直接日差しが照りつけてくるが、ジリジリという状況ではなく、秋の日差しの柔らかさが感じられる。
ダケカンバの林の中を進む。時折 上方に稜線が見えるがまだまだ遠い。

やがて、北岳が好く見通せる場所に到着する。
ここで 5分程休憩してノドを潤したが、そこから少し登ると樹林帯が終わって、台地状の場所に飛び出す。時刻は 9時21分。
休むのであればこちらであったと悔やんだものの、このコースは初めてなのでこれは致し方ないところである。
ここは台地状の広場に岩が点在しており、休憩にはもってこいの場所である。
すぐ左手には北岳が迫力ある姿を見せており、その後方には雲一つ無い青空が広がっている。
また、斜面を見上げれば、林とともに草地が続く箇所もあり、もう少し早い時期であればこの辺は見事なお花畑になることが想像される。
ただ残念なのは、登山道右手に鹿除けの柵が立てられていることで、植生保護のため致し方ないとは言え、少々興ざめである。

道はその柵に沿って登っていく。少し高度を上げて振り返れば、 赤抜沢ノ頭から高嶺へと続く稜線の後方に地蔵岳のオベリスクと思しき突起が見えている。これで鳳凰三山揃い踏みである。
道は再びダケカンバが目立つ樹林帯に入るが、その樹林帯もそう長くは続かず、道は草の斜面の真下に出る。この斜面も 7月頃は見事なお花畑になることであろう。
振り返れば、高嶺、赤抜沢ノ頭 (その後方に地蔵岳)、観音岳、薬師岳、そして辻山と続く稜線が見え、さらには目を凝らすと、 赤抜沢ノ頭と観音岳との鞍部後方にうっすらとドーム型の山が見えている。恐らく先日登った国師ヶ岳、北奥千丈岳と思われるがどうであろう。

丸太の階段を登っていくと小さなベンチがあり、そこを過ぎると、 道は草の斜面をジグザグに登っていくことになる。北岳も良く見え、気持ちの良い場所であるが、長く続く登りは身体に応える。
再び樹林の中を進んだ後、樹林を飛び出せば、道は斜面を横切るようにして高度を上げていき、前方に今度は八ヶ岳が見えてくる。
八ヶ岳の下方は雲に覆われているものの、赤岳、阿弥陀岳の頂上付近に雲は全く無いので、あちらも好展望を得ていることであろう。
本日は、久々に展望を得られる天気となり嬉しい限りである。

やがて、道は白根御池から登ってくる草スベリと合流する。時刻は 9時57分。
ここからは右手に鹿除けの柵が現れ、その柵に沿って登っていく。見上げれば稜線はかなり近くに見えるが、ここからの距離は意外と長い。
草と灌木の斜面を登る。途中で道が 2つに分かれることになったが、真っ直ぐの道はそのまま斜面を直登するようであり、左手の道は少し回り道をしているように思えたので、 真っ直ぐに進むことにする。
しかしこれが失敗であった。左が正規の道で、この直登の道は足下が崩れやすく登り辛い上に、急斜面でかなり息が上がる。
それでも、すぐに正規の道に合流するであろうと思っていたのだが、なかなか合流せず、とにかく息を切らせて登り続ける。
疲労もかなり増してきており、少し登っては立ち止まって上を見上げるという所作が続く。

草の斜面の先には稜線が見え、その後方には青空が広がっているので、もう少しと自分を叱咤しながら登り続ける。
かなり高度を上げてきたので、足下が少し危うい中、振り返ると、何と北岳の左、ボーコン沢ノ頭から池山吊尾根へと続く斜面の後方に富士山が見えるではないか。
八ヶ岳同様、こちらも下方は雲海の中であるが、五合目付近より上が完全に雲を突き破って露出している。
山で富士山を見るのは久々なのでとても嬉しくなる。これで少し元気を貰い、喘ぎつつも登り続けていくと、やがて正規の道に合流する。
すぐ右には丸太の階段が見え、その先はもう稜線のようである。

そして、10時13分、漸く稜線に到着。
右手の小スペースへと進むと、甲斐駒ヶ岳の姿が目に飛び込んでくる。甲斐駒ヶ岳は花崗岩によるクリーム色の山肌が雪のようで素晴らしいのだが、 こちらからは本峰に加えて東峰も見えるため頂上が意外と横に広く、ピラミッド型ではなく富士山のような形なのが少々残念なところである。 それでもやはりその姿にテンションが上がる。
また、甲斐駒ヶ岳の右下方には摩利支天が見え、その左手前にはアサヨ峰が見えている。アサヨ峰から左に続く稜線は、甲斐駒ヶ岳の手前を横切って栗沢山へと続き、 栗沢山の後方、甲斐駒ヶ岳から左に下る斜面の先には駒津峰が見えている。

なお、ここには 『 小太郎分岐点 』 と書かれた、標示板部分が二つに折れてしまっている標識があるのだが、 ここよりさらに北岳方面へと登ると 『 小太郎山分岐点 』 と書かれた標識が立っているはずである (前回 北岳に登った際に確認済み)。
ただ、わざわざその 『 小太郎山分岐点 』 まで進まずとも、ここからも小太郎山に行ける訳で、壊れかけた標識の所からハイマツ帯の中を進み、 稜線の北側へと進む。すると一気に展望が広がる。
まずは目差す小太郎山、そしてそこまで続く小太郎尾根を一望することができるようになる。小太郎山の後方には栗沢山とアサヨ峰を結ぶ稜線が見え、 さらにその後方に甲斐駒ヶ岳が見えている。この素晴らしい光景に小太郎尾根を進むのが大変楽しみになる。

また、先にも述べたように、甲斐駒ヶ岳の左には駒津峰が続くが、 さらにその左に双児山が続き、双児山の後方には鋸岳が見えている。
そしてさらに左、北西の方向を見やれば、仙丈ヶ岳がドッシリとした姿を見せている。
また、良く目を凝らせば、仙丈ヶ岳の右手後方には北アルプス、そして左手後方には中央アルプスが見えており、 この素晴らしい景色にテンションがますます上がる。
しかし、これが失敗であった。周辺に人が多かったこともあり、またテンションが上がった勢いで、そのまま小太郎尾根に足を踏み入れてしまったのだが、 先程までの登りでヘバリ気味だったことを考えると、この分岐で食糧、水分を補給すべきであった。

道の方は下りから始まる。木々のない岩とハイマツの尾根は展望が素晴らしく、 上記で述べた山の他、八ヶ岳、蓼科山、鳳凰三山 (地蔵岳のオベリスクがかなり迫り上がってきている) などの山々が見え、 さらに鳳凰三山の後方に広がる雲海の上には小川山、金峰山、国師ヶ岳・北奥千丈岳といった奥秩父の山々が島のように浮かんでいる。
甲斐駒ヶ岳を正面に見ながらの下りが続く。この小太郎山への道は地図上では破線になっているが、道は明瞭で、所々に青テープ、 そしてペンキ印も見られる。

かなり下ってくると、小太郎山からの登山者と擦れ違う。 この時間、前日に北岳に登り、北岳肩ノ小屋などに泊まった方が、ついでに小太郎山を往復しているようで、 小生が小太郎山の頂上に着くまでに 5人程と擦れ違う。
しかし、北岳へと向かうメインルートに比べれば、かなり人数は少ない。
また、この辺は二重山稜になっていて、道は左側 (西側) の稜線を下って行く。

下り斜面は一旦緩やかな道へと変わるが、その先で岩場の短い下りに入る。 その後また緩やかになった道は、ハイマツ帯の左手を進んだ後、岩場の先から急斜面の下りとなる。なお、二重山稜はここで終了となっている。
この急斜面は砂礫が多く滑りやすい。慎重に斜面を下り終えると、また歩き易い稜線上の道が続く。

この辺の展望は素晴らしく、よくよく見れば、鋸岳の左方に横岳、 そして先日登った白岩岳も見えている。八ヶ岳もさらに良く見えるようになり、 赤岳の左に横岳、そして阿弥陀岳が続き、さらに左には東西の天狗岳、そして縞枯山、北横岳、蓼科山も確認できる。
また、中央アルプスもやや雲が絡み気味ではあるものの、木曽駒ヶ岳、三ノ沢岳、そして檜尾岳、熊沢岳、空木岳、南駒ヶ岳といった山々を確認することができる。

そして、ややボンヤリではあるが、北アルプスの方も笠ヶ岳を一番左として、 その右に西穂高岳、奥穂高岳、前穂高岳、北穂高岳、大キレット、南岳、中岳、大喰岳、槍ヶ岳が続いているのが確認できる。
槍ヶ岳の右には独標、そして水晶岳が見え、少し間を空けて常念岳、大天井岳が見えるが、そのさらに右側の山は鹿島槍ヶ岳、五竜岳くらいしか判別できない。
しかし、帰宅後に写真を拡大すると、大天井岳の右には燕岳、立山、剱岳、蓮華岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳、白馬岳といった山を確認することができたのであった。

道は暫く尾根上を進んだ後、ギザギザした岩場の稜線を避けて左下の斜面をトラバースする。
単に斜面を横切るだけではなく、時にはもう一段下に下りたりするので、少々分かりにくいところもあり、注意が必要である。
もしかしたら尾根上を進んだ方が良いのかもしれないのだが、ギザギザした岩場が続くので、それはそれで危険を伴うことになる。
道の方は再びグッと下るようになるが、この下った先がこの尾根の最低鞍部となるようで、そこからは樹林帯となり、 その先には緑の斜面の中に白い岩肌を露出させている前小太郎山が待ち構えている。

一方、尾根歩きは意外と風が強く、先程まで大汗をかいていた身体から体温を奪う。
おまけに、やはりノドの乾きと空腹を覚え、足の進みがかなり遅くなる。岩場に腰掛けて食事にすることも考えたのだが、少し寒いのでそのまま進み続ける。
振り返れば北岳が良く見えるが、その姿はズングリしており、上から押さえつけられているような感じであまり良い形ではない。
道はハイマツの中を進むようになり、さらに先で樹林帯に入る。
ここは風が遮られているので、倒木に腰掛けて 5分程休憩する。時刻は 11時3分。

ノドの渇きを癒やし、菓子パンを 1つ食して少し元気が出たところで出発。
樹林帯とは言え、木の生える密度は低く、時折 右手が開けて鳳凰三山が見える。しかし、薬師岳付近には雲がかかり始めている。
やがて、道は本格的なシラビソの樹林帯に入るものの、それ程長く続かず、すぐに岩とハイマツの道を登っていくようになる。
途中、短いロープにて岩をよじ登っていくと、再び展望が開け、振り返れば再び北岳が良く見えるようになる。
ここから見る北岳は、今まで見えなかった西へと下る尾根が見えるようになっており (途中に中白根沢ノ頭が見える)、根を大きく張った、 堂々とした姿に変わっていて大変魅力的で、先程の姿からの鮮やかな変身に驚かされる。
そして、前を向けば、ハイマツの海の向こうに前小太郎山が見えてくる。

ハイマツ帯を抜け、岩場を登る。見た目ほど岩場は厳しくなく、 それ程 苦労することなく登り着けば、そこには前小太郎山の小さな標識が立っている。時刻は 11時19分。
小太郎山はまだ先であるが、鳳凰三山方面に雲がかかりつつあることもあって、ここで周囲の山々をジックリと眺めることにする。
まずは正面にこれから登る小太郎山が見え、頂上標識も確認できる。近いようだが、そこに至るには一旦大きく下ってまた登り返さねばならない。
小太郎山の右後方には甲斐駒ヶ岳が見え、その右斜面下方には摩利支天があり、摩利支天の手前にはアサヨ峰が見えている。
アサヨ峰の右にはミヨシノ頭、早川尾根ノ頭と続いて、さらには赤薙沢ノ頭、高嶺、地蔵岳オベリスク、赤抜沢ノ頭、そして観音岳へと稜線が続いているが、 観音岳の右にある薬師岳、辻山は雲の中である。

またミヨシノ頭と早月尾根ノ頭を結ぶ稜線の後方には八ヶ岳が見えているが、 赤岳、阿弥陀岳はまだその頂上が良く見えているものの、東西の天狗岳を始めとするさらに左側の山々は今や雲の中である。
そして、目を鳳凰三山に戻せば、観音岳より右側は雲が多いため連なる山々を見ることができないものの、さらに右に目を向けると、 富士山が雲海の上に顔を出している。
富士山の右手前にはボーコン沢ノ頭が見え、その尾根はそのまま北岳へと向かっていくが、途中でこの小太郎尾根に隠れてしまう。

北岳は先にも述べたように、こちらへ下ってくる左側の小太郎尾根とバランスをとるように、 右側に中白峰沢ノ頭を途中に有する尾根が見えていて、それが威厳のある堂々たる姿を作り出している。
そして北岳から少し右に目を向ければ中央アルプスが見えるものの、先程に比べてかなり雲が湧き上がってきており、同定は少々難しい。
さらに右には北岳よりも堂々とした風格を見せている仙丈ヶ岳が続き、仙丈ヶ岳の右奥には北アルプスが見えている。こちらも先程よりもかなり雲が絡んでおり、 さらにはやや霞み気味である。そしてさらに右に白岩岳、鋸岳と続いて甲斐駒ヶ岳へと至ることになる。

雲が多いものの、久々の好展望に気をよくして 11時21分に先へと進む。
ハイマツがやや煩い中、尾根通しに岩場を進み、小さなアップダウンを繰り返しながら徐々に高度を下げていく。
岩場を過ぎ、一旦灌木帯に入ってそこを抜けると、小太郎山に向けての最後の登りとなる。あまり急斜面ではないのがありがたいが、 積み重なった岩が崩れやすい箇所が所々にあるので要注意である。
そして、最後は一直線に岩場を登っていくと、やがて頂上直下の小スペースに登り着く。ハイマツに囲まれたこの場所にはケルンがいくつか積まれており、 その先に甲斐駒ヶ岳とアサヨ峰が見えている。

その小スペースから左に少し曲がってハイマツの中を一登りすると、そこは小太郎山の頂上であった。時刻は 11時46分。
ここには三等三角点が置かれている他、『 山梨百名山 』 の標柱が立っている。
頂上の周囲にはハイマツしか生えていないため、ここからも 360度の展望を得ることができる。基本的には先程の前小太郎山、 あるいは小太郎尾根の途中で見た景色と同じであるが、最終目的地に到達したことで、もう少し詳しく周囲を眺めてみる。

すると、ここで一つ気になったのが、小太郎分岐点がかなり高く見えていることである。
地図で調べると、小太郎尾根に踏み入った所の標高は 2,850m程であるのに対し、この小太郎山は 2,725.4m。 つまり、帰りの方が高さを稼がねばならない訳で、これは少々厳しい。
ましてや、さらにそこから北岳に登るのは大変厳しそうで、とても挑む気になれない。

