谷川岳( 縦走路中の最高峰は茂倉岳:1,978m ) 2006.09.02 登山


  ラクダの背付近より谷川岳 ( 2006.09.02 )

【谷川岳再登山記録】

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谷川岳再登山記録

このところ十数年ぶりに訪れる山が増えているが、今回登った 谷川岳 も 16年ぶりの登山ということになる。
前回は上越新幹線、在来線を使用し、地下駅となっている土合駅の薄暗い階段を登って登山をスタートしたのであったが、 今回は車を駆って谷川岳ロープウェイの駐車場まで行き、そこから 16年前と同じルートを辿ることにした。

関越自動車道水上ICで下りて、国道291号線を北上し、湯桧曽駅前、 土合駅前を過ぎて谷川岳ロープウェイの駐車場に着いたのは 6時58分であった。
この駐車場は 6階建で、収容台数 1,000台 (屋外を合わせる 2,000台収容) とのこと。 しかも 24時間営業で駐車料金は 500円と、山登りに最適な施設である。
16年前は今の場所と道路を隔てた反対側にロープウェイ駅があり、駐車場も狭かった記憶があるが、 やはり 16年の歳月は色々なものを変えてしまっている。

身支度を調え 7時5分に駐車場を出発。
多くの人は駐車場からのエレベーターでロープウェイへと向かうようであったが、私はそのまま駐車場入口から歩き始める。
駐車場の前の車道を右に曲がって山へと向かう。天気は快晴。頭上には天神平へと続くロープウェイが見える。
谷川岳登山指導センターの前を過ぎ、ヘアピンカーブを 2つほど過ぎると左手に西黒尾根入口の道標が現れた。 この道標は、昭和42年に一の倉沢衝立岩で亡くなられた佐藤さんを偲んで建てられたものらしい。
前の登山記録にも書いたように、私の小さい頃、冬になると何回も谷川岳での死亡事故を新聞で見た記憶があり、 魔の山というイメージがこの山にはつきまとう。
ちなみに 2005年までにこの山で亡くなられた方は 781名とか、ご冥福を心からお祈りしたい。

道標に従って西黒尾根へと取り付く。いきなりの急登であるが、体は軽い。
滑りやすい道をジグザグに登っていくと、やがて送電線の鉄塔下へ。樹林の中では気づかなかったが日差しは結構強い。
鉄塔を過ぎると岩が多い道に変わるとともに、直線的な登りが多くなり、ややメゲ始める。
しかし、前回この辺ではほとんど視界を得ることができなかったことを考えると、この好条件下 文句は言えない。
ところで、ガスに囲まれている時には頂上で好天になることを祈るのは当然としても、 晴れていれば晴れていたで頂上に着くまでこの天候状態が持ってくれることを願う気持ちが湧いてくる。
心配性といえばそれまでだが、山はそれだけ安心できない。

ひたすら登り続けること 30分、樹林の間に谷川岳の岸壁が見えてきた。
灰色の岩肌に緑がこびり付いているような感じで、前回 11月に登った時とはさすがに様相が違う。
そこからさらに 30分ほど登ると、やがて樹林帯も終わり、一気に展望が開けることとなった。
左手には天神平のロープウェイ駅が見え、振り向けば 白毛門、笠ヶ岳の姿が大きい。
また、天神平と白毛門の間には 武尊山 の姿も見え、 さらに 武尊山の右手には 富士山のような形の山も見える (方角的にはおかしいので、 恐らく 皇海山 であろう)
そうそう肝心の谷川岳は、青い空をバックにその双耳峰が映え、谷から一気に立ち上がる岸壁とともに魅力満点である。

吹き抜ける気持ちの良い風に元気も出、次に待つ岩場登りも何のそのといったところである。
ラクダの背まで 3ヶ所ほどの鎖場が続くが、難易度的には大したことはない。
しかし、登山とは別にここでイヤなものを見てしまった。岩場の途中で、恐らくヤマカガシであろう、体長 50センチ (よく見ていないが) の蛇が、人のこぶし大ほどのガマ蛙に食らいついている場面に遭遇してしまったのである。
自然の営みとは言え残酷なものであるが、それを人間が邪魔してしまってはもっと問題であろう。目を背け、飛び越えて通り過ぎる。

