米海兵隊による大分県日出生台演習場での実弾演習についての質問主意書

衆議院議員 赤 嶺 政 賢
衆議院議員 小 沢 和 秋


 日本共産党の赤嶺政賢、小沢和秋両衆院議員は十一月三十日、米海兵隊による大分県日出生台演習場での実弾演習について、質問主意書を提出。森喜朗内閣総理大臣から十二月二十六日に答弁書が送られてきました(内閣衆質一五〇第六一号)。以下、全文を紹介します。


日出生台の米軍実弾演習不安の声にこたえよ

○赤嶺政賢・小沢和秋衆院議員
 「沖縄の痛みを分かち合う」として一九九七年より始まった米海兵隊による沖縄県道一〇四号線越え実弾射撃演習の本土移転は、その移転先とされる五つの各演習場で二回乃至三回がこれまでに実施されている。この実弾演習については、演習場周辺の住民と自治体から「もうやめて欲しい」との声が強くあげられている。
 この間、大分県の日出生台演習場では一九九七年度から二〇〇〇年度にかけて三一億六千八百万円ものSACO経費をつぎこんで米軍の演習を支援するための施設が次々と建設され、「演習の恒久化、規模の拡大につながるのではないか」との不安が住民の間で高まっている。
 日出生台演習場における過去二回の演習実施では、激しい夜間の実弾射撃の強行や外出時に泥酔した海兵隊員が別府市街に出没する等、住民感情を逆撫でする事態が生じている。あわせて、学童のタクシーによる通学や自治体職員、消防団員による昼夜間パトロールの実施など、平常な市民生活に多大な影響と負担を与えるものになっている。
 以上のような実態をはらむ米海兵隊の演習移転は、「沖縄と痛みを分かち合う」どころか移転実施地で新たな被害と不安を拡大していることが明白である。
 そこで、次の事項について質問する。

@米海兵隊の実弾演習の被害の実態は

○赤嶺政賢・小沢和秋衆院議員
 日出生台、東富士、北富士、王城寺原、矢臼別の各演習場で既に二回から三回の米海兵隊による実弾射撃演習が行われたが、これらの演習移転地周辺住民や自治体が訴えている被害や苦情について、政府は具体的にどう把握しているか。

●森喜朗・内閣総理大臣
 沖縄県に駐留するアメリカ合衆国海兵隊(以下「在沖米海兵隊」という。)による沖縄県道一〇四号線越え実弾射撃訓練を本土に移転して行う訓練(以下「実弾射撃移転訓練」という。)が実施されている矢臼別、王城寺原、北富士、東富士及び日出生台の各演習場の関係地方公共団体、周辺住民等から、これまで、陳情等を通じ、例えば、射撃による騒音及び振動により周辺住民の生活環境に影響が及んでいるとして、特に早朝及び夜間の射撃訓練の自粛又は中止を求められており、また、訓練の安全対策等に万全を期するように求められている。

A海兵隊員の外出で住民が不安、協定が遵守されていない

○赤嶺政賢・小沢和秋衆院議員
 日出生台演習場での実施については「外出の際は、原則として防衛施設局員を同行させる」などの協定が地元と結ばれているにもかかわらず、米海兵隊員が施設局員の同行のないまま外出した上、住民に不安を与える事例が増えている。協定が遵守されないのはなぜか。また、米側はどのように説明しているか。協定違反があった場合、どのように対処したか。

