諸田玲子作品のページ No.4



31.めおと

32.べっぴん−あくじゃれ飄六捕物帖

33.楠の実が熟すまで

34.きりきり舞い−きりきり舞い−

35.炎天の雪

36.天女湯おれん−これがはじまり−

37.お順−勝海舟の妹と五人の男−

38.春色恋ぐるい−天女湯おれん−(文庫改題:天女湯おれん 春色恋ぐるい)

39.恋かたみ−狸穴あいあい坂−

40.幽霊の涙−お鳥見女房−


【作家歴】、まやかし草紙、誰そ彼れ心中、幽恋舟、氷葬、月を吐く、お鳥見女房、笠雲、あくじゃれ瓢六、源内狂恋、髭麻呂

諸田玲子作品のページ No.1


其の一日、蛍の行方(お鳥見女房No.2)、犬吉、恋ほおずき、仇花、紅の袖、鷹姫さま(お鳥見女房No.3)、山流しさればこそ、末世炎上、昔日より

諸田玲子作品のページ No.2


こんちき(あくじゃれ瓢六)、天女湯おれん、木もれ陽の街で、狐狸の恋(お鳥見女房No.4)、奸婦にあらず、かってまま、狸穴あいあい坂、遊女のあと、美女いくさ、巣立ち(お鳥見女房No.5)

 → 諸田玲子作品のページ No.3


四十八人目の忠臣、心がわり(狸穴あいあい坂)、来春まで(お鳥見女房No.7)、再会(あくじゃれ瓢六)、ともえ、相も変わらずきりきり舞い、王朝小遊記、破落戸、帰蝶、風聞き草墓標

 → 諸田玲子作品のページ No.5


今ひとたびの和泉式部、元禄お犬姫、尼子姫十勇士、旅は道づれきりきり舞い、別れの季節(お鳥見女房No.8)、嫁ぐ日(狸穴あいあい坂)、きりきり舞いのさようなら

 → 諸田玲子作品のページ No.6

 


           

31.

●「めおと ★☆


めおと画像

2008年12月
角川文庫刊

(476円+税)



2009/03/25



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諸田さんの初期作品を集めた短篇集。
最初の頃、諸田作品の魅力は、時代小説に持ち込んだ心理サスペンスという点にありました。本書では「江戸褄の女」「猫」「佃心中」の3篇がその系統にある作品。
ずっと諸田作品を読み続けてきた今の時点で読むと、ストーリィが単純過ぎると感じられますが、それでも時代小説版心理サスペンスという趣向が懐かしく、ファンとしては充分楽しい。

本短篇集の題名が「めおと」とされているように、収録6篇に共通するのは、男女の関係を描いたストーリィであること。
「虹」は、田楽挟間で信長に討たれた今川義元側の雑兵を主人公としたストーリィで、桶狭間の戦いが舞台になっているのに違いはないのですが、奇想天外なストーリィの根底にあるのはやはり夫婦の物語。

「眩惑」は、諸田さんの処女作である単行本「眩惑」を文庫化する際に新たに書き加えた一篇とのこと。
まず「眩惑」というタイトルがあり、言葉の連想から立ち上がってきたストーリィでそうです。

諸田ファンなら充分に楽しめる短篇集です。

江戸褄の女/猫/佃心中/駆け落ち/虹/眩惑

    

32.

●「べっぴん−あくじゃれ飄六捕物帖− 


べっぴん画像

2009年04月
文芸春秋刊

(1571円+税)

2011年11月
文春文庫化



2009/05/11



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あくじゃれ瓢六」「こんちきに続く、“あくじゃれ瓢六捕物帖”シリーズ第3弾。
ただ、巻を重ねるにつれ瓢六がまともになっていき、それに連れて面白さも減じていくものか。
冒頭の2篇を読んで、面白くなくなったなぁと感じました。

「女難」は、お袖のヒモでいるのに情けなさを感じた瓢六が、お袖と痴話喧嘩してその家を飛び出すという顛末。したたかな悪党だった筈の瓢六がこれではねぇ。
ところが本書では、毎章の冒頭になにやら曰くありげな文章が加えられています。
それが本連作短篇集を貫く長篇サスペンスの鍵と気付くのは、中盤に至ってから。
そう、これまでと同様の連作短篇集と思っていたら、本書はれっきとした時代物長篇サスペンスなのです。