その北岳の右手奥をよく見ると、奥茶臼山がうっすらと見え、さらに右には前茶臼山と思しきシルエットも見えている。
このような新たに見つけた山もあったものの、全体的に雲が多くなってきている。北岳もバットレス側から雲が湧き上がってきており、 中央アルプス、八ヶ岳、鳳凰三山は雲に飲み込まれつつあり、北アルプスは辛うじて穂高連峰、槍ヶ岳が確認できるという状況である。
そんな中、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳には雲が全く掛かっておらず、泰然自若といった感じであるのが面白い。
富士山も雲海の上に姿を見せてくれてはいるが、こちらは時々雲に隠れてしまう状況である。

十分に景色を堪能し、休養もとったところで、12時3分に往路を戻る。
先にも述べた様に、ここからは一旦高度を下げた後、アップダウンを繰り返しながら徐々に高度を上げていくことになる訳で、 疲れた身体には大変厳しい。
それでも順調に進んで、前小太郎山を 12時24分に通過。目の前には小太郎山分岐、そして北岳へと登るルートが良く見えており、 その高低差に思わず怯みながらも先へと進む。
なお、忠実に往路を戻ったつもりであるが、注意力がやや散漫になっていたのであろう、途中 2箇所ほどで道を間違える。 2回目は少々ハイマツ帯を横切ることになり、かなり苦労してしまった。

そして、息絶え絶えになりながら小太郎分岐には 13時32分に戻り着く。
振り返れば、甲斐駒ヶ岳も雲に飲み込まれそうである (仙丈ヶ岳は依然として良く見えている)。
3分程休憩して広河原を目差す。ガスであまり展望が得られない中、黙々と下る。
右俣コースとの分岐には 13時43分に到着。今朝ほど、気持ちの良い右俣コースを下ることに方針変更したのだったが、 ガスがかなり上がってきていて北岳バットレスが見えない状況であるため、当初の予定通り馴染みのある草スベリを下ることにする。
左に道をとって、ダケカンバの林の中をジグザグに下る。黙々と下り続けていくと、やがてダケカンバの林を抜け、草付きの斜面に変わる。
急斜面を滑らないように下っていけば、ガスの中、下方に白根御池が見えてくる。

そして白根御池小屋には 14時30分に到着。桃味のソフトクリーム (500円也) を購入して少々休憩し、 14時37分に出発する。
16時10分のタクシーに間に合わすべく、少しペースを上げ、樹林帯を黙々と下り、広河原には 16時3分に到着したのであったが、 タクシーは最後の 1台が出発するところで、係の人にバスに乗るように指示される。
しかし、バス停には既に 7〜80人程の人が並んでおり、しかもバスは 2台しか来ないとのこと。列の後ろの方であることから覚悟はしていたものの、 芦安までの 1時間ほどずっと立ちっぱなしであった。

本日は、リハビリを兼ねて小太郎山に登ったのだが、初めてのコース、 初めての山ということで刺激を得られて大変楽しい山行であった。
しかし、一方で身体の方はかなり鈍っていることを感じ、北岳以上に厳しい山行に感じられた次第である。
確かに、地図上では広河原から北岳 (左俣コース) まで 5時間半となっている一方、小太郎山までは 6時間20分 (右俣コース使用)。 さらには、北岳からはほぼ下り一辺倒になるのに対し、上述したように小太郎山からは登り返しがキツイことを考えれば、小太郎山の方がキツク感じられるのも頷けるところである。


目からウロコのコースを辿って天狗岩、奥千丈岳  2017.8 記

梅雨入りしたとは言え、ほとんど雨の降らない日が続くが、 一方で自治会の仕事やら (今年から自治会に関わらざるを得なくなった)、家のリフォーム確認作業、リフォーム終了に伴う引越準備等々で、 毎日何かしらの用事が入り、山に行けない日が続く。
気が付けば 7月も半ばを過ぎてしまい、焦りを感じる中、19日は何も予定が無く、しかも前日の雨とは打って変わって晴れになりそうだということで、 早速 山に出かけることにする。

しかし、6月20日の白岩岳以来の山行であり、その間ほとんど運動をしていないことから、 タダでさえ体力が落ちている身にとっては行き先に迷ってしまう。そのため、ヤマレコの記録を調べまくったところ、国師ヶ岳近くの天狗岩に登った記録を見つけ、 俄然 食指が動きだす。
この天狗岩というのは、国師ヶ岳から南東に派生している天狗尾根の途中にある岩峰で、その頂上には宝剣が立っているのである。
その存在は以前から知っていたものの、如何せん下から登るのはかなりハードであるため、なかなか行く気になれずにいたのである。
無論、国師ヶ岳に登ったついでに往復してくるのが一番手っ取り早いのだが、その国師ヶ岳あるいは金峰山には何回も登っているため、 わざわざ出かける気になれず、ましてや大弛峠のように標高 2,360mもあるところからの登山は個人的に潔しとしない。

ところが、このヤマレコの記録では、大弛峠から国師ヶ岳を経て天狗尾根を下り、 天狗岩を通過した後は鶏冠山林道 (西線) へと下って、そこから白檜平 (しらべだいら) まで林道を歩き、白檜平から石楠花新道を登って奥千丈岳、 北奥千丈岳を経て大弛峠まで戻ってくるというルートをとっているのである。
これは目からウロコ、大弛峠からの登山を潔しとしない小生には思いもつかなかったルートである。
しかも、2013年5月に国師ヶ岳に登った際、北奥千丈岳、奥千丈岳を経て白檜平まで下ろうとしたものの、残雪が残る樹林帯で道が分からなくなり、 結局 途中で引き返したため、奥千丈岳にも未練が残っていることから、このルートはかなり魅力的である。
また、天狗岩には大嶽山那賀都神社 (だいたけさんながとじんじゃ) の奥宮があるとのことで (本宮は黒金山の南東山麓にある)、 岩の頂上に立つ宝剣はその奥宮に奉納されたもののようである。

7月19日(水)、3時半過ぎに横浜の自宅を出発する。前日の雨の影響か、空には雲が多く、この後の回復を祈りながら車を進める。
横浜ICから東名高速道下り線に入り、海老名JCTにて圏央道へと進んで、さらに八王子JCTからは中央自動車道に入る。
空模様は相変わらずであり、南アルプスもほとんど見えない状態の中、勝沼ICにて高速道を下りて国道20号線を大月方面へと戻る。
いつも通り柏尾の交差点にて左折して県道38号線に入った後、ナビの指示どおりに国道411号線、一般道を進んでいくと、 中牧神社北の交差点にて県道219号線入り、後は大弛峠までほぼ道なりとなる。
山中を進み、乙女湖 (琴川ダム) への下りに入る頃には、青空が広がり始め、テンションが上がる。
柳平のゲートを抜け、道は川上牧丘林道に入る。このゲートから大弛峠までは 14kmあり、道には 1km毎に標識が立っている。
この林道を歩いて大弛峠・国師ヶ岳に登ったことが 2回あるが、車でも長く感じるのに、よくもまあこんな距離を歩いたものである。

大弛峠には 5時55分に到着。平日というのに駐車場には十数台の車が駐まっている。
身支度を調えて 6時2分に出発。ここからは、左に道を取って金峰山に向かう人がほとんどであろうが、小生は右手の樹林帯に入る。
すぐに大弛小屋に至るが、小屋には 『 準備中 』 の札がぶら下がっている。
小屋の前を過ぎると、シラビソの中の登りが始まる。まずは道に丸太の横木が置かれた階段状の道が現れ、続いて立派な木の階段が現れたかと思うと、 その後、階段、桟橋が連続して、地面を踏む機会がほとんどない状態が続く。まるで、ビル内を回遊して高度を上げているという感じで、 登山という感じは全くない。
最近では 2012年、13年に国師ヶ岳に登っているが、いずれも残雪期であるため道は雪に覆われており、まさか道がこのような状況にあるとは全く知らなかったのだった。 これでは最早 登山とは言えない。
道がかなり抉れているので、その広がりを抑えるためであろうが、木道ならともかく、これはやり過ぎであろう。

6時12分に 『 夢の庭園 』 との分岐を通過、ここは真っ直ぐ進む (遠回りになるが、夢の庭園経由でも国師ヶ岳には登ることができる)。
展望の無い道が続く中、途中、右手の樹林が切れて朝日岳が見え、さらに進んで行くと朝日岳の左後方に金峰山、 そしてシンボルである五丈岩が見えるようになる。しかし、その後方には少し黒っぽい雲があり、本日は快晴、好展望とは行かないようである。
所々に土の道が現れるものの、総じて人工的な道が続く。一般的に登山道には大小の高低差が頻繁にあり、それが体力を奪うこととなるのだが、 ここは階段、木道、桟橋の連続で、身体に無理をさせて高低差を克服するということがなく、楽といえば楽である。
しかし、それでは全く面白味がない。

やがて、道は 『 夢の庭園 』 からの道と合流する。時刻は 6時19分。ここからも階段・桟橋が延々と続く。
慰めは樹林が切れて金峰山、鉄山、朝日岳が見えることであるが、朝日岳の右後方にあるはずの八ヶ岳は全く姿を見せてくれていない。
やはり、本日は展望が今一つのようである。
再び樹林帯の中に入り、階段を登り続けていくと、今度は小川山が見えるようになったものの、少しぼやけた感じである。
6時28分に 『 ← 大弛峠、国師ヶ岳 → 』 の標識を過ぎ、ほぼ直角に右に曲がって長い階段を登り終えると、嬉しいことに、 そこからは本来の登山道が続くようになる。
道の左右はシャクナゲの群落に変わり、まばらではあるものの所々に花が咲いている。花の色は白地にピンクが混ざり、内側に薄い緑色の斑点があるのでハクサンシャクナゲであろう。

傾斜の方はかなり緩やかになり、右奥の樹林越しに北奥千丈岳が見えるようになる。
丸い大きな岩がゴロゴロしている場所を過ぎ、樹林帯を少し進めば、やがて前国師に到着。時刻は 6時37分。
前国師は本来展望の良い場所であるが、青空は見えているものの、その下方に雲が多く、周囲の山はほとんど見えない。
休まずに先へと進む。すぐに下り階段が現れるが、人工的なものはここだけで、後は普通の登山道が続く。
周囲にコメツガ、シラビソ、そしてシャクナゲが見られる中、緩やかに高度を上げていく。土の感触はやはり良い。
北奥千丈岳への分岐となる三繋平 (みつなぎだいら) を 6時41分に通過、まっすぐ進んで国師ヶ岳を目差す。
本日、順調に行けば北奥千丈岳を経てここへと戻ってくるはずであるが、天狗尾根、石楠花尾根は初めてなのでさてどうなることであろう。

シラビソの林の中、広い登山道を進む。残雪期にはこの樹林帯の中をクネクネと歩いた記憶があるが、今はそれ程 頻繁な曲折はない。
丸く削られた岩がゴロゴロしている場所を過ぎ、再び歩き易い道になると、やがて樹林が切れて右手奥に北奥千丈岳が見え、 その後、すぐに国師ヶ岳頂上に飛び出す。時刻は 6時47分。
大弛峠で数人の登山者を見かけたものの、ここまで誰にも会わず、この頂上にも人はいない。やはり皆 金峰山を目指したのであろう。
一等三角点のあるこの頂上は南側が開けていて小広く、そこに大きな岩が点在していてなかなか雰囲気が良い。無論 展望も素晴らしいはずであるが、 本日はあまり良い状態ではなく、北奥千丈岳が見えるだけで金峰山も少し霞み気味、そして八ヶ岳、富士山、南アルプスなどは全く見ることができない。

岩に腰掛けてノドを潤した後、6時49分に先へと進む。
ここからは未知の領域であり、ワクワク感が増すが、一方で天狗尾根はなかなか手強いと聞いているので、天狗岩から引き返すことも念頭に置きながら進む。
『 お知らせ 西沢渓谷方面へ至る森林軌道跡の歩道が崩落し危険なため通行を禁止します 』 と書かれた注意書きの横を通り、 シラビソの中にシャクナゲが多く目立つ道を進んで徐々に下って行く。
やがて、『 甲武信ヶ岳 ←→ 国師ヶ岳 』 と書かれた標識の他、古い標識 2つほどが付けられた標柱が現れ、そこにはトラロープが張られている。 時刻は 6時57分。

事前の学習にてこのトラロープのことはインプット済みであり、縦走路から外れてロープを潜り、踏み跡を辿る。
すぐに先程と同じような 『 西沢ルートは進めない 』 旨の立て看板が現れるが、その前段には 『 ここから先、林道までは通行可能ですが・・・』 とある。 つまり、天狗尾根を下り、林道に至る迄は通行可ということなので、安心して先へと進む。
少し顔を上げると、『 大嶽山 奥之院 天狗尾根 → 』 と書かれた、この山域ではお馴染みの青地に白文字、そしてキツネのイラストが描かかれた標識が目に入る。

背の低いシラビソとシャクナゲが入り混じる中を緩やかに下って行くと、樹林が切れて斜面の縁に飛び出す。時刻は 7時1分。
ここからはこれから下る天狗尾根の一部が見え、その途中に目差す天狗岩も見えている。
また、天狗岩の後方に見えている少し尖った山が乾徳山であることに気がつく。ということは、その左に見える丸い大きな山は黒金山ということになるが、 見る方向によって随分印象が違うものである。
この広々とした景色を見て一気にテンションが上がる一方で、はてさて、この後どのような道が待っているのか、少々不安も増してくる。

ここからは大きな岩が林立する中を縫うようにして下って行く。
このルートを通る人はそれ程多くないのであろう、先の縦走路に比べて、道はやや歩きにくい。
しかし、赤テープが頻繁に付けられており、ルートは明瞭である。
とは言っても、時々、赤テープを探して周囲をキョロキョロすることが数回あったのだが、落ち着いて探せば必ず見つけることができる。
勝手に判断して踏み跡らしきものを辿るのは危険で、少し進んでもテープが見つからなければ戻るべきである。

岩場は段差が大きいことが多く、下りるのにやや苦労するが、初めての道というワクワク感がそれを帳消しにしてくれる。
狭い岩の間を抜け、飛び下りるような形で岩場を下り、シャクナゲが多く目立つ道を下る。難路とは言え、両手にストックを持つ身でも下ることができるので、 難易度はあまり高くない。
暫く下っていくと、時々先の方に天狗岩が見えるようになるが、先程はかなり下方に見えた岩が今はほぼ同じ高さに見えており、 頂上部の宝剣も肉眼で確認できるようになる。

急な下りが続く中、やがてやや平らな場所に飛び出す。
ここは天狗岩の展望台といったところで、頂上部の宝剣も良く見え、天狗岩の左後方にはうっすらと黒金山も見えている。
さて、どうやら天狗岩に行ける目途もついたので、天狗岩に登った後どうするか思案し、このまま下り続けることにする。
下ってきた斜面がかなり急であることから登り返すのは億劫であり、またこのテープの量ならばこの先も迷うこともなかろうと思われるからである。

