先日の 菰釣山、鳥ノ胸山の時と同じように 道志川沿いの国道413号線を西に進み、道志村役場の駐車場に車を止めた。
本当は、ここより手前の大栗という所から赤鞍ヶ岳へと登るつもりであったのだが、登山口がよく分からず、 また車を止める適当な場所も見つからなかったのでこの道志村役場までやってきたのである。
事前にガイドブックなどをよく調べもせず、昭文社の地図 「丹沢」 の隅っこに書いてあった登山道だけが頼り といった状況 (登山道は書かれていてもコースタイムは書かれていない) では、こういった失敗も致し方あるまい。駐車場を出発したのが 6時59分、道志役場前にいた地元のおばちゃん達に道を教えて貰い、 民家と民家の間の細い道を抜けて、暫くは畑の中を進むこととなった。
やがて農道にぶつかったので右に進むと、すぐに赤鞍ヶ岳の登山口を示す小さな標識が現れ、そこからは農道をはずれて檜 ? の植林帯の中を登ることになった。
ここで注意しなければならないのは、この山域には赤鞍ヶ岳と呼ばれる山が 2つ存在することである。一つは当初 私が大栗から登ろうと思った別名 ワラビタタキ の名がある山で、 もう 1つは現在登っている登山道が登り着く先の、別名 朝日山 の名がある山である。
そして、面白いことに両方の赤鞍ヶ岳は直線距離にして約 1.5kmを隔てて隣接しているのである。私の持っている地図では、ワラビタタキの名がある方が正式に赤鞍ヶ岳となっており、 もう一方のこれから登ろうとしている赤鞍ヶ岳の方は朝日山が正式名になっている。
但し、現在進んでいる登山道では、全てこの朝日山のことを赤鞍ヶ岳と記してあった。
閑話休題。折角の植林帯の中の登りも長くは続かず、やがて左上の斜面に白いガードレールが見えてきて、 先ほどの農道に再びぶつかることになった。
農道を右に進むとすぐに斜面に階段をつけた登山道が現れ、ここからまた檜の植林帯の歩きとなった。
道はそれほど急ではなく、普段なら何ともない登りなのだが、この日は身体が重かったため結構きつく感じられ、 先の方に稜線が見えてきた時には大変嬉しく思えたのであった。
体の調子が悪いこともあって、あの尾根上に出れば後は楽になると勝手に決めつけていたのだが、明るい尾根道はそれ程長く続かず、 すぐに植林帯と自然林の入り交じる中の登りとなった。
この登りもさしたることはなかったのだが、身体の不調に加え、私の苦手な 1本調子の登りだったこともあり、大変苦痛を感じたのであった。展望はあまり利かず、振り返れば時折樹林の合間から 丹沢の山が見える程度であったが、 途中 どっしりとした 大室山の左に見える尖った山の頂上が朝日を浴びて光っているのが目に入った。
どうも頂上の山小屋の屋根が光っているようであるが、該当する山がすぐに思い浮かばない。
犬越路の避難小屋のはずはなく、檜洞丸頂上直下の青ヶ岳山荘というのも位置的にはおかしい気がする。 どう考えても 蛭ヶ岳頂上の蛭ヶ岳山荘しか該当する小屋がないのだが、 かなり近いところに見えたので本当にあれが蛭ヶ岳なのか確信がもてなかったのであった。
昼食時に地図を見て確かめたらやはり蛭ヶ岳であろうことが確認できたのであるが、この時は色々な山を思い浮かべながら登ったことで、 苦痛な登りもやや気が紛れたのであった。やがて周囲が明るくなり、ササの中を登り切ると、明るい場所に飛び出すことになった。 秋山峠である (8時21分着)。
ここは大変展望が良く、富士山の姿が素晴らしい。
ここから右へ進めば当初 大栗から登ろうと思っていた赤鞍ヶ岳 (ワラビタタキ) であり、 私は当初の目的を果たすべく暫く右の道を進んだのだが、体調の悪さがこの道を往復することをしきりに嫌がり出し、 結局 2、3分ほど進んだ所で引き返すことにしてしまったのであった (本当に情けない)。
秋山峠に戻ると、そこからは別名 朝日山であるもう 1つの赤鞍ヶ岳へはほんの数分の距離で、その頂上には鉄枠に囲まれたプラスチック製の立派な標識がおかれていた (標識には赤鞍ヶ岳としか書かれていない) (8時31分着)。
頂上は残念ながら樹林に囲まれていて十分な展望は得られなかったものの、落葉しているお陰で樹林越しに 富士山や 小金沢連嶺の山々を見ることができた。赤鞍ヶ岳から菜畑山へは、当初考えていた以上にアップダウンがきつく、体調不良の我が身にとっては大変苦しい行程となった。
大峰、岩戸ノ峰、ブドウ岩ノ頭といった 3つほどの大きなピークを越えていくのであるが、稼いできた高度を一気に吐き出すような感じで急下降し、 そこから登り返すという状態が続き、歩きながらひたすら考えたことは、今日は無理をせず菜畑山からすぐに下山して家で休みたいということだけであった。
道の方は、ところどころササがうるさいところもあるものの、全体にしっかり踏まれていて全く問題ない。
ただ、この時期 雪は全くなかったものの、道がぬかるんでいるところがかなりあり、下り斜面では少々苦労させられたのであった。先に述べた 3つのピークは残念ながらいずれも展望が利かず、休む場所としてもあまり適当ではなかったことから、 身体は苦痛であるものの、ほとんど休まずに歩き通すことにした。
途中、本坂峠で左に戸渡への道を分け、ブドウ岩ノ頭に登り着くと、道は鋭角に曲がって南に向かうことになって苦しかった行程も残すは菜畑山のみである。
