岩手山 ( 岩手山:2,038m ) 2006.10.14 登山


  お鉢巡りの途中にて、妙高岳と最高峰 薬師岳 (右) ( 2006.10.14 )

【岩手山再登山記録】

【岩手山再登山データ】

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初回登山


岩手山再登山記録

月山 登山より続く)

朝、4時半起床。5時過ぎにホテルを出発する。空を見上げれば星が瞬き、 今日は快晴の予感。
盛岡ICから東北自動車道にのって西根ICで下り、その後はナビの指示に従って車を進める。やがて、 前方に大きく 岩手山 の姿が見え始める。周囲がまだ薄暗い中、 ほとんど木が無く岩だけでできているように見える山肌が 朝日を浴びてオレンジ色に輝いており、 その姿は雑誌で見たオーストラリアのエアーズロックを彷彿させる。

6時3分、焼走り登山口の駐車場着。 周辺は 13年前に訪れた時よりもかなり整備された感じである。
この頃には、岩手山がますます輝きを増しており、好天間違いなしの空に映えるその堂々たる姿は、 登高意欲を大いにかき立ててくれる。昨日の 月山 が失望に終わっただけに、 今日の登山に対する期待は益々大きく膨らむ。
登山口は駐車場の向かい側、車道が大きく曲がるところにある (
6時9分発)。道はすぐに林の中に入ることになるが、 ほとんど平坦なのでペースが上がる。

道の左手、樹林を挟んだ 5m位先には岩手山の溶岩が流れた跡である いわゆる焼走りが塀のように続いており、所々でその焼走りに入れる箇所がある。少々寄り道して焼走りの上に出てみると、 そこはガスが抜けて穴だらけの真っ黒い岩塊がゴロゴロした原となっている。丁度軽井沢の鬼押し出しといった感じであるが、 これは亨保 4年 (1719年) の大噴火の際に流れ出た熔岩が、長さ 3km、幅 1.5kmに亘って広がっているもので、 国の特別天然記念物にもなっているとのことである。

この草木の生えていない荒涼とした原は、300年近く前の噴火の凄まじさを今でも十分に伝えてくれており、 まさに今でも死の世界となっているが、一方で、原の先には朝日を浴びて輝く岩手山の姿があり、 その中間には今を盛りの紅葉が煌めいて、この生と死のコントラストは何とも面白い。
登山道に戻れば、平坦に近い道は結構長く続く。徐々に勾配を持ってはくるものの、それ程急ではないことから快適である。
しかし、やがて登山口から 2.2kmの標識を見てからは急な登りが始まった。高度をかなり上げる中、途中、左手の岩場に寄れば、 もう焼走りの原はかなり下方であった (ここが第2噴出口跡か ? 7時20分。 上を見上げれば、鈍角をした岩手山の三角形が青い空をバックに手を広げているようだ。

ここからも急な登りは続く。やがて林を抜けたところに大きな砂を固めたような岩場が現れた。 これが第1噴出口ではないかと想像するが、周辺を探してもそのような表示はなかったので定かではない。ここからの景色も雄大で、 足下に雄大な岩手山の裾野が広がり、その向こうには、やや霞んではいるものの美しいピラミッド型をした姫神山、 そしてその右手には雲に浮かぶ島のような 早池峰山 の姿が見える。
ここから登山道は岩手山の斜面を斜めに横切りながらの登りとなる。
左手上方には、台形の形をした岩手山頂上とそこまで続く岩と砂の斜面が見え、右手下方はその斜面が裾野を延ばし、 富士山 の樹海のような木々の広がりに繋がっているのが見える。青い空、 明るい日差しのもとでとても気持ちが良いが、この辺でやや喘ぎが出始める。私の一番嫌いな一直線の登りが延々と続いているからである。 砂礫の滑りやすい斜面は行けども行けども終わらない感さえある。少々休んではまた進むというパターンが続くが、 昨日の月山登山、その後の 300kmほどのドライブの疲れも少しあるのかも知れない。