再びシャクナゲとシラビソ、そしてハイマツの海に身を投じ、 その中をクネクネと進んで行くと、やがて目の前に天狗岩が現れ、道の方はその手前にて左右に分かれることになる。 ピンクテープは左に付いているので左へと進み、途中で道から外れて右手の天狗岩に取り付く。
岩は登りやすいものの、油断は禁物。バランスを崩したら滑落の危険性があり、特に強風時は注意が必要である。
大岩の重なりをよじ登り、宝剣の後ろに立つ。時刻は 7時19分。
宝剣を固定している基部の鉄箱には奉納者の名前の他、宮司、先達の名が書かれており、建立が昭和39年7月とある。
当然、ここは見晴らしが良いはずだが、近くの乾徳山、黒金山もボンヤリとしていることから、遠くの山々の状況は推して知るべしである。

さて、折角 天狗岩に登ったので、当然 大嶽山那賀都神社奥宮にもお参りしたいところである。
普通ならば、その場所を探すのはなかなか難しそうであるが、先のヤマレコにその場所が記載されていたため、目印となっている折れた鉄剣を探す。
鉄剣は岩の南西側にあるとのことなのでそちらを見ると、すぐ下の岩に何やら茶色いものが見えたため、そちらに下りてみる。
やはり、見えたものは折れた鉄剣で、そこには奉納者の名と思われる文字が刻まれている。

肝心の奥宮であるがすぐには見つからない。
周囲に目を凝らすと、北側の岩と岩の隙間からなる窪地に細いロープが垂れているのが目に着く。 もしやと思い、その窪地に下りてみると、その奥 (折れた鉄剣側) は小さな窟屋となっていて、中に紫色の幕が張られ、幕の前には 3本の木製の剣が立てられていたのであった。
その 3本の剣には、左からそれぞれ 『 大雷神 (おおいかずちのかみ)』、『 大山祇神 (おおやまつみのかみ)』、『 高龗の神 (たかおかみのかみ)』 と書かれており、 後で調べると、この三神は大嶽山那賀都神社のご祭神とのことであった。
そして、三神の前にはカップ酒などが供えられており、また紫色の幕には 『 平成27年7月吉日 』 とある。

7時26分に奥宮を後にして天狗岩を下りる。
その際、少し無理をして下方の岩に飛び下りたのだが、その際に着地場所が少しズレ、右足首を痛めてしまう。
まあ、歩くのには支障ない程度だが、あれから 10日以上経った今でも、朝起きると少し痛む状況である。
天狗岩の基部に戻り、先へと進む。
振り返れば下ってきた尾根がよく見える。木々の緑が目立つ、なかなか見事な三角形の高みの所々に岩峰が見えており、その傾斜はかなりキツそうである。 標高差は 150m程と思うが、数字よりもかなり高いように思え、やはり登り返すのは結構 厳しそうである。

テープを忠実に辿り、岩と岩との間を苦労して抜けていく。
少し進んで振り返れば、天狗岩が再び見えるようになるが、宝剣は背後の空が灰色のため全く確認できない。
そう、天候の方は完全に曇りとなり、もしかしたら雨が降るのではないかとさえ思われる状況である。
さらに下り、露岩の左を巻いていくと、『 ← 国師ヶ岳 西沢渓谷・広瀬 → 』 と書かれた標識が現れる。久々の標識にホッとする。
足下に苔が多く生える松林を下って行くと、再び前方が開け、下方に露岩の平坦地が見えている。
そして、そこに至るまでの間、岩が多く露出した斜面を下っていくことになるのだが、最後の下りが岩場の急斜面となっている。
岩場にロープなどはないため、足を置く場所を慎重に選びながら下る。
漸く斜面を下り終えて振り返れば、斜面はかなり急に見え、とてもこちらのコースを登りに使う気にはなれない。

傾斜が緩やかになった道を下る。途中、間違えて踏み入らないようにとのトラロープが張られている場所を通過し、 先程上から見えた露岩の平坦地には 7時49分に下り着く。
ここで小休止。この頃になると、一時は暗くなりかけた空も少し明るくなっており、雨の方はどうやら大丈夫そうである。
また、西側にはこれから登ることになる石楠花新道のある尾根が見え、そこの一部に陽が当たっている。その尾根をじっくり眺めると、 最初は急だがその後暫くは緩やかな勾配となり、最後は再び高みに向かってグッと傾斜がキツクなるようである。
その最後の高みが北奥千丈岳と思われるものの、全く馴染みのない角度から見上げているため、断定する程の自信はない。

7時53分に出発。ここからは 2回ほど大きな岩の横を通過した後、ほぼ樹林帯の下りが続くようになる。
樹相も変わり、周囲には松が多く見られるようになる。
テープの方は頻繁に付けられており、迷う心配はない。この天狗尾根を下るにあたっては、地図上の破線ルートであるため少し心配であったのだが、 これならば全く問題ない。
下草のない、松葉が敷き詰められたような道をドンドン下る。やはり、こちらを登りに使うのはキツイようである。
左手人差し指で方向を指し示しているような岩の横を通り、苔むした倒木の間を縫うように下る。足下は松葉でフカフカしている。

かなり下ってくると、今まで殺風景だった道の周囲にシャクナゲが現れてホッとする。
シャクナゲのトンネルを抜けていくと、丸太の横木による階段 (但し相当古いもので、朽ちかけている) が何回か見られるようになる。
かつてはここも整備された道だったのか、それとも林業用に整備されたものなのか・・・。
忠実にテープを辿っていくと、道は途中から大きく左に曲がり、再びシラビソの林の中を下るようになる。
この頃になると、登山道上にも樹林を通して陽が当たるようになるが、かといって青空が広がるという状況ではない。
樹林の中をジグザグに下り続けて行くと、やがて赤テープが巻かれた 1本のダケカンバが下方に見え、その後方に舗装道も見えている。
そして、8時30分に鶏冠山林道(西線)に下り立つ。

この取り付き口に標識は見当たらないが、先程の 1本のダケカンバと、 その手前に立つ 『 山火事注意 』 の文字と炎の絵が描かれた看板が目印になりそうである。
さて、ここからは林道歩きが続く。右に進んで行くと、すぐに西沢渓谷に繋がる道が左手に現れるが、これが通行禁止のルートで、 当然、ここはそのまままっすぐに進む。
しかし、ここで誤算が生じる。ここから白檜平までの道は下り勾配に違いないと思っていたのに、何と緩やかながらも登り勾配なのである。
地図を見ると、天狗尾根の取り付き口の標高は 2,000m前後であり、白檜平の標高は 2,154m。この 2地点間の距離が長いため、 150mの高低差とは言え勾配は緩やかであるが、やはり登りが続くのは辛い。

黙々と林道を歩く。林道は途中に路肩が崩れかけた所があるものの、舗装された綺麗な道である。
しかし、まさかここを車が通ることはあるまいと思っていたところ、白檜平に至るまでに 2台の作業トラックと擦れ違う。
また、途中、右手の法面のネットが落石を辛うじて押さえ込んでいる箇所があったので、なるべく道路の左、谷側を進むようにする。
黒金山林道の分岐を 8時53分に通過。単調な道に嫌気が差し始め、加えて空腹でフラフラになりかけた頃、嬉しいことに前方にいくつかの標識が見えてくる。 漸く白檜平に到着である。時刻は 9時25分。
ここから左の斜面に取り付けば、ゴトメキ、トサカ、大ダオを経て黒金山や徳和に至り、さらに少し先にて右の斜面に取り付けば奥千丈岳、 北奥千丈岳のある石楠花新道である。

その石楠花新道の取り付き手前にある広場にて暫し休憩。 この白檜平は、今は道路が通っているが、かつては湿原の広がる場所だったと思われる。今も湿原は少しだけ残っているものの、見るべきものはない。
漸く腹を満たしたところで、9時39分に出発。ここからは本日初めての本格的な山登りとなる。
標識に従って湿原を越え、シラビソの林に入る。暫くの間 平らな道が続く。道の左右は苔むしているので、道は明瞭である。

少し進むと、『 ← しらべ平 北奥千丈 国師岳 → 』 と書かれたかなり古そうな標識が現れ、 そこを過ぎると、道に傾斜がつき始める。
ところで、このルートは大弛峠までの林道が整備される前は、山梨側から国師ヶ岳に向かうメインルートだったはずである (国師ヶ岳は奥秩父でも奥深い山の一つであった)。
従って、ルート上には往時の立派な標識がいくつか残っているが、今は歩く人もそれ程 多くないのであろう、新しい標識は皆無であり (一方、 テープの方は新しいものもあるようである)、さらに倒木がかなり煩いところがある。
しかし、如何にも奥秩父らしいシラビソの林、そしてその下方を覆う緑の苔群はなかなか良い雰囲気を醸し出してくれている。

再び古い標識を見て先へと進む。少し登っては平らになり、また登りが現れるというパターンが続くため、意外と足が進む。
やがて、4本目か 5本目の標識を見た後、勾配は少々キツクなり始める。
喘ぎつつも、斜面をジグザグに登っていく。ルート上には誰一人いないと思われるので、後ろから来る登山者に抜かれる心配もなく、 キツイながらも自分のペースで登っていけるのがありがたい。
展望の無い樹林帯が続く中、やがて斜面の先、樹林の間に空間が見えてくる。そろそろ奥千丈岳かと思ったが、先日の白岩岳同様、 登り着いた所はただの高みで、まだ先に斜面が続く。
そして、この辛い登りも漸く緩み始めたかと思うと、今度はルート上に倒木が頻繁に現れるようになる。やはり、この道に整備の手は入っていないようである。

おまけに倒木が煩いため、ルートが分かりづらい。
ヤマレコのレポートでも、倒木にて道を見失ったものの、倒木に沿って左に進んだら道が見つかったとあった。小生も実践してみると、その通り、 再びテープが見つかってホッとする。やはり、最新の情報を仕入れておくことは重要である。
障害物競走のように倒木が続く場所を過ぎると、左手に立ち枯れが目立つようになる。立ち枯れている木は疎らなので、 本来ならばその向こうに周囲の山々が見えるのかもしれないが、ガスが掛かっているのか、立ち枯れの後方は真っ白である。
さらに進んで行くと、またまた斜面の先に空間が見えたので、今度こそと思って登っていくが、またもや裏切られることになる。
その高みには苔むした岩があり、そこに朱色で 『 → コクシ 』 と書かれている。時刻は 10時32分。

その岩から道は一旦下りとなり、その先、樹林越しに大きな高みがチラチラ見えるようになる。 今度こそ奥千丈岳ではないかとの期待を持って足を進める。
道が登りに入ると、またまた倒木が多くなり、そこを何とか抜け出すと、周囲は美しいシラビソの樹林帯に変わる。シラビソの幹は細いので、 やはりそれなりに高度を上げてきていることが分かる。また、下部にはシラビソの幼木がかなり密生している。

またまた斜面の先、樹林の間に空間が見え、期待を持って登っていくと、 今度は裏切られることなく、奥千丈岳に到着したのであった。
時刻は 10時43分。
頂上には三等三角点があり、立派な標識も置かれているのだが、周囲を樹林に囲まれて展望は無く、さらにはもっと先の方に高い所もあるようなので、 頂上という雰囲気はあまりない。和名倉山や天城山の万二カ岳のように、気づかなければ通り過ぎてしまうような頂上である。
なお、頂上標識の根元にカモシカの頭部と思われる白骨が置かれていた。これも事前にヤマレコで情報を得ていたのでさほど驚かなかったが、 いきなりこの頭蓋骨を見たらドキッとするところである。

三角点の上にザックを置いて、ノドを潤し、10時48分に出発。
ここからは今まで倒木に苦しんだことが嘘のように、よく踏まれた明瞭な道が続くようになる。恐らく、大弛峠から北奥千丈岳、 そしてこの奥千丈岳をピストンする登山者が多いということであろう。
奥千丈岳からは暫くほぼ平らな道が続いた後、少し傾斜が出てくると、やがて Y字路を示すペンキ印が書かれた岩が現れる。
時刻は 10時58分。
左に進むのが正式なルートで、右の道はそのまま斜面を直登して尾根上に登る感じであったが、踏み跡は薄い。
ただ、左に進んで行くと、高度を上げることなく、斜面を横切る道が長く続くので少々不安になる。まあ、テープがしっかり続いているので間違ってはいないはずだが、 それにしてもドンドン方向が逸れているような気がしたのは、先程の Y字路のことが頭にあったからである。

長く続いた斜面を横切る道もやがて終わりとなり、右手の斜面を登っていくようになる。
道は少し登っては平らな道が現れるというパターンを繰り返しながら高度を上げていく。
そして、11時34分、見覚えのある標識の前を通過する。この標識は 2013年5月に北奥千丈岳から奥千丈岳を目差したものの、 道が分からなくなって戻ることにした際に見た標識である。
その時の標識は雪の上 50センチほどの所にあったと記憶しているが、今回 この標識は 2m近いところにあったので、 当時は大変な量の雪が残っていたことになる。道が分からなくなったのも無理もなく、あのまま先に進んでいたら大変苦労したことであろう。

この標識を過ぎれば北奥千丈岳は近いと思ったのだが、それ程甘くはない。
何度か頂上かと思われる高みを越え、最後は大岩の横を抜けて漸く北奥千丈岳に到着したのであった。時刻は 11時46分。
ここからは人気ルート、俄然人が多くなる。
この北奥千丈岳でタップリ休み、11時59分に出発する。

なお、北奥千丈岳からの展望であるが、雲が湧いてきていて金峰山は雲の中、 小川山、男山、天狗山、御座山 (おぐらさん) が辛うじて見える程度である。無論、八ヶ岳は見えない。
また、向かい側の国師ヶ岳は良く見えるものの、その右後方にはガスが出ていて僅かに木賊山と思しき高みがチラリと見えるだけである。
北奥千丈岳からはユックリと三繋平に下り (12時2分着)、前国師を 12時5分に通過、木道、階段を下って、途中、『 夢の庭園 』 経由の道を辿り、 大弛峠には 12時28分に戻り着いたのであった。

本日は目からウロコのルートにて念願の天狗岩、そして奥千丈岳に登ることができ、大変満足である。
展望の方は今一つであったが、やはり初めてのルートは刺激があって楽しい。
また、クラシックルートである石楠花尾根を辿れたのも嬉しいことで、いかにも奥秩父らしい道にこれまた満足である。
しかし、先日の白岩岳、そして今回の天狗岩と、初めてのルートにてワクワクすることが続くと、 これはもう既に登ったルートを辿るのでは満足できなくなってしまいそうである。


念願の白岩岳  2017.6 記

6月はいろいろ忙しくて山に行けない日が続く。漸く16日に山に行く余裕ができたのだが、 朝 3時に起きると身体が怠く、眠くてたまらない。
結局、この調子では車の運転並びに登山は難しいと判断し、この日の山行は諦めたのであるが、この眠さ、怠さの原因は服用している薬と思われる。 実は、仮住まいの庭木があまりにも伸び放題であるため数日前に少し伐採をしたところ、チャドクガに刺されてしまったらしく、 左腕を中心に赤くはれ上がって痒くてたまらない症状に見舞われてしまったのである。
そのため、皮膚科にて塗り薬とともに、アレルギー症状を抑えるための抗ヒスタミン剤としてこの飲み薬を貰ってきたのであるが、 この薬は副作用として眠気、倦怠感なども表れる場合があるとのことで、まさに小生はその副作用が出てしまったようである。