菜畑山への道も一旦急下降した後再び登り返すことになり、しかもこのピークが頂上かと思うとさらに先があったりすることが数回続いたため、 菜畑山頂上に着いた時にはかなりくたびれた状態であった (10時26分着)。
菜畑山頂上は南面が大きく開けており、東屋も置かれていて大変気持ちがよい。
大室山が目の前にどっしりとした姿を見せており、右手奥には 富士山の姿も見ることができた。
ただこの頃にはもう春霞がかかったようになっており、今日の 富士山はこれでお終いといった感じである。さて、先に述べたように菜畑山頂上からは一気に下山するつもりであったのだが、時計を見るとまだ 10時半、 このまま下山したら12時前後には車に乗っていることになる。
そのことに対してどうも引け目を感じ、さらに頂上にいた男性 3人組と交わした会話から、何となく雰囲気的に今倉山に行かねばならない状態になってしまったのであった。
つまり 「ええ格好しい」 な訳で、体調が今一つなのだから下山することは恥でも何でもないはずなのに、 どうも下山してしまうことをプライドが邪魔した形になったのである。
それでも、今倉山に向かうまではかなり頭と身体の間で葛藤があったのだが、結局 頭の方が勝って今倉山へ向かった次第である (10時46分発)。
途中、尾根道から今倉山の姿が見えたが、なかなか立派な双耳峰で、その姿に少し登高意欲が刺激されて足取りもやや軽くなった感じであった。道は所々ササや低木がうるさいところがあるものの、ハッキリしており、また、菜畑山の頂上で事前に調べた通り アップダウンは大したことはなく、平らな部分も多かったことから、大変助かったのであった。
とは言っても、体調の悪い私には途中の小さなピーク越えもきつく感じられ、特に今倉山頂上に至る最後の登りは一直線の登りだったことから大変つらいものに感じられた。
なお、途中 7、8人と擦れ違ったが、皆、菜畑山からの往復のようであった。今倉山だけ登るのなら道坂隧道からの登りが一番早いのだが、 それでは全く面白味が無く、やはり登山としては菜畑山からの往復が正解であろう。
今倉山頂上に着いたのが 12時1分、菜畑山を出発してから 75分かかったことになり、些かショックである。
体調が悪いとは言え、菜畑山の標識に 「今倉山まで 80分」 と書いてあった道をほぼ時間通りというのは チョット許せない。今倉山頂上は樹林に囲まれていて展望は利かず、また天候も曇りがちになってきたため、 あまり面白い山ではなかったのであるが、嬉しい誤算としては先の菜畑山とともにこの山が 山梨百名山 であったことである。
私は決して 山梨百名山 のピークハンターではないのだが、多くの人に支持されているのに自分が行ったことがないというのは何か損をしている気がする訳で、 それを 1つでも解消出来るのは嬉しいものである。
私は山頂の三角点を踏み、記念写真を撮ってからすぐに引き返してしまったのだが (12時13分発)、 帰宅後にガイドブックを見たところ、双耳峰のもう 1方 (西峰)までいけば 富士山や 御正体山の展望が得られとのことであった。
全く、「仁和寺の法師」 状態といったところである。菜畑山 (13時15分着、13時20分発) からの下りは結構急な斜面で、 自然と出てくるスピードを足で制御しながら下ったことから、翌日から 2日間程 腿などの筋肉痛に悩まされることになった。
そのような急斜面であったものの、このまま一気に下ってしまえ と思っていたところ、10分も下ると何と林道の終点に飛び出し、 そこには車が 3台ほど止まっていたので拍子抜けというか、唖然としてしまった。
ここまで車で来てしまえば、わずか 30分ほど登って菜畑山頂上ということになる。これでは登山している意味がないではないか。
何となく虚しさを覚えたのであった。それでも有り難いことに、林道終点から先も登山道は延びていたのでさらに下っていくと、 すぐにまた先ほどの林道にぶつかることになった。周辺に登山道らしきものが見えなかったことから、 林道を歩かざるをえなくなり、このまま下まで林道歩きか と思っていたところ、ヘアピンカーブを曲がった所に黄色のテープがあり、 そこから再び登山道に入ることとなったので、何だかホッとさせられたのであった。
道はあまり踏んでいる人がいないらしく、所々分かりにくい所もあったが、迷うことはない。
やがて鉄塔のある明るい場所に飛び出し、そこからは檜や杉の植林帯の中の下りとなった。
ここでは檜や杉の葉が地面を埋めており、また沢などもあって、登りに使ったらやや道が分かりにくいかもしれない。やがて、民家の前に飛び出し (13時58分)、 国道413号線に出て東へ 15分ほど歩くと、道志村役場前であった (14時15分着)。
今回の登山は低山であったが、体調が良くない身にとっては結構つらい山登りであった。
赤鞍ヶ岳・菜畑山・今倉山登山データ
上記登山のデータ 登山日:2000.04.02 天候:晴れ時々曇り 単独行 日帰り 登山路:道志村役場駐車場−登山道入口−秋山峠−赤鞍ヶ岳−岩戸ノ峰−ブドウ岩ノ頭−菜畑山−今倉山−菜畑山−テレビ塔(林道終点)−道志温泉−道志村役場駐車場 交通往路:瀬谷−(国道246号)−(国道412号)−青山−(国道413号)−道志村役場駐車場 (車にて) 交通復路道志村役場駐車場−(国道413号)−青山−(国道412号)−(国道246号)−瀬谷 (車にて)