ところで、思い起こせば前回、確かこの辺でコマクサの群落に出会った記憶がある。 雨とガスで何の面白みもない登山であった中、コマクサの群落は悪天候に気落ちしている私に慰めをもたらしてくれたのであったが、 今は秋、コマクサの代わりに黄色や赤茶色に紅葉した草木が斜面に美しい。
苦しかった一直線の登りもどうにか終わると、再びダケカンバの林の中に入ることになった。緩やかな登りを暫く進むと、ツルハシと呼ばれる上坊コースからの道との合流点となり、 その後は樹林帯の中の急登となった。前回の記憶では、再びこの後 樹林帯を抜け出すところがあったような気がしたが、 結局 平笠不動避難小屋に通ずる平地に出るまではずっと樹林の中であった。人間の記憶などいい加減なものである。

それでも時々樹林越しに岩手山周辺の景色が覗ける。
先ほどの姫神山は岩手山の東に位置しているのだが、登山道は岩手山の山腹を回るようにしてスパイラル式に上がっていくことから、 徐々に見える景色は北方面に変わり、岩木山八幡平 などのお馴染みの山々が見えるようになってきたのであった。
やがて小さな祠がある三十六人童人のところで直角に曲がると (8時34分)、岩混じりの急な道となり高度がドンドン上がる。 息を切らせながら登り切ると、ハイマツやアオモリトドマツに囲まれたほぼ平らな場所に飛び出し、先の方には面白い形の岩場が見えてきた。 あの岩場の下が平笠不動避難小屋に違いない。

肝心の岩手山山頂の方は もはや左手上方にあり、 135度はあろうかという鈍角三角形の姿が青空に浮かんでまぶしい。
やがて思った通り岩の下に平笠不動避難小屋が現れ、そこを過ぎて暫く進むと、ハイマツの中の急登が始まった。最後の登りということになる。
息を切らせながらジグザグにハイマツの中を登っていくと、やがて足下はガレた岩場に変わり、少し油断をすると落石を起こしそうな状況の中を登ることになる。 幸い誰もいないが、これが登山者が多く続く中であればかなり気を遣うことになるであろう。

この山腹途中においての展望は抜群で、先ほどの岩木山八幡平の山々に加え、 八甲田山 や、 八幡平を登った時に縦走した畚岳 (もっこだけ) から始まる 裏岩手連峰 の峰々、 なかなか形の良い森吉山、そして雲に浮かぶ秋田駒ヶ岳、さらに遠くには 鳥海山 と思われる山も見えたのであった。 また、手前下方には青い空を映す御苗代湖が見え、その右後ろには荒々しい岸壁を有する黒倉山が頂上に白い煙を立ち上らせており、 さらにはその後ろにアオモリトドマツと思われる樹海が広がっているなど 雄大な眺めに、キツイ斜面の登りもかなり癒されたのであった。
前回このような素晴らしい光景を逃していた訳で、今回 本当に遠路はるばる足を運んできた甲斐があるというものである。

足場の悪いキツイ斜面を、雄大な景色に後押しされて登り切ると、 岩手山の火口の縁、いわゆるお鉢の一端に飛び出した (9時30分)。 左手上方には岩手山の頂上である薬師岳、目の前には前回全く見ることができなかった火口が広がり、 火口の中に 丘 (妙高岳) ができているのがよく見える。
火口の中は岩が赤く焼けただれたようになっており、草木のない殺伐とした世界が広がっている。前回、ガスで全く視界が利かない中 このお鉢の周りを回ったことを思うと、 今回の雲一つ無い好天に幸せを感じる。また、このお鉢の縁には石碑などが立てられており、信仰の厚さを感じさせる。

伸びやかに続く薬師岳への道を辿り、岩手山頂上に到着したのは 9時36分。 もうこの時間では既に 5人ほどの登山者が憩っていた。
先ほど最後の斜面で いくつかの山の名を上げたが、実は森吉山、秋田駒ヶ岳などはこの頂上で会った人に教えてもらったというのが実状である。 その人曰く、これほど見晴らしが利くことは滅多にないとのこと、昨日の月山とは月とスッポンといった状況である。

