登山NO.0036 奥 白 根 山( 奥白根山:2,578m ) 1991.11.2登山


 前白根から見た奥白根山と五色沼( 1991.11.2 )
【奥白根山登山記録】

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NO.36 奥白根山登山記録

昨年登った男体山頂上から見た奥白根山は、 どういう訳か雲の切れ間からドーム状の頂上部分にだけに陽が当たって、残雪とともに頂上が輝き、美しく、かつ神秘的な雰囲気を醸し出していた。
その姿は、私には大変魅力的に映り、奥白根山は是非とも登りたい山となったのだが、一方で湯元温泉からのコースが長いこともあって、 なかなか登ることに踏ん切りがつかない山でもあった。
しかし、夏に北アルプス 黒岳の項参照) を縦走して以来、 百名山から遠ざかっていたことから少々焦りもあって、この秋、思い切って登ってみることにしたのであった。

なお、このように憧れていた山ではあったが、この奥白根山ではいくつものミスを犯してしまい、 最後には少々パニック気味になってしまったということがあり、おまけに夜遅く家に帰ってみると息子が大ケガをしていたということも重なって、 奥白根山自体は大変素晴らしく、登りがいもあって申し分ない山ではあったものの、 どうも登ってきてからはこの山に対する印象が悪くなってしまっている。
悪いのは私なので、奥白根山には大変申し訳ない気がしている。
閑話休題。

湯元温泉までの交通経路は男体山と同じで、 新橋から地下鉄で浅草まで行って、浅草から東武日光線に乗って終点の日光まで行き、 そこからバスでこれまた終点の湯元温泉へと向かうというものである。
約 1時間半近く日光の景色を楽しみながらのバスの旅はなかなか贅沢で、いろは坂、中禅寺湖、戦場ヶ原など、 紅葉のシーズンはとっくに過ぎてはいたものの、車窓からでも存分に日光の晩秋を楽しむことができた。
ちょっとした観光旅行を終えて終点の湯元温泉でバスを降りたものの、どちらに行けばよいのか分からず、 最初、本来の道とは正反対の中曽根を登る道へと進んでしまい、かなり先まで進んでからスキー場がないのでおかしいと気づき引き返すなど、 時間をだいぶロスしてしまう。
後で考えたら、これが第一のミスであった。

湯元スキー場からゲレンデの中をリフトに沿ってリフト終点まで進み、 そこから指導標に従って樹林帯の中に入って行くと、やがて白根沢に出たが、本来白根沢の右岸沿いの道を進むべきところを、 どういうわけか沢をそのまま登ってしまい、途中で道らしきものがなくなって慌てて戻るハメになってしまった。
後から登って来た人に道を教えてもらって、やっと本来の登山道に戻ることができた次第であるが、 これが第二のミスである。

道は急であったものの正規の道に戻ってからは快調で、どんどん高度を稼いでいくと、 やがて樹林帯を抜けて外山の尾根に出ることになり、傾斜も緩くなった道を進むとダケカンバに囲まれた天狗平に着いた。
天狗平からは緩やかに登っていくと、すぐに砂礫の尾根に飛び出し、それと同時に目に奥白根山の姿が飛び込んできた。
しかし、火山の爆発で吹っ飛んだのであろうか、そのドーム状というか台形の山頂部分にある大きな穴 (火口 ?) がこちらを向いていて、 男体山から見た、美しく神秘的な姿とは全く異なる、 火山の荒々しい面をむき出しにしている。

尾根をさらに進むと、やがてケルンと標識兼道標が立つ、前白根の頂上に着いたが、 ここからは奥白根山の全容を見ることができ、その荒々しい姿の右下には青い色をした五色沼も見ることができた。
この五色沼はその名の通り、見る場所によって色が変わって見え、奥白根山中腹や頂上からは濃い緑色に見えたのだった。
前白根山にて暫し中禅寺湖や奥白根山の姿を楽しんだ後、避難小屋方面に向かってガレ場を下ると、途中から樹林の中の急下降となって、 今まで稼いできた高度を一気に吐き出してしまうようになり、やがて気持ちの良い平地に着いた。
指導標に従って進むと、前方には赤い屋根の避難小屋が見えるようになり、避難小屋を過ぎてからは奥白根山斜面の大変キツい登りが待っていた。

喘ぎ喘ぎしながら登っていくと、樹林帯はいつしか岩場へと変わり、 いくつかの火口跡のようなところを越え、大きな岩の間を進み、やがて頂上の一角に出ることができた。
台地状の頂上の西側には小さな祠が建っており、その前の平らな砂礫地には登山者によるものであろうか、 石を並べて文字が書かれていた。
頂上からの展望は抜群であったが、雲も多く、その全容を見たかった男体山は最後まで右半分を雲に隠したままであった。
また、頂上直下には濃い緑色をした五色沼が周囲の茶色の木々の中で目立っており、 遠くにはうっすらとではあるが、燧ヶ岳の双耳峰も見ることができた。

