登山NO.0088 鳥海山( 鳥海山:2,236m ) 2002.10.05 登山


 千蛇谷より鳥海山を振り返る( 2002.10.05 )

【鳥海山登山記録】

【鳥海山登山データ】

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NO.88 鳥海山登山記録

前日の 月山 は雨と雷と雹にやられて散々であったが、 天気予報では今日の鳥海山登山は期待できそうである。
事実、 朝起きてホテルの窓から外を覗いてみると、 本日は曇りのち晴れという予報にも拘わらず、 既に空には雲一つなく、 遠くにはうっすらではあるが鳥海山のシルエットが見えるではないか。 逸る心を抑えて 7号線を北に向かう。

進行方向右手奥に見える鳥海山は、朝の薄暗さの中に 富士山 にも似た秀麗な姿を見せてくれており、当然、車を止めてシャッターを押す場所を探しながら道を進む。 ところがである、 道路は 1本道でなかなか良い場所が見つからず、 そうこうしているうちにやがて手前の笙ヶ岳 (であろうか) にその山頂部が隠されてしまい、 結局 鳥海山全景の写真を 1枚も撮ることができなかったのであった。 これは大変悔やまれる。

7号線をどんどん北上し、吹浦駅への分岐を過ぎてから、立体交差のところで鳥海ブルーラインに入る。後は一本道のはずである。誰もいない道を快調に登り、 やがて国民宿舎大平山荘に辿り着いたのだったが、 本日の出発予定の登山口はもっと先にある鉾立である。 少し進んだ所で大平登山口を通り過ぎ、 やがて前方に鉾立の国民保養センター稲倉山荘と思しき建物が見えてきたが、 先の大平登山口からその鉾立までは結構距離がある。 これは大事なことで、 往路は鉾立からの登山道をとり、 あわよくば下山は大平登山口へと思っていた目論見が、 この車道歩きの長さに脆くも崩れてしまったのであった。

明るい日差しのもと、鉾立の駐車場に車を置いていざ出発である (6時46分)
まずはコンクリートの石段を登る。 この先の展望台まで遊歩道になっており、 登山者以外の人も登るためであろうか、 道はコンクリート舗装となって整えられている。
振り返れば日本海が眼下に広がり、空は青く、 周囲の紅葉が美しい。 前を向けば、 やや逆光ながら鳥海山の頂も見える。 しかし、そこまでの距離の遠さにややたじろがされる。

やがて展望台で、ここからは白糸の滝や鳥海山が眺められるのだが、あいにく逆光でなかなかその姿がとらえられない。白糸の滝と書かれた標識を過ぎた所で、 コンクリート舗装の道から土の道へと変わり、 ようやく登山道らしくなった。 傾斜もややきつくなる。

黄色に色づいた低木の中の尾根道を黙々と登っていくと、やがて道はドリルで割って同じ大きさにした石を敷き詰めた石畳となり、これが結構長く続くこととなった。 これだけの石畳を作り上げた工数を考えると 気が遠くなる。
暫く周囲の紅葉を楽しみながら登っていくと、 水が石畳の間を流れているほぼ平らな場所へと辿り着いた。 六合目の賽の河原である (7時36分)
ここは氷河にでも削られたような、 なだらかな斜面が目の前に広がっており、 緑のササの斜面に白い岩が輝いていて美しい。 ここから道は左に登っていく。

登り斜面にかかって左手を見れば、稲倉岳の姿が大きく、手前には小さいながらも池塘が見える。
やがて登り詰めたところに鳥居と小屋が見えてきた。 ここは七合目 御浜神社である (8時1分着、8時10分発)
建物の横を過ぎると右手下には鳥海湖が静かに横たわっているのが見え、 その左手奥には逆光の中に鳥海山も顔を見せている。

ここからの道は草木が極端に少なくなったが、それは秋故のことか ? ガイドブックでは高山植物の宝庫とある。一旦、大きく盛り上がった扇子森に登った後、 階段状の道を下って着いた所が御田ヶ原で、 ここも何となく荒涼とした感じを受ける。
御田ヶ原からは緩やかな八丁坂を登り、 山腹を巻くように進むと、 着いたところが七五三掛 (しめかけ) で、 そこでは数人の人たちが憩っていた。 この先で道は千蛇谷を登るコースと外輪山を進むコースに分かれるため、 長い登りに備えての一服であろう。

少し道を離れて七五三掛の崖っぷちまで進んでみると、眼下には中島台の樹海の広がりが目に飛び込んできた。広々とした樹海が緑や赤に染まって美しい。
右手には千蛇谷から鳥海山一気に立ち上がっているのが見え、 単調な登りを想像させられてげんなりである。 さすがにこの時期、谷には雪渓は見られないようで、 単調な岩場の登りが続くようである。 しかも谷底を進むので周囲を見ても火口壁だけであろうし、 息が上がり 立ち止まっては上を見上げるというパターンがどうしても想像される。