●森喜朗・内閣総理大臣
 在沖米海兵隊による沖縄県道一〇四号線越え実弾射撃訓練を日出生台演習場に移転するに際し、平成九年十月二十三日、福岡防衛施設局長が、大分県知事、玖珠町長、九重町長及び湯布院町長との間で、「日出生台演習場の米軍使用に関する協定」(以下「米軍使用協定」という。)を締結したところであり、米軍使用協定においては、「施設局長としても、米軍の外出時には職員が同行するなど居住を持って対応する。」と定められている。
 福岡防衛施設局においては、地元住民の不安を解消するため、在沖米海兵隊が実弾射撃移軽訓練を日出生台演習堤で実施している期間中、福岡防衝施設局の職員(以下「施設局職員」という。)が、同演習場から外出する在沖米海兵隊の隊員の案内のための同行に努め、個々の外出の状況に応じて同行ができない場合には外出先で巡回する等の措置を講じているところであり、米軍使用協定が遵守されていないとの御指摘は当たらないものと考えている。
 また、アメリカ合衆国軍隊(以下「米軍」という。)が、米軍使用協定の当事者ではないが、米軍から、施設局職員の同行は、在沖米海兵隊の隊員の意志により受け入れるものであるが、隊員が言語、慣習の異なる地域で行動するに当たっで有益である旨の説明を受けている。

B別府での海兵隊員の泥酔事件の把握と再発防止への措置は

○赤嶺政賢・小沢和秋衆院議員
 日出生台演習場での演習の際の二月一八日、別府市内に外出した米海兵隊員らが泥酔して路上や店先に転がるなど、市民を畏怖させる事態を引き起こした。この別府市の一件では、目撃した住民の証言によると「防衛施設局の人間らしい人物が近くにいたが、何もしなかった」とのことである。この一件については、住民が米海兵隊演習部隊指揮官と面会した際、善処を申し入れているが、政府としては事態をどのように認識し、どのような対処を行ったのか。米側は、市民の安寧を乱したこの海兵隊員に対し、どのような処分を行ったのか。再発防止にあたり、どのような措置をとったか。

●森喜朗・内閣総理大臣
 御指摘の在沖米海兵隊の隊員は、平成十二年二月十八日夜、別府市内において、酒に酔って飲食店の店先の階段に座り込み通行人に話しかけられているところを同市内を巡回していた施設局職員に発見された在沖米海兵隊の隊員と考えられるが、当該施設局職員は、当該隊員を発見後直ちに同市内で待機していた在沖米海兵隊の要員に連絡を取り、同要員に引き渡すまでの間、当該隊員に付き添っていたところであり、「防衛施設局の人間らしい人物が近くにいたが、何もしなかった」との御指摘は当たらないものと考えている。
 また、当該隊員の処分の有無等については、米軍内部の問題であり、承知していない。
 いずれにせよ、政府としては、在沖米海兵隊に対し、実弾射撃移転訓練の実施期間中の在沖米海兵隊の隊員の規律を保持するよう、これまでも累次申し入れているところである。

C夜間の演習及びNBC戦対処訓練は中止すべき

○赤嶺政賢・小沢和秋衆院議員
 過去二回にわたって日出生台演習場で実施された米海兵隊の一五五ミリ榴弾砲の実弾射撃演習について、演習実施毎の訓練日数ならびに実弾発射数と、そのうち午後六時以降に実弾発射を行った日数と発射された実弾数について明らかにされたい。また、米海兵隊指揮官が住民に明らかにしたところによれば、同地での演習の際にNBC戦対処訓練を実施したとのことだが、どのような内容の訓練を行っているのか明らかにされたい。尚、住民からは「夜間の射撃訓練は絶対にやめてほしい」「住民に不安を与えるNBC戦対処訓練はやらないで」との声がつよくあがっており、大分県など地元自治体からは「地域住民の不安が特に強い早朝及び夜間訓練(中略)については格段の配慮を行うこと。また、訓練開始時間の繰り下げ及び終了時間の繰り上げを求める住民の要望に配慮すること」との要請が政府宛にされている。この際、早朝、夜間の演習及びNBC戦対処訓練は中止するべきと考えるが、どうか。