ということで、数日間 車の運転を控え、山行も止めていたのであるが、 漸く飲み薬を服用しなくてもよくなったことから、20日に山に行くことにする。行き先は、南アルプスの白岩岳。
かなりマイナーな山ではあるが、八ヶ岳から南アルプスを眺めた際、鋸岳方面から釜無山、 入笠山へと続く尾根上に見えているなかなか形の良い山がこの白岩岳であり、近年登った硫黄岳や横岳、そして天狗岳などからこの山を眺めていつか登りたいと思っていたのである。
ただ、マイナーな山故に、残念ながら 『 山と高原地図 』 に登山ルートは記載されていないのだが、山行記録はヤマレコにも時々上がっていてそれなりに情報がある。
従って、近頃 新しい山に挑戦していないことに我ながら不満を覚え始めている中、この山はまさに打って付けのターゲットなのである。

6月20日(火)、3時20分に横浜の自宅を出発する。上空には雲が多く、 星はほぼ見えないが、予報では白岩岳のルートがある伊那地方は午前中晴れとのことなので、それが的中することを願うばかりである。
いつも通り、東名高速道−圏央道−中央自動車道と進む。相変わらずドンヨリとした曇り空が続き、さらには相模湖ICを過ぎるとガスも出てきて少々心配になったものの、 車が進むに連れて青空が広がり始め、須玉ICを過ぎる頃には完全に晴れとなってくれたのであった。
諏訪ICにて高速道を下り、すぐに国道20号線のバイパスを右へと進んで韮崎方面に戻る。やがて、国道152号線との立体交差になるので、 陸橋手前から側道を進み、すぐに右折してその国道152号線に入る。
国道20号線、中央自動車道を潜って少し進むと高部東の丁字路に至るので、そこを左折する (道は国道152号線のまま)。

600m程進んで、今度は安国寺西の信号を右折して国道152号線は山へと入っていく (杖突街道)。
山中を進み、杖突峠を越えると、道は高遠町へと下っていき、高遠城趾を過ぎた所で左折して秋葉街道に入る (国道152号線のまま)。
美和湖を右手に見ながら暫く進んで行くと、やがて前方に赤い三峯川橋が見え、その手前に 『 ← 南アルプス林道・戸台 』 と書かれた標識が立っているが確認できる (戸台口)。
標識に従って橋の手前を左折し、黒川沿いに進む。南アルプス北沢峠へのバス発着所である仙流荘の脇を過ぎると、片側一車線の快適な道はやがてセンターラインのない狭い道へと変わる。
擦れ違いが難しい場所も多々あり、少し緊張するが、この先に人家はあまりないと思われるので基本的に対向車は少ないはずである。

戸台口から 6km弱進んでいくと、右手に戸台大橋が見えてくる。この橋を渡って右へと進めば甲斐駒ヶ岳、 仙丈ヶ岳の登山口である北沢峠へと通じているのだが (一般車は通行禁止)、目差す白岩岳へはそのまま真っ直ぐである。
ここからは黒河内林道となり、舗装道とはいえ道はさらに狭くなって、擦れ違いがかなり難しい状況が続く。
また、左側の斜面から落ちてきた岩屑が道に散乱した箇所が多々あって注意が必要である。
右下に流れる小黒川 (戸台大橋より上流は小黒川というらしい) 沿いに林道を 5km程進み、やがて道路上に猿の群れが現れ始めたかと思うと、 その少し先にシンナシ沢橋が見えてくる。
事前に得た情報では、さらに先へと進むことができるようであるが、橋の手前左側にあるスペースに車を駐める (2、3台駐車可)。
時刻は 6時32分。

朝食がまだなので車の中で食べようと思ったのだが、気持ちが逸るのか、 少し落ち着かなかったため、すぐに身支度を調えて 6時37分に出発する。天候は晴れではあるもののスカッとした青空とは行かない状況である。
橋を渡って林道をさらに先へと進む。ここまでずっと舗装されていた道が未舗装に変わると、やがて前方に大きな岩が見えてくる。
この岩の先に林道と分かれて右に下る道があり、事前に得た情報では、その下った所に駐車スペースがあるとのことである。
6時37分、その大岩を通過すると、情報通りその先に右に下る道が現れる。
ただ、草の斜面であり、駐車スペースも狭いことから、先程のシンナシ沢橋の袂に駐めたのは正解であろう。
一方、シンナシ沢橋、そしてこのスペースに車は全くないので、本日 白岩岳に登るのは小生一人となると知り、少々心細さを覚える。

その小スペースからは戻るようにして下方へと下る小道があり、 そこを辿っていくとすぐに小黒川にぶつかることになって、そこには丸木を数本まとめただけの橋が架かっている。時刻は 6時44分。
橋は一見危なっかしく見えるものの、意外としっかりしており、難なく渡ることができる。
丸木橋を渡った後、蛇籠の堤を登ると、そこには三方を山に囲まれた草地が広がっていて、左手には廃屋となった旧営林署の建物が草と樹林の間に見えている。
また、右手を見れば、樹林に囲まれた斜面が迫っており、そこが山への取り付き口なのであろう、木の枝から赤色が少し脱色したテープがぶら下がっている。

この先 急登が連続するとのことなのでまずは腹拵えと思い、旧営林署の建物の方へと進んで握り飯を頬張りながら周囲を見学する。
建物は 2階建てになっており、2階部分が宿泊場所なのであろう、ガラス越しに破れた障子が見えているが、窓から顔が覗くのではないかと思えて少々目を向けにくい。
6時50分、食事を終えて出発。先程 小黒川の堤を登って来た場所まで戻り、さらに先へと進んで山の取り付き口に向かう。
事前の調べでは、ここから白岩岳に登るルートとして、白岩谷の右側の尾根を登るルート、白岩谷そのものを登るルート、 そして白岩谷の左側の尾根を登るルートがあるようだが、単独行であり、本日は他に登山者がいないことを考慮して、 比較的良く踏まれていると言われている右側の尾根を進む (他の 2ルートはさらに小黒川沿いに進むことになる)。

テープの下を潜り樹林帯に入ると、いきなり急坂となるもののすぐに斜面は緩やかになる。 左手にテープが見えているのでそちらに進む。
手元には国土地理院の電子国土WEBからダウンロードした地図に、既に登られた方々のルートを手書きで書き込んだものがあるだけなので、 本日はテープに頼るところ大である。
しかしである、このルートはテープが頻繁にあるとのことであったが、意外とテープが疎らなので少々戸惑ってしまう。
5つほどテープを追った後は、全くテープが見つからなくなったため (小生の目がそれ程良くないこともある)、 とにかく斜面を真っ直ぐに登り続けていくと、足下に踏み跡らしきものが現れる。

その踏み跡は斜面を左手の方に登っていくので少々おかしいとは思ったものの、他に手がかりはないのでそのまま進み続ける。
すると、斜面をほぼ水平に横切るよく踏まれた道に合流したのでホッとしたのであるが、ここで今までの流れからついそのまま左の方へと足を進めてしまったのである。
しかし、進めど進めど一向にテープは現れず、これはルートを誤ったかと思い始めた頃、先の方に小さな谷が現れ、道はそちらへと下っていくではないか。 これは完全にルートを誤ったと確信し、来た道を忠実に戻る。
漸く最後に見たテープの所まで戻り着いたのであるが、16分程時間を無駄にしてしまったのであった。

けれども、振り出しに戻ったとは言え、この先の目処が全くつかない。
仕方なく、今度は右手に向かって斜面を適当に進んで行くと、漸く次のテープが見つかり、そこからはよく踏まれた道がこれまた水平に続くようになる (もしかしたら先程の水平な道と繋がっているのかもしれない)。
水平の道を右に暫く進んで行くと、『 → 八九四 』 と赤字で書かれた木が現れる。しかし、その先を見ると大きな倒木が道を塞いでいる様子なのでまたまた道が分からなくなる。 時刻は 7時19分。
仕方なく、ここからは斜面を直登することにする。この斜面は足下に下草は全くといって良い程生えておらず、足を入れると土ごと崩れやすく、 登るのに苦労する。さらには、この先の目処が全くついていないので、どうも身体に力が入らない。

何とか枯れ枝と枯れ葉、そして崩れやすい土の斜面を登り続けていくと、 やがて斜面右手上方の樹林が切れ気味でやや明るくなっているのが見えたので、そちらを目差すことにする。
すると、今までの苦労が嘘のような、固い地面の尾根筋に到達し、そこには赤いテープがあったのだった。
さらに嬉しいことに、尾根の上方を見やると、今までとは違ってテープが頻繁に続いているのが見えるではないか。漸くルート上に辿り着いたようで心底ホッとする。 時刻は 7時34分。
ここからも急斜面の登りが続くが、ルート上に乗ったという安堵感が足を進ませる。無論、今までのような崩れる足下ではない上に、 うっすらと道があるので足運びも楽である。

展望の無い樹林帯の中をほぼ直登する。実際には、道は小さな振幅にてクネクネとしているのだが、その振れ幅は 2m以内で、ほぼ一直線に近い。
ただ、先程も述べたように、この先の目処が付いたことが気持ちを楽にしてくれ、体力不足の現状であっても意外と足が進む。
それにしても、最も登山道に近い状態とのことであるこのルートでさえ苦労したのであるから、他の 2ルートはもっと苦労するに違いない。
安全を考え、このルートを選んで正解であった。
なお、もう夏なのであろう、蝉の鳴き声がかなり煩い。

長く続いた急斜面も漸く一息つけるような勾配に変わると、この辺からは斜面上に白い岩が時折現れるようになり、 さらには白い岩屑が足下に見られるようになる。
石灰岩とのことらしいが、この山の名も谷筋に見られる石灰岩や山頂の北側にある大きな石灰岩の岩峰に由来しているようである。
緩やかな斜面の登りは、さらに傾斜を緩め、ほぼ平らな道が続くようになる。時刻は 7時51分。
ただ、このルートは正規な登山道ではないため、途中に指標となるものが乏しく、自分の位置がほとんど分からない (GPS専用機やスマホは持っていない)。 手元の地図を見ると、1,500m 〜 1,550mの間がかなり広いので、恐らくその付近にいるものと思われる。
ということは、まだ行程の 1/3程度であり、先は長い。

この平らな道はそう長くは続かず、一旦少し下った後、再び急斜面の登りが始まる。
ここの斜面では木の表側や内部が焼け焦げて真っ黒になっている倒木が時々現れるが、この黒焦げは落雷によるものであろうか ?
また、登っている尾根は左右とも緩やかに落ち込んでいるため、あのまま彷徨ってこの尾根を見つけられなかったら、頂上に着けないということである。 そう思うとゾッとする。
やがて、周囲の白い岩が苔むすようになり、シダ類も多く見られるようになる。一方、相変わらず樹林の中、展望は全く得られない。
唯一希望となるのが、登っている尾根の先にある木々にチラチラと空間が見えることである。あそこまで登り着けば展望が得られるなり、 一息つけるような場所があるに違いないと思いながら登り続ける。
しかし、実際は登り着けばさらに先へと延びる尾根が待っているという状態が続く。

枝を多く有した倒木が道を塞いでいるような場所を過ぎ (ここはテープが明確なので抜けられる)、 何回か痩せ尾根を通過し、白い岩の横を進んでいくと、やがて右手の樹林が少し切れて高みがチラリと見えるようになる。
それが白岩岳かどうかを知るすべはないが、稜線までまだまだ距離があることは確かである。
また、途中で何回か白い大岩の下を巻くことになったが、もしかしたらその大岩に登れば展望を得られたのかもしれない。
その中の 1つである大岩の下を進み、少し荒れ気味になっている斜面を登る。すぐ上は稜線のようなので、疲れが出始めてはいるものの、少し足が速まる。
しかし、登り着いてみると、稜線と思ったところは小さな支尾根で、目の前の谷の向こう側に稜線が見えている。やはりまだまだ遠い。

道の方はこの支尾根を右に進み、小さなマウンドを越えた後にまたまた急登が始まる。
しかし、ここからは今までと少し雰囲気が変わり、周囲にはカニコウモリらしき群落 (無論、花期ではない) が現れ、その後やや倒木の多く目立つ斜面をジグザグに登るようになる。
上方を見上げれば、またまた樹林の向こうに空間が見えているので、稜線が近いという気にさせられるが、先にも述べたように、 登り着いてみるとさらに先に斜面が待っており、武蔵野の逃げ水の如く、稜線にはなかなか到達できない。

そんな中、振り返ると、木々の間からまだ雪が残る山がチラリと見える。 木々に囲まれて断片的であるため山名当てクイズのような状況であり、その時は山名が分からなかったのだが、白岩岳頂上にて中央アルプスを眺めた時、 見えたのが仙涯嶺付近であったことを知る。
残雪の山を見て少し元気をもらったものの、やはり厳しい登りに息が上がる。オマケに空腹を覚えるとともに、身体が水分を求めている。
ただ、少し傾斜が緩み始め、さらには上方の木々の向こうにまた空間が見えているので、もうすぐ稜線に違いないと思ってついつい登り続けてしまう。
しかし、先程と同じで今回も武蔵野の逃げ水の如く、さらに先へと登りが続く。

こうなってはもう我慢できず、休憩することにする。時刻は 9時51分。
やはり、かなり水分不足に陥っていたのであろう、先日の蝶ヶ岳と同じく 500mlの ビタミンウォーターを一気に飲み干してしまう。
そして、アンパン (勿論つぶあん) を一つ頬張り、ついでにアミノバイタルを水とともに流し込んだ後、出発する。
この間、立ったままであり、時間は 5分足らず。長い休憩、ならびに腰を下ろすと出発が億劫になるので、避けたものである。
かなり緩やかになった斜面を、大きな振幅にてジグザグに登っていく。ここに至るまでにはシラビソ、トウヒなど多くの種類の木々が見られたが、 この辺からは俄然シラビソが多くなり、南アルプスらしき雰囲気が漂い始める。

そのシラビソの間を縫うようにして登っていくと、ついに道は平らになって右の方へと進むようになる。漸く稜線に到着である。
時刻は 10時6分。稜線上は今まで以上にテープ類が多く見られ、また足下も普通の登山道と変わらないほど明瞭である。
足取りも軽くなる中、苔むした樹林帯を進んでいくと、やがて 『 境界見出標 』 が現れる。
ということは、今歩いている左側は長野県諏訪郡富士見町となり、右側は伊那市ということになると勝手に解釈したが、 実際は森林管理局によって保安林を区切っているだけなのかもしれない (ただ、帰宅後調べると、富士見町側だけが保安林となっていたので、 市町村境と言っても強ち間違いではないようである)。
展望は全く無いが、頂上が近いことが分かるので足が進む。

