|
|
1.素晴らしい一日 4.明日、月の上で 5.結婚貧乏(※8人の作家によるアンソロジー) 6.もっと、わたしを 9.Bランクの恋人(文庫改題:愛にもいろいろありまして) 10.愛の保存法 |
センチメンタル・サバイバル、恋はさじ加減、あなたにもできる悪いこと、あなたがパラダイス、風に顔をあげて、セ・シ・ボン、こっちへお入り、恋愛嫌い、幸せになっちゃおしまい、さよならの扉 |
|
|
●「素晴らしい一日」● ★★ |
|
2005年02月
2001/05/22 |
軽やかで、とても気持ちの良い作品集です。 登場するのは、一般社会の常識からすると、どこかネジが緩んでいるような感じの人物が多い。でも、どこか憎めなくて、かえって応援したくなるところがあります。
前者は、以前男に貸した20万円を取立てに行く元OLの話。相手の友朗は昔から能天気な男。すぐ返すと言っても、友朗に金はない。挙句の果て、友朗があちこち借金して廻るのに、一日中同行させられる羽目になります。笑ったり、悲哀を感じたり、感心したりと、読む身は忙しい。 軽妙で洒落ていて、気分が重い時の読書に格好の一冊です。 素晴らしい一日/アドリブ・ナイト/オンリー・ユー/おいしい水の隠し場所/誰かが誰かを愛してる/商店街のかぐや姫 |
●「パートタイム・パートナー」● ★ |
|
2005年01月
2002/02/09 |
落ちこぼれサラリーマンだった進藤晶生が、自分で始めた仕事は“デート屋=自称パートタイム・パートナー”という珍商売。 珍商売故のユーモア小説かと思いましたが、晶生は狂言回しというべき役柄であって、主役はむしろ依頼主たる女性たちかもしれません。 3月・土曜日の遊園地/4月・金曜日の墓地/5月・ゴールデンウィーク明けの海/6月・水曜日の高原/7月・日曜日のアパート/8月は夏休み/9月・秋分の日のオフィス/10月・金曜日のクラブ/11月・土曜日と日曜日の病室/12月・クリスマスイブの八畳間 |
●「グッドラックららばい」● ★★ |
|
2005年06月
2002/02/15 |
これまでの3作中では、本書が一番の傑作でしょう。 「バラバラだって大丈夫。家族は他人の始まりだから」「人の迷惑顧みず、自分のことだけ考える、タフな一家がここにいる」という表紙の宣伝文を読むと、ちょっと腰を引きたくなるような気持ちになりますが、読み始めてみるとそれ程のことはない。 ストーリィは、一家の主婦(母親)の家出から始まります。事前に信金勤めの父親の元に「今からちょっと家出しますから」という電話があったというのですから、読み手としても鼻を摘ままれたような気分。 新しい日々1983/結果オーライ1985/ファイターのスピリット1993/イン・マイ・ライフ1983〜1993/プライドのサバイバル1998/どうぞ勝手に、グッドラック2003 |
●「明日、月の上で」● ★☆ |
|
2006年06月
|
平作品の主人公は、「パートタイム・パートナー」といい、前作の「グッドラックららばい」といい、どこか人とズレているところがあるようです。 どんな人間にも何処かに、自由に振舞いつつ落ち着ける居場所がある筈、そんなメッセージを伝える作品です。 |
●「結婚貧乏」● ★☆ |
|
2003/11/04 |
8人の女性作家による、結婚を主題としたアンソロジー。 共通したテーマは、心も身体も生活もすべて満足できる結婚生活なんてあるのか、ということらしいのですが、結婚生活の一翼を担う男性として耳の痛い話が幾つもあります。 平安寿子:ロマンスの梯子/宇佐美游:玉の輿貧乏/春口裕子:オーダーメイドウェディング/三浦しをん:森を歩く/内藤みか:シンデレラのディナー/真野朋子:次はあなたの番ね/森福都:グッドマリアージュ/松本侑子:ぼくの秘めやかな年上の恋人 |
●「もっと、わたしを」● ★★ |
|
2006年08月
2004/05/03 |