各章で起きる事件の数々、その脇になぜか若く美しい女の姿がちらつく。
そして次第にそれらの事件から、一膳飯屋“きねへい”の主にして裏の世界に通じている杵蔵を罠に落としめんとする、執拗な悪意の存在が浮かび上がってきます。
その過程で、瓢六と杵蔵らの仲間たちが次々と傷つけられていくというストーリィ。
その一方で、瓢六自身、また瓢六の相棒とも言える北町奉行所の同心=篠崎弥左衛門に新しい道が開ける様子を描くストーリィにもなっています。

後半一気に緊迫感が高まっていく辺りは流石ですが、結末が痛ましい。瓢六や弥左衛門の幸せそうな様子と余りに対照的で、すっきりしない気持ちが読後に残ってしまう故に、満足感いまいち。

きらら虫/女難/春の別れ/災い転じて/金平糖/べっぴん/杵蔵の涙

  

33.

●「楠の実が熟すまで ★★


楠の実が熟すまで画像

2009年07月
角川書店刊

(1600円+税)

2012年08月
角川文庫化



2009/08/15



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将軍家治の時代、京の禁裏では経費出費が異常な膨らみを見せていた。幕府側は内偵を進めるが、その手先とした人間が相次いで殺害される。
ついに幕府側は、公家社会の内側に人を送り込んで活路を見い出そうと決断。その手駒として選ばれたのが、御徒目付の中井清太夫の姪で郷士の娘である利津
利津は、妻を亡くしたばかりという禁裏の口向役人・高屋遠江守康昆(こうこん)の後妻として嫁ぎ、隠密働きを命じられます。期限は、楠の実が熟す季節まで。

嫁いだ早々利津は、高屋家が何か秘密を隠していることを感じます。その一方、夫となった康昆は気さくな好人物であるうえに、継子となった幼い千代丸からはすっかり慕われるという按配。
次第に夫へ惹かれていく心と、隠密の役目を果たすことによっていずれ夫と愛し子を裏切らねばならないという心の板ばさみとなって苦悩する利津を描くストーリィ。

サスペンスチックなストーリィですが、時代ものサイコ・サスペンスの傑作誰そ彼れ心中程のサスペンス性はありません。長篇時代小説としても、むしろ小ぶりという方でしょう。
それでも本ストーリィ、私には十分面白かった。
何といっても、美貌で利発だけれど嫁き遅れた娘という利津の人物設定とその揺れる胸の内、継子=千代丸の描き方が絶妙。
本作品、時代ものサスペンスというより、時代もの変形ラブストーリィと評する方が相応しいのではないかと思います。

※なお、公家社会と聞いて華やかな世界を想像するのは誤り。当時の公家たち、貧乏だったのですから。

  

34.

●「きりきり舞い ★☆


きりきり舞い画像

2009年09月
光文社刊

(1600円+税)

2012年01月
光文社文庫化



2009/09/30



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「東海道中膝栗毛」作者の十返舎一九といえば、昨年、松井今朝子さんのそろそろ旅にで読んだばかり。
本書は、その一九の娘=を主人公とした、連作風長篇小説。

娘の舞も継母のえつも、勝手なことばかりしている一九に振り回され、苦労ばかり。
そんな一九ばかりか、一九を超える奇人=葛飾北斎の愛娘でこれまた奇人というべきお栄、一九の同郷という縁で弟子かつ勝手に舞の婿になった気分でいる浪人者=今井尚武という奇人まで居候として入り込んできたことから、もう大変。
こんな奇人たちに振り回され続ける暮らしなんて冗談じゃない、器量良しで小町娘という評判さえとっている舞、何としても玉の輿に乗ってやるんだと意気込むのですが、奇人たちの邪魔立てもあって空回りするばかりという、時代版ユーモア・ストーリィ。