やがて、左下方樹林越しにササ原の窪地を見て少し進むと、樹林帯を飛び出して目の前に小山が現れる。時刻は 10時13分。
ついに白岩岳頂上かと期待しつつ斜面を登る。この斜面にも白い岩が散らばっているが、それよりも目立っているのが白い花である。
葉の形から、恐らくシロバナノヘビイチゴと思われるが、足の踏み場を選ばねばならないほどに咲き誇っている。
そして、左手には頂上部分が乳首のように突起している山が見えている。しかし、見たことがある山ではあるものの、とっさには名前が思い浮かばない。 疲れて頭の動きが鈍くなっているなと思いつつよく見ると、その山の左後方に甲斐駒ヶ岳が確認できたので、見えている山が鋸岳 (第一高点) と気付く。 そう言えば、その姿は以前 釜無川の沿いのルートを辿り、三角点ピークから見た姿そのものであった。
鋸岳、甲斐駒ヶ岳の後方にはやや雲が多く、青空をバックに映えるという訳にはいかないが、ここまでほとんど展望が得られなかっただけにテンションがグッと上がる。

そして、斜面を登り切り、疎らに生える木々の間を抜ければ、そこは白岩岳の頂上であった。時刻は 10時16分。
急登の連続に苦労はしたものの、意外にあっさりと到着したので少々拍子抜けだが、それでも念願の頂上に立てたのは非常に嬉しい。
この白岩岳の頂上には二等三角点 (標高 2,267.4m) の他、この山の特徴である白い岩が散乱しており (ケルンのように積まれているものもある)、 さらには歴史を感じさせる石碑も置かれている。
石碑を見ると、その正面には 『 通大天狗 』 と彫られており、さらに右サイドには 『 天保五年 甲午(きのえうま)八月吉日 五穀成就 』、 左サイドには 『 黒河内村 施主 山本講中 』 とある。
天保五年 (1834年) は天保の大飢饉 (1833〜39年) の最中なので、このような奥深い山に重い石碑を担ぎ上げたということは、 村民の五穀豊穣に対する願いがかなり切実なものだったと推測できる。

さて、展望の方であるが、ややドンヨリとしていてスッキリとしないものの、それなりに多くの山々を見ることができる。
まずは上述の石碑後方には中央アルプスが見えている。目が行くのは木曽駒ヶ岳と言いたいところだが、実際は空木岳がよく目立ち、 その左に赤梛岳、そして南駒ヶ岳が続く。
南駒ヶ岳の左には、先程 樹林帯の中でチラリと見えた山が見え、ここでその山が仙涯嶺であったと気付く。
仙涯嶺の左には越百山が続き、少し間を空けて安平路山が確認できる。

また、空木岳に目を戻せば、その右側の稜線は木曽殿越方面へと大きく下った後、 再び東川岳へと立ち上がり、さらに右に熊沢岳、檜尾岳といった東川岳と同じような高さの山が続く。 檜尾岳から下った稜線は、濁沢大峰へと立ち上がり、その右には三ノ沢岳があたかもその稜線上にあるかのように見えている (実際は稜線の後方に見えている)。
そして、三ノ沢岳の右手、濁沢大峰から続く稜線の先には島田娘、宝剣岳、伊那前岳、中岳が続き、木曽駒ヶ岳へと至っているが、 宝剣岳、伊那前岳、中岳については肉眼では少々見分けにくい。
木曽駒ヶ岳の右には将棊頭山、茶臼山が続いた後、稜線は下っていく。

その稜線は大棚入山の鈍角三角形にて再び盛り上がっており、その大棚入山の右後方には御嶽が見えている。
ただ、御嶽は本当にうっすらとしか見えず、これは先日の蝶ヶ岳と同じ状況である。
御嶽の右には少し間を空けて経ヶ岳が見え、さらにその右側、またまた少し間を空けた所に乗鞍岳が確認できる。しかし、 この乗鞍岳も御嶽と同様うっすらとしか見えない。
乗鞍岳の右側手前には小鉢盛山、鉢盛山らしき高みがシルエットとなって見えているものの、そのさらに右側は樹林によって遮られる。
但し、もう少し右に目を向けると、樹林の上方に穂高連峰が確認できるようになる。しかし、こちらもほとんど空の色と区別がつかない状況である。

先程の安平路山に目を戻すと、安平路山の少し左手後方にはうっすらと恵那山が見えている。
恵那山の左に暫く名も知らぬ山が続いた後、南アルプスの地蔵尾根が立ち上がっている。
そして、その地蔵尾根を追っていくと、真南の方角にて仙丈ヶ岳に至っており、こちら側からは頂上直下の藪沢カールがよく見えている。
また、仙丈ヶ岳の右後方には大仙丈ヶ岳が少し顔を出しており、また仙丈ヶ岳から左に下る稜線がやや平らになった後、再び下りかける所が小仙丈ヶ岳と思われる。
そして、その小仙丈ヶ岳から左に下る稜線の後方には間ノ岳が見え、その間ノ岳から左に延びている稜線は、中白根山を経て、北岳に至っている。 ここから見る北岳は、少し遠いながらも綺麗なピラミッド型をしており、その左側からこちらの方に下ってきている尾根の先には小太郎山が見えている。

小太郎山の手前からは双児山に至る尾根が立ち上がり、その尾根は双児山を経た後、 駒津峰へとさらに上っていくが、駒津峰は途中から鋸岳に隠れてしまう。また、双児山と駒津峰を結ぶ稜線の後方には栗沢山とアサヨ峰が重なるようにして見えている。
駒津峰を途中で隠している鋸岳は、ここから近いこともあって、左後方の甲斐駒ヶ岳にも負けない存在感を見せている。 そして、鋸岳からこちら側の左方に下ってきている尾根は編笠山に至り、編笠山から右に分かれた尾根は横岳に至った後、 そのままこの白岩岳へと続いている (編笠山、横岳といっても八ヶ岳ではない)。
編笠山から左へと下る尾根は急傾斜にて谷に落ち込んでおり、その尾根の後方には甲斐駒ヶ岳から左に続く尾根が見えている。恐らく八丁尾根であろう。

その八丁尾根は大岩山に至った後、二つに分かれてそれぞれ左方に下っていく。
そのうち、後方の尾根は小さなアップダウンの後、残雪の如き白さが目立つ高みを経て雨乞岳へと再び上っているが、その白き高みは恐らく水晶ナギであろう。
また、この大岩山から雨乞岳に至る尾根の後方にはうっすらと奥秩父の山々が見えており、大菩薩嶺、金峰山、小川山などを確認することができる。 そして、小川山のさらに左には御座山が見えており、その御座山の手前からは八ヶ岳が立ち上がっている。
八ヶ岳は右から三ツ頭、権現岳、旭岳と続き、旭岳の稜線が左に下る後方から主峰である赤岳が現れ、赤岳からさらに左に横岳、硫黄岳、 そして根石岳、天狗岳が続いている。残念ながら天狗岳のさらに左側は樹林に隠れてしまっている。
なお、上記に述べた展望は、一箇所から得ることはできず、山頂を動き回らねばならない。

ややボーッとしてはいるものの、素晴らしい展望に満足して食事にする。山頂の岩に腰掛け、中央アルプスを見ながらパンを食す。
山頂独り占め + 素晴らしい展望という状況に食事も美味いと言いたいところであるが、何しろ羽虫が周囲を飛び回ってかなり煩わしい。
幸いブユなどはいなかったようだが、ユックリ休むことは叶わず、さらには写真を撮る際にレンズ周囲を飛び回って、写真に映り込む始末。 しかし、大変イライラさせられはしたものの、白岩岳に登った喜びはそれを上回っている。

山頂で十分休み、11時丁度に下山を開始する。これ程 長く山頂にいたのは久しぶりである。
おとなしく往路を戻る。テープが頻繁に付けられており、また登りでそれなりに学んできたので安心である。
しかし、それにしてもかなりの急斜面が続く。途中、5分程休んだが、振り返って見上げた急斜面に、よくもまあこんなところを登ったものだと我ながら感心してしまう。 初めての山、そして念願の山ということがモチベーションになったのであろう。
忠実にテープを追って下って行くと、やがて道は斜面を横切って右に水平移動するようになり、何と目の前には今朝ほど道を塞がれてしまっていると解釈した大きな倒木が見えてくる。 しかも、この場所は今朝とは反対側である。
ここでも行き止まりかと思ったが、よく見ると道は倒木の下方、一旦少し斜面を下った所にあって、すぐに今朝ほどの 『 → 八九四 』 と書かれた木の所に出たのであった。 時刻は 12時43分。

これでもう安心と思ったためか、つい斜面を横切っている踏み跡をそのまま進んでしまい、下降点を見落としてしまう。
暫く進んでも赤テープが見つからないので、また迷ったかと思い、左側の斜面を下りてみる。
斜面がグッと落ち込んでいる縁まで来ると、何と左下に赤い屋根が見えるではないか。行き過ぎたと気づき、そのまま獣道のような踏み跡を左斜めに下る。 そして何とか今朝ほどの取り付き口に戻り、草地の広場には 12時56分に下り着いたのであった。
もう一度旧営林署の建物を見るべく少し寄り道をした後、12時59分に丸木の橋を渡る。
そして林道に戻り、車のあるシンナシ沢橋には 13時7分に戻り着いたのであった。

本日は、少々刺激を求めて地図上にルートのない白岩岳に登ったが、 出だしで道に迷い、また途中、かなりのハードワークを強いられたものの、山頂では素晴らしい展望を得られ、十分に満足のいく山行であった。
願わくは、白岩谷の左側の尾根を登り、今回ピストンした右側の尾根を下りたかったところであるが、途中の道迷いを考えると、 ピストンで正解のようである。
しかし、やはり初めての山、初めてのルートは刺激があって大変楽しい。こうなると次に登る山の選択に困ってしまう。


残雪の蝶ヶ岳  2017.6 記

恒例の鎌倉散策 (5月23日) の案内も無事に終わり、6月上旬には恐らく梅雨入りになると予想されることから、 5月中にもう 1つ山に登っておきたいところである。ただ、狙っている北アルプス方面は天候があまり芳しくなく (24日〜25日は曇りで 26日は雨)、 また混雑する土日を避けると、小生の都合もあって 30日しかチャンスがない。
しかも、その 30日は前回の乗鞍岳と同様に前日の帰宅が 22時を過ぎてしまうことからあまり気乗りしなかったのであるが、 行ける時に行っておかないと後悔すると考え、思い切って出かけることにする。

行き先は蝶ヶ岳。先日の乗鞍岳からその姿を見たこともあって当初は常念岳を考えていたのだが、 少々左膝に痛みを感じる状況であることを考慮し、常念岳に比べて多少は登り易そうな蝶ヶ岳に変更したものである。
そうは言っても、蝶ヶ岳にはまだ雪が多く残っているようであるし、今回登る三股から蝶ヶ岳に至るコースは下りにしか使ったことがないことから、 初めて登るコースと同じく新鮮に思え、大変楽しみである。
因みにこのコースを下ったのは 2010年で、その時は三股から常念岳・蝶ヶ岳と周回しており、この下りではガスでほとんど展望を得られていない。

5月30日(火)、3時20分に自宅を出発する。空には星が瞬いており、本日はかなり良い天気になりそうである。
いつも通り横浜ICから東名高速道下り線に入り、海老名JCTにて圏央道へと進んだ後、八王子JCTから中央自動車道に入る。
空には雲一つないことから、大月トンネルと岩殿トンネルとの間の短い区間にて富士山の姿が見えることを期待していたのだが、 一応 富士山を見ることはできたものの薄いベールがかかったようであまりパッとしない。
この状態は笹子トンネル・日影トンネルを抜けた後の南アルプスも同様で、全体的に薄い膜が掛かったようである。
本日は気温も高くなるとのことなので、山での展望は少し厳しいのかもしれない。
そして岡谷JCTから長野自動車道に入ると、今度は北アルプスが見えてくるが、こちらもやはりベールを被ったようである。

途中、梓川サービスエリアにてトイレ休憩とコンビニで食料・水を購入した後、安曇野ICにて高速を下りる。
下りてすぐの信号を左折して県道57号線に入ると、前方に常念岳らしき山が見えてくるが、やはり少し靄っている感じである。
暫く進んだ後、豊科駅入口の交差点にて右折して国道147号線に入り、200m弱進んだところで新田の交差点を左折して県道495号線を西へと進む。 ここからは道なりに 5km程進むのだが、運転中、前方には常念岳、そして横通岳の姿を見ることができる。
山の雪はかなり融けているようで、山襞の谷の部分のみが白くなっているだけであるが、ここでも先程と同様、全体的に何となくぼやけていて今一つスッキリとしない。

道はやがて北海渡の丁字路に至り、そこを右折して県道25号線に入る。 すぐに 『 ← あずみの公園 堀金 穂高 』 の標識が左手に見えてくるので、そこを左折し再び県道495号線に入る。 あずみの公園の脇を進み、須砂渡キャンプ場のところで県道495号線と分かれた後、まっすぐ進んで烏川林道 (舗装道) へと入っていく。
山の中を 10km程 進んでいくと、やがて三股の駐車場で、到着時刻は 6時34分。 途中、猿が道にたむろしていて、運転には注意を要したのであった。また、広い駐車場には、平日というのに 10数台の車が駐車している。

身支度を調えて 6時41分に出発。駐車場の奥へと進む。 見上げれば蝶ヶ岳の稜線が見えており、その後方には雲一つない空が広がっているが、少し青みが不足していて抜けるような青空とは言いがたい。
ゲートを抜けて林道を進む。駐車場までは舗装道であるが、ゲートから先は砂利道が続く。10分程進んでいくと前方にトイレそして登山相談所が見えてくる。 その手前で目の前を猿が横切って右手の木に登っていったので少々ビックリする。
その三股登山口には 6時53分に到着。用意してきた登山届を相談所のポストに入れて先へと進む。

用具小屋の前を進んで樹林帯に入る。鉄製の橋を渡るとすぐに分岐となり、 『 常念岳 (7.1km) →、↑ 蝶ヶ岳 (6.2km)』 と書かれた標識が立っている。右の常念岳への道は過去 2回登っており、 本日は初めて登りに使う蝶ヶ岳への道を進む。
緑の中、木橋にて数回小さな流れを渡っていく。この辺は緩やかな登りが続く。
やがて吊橋に到着、時刻は 7時4分。やや揺れる吊橋から見下ろすと、本沢はかなりの水量であり、流れにも勢いがある。
その後、また小さな流れを渡ったところで少し傾斜が出始める。道の両側はニリンソウの群落になっており、白い花が咲く中をジグザグに登っていく。 ニリンソウの群落が終わると足下に小さな岩が目立ち始める。

その後、小さな岩の中に横木が敷かれた道を登っていくと、水が湧き出る 『 力水 』 に到着、時刻は 7時14分。
そこの標識には 『 蝶ヶ岳 5.6km 』 とある。まだノドの乾きは覚えていないのでそのまま通過する。
ここからは結構 勾配が出てくるようになり、階段も連続するようになる。
樹林帯の中ではあるものの、日差しが強く感じられる。先般の乗鞍岳では雪の照り返しに顔が真っ赤になるほど焼けてしまったが、 今回はそれを反省して顔には日焼け止めを塗っている。一方で、腕の方はある程度日焼けしたいので、長袖を二の腕までまくり上げる。