ラクダの背から一旦下ると、ガレ沢の頭で、ここからは岩場の登りが延々と続く。
右手を見ればマチガ沢の岩場がよく見え、その迫力に圧倒される。
ペンキ印を頼りに急な岩場に息を切らせながら登っていくと、やがて傾斜の緩い痩せ尾根となり、それから暫くして再び傾斜がきつくなり始めた。
V字状の岩場を過ぎ、やがて左側に大きな一枚岩を見ることになったが、これが氷河跡と呼ばれている場所だそうで、 そう言えば大きい岩をよく見ると、岩肌が硬いもので削られたように波打っているのが分かる。
暫く岩場の急登が続き、左側にザンゲ岩と呼ばれる大岩を過ぎると、道は熊笹へと変わり、頂上が近いことが分かる。

左手には立派な肩ノ小屋が見え、その向こうにはなかなか魅力的な形をしたオジカ沢の頭から始まる万太郎山へと続く稜線が見える。
緩やかなササの中の登りを進めば、目の前にトマの耳の高みが見え、そして 10時4分、トマの耳頂上に着いたのであった。
頂上から見下ろせば、マチガ沢、そして登ってきた西黒尾根がハッキリ見え、その上方には 武尊山、 そしてその左手には 奥白根山 の姿を認めることができた。
素晴らしい展望であるが、狭い頂上は既に人が一杯であまり憩うような雰囲気ではない。すぐにオキの耳へと向かうことにした。

10時20分、オキの耳頂上到着。こちらも人で一杯である。
仕方がないので、少々一ノ倉岳方面へと進み、途中の岩場に登って昼食とした。
じっくり景色を眺めるがこれが素晴らしい。右手にはトマの耳、オキの耳の双耳峰が並び、北東には笠ヶ岳、朝日岳が大きく、 その左後方には 中岳越後駒ヶ岳の姿、 さらにその左には若干雲に隠れているものの 巻機山の姿を見ることができたのであった。

朝日岳、笠ヶ岳の右手には景鶴山の突起、そしてそこから右へ 燧ヶ岳至仏山笠ヶ岳 (先ほどの笠ヶ岳とは別) と続く山並みが見える。
さらに右に目をやれば、奥白根山武尊山と続いているのが確認でき、 こうして山の姿をかなりの数同定できる自分に、16年前からの進歩を感じたのであった。
立ち上がって後ろを見やれば、オジカ沢の頭、俎ーへと続く稜線が美しく、その後ろには万太郎山、さらに右には平らな山頂を持つ 苗場山の姿も見ることができたのであった。

飽きない展望に、私としては長時間となる休憩を取り、その後 一ノ倉岳へと向かう。
暫く進んだところで鳥居が出てきたが、これが富士浅間神社奥の院で、鳥居を潜った先には格子が埋め込まれた岩が 16年前の記憶通りに存在していた。
岩の上には祠もあったが、やはりこの岩の中にご神体があるのであろう。
さて、道は左方向へと曲がる。
従って振り返れば、谷川岳の双耳峰を登りの時とは違って裏側から見ることになるのだが、こちら側はササの斜面が優美に流れ落ちていて、 荒々しい岸壁を持つ表側とは対照的である。
前を見やれば、一ノ倉岳までの縦走路がハッキリ見渡せる。簡単そうであるが、最後の登りが結構きつい。
そのきつい登りの手前にノゾキと呼ばれる場所がある。ここは一ノ倉沢を詰めた最高点ということで、そこから見下ろせば未だに雪渓を抱く谷への一気の落ち込みに足が竦む。

低木の間を息を切らせながら登り詰めると、そこが一ノ倉岳頂上で、 ササに囲まれた小さなスペースに道標と石の標柱が立っている。
頂上には避難小屋もあるが、狭く、泊まるにはやや不便であろう。
ここから見る谷川岳は、丁度 拳を握った後、人差し指と小指だけ伸ばした感じで、見方によってはバットマンの仮面のようである。
暫し谷川岳の眺めを楽しんだ後は茂倉岳へと向かう。
この縦走路中、ここが一番気持ちが良い場所と思う。砂礫の道がほぼまっすぐに茂倉岳へと続き、その勾配も大きからず、 そして稜線上であるから左右に遮るものはない。足も自然と速まるというものである。