暫し休憩をした後、時計回りにお鉢巡りを始める。
薬師岳が最高点であるだけに後はほぼ下りであるから、駆け下りるようにして一気に砂礫の道を下る。振り返れば赤茶色をした薬師岳の姿がなかなか見事である。
薬師岳を起点としてお鉢を 3分の1周したくらいであろうか、道はロープに導かれるようにして火口の中に下りていくようになっており、 そのまま火口を横切って向こう側の縁に至るようになっている。その途中にはいくつもの石碑や剣が見られる場所があり、後で調べたらそこが岩手山神社奥宮であった。
そうとも知らず、私はそちらを避けてさらにお鉢の縁を回り続けてしまった。何となくお鉢の縁を回ることを途中で止めてしまうのがイヤだったからだけなのだが、 後から考えると、この岩手山登山に画竜点睛を欠いたという気がしないでもない。
奥宮に下りずに先に進むと、地面から湯気のような煙が立っている箇所があった。地面に手を触れてみると暖かい。 まだ岩手山は生きていることをほんの少しだけ実感したのであった。
お鉢を半周すると今度は不動平が下方に見えてきた。前回はこの辺でお鉢巡りをやめて、不動平避難小屋に下ったのだったが、実際はガスの中、 もうどこを歩いているのか分からない状態であったという記憶がある。

不動平避難小屋の後ろからは鬼ヶ城と呼ばれる岩場が始まっており、それ後ろには雲の海が広がっている。
その雲の海の先には、スッキリとした三角錐をした 鳥海山 が見える。月山は、 恐らくその左手にあるのであろうが、鳥海山周辺は雲の海であり、 この状態では今日も月山はダメだったのかもしれない。
お鉢巡りもやがて先ほど登りついた平笠不動避難小屋からの合流点に辿り着けばお仕舞いであり、 これで岩手山も下らねばならない (10時23分)。 もう一度薬師岳を撮り、火口を撮してから下山を開始した。

先ほど喘いで登ったガレた道もあっという間に通過し、ハイマツ帯を下りきれば再び平笠不動避難小屋である (10時39分)。 仰ぎ見れば岩手山の頂が逆光の中まぶしい。後は来た道を一気に下るだけなので、その部分の記述は省略するが、 途中 1つだけ面白いことがあった。
ツルハシとそれに続く一直線に斜面を横切る下りの部分で登山道の整備・修復工事が行われるらしく、そのための杭などの資材をヘリが登山道に下ろしている場面に出くわしたのである。 ヘリがロープにつり下げられた資材を下ろすのを間近で見たのは初めてであったので少々得をした気分になったのだったが、 作業を見ていて 昔はこういう作業を人力で行っていたのだな ということに気がついた。 先人の努力・苦労に感謝である。

順調に往路を再び辿り、登山口に戻り着いたのが 12時10分。 駐車場近くにある焼走りの湯で汗を流し、350kmの道のりを庄内空港へと向かったのであった。
出発前 再び岩手山を仰ぎ見れば、そこには青い空をバックに悠然と構える 富士
(岩手) の姿があり、 本日の充実した登山を改めて感謝した次第である。


岩手山再登山データ

上記登山のデータ登山日:2006.10.14 天候:快晴単独行日帰り
登山路:焼走り登山口−第2噴出口−第1噴出口−ツルハシ−平笠不動避難小屋−お鉢(平笠不動避難小屋分岐)−薬師岳(岩手山山頂)−(お鉢巡り)−平笠不動避難小屋分岐−(往路を戻る)
交通往路:盛岡−盛岡IC−(東北自動車道)−西根IC−焼走り登山口(車にて)
交通復路:焼走り登山口−西根IC−(東北自動車道)−村田JCT−(山形自動車道)−月山IC−湯殿山IC−(山形自動車道)−庄内空港IC−庄内空港 (車にて)−(飛行機)−羽田空港−(バス)−二俣川−(相鉄線)−瀬谷


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