小さな梯子、階段が連続するが、階段は山でよく見かける簡易なものではなく、 綺麗にカットされた木材をボルトとナットでしっかりと留めたものである。中には手すりが付いているものもあり、 その手すりもトゲなどが刺さらないように面取りされているなど、この登山道にはそのような階段がかなりの数が設置されている。
こういう状況を見てふと疑問が湧く。恐らくこの登山道の整備費は長野県の予算で賄われているものと思われるが、 それを利用している小生はほとんど長野県にお金を落としていないのである。本日も高速代、コンビニでの支払いだけであり、 恐らく長野県に税金として入る金額は微々たるものであろう。
つまり、ほとんどタダでこういう整備されたものを使わせてもらっていることになり、何か申し訳ない気になってしまう。 入山税という議論もあるようだが、こういう整備された登山道を見ると、その他に遭難への対応費用などもあることから、入山税導入もやむなしとも思ってしまう。

閑話休題。
やがて、緩やかな登りの先にベンチらしきものが見えてくる。道はそのベンチ前で右に曲がっている様であるが、そこには何やら標識らしきものも立っている。 何だろうと思いながら登り着くと、そこには有名な ? 『 ゴジラみたいな木 』 があったのだった。時刻は 7時22分。
ゴジラというよりはティラノサウルスという気がするが、枯れ木が恐竜の頭の形をしていているのである。
しかも、木には緑色の苔が生えていて一層 恐竜の肌らしく見え、節だったと思われる部分も凹んでいて目となっており、 さらには少し開き気味の口もあって、そこには石が詰められて歯のようになっているので、確かに恐竜らしく見えるのである。
前回この道を下った際には全く気付かなかったのだが、イヤハヤ見事なものである。

道はすぐにカラマツが両側に立ち並ぶ中を緩やかに登っていく。 面白いのは、カラマツが道の両側にしか生えておらず、並木道のような風情であることである。
この頃から右手樹林越しにチラチラと山が見え始める。恐らく常念岳方面と思われるが、5月も末となれば緑もかなり生い茂っており、 なかなか見通すことができない。それでも、途中、樹林が切れてそれらの山々の一部を見ることができ、前常念岳であることを確認する。
この辺では雪は全く無く、日差しが強い。傾斜もさほどキツクはないものの、左膝の調子が今一つであり、さらには少々バテ気味である。
昨日は 2時間半程しか寝ていないためなのか、この暑さが結構 応える。

一方、展望の方は徐々に開け始め、今度は常念岳が見えてくる。 しかし、やはり薄いベールが掛かったようでクッキリ見える感じではない。
さらに高度を上げていくと、今度は樹林越しに蝶ヶ岳方面が見えるようになる。常念岳の荒々しさを感じさせる山肌とは異なり、こちらは曲線が目立ち、 緑と雪の山肌が優美さを感じさせてくれる。しかも、目を凝らすと、蝶ヶ岳ヒュッテらしき建物がその稜線上に見えている。
道の方は例の階段を交えながら高度を上げていく。やがて目の前に高みが見えてきたので、急登が待っているのかと身構えたが、 ありがたいことに道はその右手を巻いていく。

すぐに樹林が切れて展望が開けた場所に至り、そこからは前常念岳から常念岳へと続く尾根がよく見えるようになる。
ただ、こちらからは前常念岳と常念岳の高さがほとんど変わらない様に見えている。
再び道は展望の無い樹林帯に入り、やがて左に大きく曲がると傾斜もキツクなり始める。そして目の前に現れた高みを今度は巻くことなく登っていく。 ここでもしっかり作られた階段が頻繁に現れるが、かなりの労力と資金が注ぎ込まれているようである。
それにしてもこの登りはキツイ。特に階段の昇りでは左膝がシクシクと痛む。オマケに暑く、息が上がる。
喘ぎつつも何とか足を進めて行くと、このキツかった登りも漸く終わりとなり、道が平らになってやがて まめうち平に到着、時刻は8時20分。
ややバテ気味だったのでベンチに腰掛けて休憩し、500mlのペットボトルの水を一気に飲み干してしまう。

このまめうち平は樹林に囲まれた小広い平坦地で、上述の通りベンチも数基置かれていて休憩にはもってこいの場所である。
記憶ではもう少し倒木があって荒れていた印象があったが、今はかなり綺麗に片付いている。
8時27分に出発。傍らの標識には 『 蝶ヶ岳 3.9km 』 とある。ここからは暫くの間ほぼ平坦な道が続く。ということは、 まめうち平というのはこの休憩場所だけを指すのではなく、斜面の登りが始まるまでのこの辺一帯を言うのであろうなどと思いながら進む。
また、ありがたいことに、この辺では木々も背が高いためか、太陽が照りつけることもなく、涼しいので足が進む。
さらには、ここは積雪量も多いのであろう、周辺にはかなり倒木が見られるようになるが、それらはしっかりと伐採されて片付けられている。
本当に良く整備された登山道である。

足下には暫し木道が現れ、やや泥濘んだ地面を回避しながら進む。 道は徐々に緩やかな登りに入り、やがて多くの木々が伐採されている斜面を階段にて登る。ここからは再び常念岳の姿が見えるようになるが、 ここから見る常念岳は前常念岳よりもかなり高くなっている。
常念岳はややドーム型をしており、白い部分よりも濃い緑色やダークグレイの岩肌が目立つが、常念岳の右下からこちら側へと下って常念沢へと至る谷筋にはまだ雪が相当残っている。
ジグザグに高度を上げていくと、やがて周辺に雪が見られるようになるが、登山道の方にはほとんど雪がない。シラビソやツガの樹林帯を登り、 やがて標高 2,000m地点を通過、時刻は 8時50分。傍らの標識には 『 蝶ヶ岳ヒュッテ 3.1km 』 とある。

この 2,000mの標識を過ぎると、登山道上にも雪が現れるようになる。 しかし緩やかな斜面であり、加えて時々雪が途切れて地面が現れるのでアイゼンは不要である。
傾斜の方は徐々に角度を増してくるが、雪の上に残る踏み跡を辿れば問題なく登っていくことができる。ただ、中にはかなり深く踏み抜いた跡も残っているので、 ある程度踏み抜きを覚悟しておかないと、踏み抜いた時のショックが大きい。
徐々に雪も多くなり、傾斜も増してくる上、雪がシャリシャリしているために少し歩みにロスが生じ始める。アイゼンを装着した方が効率的と思うが、 雪が無い場所もまだかなり出てくるのでそのままノーアイゼンにて登り続ける。

残雪の中、道の方は基本的に登山道上を辿っているようであるが、 時々残雪を利用してのショートカットが現れる。ただ、そのショートカットも雪がかなり融けてきているようで、時には藪漕ぎのような状態になる。
また、右下に下る雪の斜面をトラバースする箇所が何回か出てくる。慎重に進めば問題は無いのであるが、気をつけねばならないのが、 残雪の中から飛び出している木の枝である。
それを踏んでは申し訳ないと、無理して避けると体勢が崩れて滑落の危険があるという訳である。慌てず慎重に枝を掻き分けて進む。

9時16分に蝶沢の斜面をトラバース。ここは見晴らしが良く、常念岳から前常念岳方面がよく見える。
その形は常念岳が頭、常念岳から蝶ヶ岳方面へと下ってくる尾根が鼻、そして前常念岳迄の稜線が胴体、前常念岳から右へ下る斜面がお尻といった感じで、 マンモスの姿をイメージさせる。
この蝶沢の斜面はかなり急で、急傾斜が右下の谷へと深く落ち込んでおり、滑落したら間違いなくアウトなので慎重に進む。
また、前方には蝶槍らしき高みも見えている。
トラバースを終えると、また雪の無い、岩がゴロゴロした道が続く。岩を見ると、かなりアイゼンで引っ掻いた傷が残っているので、 アイゼンを付けたままここを通った (恐らく下った) 方が多くいるのであろう。

再び短いトラ−バースが現れる、ここは残雪から出ている枝がかなり煩い。
その後、再び夏道が現れるが、この辺ではかなり小バエが周囲を飛ぶ。もしかしたらブヨも居るかもしれないので要注意である。
と言いながらも、結局 顔を 3箇所ほど刺されてしまったが、恐らく刺されたのは蝶ヶ岳の山頂付近かと思う。
雪の上に付けられた踏み跡を辿って登っていく。この辺では登山ルートを外れているようで、登っている場所の右手には階段が見えている。
先にも述べたように雪の斜面のトラバースを数回繰り返しながら樹林帯を進む。この辺は日当たりが良いためか、雪が無い箇所が時々現れるので、 アイゼンの着用は躊躇うところである (尤も、アイゼンなしで頂上まで登る方も多くおられるようである)。

時々見える常念岳や蝶槍に元気づけられながら黙々と進んでいくと、道はやがて樹林帯に入る。時刻は 10時21分。
ここまで雪で滑ることも多々あり、また先の方を見ても雪が続いているようなので、そろそろ潮時ではないかと思いアイゼンを装着する。
この雪の状態ならば軽アイゼンで十分ではあるが、本日はチェーンスパイクと 10本爪アイゼンしか持ってきていないため、 大は小を兼ねるという観点から 10本爪の方を装着する。ついでに少し休憩した後、10時27分に出発。
すぐに道は樹林帯を抜け、大きなダケカンバが 1本生えている斜面をトラバースして進む。アイゼンを装着しているため、 こうしたトラバースも安心して進むことができるが、一方で雪の上の道幅が狭いため、足がクロスする所謂モデル歩きになるので、 もう一方の足を引っかけないように注意しながら進む。ここからも常念岳、前常念岳がよく見える。

トラバースを終えると、道はシラビソの樹林帯に入り、ここからは雪の斜面をほぼ直登することになる。 どうやら、アイゼン装着はグッドタイミングだったようだ。
こういう斜面ではやはりアイゼンは効率が良く、斜面を小さな振幅にてジグザグに登っていく。
途中 下山者と擦れ違ったのでこの先の状況を聞くと、この樹林帯を抜け出た後は雪の斜面の直登とのこと、漸くこの先の目処が立って嬉しくなる。 とは言いつつも、この斜面の登りは結構キツイ。やはり身体が鈍っていることを実感する。
息を切らせつつも登り続けていくと、長くて辛く感じた斜面も漸く終わりとなり、樹林を抜け出して再び斜面をトラバースする。 ここからは蝶槍がよく見える。

そして再び短い樹林を通り抜ければ、先程の登山者が言っていた直登が始まる。
左上に向かって延びる雪の斜面に取り付く。上方は小さな高みとの鞍部になっているようで、斜面の先には青空が見えている。
ただ、抜けるようなスカイブルーとは言えず、ややダークが入っているが、それでもこの光景にテンションが上がる。
一方、完全に樹林帯を抜けているので、日差しをもろに浴びることになるが、雪の斜面には風が吹き抜けていて心地よい。
左のシラビソの樹林帯に沿ってやや斜め左に登り鞍部を目差す。右側は小さな高みに向かって雪の斜面が広がっており、 その斜面には疎らに小さなダケカンバが生えている。
雪の上には多くの踏み跡があり、それを忠実に辿る。かなりへばってきているので息が上がるが、もうすぐ頂上という気になっているので頑張って登り続ける。

しかし、それ程甘くはない。樹林から離れて少し右へ曲がり、鞍部に辿り着いたかと思うと、その先にはさらに雪の斜面が続いていて、期待は脆くも砕け散る。
ここからはスキー場のような斜面を登って、さらに先に見えている鞍部に向かう。ガッカリしたものの、ここは我慢して登り続けるしかない。
斜度は 30度位だろうと思われるが、疲れている身体にはかなりの急勾配に思われる。途中で何度も立ち止まっては上を見上げるという動作を繰り返しつつ登る。
少し高度を上げてきたところで、息を整えるべく立ち止まって振り返ると、今まで見えなかった常念岳よりも左側の山々が見え始めており、 東天井岳、中天井岳、大天井岳が確認できる。しかし身体を捻ると斜面を滑り落ちてしまいそうなので写真が撮れない。
もう少し傾斜が緩むところまで撮影はお預けにして登り続ける。

喘ぎつつも登り続け、漸く傾斜が緩やかになると、今度は少し平らとなった雪原の先にまたまた斜面が控えている。
但し、その斜面の先にはハイマツ帯があるので、今度こそ頂上付近であるとの期待が持てる。
そして、足下も落ち着いたので、大天井岳方面を写真に収める。大天井岳の左手前には蝶槍の姿も見えている。
ハイマツ帯に向かって足を進める。緩やかな傾斜の雪原を進んだ後、右斜めに斜面を登っていく。最後の登りとは思うがやはり苦しい。
2度程途中で立ち止まりながらも斜面を登り切り、何とかハイマツ帯の下に至ると、そこで雪は全く無くなってしまう。
このまま頂上まで雪が続くことを期待していたのだが、これには少々ガッカリ。仕方なくアイゼンを外し、手にアイゼン、ストックを持ったままハイマツ帯を進む。
振り返れば大滝山が見えているが、その後方に見えるはずの八ヶ岳や富士山、そして南アルプスは霞んでしまって全くと言って良いほど見ることができない。

さて、穂高連峰、槍ヶ岳はどうであろうか・・・と思ったら、ハイマツ帯を緩やかに登っていくと、 ハイマツ帯の先、蝶ヶ岳ヒュッテの風力発電装置と風速計が立つ左後方に槍ヶ岳の姿が見え始めたのでテンションがグッと上がる。
さらには、蝶ヶ岳の三角点がある高みの左後方に野口五郎岳が確認でき、その左には喜作新道のある尾根が見えている。
蝶ヶ岳の最高点までもう少しである。
早く穂高連峰から槍ヶ岳へと続く山並みを見たいとの逸る気持ちを抑えつつテント場を横切り、少し登って蝶ヶ岳の稜線に立つ。
時刻は 11時36分。イヤハヤ、体力不足の上に雪に苦しんで、何と駐車場から 5時間もかかってしまった。
時間的には手元の地図通りではあるが、雪の無いまめうち平までがコースタイム 2時間20分のところを 1時間40分でこなしたのに対し、 まめうち平からここまではコースタイム 2時間40分のところを 3時間10分程かかっている。
この結果を真摯に受け止め、普段体力をつけることをしっかりと実践せねばなるまい。

さて、目の前に広がる展望であるが、穂高連峰、そしてそこから右の槍ヶ岳まで続く山々は雲などに遮られることなくしっかり見えている。
しかしである、やはり薄いベールが掛かっているようで、期待が高かっただけに失望感の方が先に立ってしまう。
それでも、気を取り直して暫し穂高連峰、槍ヶ岳、そしてその周辺の山々を眺めて同定を楽しむことにする。
南南西の方角を見ると、御嶽が霞の中にボーッと浮き上がるような感じで見え、その右には先日登った乗鞍岳が見えている。
乗鞍岳の方は御嶽よりもまだその輪郭がよく分かるが、それでもやはり薄いベール越しに見ているようである。
乗鞍岳を形成する山の 1つである四ツ岳の右手前には霞沢岳が見えており、その霞沢岳から右へと延びる尾根が上高地へと下るその後方に焼岳が姿を見せている。 しかし、こちらも相当 影が薄い。