となると、これだけの晴天であるから景色の良いと思われる外輪山コースをとった方が面白そうである。皆が左の谷に降りていくのを尻目に、分岐から右の道を進んだ。 さすがに誰も着いてこない。
ハイマツの中を登って最初の大きなピークを目指す。 結構キツくて、こちらの道を選んだことをやや後悔する気持ちも湧き始める。
しかし、吹く風は心地良いし、 振り向けば先ほど登ってきた扇子森や御浜神社方面、 そして稲倉岳、その後ろには日本海が見えて爽快である。 右手下方には 黄色や緑の斜面の中にかなり小さくなってはいるが雪渓も見えており、 やはりこちらのルートの方が気分が良い。

黙々と登り詰めて最初の大きなピークに登り着くと、何とそのピークは 10人ほどの女性陣で占められていた。ここで休憩と思っていたのに、さすがに狭いピークで 女性陣に混じって休憩する勇気は湧かず、 結局 そのままピークを通り過ぎてしまったのであった。
ピークには標柱もあったようだが、 その周りにも女性陣がおり、よく見ないままであった。 後から思えば、ここが文殊岳だったようである。

その後、一旦下って、また登り返すという状況が少しく続いたが、さして苦痛でもなく、また所々の岩場にはペンキ印があって迷う心配もない。振り返れば、 高度を上げたために鳥海湖までが見え始め、 黄色や緑色の山の連なりの中に瞳のように輝く青い色に 思わずシャッターを切る枚数が増える。
前方斜め左手には、 岩手山 の鬼ヶ城を思わせるような鳥海山の姿が見え、 行きに車から見えた優美な姿とは全く異なる 草木の生えていない荒々しいその姿に驚かされる。

やがて、右手奥の斜面を登ってくる女性を見かけたが、どうやらそこは湯ノ台口からの道らしい。湯ノ台口からの道との合流点には小さな石の祠があるだけで、 標柱は見あたらなかったが、 地図から推測すればここが伏拝岳であろう。
ここから見る鳥海山は、 火山活動によって地表が盛り上がったばかりのような荒々しい姿を見せており、 そばに大物忌神社などの建物が見えなかったら、 まるで砂と岩で作った小さな造形物にしか見えない。

この辺からは火口壁の上を回っていることがいやでも意識されるようになる。
岩場を進んでいくと やがて大物忌神社への下り口が現れたが、 現在ここは崩壊が激しいらしく通行止めになっていた。
この外輪山を回り込むにつれて、 鳥海山頂上である新山がどんどん姿形を変えていくのが面白い。

道は、百宅口からの道と合流した後、やがて新たな新山・大物忌神社への下り口が現れたが、まずはここをそのまま通過して外輪山の最高峰である七高山を目指す。 遠くに見えた七高山も歩けばほんの少しの距離で、 その頂上には朽ちかけた標柱といくつかの石碑がおかれていた (10時8分)
ここから見る新山は、 鶏の鶏冠のような形をしており、 岩屑を積み上げただけのあまり魅力的な姿ではない。
とはいえ、早く頂上を踏みたいのは人情であり、 休む間もなく、すぐに先ほどの下り口へと引き返す (10時14分発)
崩れやすい岩屑の道をジグザグに下ると、 下りついたところに雪渓があり、 小川のようになった場所を渡ったところから新山への登りが始まる。

岩に印がつけられているが、少し迷いやすい。
やがて、しっかりした大物忌神社への道に登り着くことになり、 左に道を下れば神社である。 新山へはそのままゴロゴロした岩の斜面を ペンキ印をたどりながら登ることになる。
この辺になると大きな岩が累々と積み上げられており、 火山活動で岩がどんどん地表に噴出してきて 積み重なっていく様が想像されて面白い。

胎内潜りと呼ばれる岩のトンネルを過ぎ (もっとも、そこは潜らず迂回したが)、忠実に岩の印を辿ると、やがて周囲には岩が積み上げられた高みがいくつも現れた。 そのうちの一つが新山頂上らしい。
ペンキ印を辿って大きな岩を登り、 高みの上に立つと、 そこには鳥海山と立派な文字が書かれた板数枚と 石碑がいくつか置かれていた。 ようやく頂上である (10時32分)
積み上げられた岩の頂点であるが故に頂上は狭く、 幸いなことに私が登り着いた時は誰もいなかったからよかったものの、 大勢が押し寄せたら順番待ちというところであろうか。