茂倉岳頂上も一ノ倉岳と同じように狭いが、やはり展望は良い。
特にここから見る谷川岳斜面の笹原はなめらかなビロードのようである。
さて時間を見ると 12時2分。これなら 15時20分 土樽駅発の上り電車に間に合う計算である。この電車を逃すと 3時間ほど暇をつぶさねばならなくなるので、 是非とも乗りたいところだ。
谷川岳に登るに際し、現在のこのコースを辿ることは決めていたものの、土樽駅に何時に着けるかが問題であった。
谷川岳頂上に約 3時間で登り着いた時点で土樽駅 15時20分発の上りに乗れる目処がついたのだが、 何が起こるか分からないので安心はできなかったものの、茂倉岳でこの時間なら大丈夫であろう。

後は下りが主となる。
ササの茂倉新道を少し下ると茂倉避難小屋である。後で調べたら、この小屋の後ろに水場があったとのこと、 生ぬるい横浜水道水よりは冷たい水の方が良いに決まっている。事前の下調べをしっかりしなかったことを反省する。
一気の下りが続く。この道は上から見るとササの中を行く気持ちの良い道に見えるが、実際はかなり歩きにくい。
ササが伸びすぎているところが多く、下の道が隠れてしまっている中、道が時々細くなったり、急に落ち込んだりしているからである。
しかも足下は石が多く、さらに濡れているから始末が悪い。何度も足を滑らせ、斜面に足を引き込まれた。
このように何回もバランスを崩したのは久しぶりである。
また、所によっては完全にササで道が見えなくなっているところもあり、 手探りならぬ足探りの状態で進むところもある程であった。

最後のピークである矢場の頭で谷川岳の姿を見るのは最後となる。
この頃になると谷川岳頂上付近には雲が掛かっており、双耳峰は良く見えない。
この矢場の頭を過ぎると、展望の利かない樹林の中をひたすら下ることになる。足下は先ほどまでの石から木の根へと変わってきたものの、 滑りやすいことには変わりなく、尻餅 2回、お手つき 3回という体たらくであった。
疲れてきて足もあまり上がらなくなったのも原因であろう。
この辺は桧廊下と呼ばれるように桧が多い。その桧が根っこを登山道に張り出しているから歩きにくいことこの上ないのである。

やがて桧廊下も終わり、樹相も雑木に変わって滑りやすい斜面を下るようになると、 木々の間から関越自動車道が見えてきた。
登山道もようやく終わりかなと思ったが、ところがなかなか駐車広場には着かない。濡れて滑りやすい道を重たくなった足で何とか転ばぬようにと下る。
まだかまだかと念じながら、徐々にイライラがつのり始めた頃、ようやく標識が現れ、数台の車が止まっている草原に飛び出したのであった。
ここからは車道を辿って土樽駅へと向かうだけであるが、勾配はないものの距離はまだかなりある。
途中、水飲み場を見つけて飲んだ水のうまかったこと。

最後は道を間違えてしまったかと少々慌てたが、階段を登って土樽駅前に出る道を見つけ、 ことなきを得たのであった。
イヤイヤこれで終わりではない。土合駅に戻ってから今度は駐車場までの登りが待っている。車道を登り、雪を防ぐシェルターをくぐり、 駐車場に着いたのは 15時50分。長い山旅であった。


谷川岳再登山データ

上記登山のデータ登山日:2006.09.02 天候:快晴単独行日帰り
登山路:ロープウェイ駅駐車場−鉄塔下−ラクダの背−ザンゲ岩−トマの耳−オキの耳−ノゾキ−一ノ倉岳−茂倉岳−矢場の頭−桧廊下−駐車場−土樽駅−(上越本線)−土合駅−ロープウェイ駅駐車場
交通往路:瀬谷−横浜IC−(東名高速道路)−用賀IC−練馬IC−(関越自動車道路)−水上IC−土合駅−ロープウェイ駅駐車場 (車にて)
交通復路:ロープウェイ駅駐車場−土合駅−水上IC−(関越自動車道路)−練馬IC−用賀IC−(東名自動車道路)−横浜IC−瀬谷 (車にて)



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