そして焼岳の右手前からは再び尾根が立ち上がっており、途中に明神岳を経て前穂高岳へと至っている。
前穂高岳から右に下る尾根は屏風ノ頭、屏風岩へと至っており、その尾根の後方に奥穂高岳が横幅のある堂々とした姿を見せている。
奥穂高岳の右には涸沢岳、そして北穂高岳が続き、稜線は一旦大キレットへと下っていく。大きく下った稜線は南岳に向かって再び立ち上がり、 中岳、大喰岳を経て槍ヶ岳へと至っている。
山々の色を見ると、前穂高岳、涸沢岳、槍ヶ岳は岩の黒が目立ち、北穂高岳、南岳、中岳、大喰岳は雪の白が目立っていて、 奥穂高岳はその中間という感じである。
そして、奥穂高岳下方の涸沢カール、大キレット下の本谷カール、そして南岳下方の横沢右俣付近は真っ白である。

暫し展望を楽しんだ後、尾根を左に登って蝶ヶ岳最高点 (標識には蝶ヶ岳山頂とある) へと向かう。 最高点到着は 11時42分、ここには誰も居ない。標識手前の岩場に腰掛けて雄大な景色を見ながら食事をする。 風はやや冷たいが、アウターを羽織る必要は無い。
食事を終えた後は、槍ヶ岳より右側の山々を眺める。槍ヶ岳から右には北鎌尾根が下っており、その尾根は北鎌独標を経た後、大きく下降する。
また、北鎌尾根の手前下方には槍ヶ岳から右斜めに下る東鎌尾根が見え、途中、赤沢山に隠れるものの、赤沢山の右後方から西岳へと再び上っている。 西岳の右には喜作新道のある尾根が延びており、途中に赤岩岳も確認できる。
また、西岳の右後方には白く形の良い山が少し見えているが、帰宅後調べるとどうやら水晶岳 (黒岳) のようである。

喜作新道のある尾根の方は少し下った後、牛首展望台へと再び盛り上がり、さらに右の大天井岳へと続いている。 そして、牛首展望台の左後方には野口五郎岳も見えている。
大天井岳の右には先程見たように中天井岳、東天井岳が続くが、さらに右へと続く稜線は手前から立ち上がる常念岳に隠れてしまう。
常念岳の右には前常念岳が続く。しかし前常念岳の右側後方に見えるはずの頸城山塊、そして上州の山々は全く見えない。
場所を移動して頂上標識の後方に進むと南東方向に大滝山が見える。しかし先にも述べたようにその左右の後方に見えるはずの八ヶ岳、富士山、南アルプスは全く見ることができない。
さらに右側、南の方角には鉢盛山が見えるものの、その後方の中央アルプスはほとんど同定できない状況である。
そして、鉢盛山のさらに右、南南西の方向にはうっすらと御嶽が見えている。これで 360度、グルリと一周である。

すぐ目の前の槍・穂高連峰がクッキリとしていないのが残念だが、一応この展望に満足したところで、12時19分に下山を開始する。
当初は蝶槍まで行くことも考えていたが、最高点を踏んでしまうと全く行く気が失せてしまった。従って、蝶ヶ岳ヒュッテや瞑想の丘にも寄らずにそのまま下山する。 身体の方が早く下山したい旨を脳に伝えていたようである。
テント場へと下る手前にて見納めとなる槍・穂高連峰の姿をカメラに収めた後、往路を戻る。大滝山を見ながら雪渓の手前まで進み、 アイゼンを装着した後 雪の斜面を下る。
急斜面なので心配であったが、アイゼンが利いてくれて無事に長い斜面を下り終えて樹林帯に入る。この雪の斜面も順調にこなし、 トラバースが続く道に入る。

アイゼン装着時と同じ場所でアイゼンを外し、夏道と冬道が交互し、そして雪の斜面のトラバースが数回現れる道を下る。
雪は今朝ほどより緩んでおり、一度 大きく右足を踏み抜いてしまったが、恐ろしいことにその右足が底を捉えることはなかったのであった。
往路を忠実に戻り、2,000m地点の標識を 13時45分に通過、ここからは普通の夏道が続く。まめうち平には 14時丁度に戻り着き、 3分程休憩してさらに先へと進む。
そして、『 ゴジラみたいな木 』 のある場所を 14時36分に通過し、14時40分に力水に戻り着いたのであった。 冷たい水にてノドを潤し、顔を洗って気合いを入れてさらに下る。
ニリンソウの群落を抜け、吊橋を渡り、常念岳との分岐には 14時55分に到着。そして、登山口には 14時57分に到着し、 そこのトイレをお借りした後、駐車場には 15時7分に戻り着いたであった。
この間、常念岳が見えるはずの場所では、ガスなどに遮られることなく、しっかりとその姿を見ることができたのであった。

本日は残雪の山として蝶ヶ岳を選んだが、登りに使うのは初めてであるためワクワク感もあり、 しかも好天に恵まれたため、前回全く見ることができなかった景色を楽しみながら登ることができて満足できた一日であった。
雪の斜面ではかなり苦労したものの、蝶ヶ岳を選んだのは身体的にも正解であった。
また、蝶ヶ岳から見た槍・穂高連峰は薄いベールが掛かっているようで期待したレベルではなかったものの、 十分に初夏の山々の様子を窺うことができ、これも満足である。
ただ、問題はいつものように体力で、本当に体力強化に真剣に取り組まねばならない状況である。


大満足の乗鞍岳  2017.5 記

混雑がイヤでゴールデンウィークの山行は避けたところ、その後の天候があまり芳しくない。
それでも何回か晴れの日はあったのだが、生憎 用事があって山に行くことができず、少々焦りが出てくる。
そんな中、16日は何とか晴れそうであることから、前日の帰宅が 22時であったにも拘わらず山に行くことにする。

さて行き先であるが、まだ雪との戯れが不十分と感じているので、 残雪の山を中心に行き先を探したところ、燕岳、常念岳、乗鞍岳が候補に上がる。ただ、サラリーマン時代に比べて毎日の歩く距離が極端に減っている現状であり、 加えて 4月は鎌倉の低山を登っただけで実質山行ゼロだったことも考慮して、体力的に自信が持てなかったことから、最終的に乗鞍岳に行くことにする。
とは言え、仕方なく乗鞍岳にしたということではなく、燕岳、常念岳が無雪期、残雪期の違いはあれど、どうしても一度登ったコースを辿ることになるのに対し (途中 冬道はあるが)、 乗鞍岳の方は積雪期や残雪期にのみ登ることができるコースなので、非常に楽しみなのである。

5月16日(水)、午前 3時過ぎに横浜の自宅 (仮住まい) を出発する。 空には雲が多いように思えるが、現地の天気は晴れのはずである。
いつも通り横浜ICから東名高速道下り線に入り、海老名JCTからは圏央道に入って、さらに八王子JCTにて中央自動車道に入る。
中央道に入っても空には雲が多く、笹子トンネルを抜けても南アルプスはボンヤリとしか見えずに少々先行きが心配になる。
しかし、進むに連れて徐々に雲は無くなり始め、韮崎ICを過ぎる頃には甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳がよく見えるようになってテンションが上がる。
その後、諏訪ICを過ぎる頃から再び曇りがちとなりヤキモキさせられたものの、岡谷JCTから長野自動車道に入って暫く進むと、 穂高連峰、常念岳などの山々が見えるようになりホッとする。

松本ICで高速を下り、国道158号線に入る。暫く道なりに進み、 前川渡トンネルを抜けたすぐの信号 (前川渡) にて左折して県道84号線 (乗鞍高原より先は乗鞍エコーラインとも呼ばれる) に入る。
もうこの頃には青空が広がっており、さらには前方に乗鞍岳の姿も見えきてテンションが上がる。
青空に映える乗鞍岳の姿、そして山道のドライブを楽しみつつ順調に進んでいくと、やがて三本滝レストハウスの駐車場に到着。
時刻は 6時38分。
駐車場には 10台ほど車が駐まっており、そのうちの 2台には人が休憩中のようであった。乗鞍岳春山バスにて位ヶ原山荘へと向かう方なのかもしれない。

トイレを借り、身支度を調えて 6時46分に出発。道路を渡り、スキー場のゲレンデに入る。無論、ゲレンデにほとんど雪はない。
ゲレンデの先を見上げると、上部を歩いている人が見える。これはありがたい。
というのは、このコースは初めてであり、手元には十分な地図もないため (手元には乗鞍大雪渓 Web Siteからダウンロードした簡単な 『 ノリクラガイドマップ (春スキー 版)』 があるだけ)、 この三本滝レストハウスからどのように進むのか少々不安だったからである。
かもしかリフトのスタート地点の横を通り、ダブルストックにてゲレンデに取り付く。ところが、少し斜面が急になってきたところで、忘れ物に気が付く。 折角 高度を稼いできたのにとは思ったものの、こればかりは致し方ない。

駐車場まで戻り、6時55分に再出発。
この 10分程のロスを後悔することにならねば良いのだがと思いながら再びゲレンデを登る。やはり久々の登山に息が上がる。
疎らに残る雪を踏み、ゲレンデの傾斜が緩やかなところを選びながら高度を上げていく。それでもこの斜面は結構急なので、 ここは上級者向けなのかもしれない。
高度を上げて振り返れば、鉢盛山、小鉢盛山が見えている。
7時3分に道路を横断。この道路は先の三本滝レストハウスから続く乗鞍エコーラインで、位ヶ原山荘、畳平へと延びているものである。
さらにゲレンデは続く。見上げればゲレンデの先には雲一つ無い青空が広がっており、気分が高揚する。

2回目の道路横断は 7時8分。この道路も先程横断した乗鞍エコーラインの続きである。
高度を上げるに連れて展望も開け、左手には南アルプスの山々がうっすらと見えるようになる。甲斐駒ヶ岳、鳳凰山、仙丈ヶ岳、北岳などが確認できるが、 その順番や形は、普段見慣れているものと違っているので少々戸惑う。
さらには中央アルプスの主稜も見え始めるが、登るに連れ、手前の山に隠れてしまう。ただ、経ヶ岳は南アルプスの手前に見えている。
草の斜面を登り続けていくと、青空しか見えなかった斜面の先に乗鞍岳の剣ヶ峰、高天ヶ原の姿が顔を出し始める。剣ヶ峰は美しいピラミッド型をしている上に、 その山肌はまだかなり白く、その頂上に立つことが非常に楽しみになる。

長かった草のゲレンデも漸く平らになり一息つけるようになると、 左手に中央アルプスがよく見えるようになり、伊那前岳、木曽駒ヶ岳、木曽前岳、三ノ沢岳などが確認できる。
やがて、先程のかもしかリフトの終点に到着、ここからツアーコースが始まることになるようである。時刻は 7時17分。
ここからは暫く緩やかな斜面が続くが、その先に雪の急斜面が見えている。ササ原を掻き分けるようにして進み、その斜面の下まで進む。
ここでアイゼンを装着すべきだったのだが、この後も雪のない場所が現れるのではないかと思い、そのまま雪の斜面に足を踏み入れる。
雪の上にはスキーの跡やスノボーの跡が残っており、さらには先行者の足跡もしっかり確認できる。足跡を見ると、先行者もまだこの時点ではアイゼンを装着していないようだ。

スノボーにて滑らかになった雪面を辿るようにして斜面をジグザグに登っていく。
しかし、暫く登っていくと足が少し滑るようになり、ロスが感じられるようになる。足下を見ると、いつの間にか雪の上にはアイゼンの跡が続いているではないか。 シマッタと思いつつ、何とか登り続け、雪の上に顔を出しているササヤブの所でアイゼンを装着する。
少々場所が悪かったため、装着に手間取り、5分程かかってしまう。やはり斜面の手前で装着すべきであった。
しかし、これで万全、足はロスなく進む。なお、雪の方は意外と締まっており、踏み抜きはほとんどないのがありがたい。

キツかった登りもやがて傾斜が緩み始め、両側から樹林が迫ってやや狭くなった場所を抜けていくと、 そこからはまた雪の道が先の方へと続いているのが見えるようになる。どうやら、ここから頂上まで雪が続くとみて間違いないようである。
足下は暫くの間 平らであるが、その先には再び雪の斜面が見えている。そして、その斜面の行き着く先には樹林帯が壁のように立ち塞がっているが、 樹林帯に入ることは恐らくないはずである。そして、目を凝らすと、その樹林帯に赤い標識が見えている。
雪の斜面に入り、ユックリと登っていくと、その赤い標識がよく見えるようになり、そこには黄色にて 『 1 』 と書かれていたのであった。
手元のノリクラガイドマップにおける 『 1番標識 』 ということになるようである。
因みにこの標識は 6番まであるようだ。時刻は 7時54分。

下からは壁のように見えた樹林帯だが、道の方はこの 1番標識の所から左に折れており、さらにゲレンデが先へと続いている。
暫く平らな雪道を進んだ後、少し右に曲がってそこからまた斜面の登りが続くようになる。両側はツガやシラビソの樹林帯で、 その間に雪の絨毯が敷かれているという感じである。
この斜面を登り終えるとそこには 『 2番標識 』 が立っている。時刻は 8時8分。
ここからは一旦小さなコブを越えた後、また斜面が続くようになる。

所々で樹林が切れ、南アルプスや中央アルプスが見える。
特に中央アルプスはその距離が近いこともあって、ハッキリと見える上に、高度が上がった分、先程よりも多くの山々を見ることができるようになる。 左に将棊頭山が見え、その右に伊那前岳が続いた後、中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳へと続く。こちらから見ると、木曽駒ヶ岳が一番高いことがよく分かる。
木曽駒ヶ岳の右には木曽前岳が続き、その右下には木曽前岳に重なるようにして麦草岳が見えている。麦草岳の右には三ノ沢岳が大きな山容を見せており、 その右後方には空木岳がやや小さく見えている。さらに右には赤梛岳が見え、南駒ヶ岳、越百山が続いている。
また、中央アルプスの左後方からは南アルプスが始まっている。赤石岳を始めとして左に荒川中岳、悪沢岳 (荒川東岳)、塩見岳、農鳥岳、間ノ岳、 北岳、仙丈ヶ岳、鳳凰山、甲斐駒ヶ岳と続くのが確認できるが、こちらは薄ボンヤリとしか見えておらず、また悪沢岳近辺には雲が湧き出している。

気温は高く、かなり暑くなってきたので、手袋を脱ぎ、袖をまくって登り続ける。 しかし、その後風が意外に冷たく感じられるようになったので、元の状態に戻す。
コースの方は乗鞍岳とはやや反対方向へと進んでいたのであるが、『 3番標識 』 を過ぎた所で左へと曲がって軌道修正される。
時刻は 8時18分。
ここからはやや緩やかな登りとなって助かるが、久々の登山だけあって普段使っていない筋肉が少々悲鳴を上げている。
しかし、先の方にはやや薄い雲が掛かり始めたとは言え、青空が広がっており、テンションの方はかなり高いままである。
8時25分に 『 4番標識 』 を通過。この辺からは、先程まで樹林に阻まれて時々しか見えなかった乗鞍岳がよく見えるようになる。
その後方には薄い雲がかかり始めているのが気になるが、前回の時のように頂上でガスに囲まれることのないよう願うばかりである。