下山は反対側のガレた急斜面の道をとり、途中眼下に丸沼や菅沼、 先ほどの燧ヶ岳を見ながら一気に下っていくと、 やがて静かな弥陀ヶ池へと着いた。
弥陀ヶ池からは一旦五色沼へと向かったが、周囲に誰もいない五色沼はひっそりとしていて、おまけにこちら側は山の陰になって日が当たらなくなってきていたことから、 何となく薄気味悪く、落ち着かない気分にさせられた。
五色沼からは五色山へと登り、再び太陽の光を浴びることができたが、秋の日は短く、急いで今朝進みかけた中曽根方面へと向かった。

国境平を過ぎ、クマザサの茂る中をひたすら下って、途中で 2人連れを追い抜いて快調に進んでいったが、 徐々に辺りは暗くなりかけており、沈む太陽との競争のようになった。
平らな樹林帯の中を進んで行くと涸れた沢があったが、沢をそのまま横切って再び樹林の中に入って行けば良いところを、 暗くなるのが早いため気が焦っていたのだろうか、魔が差したように何も考えずに右折して涸れた沢の中を進んでしまったのである。
やがて道は沢の流れにぶつかって途切れ、進んで来た道が間違いであったことに気がついたのだが、もう少し明るければ踏み跡がないことにもっと早く気づくことができたものの、 足元が暗くなりかけていたため、また焦る気持ちもあって、ドンドン進んでしまったのである。
とにかく道がなくなったので慌ててゴロゴロした岩の上を戻ったが、いくら戻っても先ほどの樹林帯から沢に入った取っつきが見つからず、 一方で辺りは真っ暗になってくるし、完全にパニックになってしまったのである。
何回も涸れた沢の上を行ったり来たりしている内に、自分が今涸れ沢を下っているのか (一番初めに右に曲がった方向に進んでいるのか) あるいは上っているのかが全く分からなくなり、懐中電灯片手に途方に暮れ、野宿することまで半ば覚悟してしまったのであった (そうなると家族が心配することは目に見えているのだが・・・)

しかし、ふと目を上に向けると、涸れ沢の両側の木々の間に一本ロープが張られているのが見え、 急いでそのロープの下に行ってみると、ありがたいことに、そこはずっと探していた取っかかりだったのである。
この時は本当に大声をあげたくなる程嬉しかったのであった。
もう大丈夫と心を落ち着けた後、左へ行くのが正しいと思って進んで行くと、前から懐中電灯の灯りがこちらに向かって来るではないか。
人に会えたことでさらに安心したのであるが、実はそれは先ほどの尾根道で抜いた 2人連れで、 私は下ってきた道をまた戻ろうとしていたのであった。

2重 3重のミスにようやく気づいてまた道を戻り、今度は涸れ沢をそのまま横切って樹林帯とササの道を進むと、 それから暫く先であっけなく車道に出てしまった。
この車道は朝方一度進みかけた道だったため、間違えることなくそのまま湯元温泉まで戻ることができ、 湯元では公衆の温泉に浸かって汗を流したが、先ほどまでのパニック状態が嘘のような極楽気分であった。

人間が平常心を失うと方向も何も分からなくなってしまうことが先ほどの体験でよく分かったし、 今までは例えば雪山でガスに巻かれて方向を失い、小屋がそばにありながら凍死してしまったといった事故が信じられなかったが、 十分にあり得ることが今回のことで本当によく分かった次第である。
冒頭で述べたように、この奥白根山では何回もミスを犯し、最後は野宿まで覚悟したということで、山自体は素晴らしかったが、 私としては最悪の日であった。

しかし、もっと悪いことが私を待っていたのである。
途中連絡もせずに夜の 12時近くに家に着くと、何とその日、息子が塀から落ちて頭を打って入院しており (注:硬膜下出血で手術をしたが、 現在はとても元気)、これまた大きなショックを受けてしまい、 その日は疲れていたのにもかかわらず、ほとんど眠ることができなかったのだった。

ということで、奥白根山に全く罪はないが、あまり良い印象を持っていない山なのである。


奥 白 根 山 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ 登山日:1991.11.2 天候:曇り後晴れ 単独行 日帰り
登山路:湯元温泉−湯元スキー場−天狗平−前白根山−避難小屋 −奥白根山−弥陀ヶ池−五色沼−五色山−湯元温泉
交通往路:瀬谷−(相鉄線)−横浜−(東海道本線)−新橋− (地下鉄銀座線)−浅草・浅草−(東武日光線)−東武日光−(バス)−湯元温泉
交通復路:湯元温泉−(バス)−東武日光−(東武日光線)− 浅草・浅草−(地下鉄銀座線・京浜急行)−横浜−(相鉄線)−瀬谷
温 泉:湯元温泉
その他の
奥白根山登山
菅沼登山口−弥陀ヶ池−奥白根山−奥白根平− 前白根山−五色山−五色沼−弥陀ヶ池−菅沼登山口
 (2005年09月18日 : 晴れ)      こ こをクリック
湯元温泉−前白根山−奥白根山−奥白根平−白根隠山−前白根山−湯元温泉
 (2015年07月11日 : 快晴)      こ こをクリック

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