好き勝手なことばかりしている奇人たちに囲まれる中、何とかそこから抜け出そうといつもきりきりしている年頃娘の“舞”、という趣向か。
ただ、本書ストーリィにおいては、一九より、舞より6歳年上のお栄の奇人ぶりの方が際立っている、という印象です。
一九は奇人というより、むしろ駄々っ子、自儘というべきか。

いずれにせよ、奇人たちに囲まれ振り回されながら、きりきりと飛び回っている舞と、その奇人たち=一九、お栄、尚武らとのドタバタ騒動が楽しい一冊。
なお、単なるドタバタで終わっていないのは、一九と舞、北斎とお栄というように、父娘の愛情がその底流に太く流れているからでしょう。
気軽に、コミカルでほのぼのとした楽しさを味わえる一冊。

奇人がいっぱい/ああ、大晦日!/よりにもよって/くたびれ儲け/飛んで火に入る/逃がした魚/毒を食らわば

 

35.

●「炎天の雪 ★★☆


炎天の雪画像

20
10年08月
集英社刊
上下

(各1900円+税)

2013年07月
集英社文庫化
(上下)



2010/08/26



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加賀騒動の余波消え去らぬ、また短期間の内に相次いで藩主が急死するという世情穏やかならぬ加賀前田藩を舞台に、過酷な運命に翻弄される人々、苦難から人への怨みを募らせる人々、それと逆に怨みを捨て人のために尽くそうと奔走する人々と、様々な人間の姿を描き出す壮大な人間ドラマ。
諸田さん、渾身の時代物大長篇作品と言って良いでしょう。

時代は、6〜8代藩主が相次いで急死する後に藩主となった第9代藩主=重教の時代。2〜4代藩主下での加賀藩繁栄を描いた中村彰彦「われに千里の思いありと比較して、5代藩主=吉徳を境にしてここまで激変するものかと驚く思いです。

本ストーリィの主な人物は、武家娘にもかかわらず細工職人と駆け落ちした多美・白銀屋与左衛門の夫婦と、加賀騒動に連座して9年の牢獄生活を送り出牢したばかりという元鳥屋の佐七
この3人を中心に、数奇な運命に翻弄される様々な人たちの姿、人間ドラマが描かれます。
男女の愛情、親子の愛情、人と人との繋がり・信頼、その一方で悲劇と、様々なドラマがありますが、その中で最も重要なテーマは、世の中や人を怨むという感情に捉われて生きるか、それを捨てて生きられるか、ということでしょう。

上下巻合計 900頁余りという大長編、当初は波乱の人生を送る人々の物語をただ読むという感じでしたが、後半では幾人もの人たちの真摯な思いに胸打たれます。そして結末近くに至ってくるともう圧巻、感動の胸いっぱいになります。
過酷な状況に置かれた時、どう運命に向かい合うべきか、どう生きるべきか。その答えというべき原点が、本ドラマで解き明かされているように感じます。

多美、佐七、多美の子=当吉、小笠原文次郎、若き藩主=重教、その生母=実成院、大槻伝蔵の遺児=ひさ・猪三郎の姉弟、橋番の富蔵爺等々、心の残る人々の姿が大勢あります。
是非お薦めしたい、時代もの力作長篇小説。 

             

36.

●「天女湯おれん−これがはじまり− ★☆


天女湯おれん これがはじまり画像

20
10年10月
講談社刊

(1500円+税)

2012年05月
講談社文庫化


2010/11/21


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美女おれんが女将となり、曲者揃いの仲間たちと共に湯屋を舞台に活躍する天女湯おれんシリーズ第2作・続編かと思ったのですが、「これがはじまり」という副題が示す通り、それより前のいきさつを描いたストーリィ。

神田佐久間町から出火した大火事は、おれんが養女となっていた八丁堀の湯屋、裏長屋を焼くばかりか、義父の利左衛門や長屋の支配・藤右衛門という頼りになる人物の命まで奪ってしまう。焼け出された人々はひとまずお救い小屋へ。
そうした中、おれんは若い女の身にもかかわらず、義父の跡を継ごうと湯屋の再興を決意します。
一方、人々が苦しんでいる中、どさくさに紛れて財産を奪い取ろうとする者、女を弄ぶ男もいる。
おれんは湯屋の復興だけでなく、他の人々の為にも力を尽くそうと行動を開始します。そんなおれんに意気を感じて集まったのが、色事師の
弥助、元盗賊の与平・おくめ夫婦に権六というメンバー。
その他、小童の
杵七、岡っ引の栄次郎、大店隠居の惣兵衛と、「天女湯おれん」でお馴染みの顔ぶれが一通り顔を揃えます。