この辺では樹林の間に広がるゲレンデもかなり広く、また傾斜も緩やかなのでかなり楽しく登っていくことができる。
その傾斜も徐々に角度がつき始め、登り着いた所には 『 5番標識 』 が置かれている。時刻は 8時32分。
ここからもほぼ平らに近いゲレンデとなり、足が進む。乗鞍岳も剣ヶ峰の他、その右の蚕玉岳 (こだまだけ)、そしてその後方の朝日岳も見えるようになる。
その緩やかだった道も少し傾斜が出始めると 『 6番標識 』 が右手に見えてくる。時刻は 8時40分。
そして、そこからは少し厳しい傾斜が続くようになる。
息を切らせつつ何とか斜面を登り切ると、足下は暫く平らになり、その先に土手のような高みが待っているのが見える。
周囲の木々も疎らになり、開放感が出てくる一方で、身体の方はかなりキツクなり始めている。やはり 1ヶ月半ぶりの登山、 そして普段の運動不足が如実に表れているようである。

その平らな雪原を暫く進むと、土手に向かっての傾斜が始まる手前に注意書きが立っている。
右に進めば位ヶ原山荘、真っ直ぐ進めば肩の小屋そして剣ヶ峰とあり、さらにそこには 『 これより上部へ向かう方はここでもう一度天候・体調・装備等をチェックして下さい。 この先は今までのような道はありません。(以下 省略)』 と書かれている。
成る程、ここでツアーコースは終了で、ここからは自己の判断で登ることになる訳である。天候は問題なし、体調はややバテ気味、 装備はピッケル・ハードシェルを持ってきているので問題なしという状態であり、当然 真っ直ぐ進む。時刻は 8時52分。

すぐに斜面に取り付く。ここの斜面は疲れてきている身体にはキツイ。
喘ぎつつ登りながら右手を見ると、やはりそちらにも土手のような高みが続いており、 その斜面にデブリ (崩落した岩石・雪・氷などの破片) が見られるではないか。
雪崩などは考えにくい状況なので不思議に思ったが、よく考えると、乗鞍エコーラインに積もっている雪を取り除いている際に出た雪塊のようである。

キツイ斜面の登りが続く。少し登っては立ち止まって上を見上げるという苦しい時のパターンが続く。
朝食を食べてから 2時間半ほど経過しており、ここは休みたいところである。そのためにはこの斜面を早く終えてしまいたいのであるが、 果てしなく斜面が続くような感じがしてなかなか先の目処がつかない。
救いは斜面の先に雲混じりとは言え青空が見えていることであり、この斜面を終えれば乗鞍岳の姿を見通せる場所に着くのではないかとの期待があることである。

その苦しい登りも一歩ずつ足を進めて行けば終わりは来るもので、漸く傾斜が緩み始め、期待通り、先の方に乗鞍岳の姿が見えてくる。
しかし、その頂上に至るにはまだまだ長い雪原を越え、急斜面を登らねばならず、逆に少し気持ちが萎えてしまう。
周囲は森林限界に近いようで、雪の上には疎らに生えるシラビソ、そしてダケカンバが見えるのみである。
緩やかな傾斜を登る。ここからは乗鞍岳の剣ヶ峰をズッと見通せるようになるが、剣ヶ峰方向に進んでしまうのは不正解のようで、 途中でロープに遮られる。この辺には伊奈川の流れがあるらしく、その谷に入ることを禁止しているようである。

やがて、乗鞍エコーラインの除雪状況が見通せる場所を通過する。
道路とともにそれを囲む雪の壁が見えたのだが、高さは 5m近くあるようである。
さらに進んでいくと、やがて右手後方に北アルプスが見えるようになる。まず常念岳が目に着き、その右に蝶ヶ岳、長塀山、そして大滝山が見えている。 常念岳の手前には霞沢岳も少しだけ見えているが、常念岳のさらに左側は乗鞍岳の山々 (恐らく大黒岳、富士見岳) の斜面に遮られている。 しかし、この後の展望が楽しみである。

そして、前方には摩利支天岳が良く見えるようになり、その左斜面途中に乗鞍観測所 (旧乗鞍コロナ観測所)、 そしてさらに左下方の鞍部には肩の小屋が見えている。
これで少し安心したので、幹が少し曲がっていてザックを置きやすそうなダケカンバの所にて 5分程休憩する。
その際、少し寒さを感じたのでソフトシェルを羽織る。日差しは強いが結構 風が冷たい。
食べ物、飲み物にて活力得た後、緩やかな登りの道を進む。
この雪の下は恐らく谷なのであろうが、今は平らな雪原となっている。その雪の量を考えると恐ろしくもある。

やがて雪原の中にハイマツ帯が見られるようになると、常念岳より左側の山々も見え始める。
しかし、雲が多く、なかなか見通すことができない。真っ白な奥穂高岳が雲の中から姿を現したかと思うと、すぐに雲に飲み込まれ、 その代わりにその右にある前穂高岳が姿を現す。
そして奥穂高岳と前穂高岳が同時に見えるのを待っていると、今度は奥穂高岳の左後方に槍ヶ岳が少し顔を見せるといった具合で、 待ち続けてもなかなか良い光景を撮ることができない。
ベストショットを撮るべく、時々足を止めて穂高連峰方面を確認するが、最後まで雲が邪魔をして気に入った光景をカメラに納めることはできなかったのだった。

長い雪原歩きもやがて終わりに近づき、右手にはトイレが見えるようになる。
岩が並んでいる、恐らく乗鞍エコーラインの駐車スペースがあると思われる場所を過ぎると、いよいよ乗鞍岳・剣ヶ峰への登りが始まる。
普通に考えれば、まずは肩の小屋を目差すべきであり、斜面の傾斜もそちらの方が緩そうだったのだが、夏道と同じルートを辿るのは面白くないと思い、 小屋の左側、朝日岳方面に向かって進む。
海に浮かぶ島のようなハイマツ帯の間を抜け、斜面に取り付く。丁度シリセードらしき跡が斜面に残っていたので、その右側を進む。
しかし、これが失敗であった。斜度が結構キツイのである。そのため、もっと右側の傾斜の緩い斜面を登るスキーヤー達にドンドン抜かれる始末。 シールを貼り付けたスキーは威力抜群のようである。

こちらは急斜面に入り込んでしまったため、足を斜面に蹴り込みながら一歩ずつユックリ登る。 この状況では背中のピッケルに出番をお願いしても良かった位である。
また、ここはほとんど無風状態なので暑い。しかし、ソフトシェルを脱ぐ余裕など全く無い。
途中、水平方向に割れ目が入っている所が 3箇所程あった。割れ目は浅かったので問題なかったが、いずれはこの斜面も途中で崩れ落ちるのかもしれない。
ダブルストックを駆使し、アイゼンをフル活用して登り、斜面途中にあった岩場に何とか登り着く。時刻は 10時34分。
予想外に体力を消耗したため、ここの岩場で小休止する。

ここから穂高連峰方面を見ると、奥穂高岳、前穂高岳ともほぼ雲が取れてよく見えている。
しかし、常念岳の右後方にある前常念は完全に雲に覆われている。
10時46分に岩場を出発。ここからは岩場の右側に出て、皆が歩いている傾斜の緩やかな方へと進む。
しかし、暫くは踏み抜きが続くようになる。つまり、岩場が出ているくらいであるから、この辺は雪があまり多くないということなのであろう。
その踏み抜きも、斜面に角度がつき始めると起こらなくなり、アイゼンが良く利く斜面の登りに変わる。 よく見ると、この辺では雪の表面が薄くクラストしており、耳を澄ますと近くの斜面からはその割れたクラストが斜面を落ちていく音が聞こえる。

急斜面を登る。見上げれば進んでいるのは蚕玉岳と朝日岳の鞍部のようである。
そこに登り着けば、通常のルートに合流するはずである。しかし、この斜面の登りもキツイ。
息が上がるが、気は抜けない。見上げれば斜面の後方に青空と行きたいところであるが、今は雲の方が多い状況である。 しかし、前回のようにガスに囲まれるということはなさそうである。
喘ぎつつも何とか斜面を登り切り、鞍部には 11時23分に到着。左手に剣ヶ峰が見えるかと思ったのだが、 そこには高みがあり雪の回廊と露出した岩の斜面がまだ続いている。

一方、ここでは展望がグッと広がる (尤も、登っている斜面では周囲を見渡す余裕は無かった)。
残念ながら穂高連峰の頂上付近には再び雲が掛かっており、さらにはその雲は帯状になって一定の高さを保ち横に延びているため、 穂高連峰の左に続く北アルプスの山々の頂上は全て雲の中である。
残念ではあるがこればかりはどうしようもない。その代わり、乗鞍岳を形成する山々は前回と違ってよく見え、 摩利支天岳、不動岳、烏帽子岳、四ツ岳、大丹入岳、魔界岳、大黒岳といった山々が確認できる。
そして嬉しいことに、四ツ岳と大黒岳の間の後方には焼岳も見えている。これだけ見えれば文句はない。

気分を良くして先へと進む。少し足を踏み抜きそうになりながら雪の回廊を登っていくと、ついに目の前に剣ヶ峰の姿が現れる。
左側 1/3は完全に雪に覆われているが、残りの 2/3は岩が露出している。そして乗鞍本宮と鳥居もハッキリ見えている。もう少しである。
道はすぐに蚕玉岳に至る。無雪期にはこの蚕玉岳の下を巻く道もあるのだが、雪に覆われ道は蚕玉岳頂上のすぐ横を進む。
時刻は 11時29分。
少し下ってさらに雪の回廊を進む。剣ヶ峰の右後方には大日岳が見え、さらに右に屏風岳、そして薬師岳、雪山岳 (せつざんだけ) といった権現池を囲む山々が見えてくる。

本来ならこの最後の登りに取りかかる所で道は二手に分かれるのだが、現在歩かれているのは頂上小屋を通るルートのみのようである。
小生もこちらの方が本道と思っているので 迷うこと無く頂上小屋方面へと進む。
ここは無雪期には岩がゴロゴロした斜面の登りであるが、今はほぼ雪に覆われていて歩き易い。雪に埋もれ、入口だけが開いている頂上小屋を過ぎ、 雪の斜面を登っていくと、やがて朝日権現社の祠の前に到着する。頂上はこの後ろである。

祠の左手を進むと、御嶽が目に飛び込んでくる。雪は大分少なくなっているようであるが、一方で頂上付近からは噴煙が上がっている。
そして、11時43分、乗鞍岳頂上に到着。この時期に 3,000m峰を踏めたことは大変嬉しい。
なお驚いたことに、乗鞍本宮、鳥居、さらには乗鞍岳の標柱、そして本宮を取り囲む岩にはエビのシッポが張り付いているではないか。
4月上旬なら未だしも、5月も中旬になるというのにこのような光景を見ることができるとは、良い日に登ったものである。
そう言えば、横浜でもここ数日は寒かったので、3,000m峰ともなれば気温も氷点下になったのであろう。

周囲を見渡すと、権現池は雪の下。そして白山方面は見えず、 また先に述べたように北アルプスの山々はほとんど同定ができない状況であるが、それでも十分に嬉しい。
暫し頂上からの眺めを堪能した後、11時51分に下山を開始する。
鳥居を潜って岩場を下る。この道がもう 1つの道であるが、やはり途中で下るのが少々厳しくなり、頂上小屋の手前から先程登って来た道の方へと移る。
そして、蚕玉岳には 11時59分に到着。少し休憩して先へと進む。
朝日岳との鞍部に到着したところで、折角なので朝日岳に登ってみることにする。無雪期には立入が許されていないようであるが、 雪の道ができている今なら許されると勝手に解釈して登り始める。

雪の上に踏み跡がしっかりついているのでルート選びには苦労しないが、 一方で表面がクラストした雪なので、足を踏み出す度に雪片が斜面を転げ落ちていき、その音も結構煩い。 幸い下方を歩いている人はいないので良かったものの、チョット気が引ける思いで進んだのであった。
さらには、頂上近くなると雪はかなり少なくなる上に緩んでおり、踏み抜くことが多くなる。一度は、両足ごとストンと膝上まで沈んでしまったのだが、 岩と岩の隙間だったようである。
少々苦労しながらも 12時12分に朝日岳頂上に到着。頂上には半分雪に埋もれた小さな祠が置かれている。
周囲を見渡すと、剣ヶ峰が見えるのは当然だが、権現池の周りを囲む大日岳と屏風岳との間に御嶽も見えている。

12時15分に下山開始。登って来た道を戻るのだが、やはり崩れる雪に苦労する。
鞍部に戻ってからは、肩の小屋を目差そうと雪の斜面を横切って進む。しかし、途中まで進んだところで、肩の小屋側から登って来られた方がいたので、 狭い斜面での擦れ違いは危険と思い、思い切って右下の斜面を下っていくことにする。
こちらもクラストしている雪の崩れがあったものの、慎重に下り、やがて往路で辿ってきた斜面に合流した後は、往路を忠実に戻る。
しかし、登りではあれだけ苦労した斜面であるが、下りはアッという間で、12時46分に乗鞍エコーラインの駐車スペースと覚しき場所に下り着いたのであった。
後は緩やかに斜面を下り、ツアーコースへと戻るだけである。

なお、途中、2回ほど道路を横断することになる。
今朝ほどは雪に覆われていた場所であるが、パワーショベルによる掘り返しがここまで進んできたらしい。 無論、パワーショベルなのでアスファルト部分までには至っておらず、道筋をつけただけである。 しかし、何も無い雪の原において正確に道路上を掘っていくのは大変なはずである。GPSでも使っているのであろうか。
順調に下り、今朝ほど休憩したダケカンバの所にて今回も 5分程休憩する。

その後、少し緩んできた雪の斜面を滑るようにして下り、位ヶ原山荘との分岐を示す注意書きを 13時7分に通過。
その後ツアーコースに入り、『 5番標識 』 を 13時15分に通り過ぎ、『 1番標識 』には 13時27分に到着したのであった。
本当に雪の上の下りは早い。
そして、かもしかリフト上部の設備には 13時42分に到着。アイゼンを外すなどするとともに少し休憩して 13時50分に出発。
後は草の斜面をまっすぐに下り、三本滝レストハウスの駐車場には 14時5分に戻り着いたのであった。

本日は残雪の山を楽しむべく乗鞍岳に登ったのだが、 初めてのルートを辿ることによるワクワク感を味わい、そしてずっと雪の斜面が続くコースに大変楽しい時を過ごせたのであった。
体力が追いつかずに登りでは少々時間が掛かってしまったものの、この時期に 3,000m峰に登ることができて、大満足の一日である。
しかし、日焼け対策をないがしろにしたため、帰宅後、顔は完全に真っ赤になり、その後かなり苦しんでしまう。でも楽しい山行であった。


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