頂上からは、先ほどまでその頂上に立っていた七高山が対峙するように存在しているのがまず目に付く。そして、その頂上直下の荒々しい火口壁は、まさしく 殺風景という表現が適切で、 岩の層が積み上がってその間を土や岩屑が覆っており、 「死」 をも感じさせる茶色一色の無味乾燥の世界である。
他の景色はというと、 この七高山以外は他の高みに遮られてよく見えない。 少々期待していただけに残念であったが、 それよりも気になるのはこの頂上よりも 他の高みの方が高く見えることである。 もしかしたら 一番安全に登れる高みを頂上にしたのかもしれない という疑いまで抱いてしまう。
よく見ると、 北西にある高みの方は簡単に登れそうである。 それではと頂上を後にして岩を辿ってみると、 思った通り簡単にその頂上に立つことができたのであったが、 ここからの展望は抜群であった。

正面には稲倉岳の姿があり、その後ろには日本海がやや霞んでいるものの大きく広がっていて、海岸の町も見える。また稲倉岳方面へと続く稜線は、そこが先ほど登ってきた 外輪山の続きであることがよく分かるような崖になっていて、 その崖下、つまりこの新山から稲倉岳の間には、 中島台の樹海が広がっており、 その赤と緑の混ざりあった色は何ともいえない美しさである。 やはり、先ほどの殺風景な七高山の眺めとは違って、 緑、黄色、赤の混じり合った樹海に 「生」 を感じて ホッとしたといったところであろうか。

さて、下山は直接 大物忌神社へと下った (10時48分発)双石山 (ぼろいしやま)の象の墓場を思い出させる、岩が作り上げた回廊を通り、眼下に広がる千蛇谷へと下る。 積み上がった岩の上を下り、 大物忌神社に着いたのが 11時3分
神社は石垣に囲まれていて、戸も閉められていたが、 その後ろに見える累々と岩が積み上がった新山の姿が 威圧感を醸し出しているのが印象的であった。

下山路は千蛇谷を一気に下った。
ここを登ってくるのはやはり単調で苦しいことであろう。 外輪山を登ってきたのは正解である。
景色は外輪山の荒々しい岩肌しか見えず、 やがて見え出した扇子森の姿にホッとさせられたのであった。 ここを登る場合は、 天に突き上がっている新山の姿が高く、険しく見え、 その延々と続く単調な登りに辟易とさせられることであろう。

快調に足を進めてやがて七五三掛で往路と合流し、御田ヶ原へと下る。
目の前には扇子森の階段状になった登りがあるが、 どうも人工的に作られた登路はイヤである。 と思ったら、御田ヶ原から左へと扇子森を迂回するような道があった。 地図を見ると、 このまま左に下れば途中から鳥海湖の畔へと出られるようになっている。 それならと気持ちの良い草原の斜面を進む。
振り返れば外輪山の向こうに鳥海山の姿が見える。 周囲の緑や黄色の斜面に比べて鳥海山の頂はやはり黒く、 そこが全く違う環境であることを教えてくれる。

やがて、二ノ滝口への道を左に見て右の方に登っていくと静かな佇まいの鳥海湖で、周囲の黄色い草原に青い空を映した湖面が美しい。湖の先の斜面上には御浜神社も見える。
湖の周りを少し回ってから御浜神社への登りに取り付くが、 ここは道があってないようなもので、 水の流れにえぐられたようになった岩場を、 歩きやすいところを見つけながら登ることになった。 距離は短いが思ったより斜面は急で、 かなり息が上がってしまったが、 良かったのはここから鳥海湖を挟んで鳥海山を見ることができたことで、 今までとは全く違った風情を感じることができたのであった。

息を切らせて登り着いた御浜神社からは (12時30分)、往路を一気に下った。まだ時間が早いので、大平登山口へと下ることも頭に浮かんだのであったが、 やはり下った後の車道歩きを思うと気が滅入る。 ここはやはり素直に往路を下ることにしたのであった。

そして鉾立の駐車場に着いたのは 13時25分 やや下山時間にしては早いが、昨日の月山とはうって変わった晴天の下、 東北の山の秋を存分に堪能した登山であった。


鳥海山登山データ

上記登山のデータ登山日:2002.10.05 天候:快晴単独行日帰り
登山路:鉾立駐車場−展望台−賽の河原−御浜神社−御田ヶ原−七五三掛−文殊岳−伏拝岳−行者岳−分岐−七高山−分岐− 新山(鳥海山)−大物忌神社−千蛇谷−七五三掛−御田ヶ原分岐−鳥海湖−御浜神社−賽の河原−展望台−鉾立駐車場
交通往路:酒田−吹浦−(鳥海ブルーライン)−大平登山口−鉾立駐車場(車にて)
交通復路:鉾立駐車場−大平登山口 −(鳥海ブルーライン)−吹浦−鳥海温泉−酒田−湯野浜温泉−庄内空港(車にて)


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