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11.黒い悪魔 13.剣闘士スパルタクス 14.褐色の文豪 15.女信長 16.アメリカ第二次南北戦争 17.カペー朝−フランス王朝史1− 18.象牙色の賢者 19.新徴組 20.ペリー |
【作家歴】、ジャガーになった男、傭兵ピエール、赤目、双頭の鷲、王妃の離婚、カエサルを撃て、カルチェ・ラタン、二人のガスコン、ダルタニャンの生涯、オクシタニア |
革命のライオン、バスチーユの陥落、聖者の戦い、議会の迷走、王の逃亡、フイヤン派の野望、ジロンド派の興亡、共和政の樹立、ジャコバン派の独裁、粛清の嵐 |
徳の政治、革命の終焉、黒王妃、ヴァロワ朝、ラ・ミッション、ハンニバル戦争、ファイト、遺訓、ナポレオン1、ナポレオン2、ナポレオン3 |
日蓮、最終飛行、チャンバラ |
●「黒い悪魔」● ★☆ |
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2010年08月
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「ダルタニャン物語」等の文豪アレクサンドル・デュマの父親を主人公にして描いた、フランス革命側面史というべき作品。
主人公トマ・アレクサンドルは、カリブ海の仏領サン・ドマング島(現ハイチ)で白人農園主と黒人奴隷の間に生まれ、コーヒー豆農園の黒人奴隷として育ちます。 ※ロシアの文豪プーシキンの曽祖父もまた黒人であり、プーシキン自ら「ピョートル大帝の黒奴」(未完)という作品を書いています。そのことを必然的に思い浮かべました。 |
●「ジャンヌ・ダルクまたはロメ」● ★★☆ |
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2006年02月
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著者初の歴史短篇集。 「ジャンヌ・ダルクまたはロメ」「ルーアン」の2作は、いずれもジャンヌ・ダルクが題材。前者は、シャルル7世の寵臣ジョルジュが、自分の地位を脅かしかねないジャンヌの出自にいろいろと推測をめぐらし、結局はシャルル7世の冷酷さに気付いて戦慄する話。後者は、異端審問を受けたジャンヌを、結局救うことのできなかった修道士ジャック・ドゥ・ラ・フォンテーヌのジレンマを描く話。ラ・ピュセルの側面史というべきこの2篇が、本書中でも特に秀逸。 ジャンヌ・ダルクまたはロメ/戦争契約書/ルーアン/エッセ・エス/ヴェロッキオ親方/技師/ヴォラーレ |
●「剣闘士スパルタクス」● ★ |
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2007年05月
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ローマ史上有名な“スパルタクスの乱”を描いた歴史長篇。佐藤さんらしく、史実を描くというより、生臭い人間ドラマという仕上がりになっています。 そのスパルタクスの乱とは、紀元前73〜71年に勃発した奴隷たちによる大規模な反乱のこと。ローマ帝国を揺るがす大事件だったことから世界史の授業にも必ず触れられているものです。首謀者のスパルタクスは、トラキア人の奴隷でグラディエーター(剣闘士)だった。 歴史小説で興奮させられるのは、それが歴史を変えるような出来事であった場合。日本なら織田信長、坂本竜馬、西欧ならカエサル、ジャンヌ・ダルクというところでしょう。 その点、スパルタクスの乱にそんな要素はあまりありません。そのため、あくまでスパルタクス個人の物語にとどまってしまった、という印象。 本作品におけるスパルタクスは、英雄という名に値するような人物ではなく、行き掛かりから首謀者に祭り上げられてしまった、という設定です。最大時8万人にも及ぶ奴隷軍の指揮者となりますが、最後まで真っ向勝負にこだわる、一介の剣闘士に過ぎなかった人物として描かれます。 そんなスパルタクスに同調させるかのように、一方のローマ軍もひどく卑小化されて描かれています。その点、塩野七生「ハンニバル戦記(ローマ人の物語)」におけるハンニバル、スキピオのような、天才軍略家による戦争といったスケールの大きさはありません。 歴史上の著名な事件を背景に、スパルタクスという人間ドラマを描いた作品と言うべきでしょう。 |
●「褐色の文豪」● ★★ |
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2012年08月
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「黒い悪魔」のデュマ将軍に続く、その息子たる文豪アレクサンドル・デュマ(1802-70)の生涯をダイナミックに描いた巻。 ただし、「黒い悪魔」とは別の物語として読むことが出来ます。というのは、デュマ将軍はナポレオンと確執が在ったため、ナポレオンにより未亡人への年金支給が止められ、未亡人と息子のアレックス(アレクサンドル)は貧窮の暮らしを余儀なくされたため。 それだけの活力・成功欲があってこそ「ダルタニャン物語」などの傑作を生み出すことができたのでしょうし、行儀良く成功者に収まったデュマより、落差の激しい生涯を送ったという方がはるかにデュマらしい。 |