前夜ストーリィとあって気軽に楽しめる時代小説エンターテイメントになっていますが、前作の存在があってこそ。
本書を読もうとするなら、是非「天女湯おれん」もご一緒に。

      

37.

●「お順−勝海舟の妹と五人の男− ★★


お順画像

20
10年12月
毎日新聞社

上下
(各1600円+税)

2014年09月
文春文庫化
(上下)


2011/03/02


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勝海舟ら男たち、そして幕末・明治という歴史の大変動期を、女性の視点から描いた長編歴史小説。

振り返ってみると、諸田さんには歴史上に大きな足跡を残した男たちを女性の視点から描いた作品が結構あります。
家康の正室=築山殿を描いた
月を吐く」、井伊直弼の愛人=村山たかを描いた奸婦にあらず、秀忠の正室となった江を描いた美女いくさと。
その中でも本書が特に読み物として面白いのは、ひとえに主人公である
勝海舟の末妹=お順のキャラクターにあります。父親の小吉に似て、人一倍激しい気性、思い込んだらのめり込んでしまうという性格で、兄に対しても遠慮なく丁々発止とやり合い、一歩も引かないという風。

「五人の男」とは、父=勝小吉、恋した相手=島田虎之助、夫とした佐久間象山、兄=麟太郎、悪縁相手=村上俊五郎に他なりません。
小吉・麟太郎父子については、
子母沢寛「父子鷹」が忘れられませんが、女性の目から見た麟太郎らの人物像が面白く、興味尽きません。
題名からすると、お順と五人の男たちが主役のようですが、稀有な男たちを描くのと同時に、それを支えた女たちの姿も描かれていることが見逃せません。
兄妹の母である
、麟太郎の妻=、そしてお順と。

女性の視点からなる幕末史+強烈な個性をもった女性=お順のキャラクターを、たっぷり楽しめる長篇歴史小説。面白いです。

小吉の放蕩/虎之助の野暮/象山の自惚れ/麟太郎の人たらし/俊五郎の無頼/お順のその後

            

38.

●「春色恋ぐるい−天女湯おれん− ★☆
 (文庫改題:天女湯おれん 春色恋ぐるい)


春色恋ぐるい画像

20
11年02月
講談社刊

(1600円+税)

2014年03月
講談社文庫化



2011/03/20



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江戸は八丁堀の湯屋“天女湯”を舞台に、一人身の美人女将おれんとその仲間たちの色めいた活躍を描く天女湯おれん”シリーズの第3弾。

老番頭の与平・おくめは元盗賊・元女郎という夫婦、下足番の弥助は欲求不満の女たちを相手とする色事師と、天女湯で働く仲間たちはいずれも訳ありばかり。
そして天女湯の隠し部屋では、拠所ない事情で金銭のために体を売らなければならない女たちの為に格好の相手を取り持つ、というのが、おれんの営む天女湯の裏稼業。

市井もの連作短篇集というと、町物語をはじめ、用心棒もの、青春、恋愛、捕り物といろいろな趣向がありますが、本シリーズは男女の艶めいた話という趣向が魅力です。
男女の艶な話といってもどろどろさはなく、誰もが風呂屋では真っ裸になるように、ある意味で性の欲求に真っ正直。それ故、可笑しく、時には苦笑しと、軽快に楽しめる連作短篇集に仕上がっています。
本巻では、
鼠小僧、鼬小僧が登場する他、おれんの新たな恋も見逃せません。また、天女湯に新たな仲間が加わります。

当時の江戸は圧倒的に女性人口が男性人口に比べ少なく、市井の女たちは結構たくましかった筈。その点、ストーリィは現在の日本にも通じる処が多々あり。
また、女性たちの逞しさも、本シリーズの醍醐味の一つです。

女、貰い受け候/昇天、鼬小僧/ソにして漏らさず/ホオズキの秘密/春色恋苦留異/大姦は忠に似たり/忍法、天遁の術

           

39.