●森喜朗・内閣総理大臣
 日出生台演習場における実弾射撃移転訓練の訓練日数、実弾発射数及び午後六時以降の実弾射撃訓練の日数は、我が国に駐留する米軍の司令部(以下「在日米軍司令部」という。)からの通知によれば、別表第一のとおりである。午後六時以降の実弾射撃訓練の実弾発射数については、在日米軍司令部から通知を受けていないため、承知していない。
 在沖米海兵隊が、日出生台演習場における実弾射撃移転訓練の際、核・生物・化学兵器による攻撃を受けた場合を想定した防御訓練(以下「NBC防御訓練」という。)を実施したことは事実であるが、在日米軍司令部から、NBC防御訓練は、化学薬品類や特殊な物質を使用するものではなく、核・生物・化学兵器から身を守るための防護服等を着用して円滑に行動すること等を目的とした訓練である旨の説明を受けている。
 政府としては、在沖米海兵隊が実弾射撃移転訓練の際に実施している早朝及び夜間の射撃訓練並びにNBC防御訓練については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)の目的を達成するため、部隊の練度の維持及び向上を図り、即応態勢を整えておくとの観点から必要な訓練であると認識しており、また、在沖米籍兵隊は、陸上自衛隊が定めている日出生台演習場の使用管理規則における実弾射撃時間は通常午前七時から午後九時までの間とする旨の定めに従って射撃訓練を実施している。
 しかしながら、早朝及び夜間の射撃訓練の自粛等を求める関係地方公共団体等からの要請を踏まえ、政府としては、在沖米海兵隊に対し、夜間の射撃訓練を最小限にとどめるよう申し入れているところである。

別表第一

訓練実施年月

訓練日数

実弾発射数

午後6時以降の実弾射撃訓練の日数

平成112

8

450

5

平成122

8

500

6

D日出生台演習場関連のSACO経費内訳は

○赤嶺政賢・小沢和秋衆院議員
 SACO経費で日出生台演習場に整備された「沖縄県道一〇四号線越え実弾射撃演習の分散・実施に伴う施設」及び二〇〇〇年度計画の施設とその各費用について明らかにされたい。

●森喜朗・内閣総理大臣
 平成十一年度までの防衛施設庁に係る予算の(目)特別行動委員会関係提供施設等整備費の中で、日出生台演習場における実弾射撃移転訓練の実施に必要な施設を整備するための予算額は別表第二のとおりであり、平成十二年度の防衛施設庁に係る予算の(目)特別行動委員会関係提供施設等整備費の中で、日出生台演習場における実弾射撃移転訓練の実施に必要な施設を整備するための予算額は別表第三のとおりである。

別表第二

施設名

予算額

射撃情報提供等施設

10億円8900万円

弾薬一時集積所

6800万円

野外トイレ

3200万円

訓練支援施設

63800万円

兵員待機施設等

119600万円

車両整備場

3800万円

 別表第三

施設名

予算額

射撃情報提供等施設

2100万円

射撃陣地施設

7200万円

E二〇〇〇年度計画の宿舎施設は約束外の施設ではないか

○赤嶺政賢・小沢和秋衆院議員
 二〇〇〇年度計画では宿舎施設が含まれているが、これは九七年の「分散実施に伴う米軍への支援」の中では約束されていない施設なのではないか。なぜ追加されたのか、説明されたい。また、この宿泊施設については、米海兵隊指揮官が「海兵隊には新しい兵舎は全然いりません。今ある厰舎で十分です」と住民との面会の際に説明している。宿舎建設が米軍の要求に基づくのか、日本側の自発的支援なのかを明らかにされたい。

●森喜朗・内閣総理大臣
 実弾射撃移転訓練の実施に伴う宿泊施設の整備については、平成九年六月十六日に開催された「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(昭和三十五年条約第七号)第二十五条に基づく日米合同委員会において合意された実弾射撃移転訓練に係る主な米側への支援内容に含まれていないが、矢臼別、王城寺原及び日出生台の各演習場における廠舎の収容能力等を踏まえ、在日米軍司令部から要望されたものである。

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