●「女信長」● ★★ |
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2012年10月
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西洋歴史小説ばかりを書いてきた佐藤賢一さんの初めての国内もの。 織田信長は実は女だった、という発想は面白い。とくに斉藤道三と初めて顔を会わせた場がそのまま女としての初体験の場にもなったというのは、それから後の展開への期待を十分盛り上げてくれます。 女だからこそ男のように既成概念に捕らわれることなく斬新で合理的な発想ができるというのが、本書における信長像の魅力ですが、後半は女姿に戻った“御長”の場面が多くなること、相応して肝心の戦(いくさ)の場面が省略されてしまうところがちと物足りない。 |
●「アメリカ第二次南北戦争」● ★☆ |
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2010年04月
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書店店頭で見かけた時あまり面白くはなさそうだと感じたのですが、実際に読んでみての感想もそのとおり。 2013年アメリカで第二次南北戦争が勃発。南西部諸州が「アメリカ連合国」として連邦離脱・独立を宣言をしたことから、それを承認しない合衆国との間で内乱状態に至ったという次第。 |
●「カペー朝−フランス王朝史1−」● ★★ |
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国王列伝のようなものかと思って読んだのですが、これが予想外に面白かった。 国王という名前は持ちながら、実力は他の領主たちと比較していささかも強固とはいえない。ふとしたことで状況が変わってしまう、そんなところが実に面白い。 ちなみに、その次の世代が共に十字軍遠征で知られるフィリップ2世とプランタジネット家のリシャール(つまり英国王・獅子心王リチャード)という次第。 シャルルマーニュ大帝が築いたフランク王国が分裂した後、空中分解しそうな西フランク王国を新時代のフランスとして力強く蘇らせた功労者(カペー朝・ヴァロア朝・ブルボン朝)。 フランス王とは誰か/ユーグ・カペー(987-996)/名ばかりの王たち/肥満王ルイ6世(1108-1137)/若王ルイ7世(1137-1180)/尊厳王フィリップ2世(1180-1223)/獅子王ルイ8世(1223-1226)/聖王ルイ9世(1226-1270)/勇敢王フィリップ3世(1270-1285)/美男王フィリップ4世(1285-1314)/あいつぐ不幸/天下統一の物語 |
●「象牙色の賢者」● ★★ |
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「黒い悪魔」「褐色の文豪」に続く、デュマ家三代記の最終巻。 本巻の特徴は、デュマ・フィスが第一人称にて語る、という形式がとられていること。 さて「椿姫」、昔から頭の中にはあるものの、読んでいないままとなっている一冊。したがって、デュマ・フィスのことも詳しからず。 |
●「新徴組」● ★★ |
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2013年04月
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本書題名の「新徴組」、新撰組とどう違うの?と思ってしまいますが、母体は同じ江戸で集められ京に上った浪士組。 京で市民からも恐れられた新撰組と対照的に、新徴組は江戸市民から親しまれ頼りにされたのだとか。 官軍への恭順が入れられず、やむなく会津と手を携え奥羽列藩同盟を組成して、官軍との戦いを開始した庄内藩。 幕末歴史ロマンを描いた作品と思いましたが、読後の印象としては、自分や自分の家族のことを普通に第一に考える、一人一人の目線から描かれているところが新鮮な魅力。 序章・壬生/第1部・江戸/第2部・庄内/終章・松ヶ岡 |
●「ペリー Matthew Calbraith Perry」● ★★ |
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2014年04月
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幕末に黒船艦隊を率いて来航し、日本に開国を迫った米国東インド艦隊司令官=ペリーを描いた歴史長篇。 ペリーという人物、日本史を習えば必ず登場する名前なので、日本にとってどういう人物だったかは今更言うまでもないこと。 当時の日本は、西洋列強諸国からみてどんな存在だったのか。その中で米国は、何のために日本に開国を迫ったのか。何故司令官はペリーだったのか。 それにしても黒船で脅され、いやいや開国させられたという展開は、日本人として面白いものではありません。 どちらかというと地味な作品ですが、幕末の日本史を別の角度から見てみたいという方にはお薦めの一冊です。 |
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