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1.ブリージング・レッスン 2.ノアの羅針盤 3.ヴィネガー・ガール |
「ブリージング・レッスン」 ★★ ピューリッツァ賞 |
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1989年12月 1998年09月
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米国のごく平凡で、平均的な中年夫婦のマギー・モランと、その夫アイラ。 始まりはマギーの親友セリーナの夫の葬儀に、2人して車で出かけるところから。始まってすぐ、48歳になるマギーがとんでもなくドジな女性と判ります。なにしろ修理工場から引き取ったばかりの車でさっそく衝突事故を起こすわ、そのまま遁走するわ、行き先までの地図は忘れてくるわ。おかげで道中、アイラと言い争いばかり。 現在進行形の物語の中に過去の詳しい回想が3章とも挿入されているのが、本作品の特徴。マギーにもアイラにも、若く心ときめかせた時代があったのです。それが何でこうもなるのか? ごく平凡な中年夫婦の、いつもの生活の中の一日が描かれているに過ぎません。でも、そこにどんなに多くの人生ドラマが含まれていることか。 |
「ノアの羅針盤」 ★★ |
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2011年08月
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リーアム・ペニーウェル、2人の妻とは死別、離婚していて、娘3人と孫1人がいるものの、長年に亘り寂しい一人暮らし。 そうあらすじを語るとドラマチックなストーリィと思えるかもしれませんが、起伏のないストーリィが延々と続くという風で、私にとっては苦手なタイプの作品です。 読み終えて感じること、それはこのリーアムの物語が決して他人事ではない、ということです。 |
「ヴィネガー・ガール」 ★★ 原題:"Vinegar Girl" 訳:鈴木潤 −語りなおしシェイクスピア3:じゃじゃ馬ならし− |
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2021年09月
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原作の「じゃじゃ馬ならし」、女性差別という批判が耐えない作品ですが、主役である男女の性格がはっきりしているドタバタ喜劇であり私としては割と好きなシェイクスピア戯曲です。 その“語りなおし”である本作、コレって本当に「じゃじゃ馬ならし」の語りなおし?と思わず疑ってしまうくらい、原作とは印象が異なります。 それもその筈、刊行時のインタビューにアン・タイラー、「シェイクスピアの戯曲が嫌いだ。一つ残らず。しかしとりわけ嫌いなのが『じゃじゃ馬ならし』だ。だから書きなおすことにした」と答えたそうなのですから。 つまり、換骨奪胎して作り変えてしまった、ということなのでしょう。本シリーズとしては前代未聞、というところ。 主人公であるケイト・バティスタは29歳、かつて植物学の研究を志したが教授と揉めて退学を勧告され、以来プリスクールで教員アシスタントをしながら家事を切り盛りしている、という状況。空気を読まないところがある所為か、率直な物言いが波紋を呼ぶこと多々あり。 母親は14年前に死去、自分の研究にばかり没頭している父親ルイスと、現代的ギャルである15歳の妹バニーとの3人暮らし。 その父親がある日、ケイトにとんでもないことを言い出します。優秀な研究助手であるピョートル・スシェルバコフのビザが間もなく切れてしまう。ついてはアメリカ人女性と結婚させて永住権を獲得させてやりたいと。 まさかその偽装結婚を自分の娘にやらせようとするとは! 結局、ケイトは父親の頼みを受け入れるのですが、そこからがまた、いろいろとドタバタが続き・・・。 原作において“じゃじゃ馬”とはキャタリーナのことでしたが、本作の“じゃじゃ馬”は研究以外のことはまるで無関心、無知な父親とピョートルのことではなかったか。 主人公のケイト、そんな父親とピョートルを上手く乗りこなし、自分のステップアップを果たすことに成功、というケイトの逆転成功物語のように感じるのです。 ヴィネガー・ガール/「じゃじゃ馬ならし」オリジナル・ストーリー/ 訳者あとがき/解説:北村紗衣 |