すんなりと、はまって読んでしまう5つのストーリィ。 ストーリィ・テラー、平安寿子さんの上手さを十二分に味わえる連作短篇集です。 主人公となるのは、不器用なあまり恋愛や人生に自身が持てず、屈折感を抱いている5人の男女。現代の風潮からすると、こんな主人公像がまだあったのかと思うくらいですが、どこかホッとするのも事実。自分自身に見比べるからでしょうか。 いけないあなた/ノー・プロブレム/なりゆきくん/愛はちょっとだけ/涙を飾って |
●「なんにもうまくいかないわ」● ★☆ |
|
2005/01/10 |
本書もまた“負け犬”小説ということになるのでしょうか。 5篇の主人公は並河志津子、42歳、独身・キャリアウーマン。 ただし、5篇はすべて、志津子の友人、部下、元情人、元恋人の未亡人といった第三者の一人称により、志津子の人となりが語られる、という構成です。 その点も含め、柴田よしき「ワーキングガール・ウォーズ」とはとっと趣きが異なります。言うなれば、結果は同じであれ、自分で計算ができないところに主人公像の違いがある。 つまり、志津子は恋多き女であり、隠しごとのできず何でもしゃべってしまうが故に、可愛い女であり、“私生活のない女”なのです。恋する相手はいつも結婚できない男ばかり、とのこと。 第三者によって主人公の人物像を浮かび上がらせるという構成の傑作小説は有吉佐和子「悪女について」だと思いますが、それと比較すると、志津子の人物像は割りと単純。開けっぴろげで、セックスさえことのほか健康的、という人物像が憎めない。 「亭主、差し上げます」は、不倫現場に乗り込んだ本妻・光と、部下の不倫相手・恵子が、男を間に挟んで本音を叩き合う短篇。男性としては立つ瀬がない展開ですが、光と恵子の本音に思わず笑ってしまう。寸劇にしたい位です。 マイ・ガール/パクられロマンス/タイフーン・メーカー/恋駅通過/なんにもうまくいかないわ/亭主、差し上げます |
●「くうねるところすむところ」● ★★☆ |
|
2008年05月
2005/06/29
|
思わぬ成り行きから土建屋稼業に入り込んだ女性2人を描く、コミカルな根性物語。 女社長とそこに飛び込んだ素人女性というコンビは角田光代「対岸の彼女」をふと思い出させますが、ストーリィとしては対極にある明るいストーリィ。
零細広告出版社の編集部で不倫関係にはまり込んでいた30歳のOL・梨央は、酔っ払った時助けてもらった鳶職の男にホレ込んで一念発起、土建屋に転職します。
そして何といっても終盤、梨央と郷子の、社長と社員のやりとりとは思えない、女同士の本音を叩き合った会話がすこぶる愉快。こうしたやりとり、会話の面白い作品は大好きです! |
●「Bランクの恋人」● ★★☆ |
|
2009年06月 2017年06月
|
冒頭の2篇「Bランクの恋人」「アイラブユーならお任せを」を読んで、またもや平さんの上手さに唸らされました。 うまい! 面白い、そして愉快! 7篇を収録した短篇集。 「モテるかモテないか」こそ人生最大の問題だといってメゲることのない営業マン(Bランクの恋人)、幼少のみぎりから「愛している」の口稽古をしてきた自転車屋の中年オヤジ(アイラブユーならお任せを)、男を見る目のないキャリアウーマン(サイド・バイ・サイド)、はずれっ子狩りが大好きというふしだらなオバサン教師(はずれっ子コレクター)等々。 Bランクの恋人/アイラブユーならお任せを/サイド・バイ・サイド/はずれっ子コレクター/ハッピーな遺伝子/利息つきの愛/サンクス・フォー・ザ・メモリー |
●「愛の保存法」● ★☆ |
|
2006/01/23 |
どんな恋愛においても男の側と女の側の思惑に違いがあるのは当然のこと。そんな思い違い、食い違いを様々なパターンに描く、ちょっとユーモラスな短篇集。 上手い!と唸らされる程ではないものの、ユーモラスと上手さがうまく溶け合った小品集。私と同じく恋愛小説好きの人なら楽しめることでしょう。 まずは表題作の「愛の保存法」。4回も離婚・結婚を繰り返している人騒がせな夫婦を友人の視点から描くストーリィ。妻の本音と夫の本音に微妙なズレがある面白さが、本短篇集への期待を高めてくれます。前菜には恰好の篇。 愛の保存法/パパのベイビーボーイ/きみ去りしのち/寂しがりやの素粒子/彼女はホームシック/出来過ぎた男 |
平安寿子作品のページ No.2 へ 平安寿子作品のページ No.3 へ