●「恋かたみ−狸穴あいあい坂− ★☆


恋かたみ画像

20
11年07月
集英社刊

(1600円+税)

2014年07月
集英社文庫化



2011/08/15



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火付盗賊改方の孫娘=溝口結寿と町方同心=妻木道三郎の、恋と様々な事件をほのぼのと描く時代物連作短篇集、狸穴(まみあな)あいあい坂の続編。

前作は、恋と事件、半々の構成という印象でしたが、本書では2人の思いが募りに募り、恋が主体、事件は2人が出会うための舞台設定に過ぎず、という印象です。
結寿は明るく、ユーモアもある現代的(?)な娘。それに対する道三郎、心優しい男性であるが決して軟弱ではない好漢。したがって読者としては、2人の恋の成就を心から応援し、いずれはきっと成就するに違いないと信じていました。
ところが本ストーリィ、えっ、えっ。そんな筈はないだろう、どうにかなる筈と思っていたにもかかわらず、あれよあれよという間に、思ってもみなかった展開へと進みます。

現代感覚をもった時代小説とはいえ、町人階層ではなく武家階層ともなれば、本人たちが想い合ったからといってそううまく進むものではない、という現実を見せつけられた気がします。

今後、2人の関係は、本物語は、一体どういう風に展開していくのか、まるで見当が付きません(こんなのは初めて)。
だからこそ2人の関係、本物語が今後どうなるのか、目が離せない、という心境です。
何やら、諸田さんの術中にすっかり嵌められた、という気がしないではありません。

春の雪/鬼の宿/駆け落ち/星の坂/恋の形見/お婆さまの猫/雪見船/盗難騒ぎ

         

40.

●「幽霊の涙−お鳥見女房− ★☆


幽霊の涙画像

2011年09月
新潮社刊

(1500円+税)

2014年05月
新潮文庫化



2011/10/14



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時代小説版ホームドラマ“お鳥見女房”シリーズ第6弾。

前巻で矢島家の隠居=久右衛門が死去。その存在がなくなってちと寂しさが漂います。冒頭の「幽霊の涙」は、その久右衛門の新盆を背景にした篇。久右衛門そっくりな人影を見た、という目撃談が相次ぎ、流石の珠世も動揺します。勇気を奮ってその姿を探しに行きますが・・・。

本巻では、子供たちの成長ぶりが印象的です。
矢島家の4人の子供たちは皆、妻あるいは夫を持つ身となり(
久太郎の妻は恵以、久之助の妻は)、石塚源太夫の賑わしかった子供たちも、各々成長した姿を見せます。
元鷹姫様である嫁の恵以、綾、次女の
君江と、子供ができたできないということで喜びもすれば他を気遣う必要もありと、珠世の気遣いは少しも減ることがありません。
一方、お鳥見役を継いだ久太郎に隠密仕事の命が下され、久太郎は相模へ向かいますが、音信が途絶えるという事態が発生。父の久右衛門、夫の
伴之助に次いで息子の久太郎までもと心を痛めますが、今の珠世は、嫁の恵以の気持ちをも慮ってやらなくてはならない立場。
一方、石塚家の長女=
は、このままでは行かず後家になると珠世に泣きつき、次女のはややこができたかもしれないと駆け込んできて、珠世をギョッとさせます。
これまでと違って、高所から矢島家、石塚家の皆を見守るというのが、珠世の立ち位置となっています。

致し様のない運命であったとは思うものの、本書の最後には言いようのない苦みが残ります。
その苦みもまた味わい、魅力ではあるのですが。

幽霊の涙/春いちばん/ボタモチと恋/鷹は知っている/福寿草/白暁/海辺の朝

        

読書りすと(諸田玲子作品)

諸田玲子作品のページ No.1    諸田玲子作品のページ No.2

諸田玲子作品のページ No.3    諸田玲子作品のページ No.5

諸田玲子作品のページ No.6

 


  

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