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1.まやかし草紙(文庫改題:王朝まやかし草紙) 2.誰そ彼れ心中 3.幽恋舟 4.氷葬 5.月を吐く 6.お鳥見女房 7.笠雲 8.あくじゃれ瓢六(文庫改題:あくじゃれ−瓢六捕物帖) 9.源内狂恋(文庫改題:恋ぐるい) 10.髭麻呂 |
其の一日、蛍の行方(お鳥見女房No.2)、犬吉、恋ほおずき、仇花、紅の袖、鷹姫さま(お鳥見女房No.3)、山流しさればこそ、末世炎上、昔日より |
こんちき(あくじゃれ瓢六)、天女湯おれん、木もれ陽の街で、狐狸の恋(お鳥見女房No.4)、奸婦にあらず、かってまま、狸穴あいあい坂、遊女のあと、美女いくさ、巣立ち(お鳥見女房No.5) |
めおと、べっぴん(あくじゃれ瓢六)、楠の実が熟すまで、きりきり舞い、炎天の雪、天女湯おれん−これがはじまり−、お順、春色恋ぐるい、恋かたみ(狸穴あいあい坂)、幽霊の涙(お鳥見女房No.6) |
四十八人目の忠臣、心がわり(狸穴あいあい坂)、来春まで(お鳥見女房No.7)、再会(あくじゃれ瓢六)、ともえ、相も変わらずきりきり舞い、王朝小遊記、破落戸、帰蝶、風聞き草墓標 |
今ひとたびの和泉式部、元禄お犬姫、尼子姫十勇士、旅は道づれきりきり舞い、別れの季節(お鳥見女房No.8)、嫁ぐ日(狸穴あいあい坂)、きりきり舞いのさようなら |
●「まやかし草紙」● ★ |
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2010年02月 2002/07/23 |
平安朝・貴族社会を舞台にした時代小説サスペンス。 病死したと伝えられていた母親は、実は原因不明の焼死だった。しかも、帝の御子を身ごもっていたという。 母親の死の謎を解き明かす為、都に出て女房として仕えることとなった弥生が、本作品の主人公。 時代は、壬生帝を中心に、堀川派が実権を握り、東三条派が巻き返そうとしているとき。 さらに、東宮(皇太子)の結婚を前に、東宮と契った女性は物の怪に取り憑かれる、という噂が流れます。 弥生と、彼女に協力する市井の楽天爺さんと音羽丸による探索ストーリィなのですが、背景が平安朝であるところが面白味。 |
●「誰そ彼れ心中」● ★★☆ |
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2003年10月 2002/08/30 |
旗本の新妻・瑞枝が感じた違和感。 それは次第に夫への疑念として膨れ上がっていきます。本当に夫自身なのか、それとも夫の姿を借りた全く別の男なのか。 そしてもう一人、瑞枝と同じ疑念を感じている者がいた。 本作品は、時代小説とは思えぬほどの、見事なサイコサスペンス。しかし、時代小説だからこそありえるストーリィでもあるのです。その辺りがお見事! 瑞枝の側に立ち、夫を名乗る男の正体を見極めようとする者たちがいる一方で、何故か真実を押し隠そうとする者たちがいる。 |
●「幽恋舟」● ★★☆ |
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2004年10月
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杉崎兵五郎47歳。千七百石の旗本とはいえ代々の寄合衆で舟番所という閑職務め。妻女は既に死去し2人の娘も嫁いでおり、変化のない生活を疎みながらも惰性で毎日を過ごしているという、中年武士。 その兵五郎がある夜目撃したのは、禁じられた夜間に目の前を過ぎる小舟。幽霊舟かと思ったその舟には、若い娘とその下女が乗っていた。恐怖にかられた表情を見せて川に飛び込んだ娘を救った兵五郎は、その娘・たけに関心を引かれるまま、自らの屋敷に2人を引き取る。 母と祖母が共に乱心して死んだというたけは、狂気の血筋に脅えを抱えていた。しかし、たけと下女のつるが2人で鎌倉から江戸に出てきた理由には、もっと深い秘密がある筈。
諸田さんらしいサイコ・サスペンスですが、それよりも魅力あるのは、47歳の旗本が17歳の町娘に恋してしまうという展開。年齢差や外聞を考えて自制するものの、たけへの想いを兵五郎はついに抑え切れなくなる。そのたがが外れたとき、身分や立場を忘れ若者のように、兵五郎はたけを救うこと一途に突っ走り始めるのです。 |
●「氷 葬」● ★★ |
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2004年01月
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岩槻藩士の妻女である芙佐は、江戸在勤の夫への手紙を携えてきた武士・守谷を泊めたところ、その夜守谷に陵辱されてしまう。守谷が旅立った後悪夢として忘れようとしますが、その守谷が瀕死の重傷を負って舞い戻ってくる。芙佐は、憎しみと忌まわしい事実を隠滅するため、守谷を殺して遺体を沼に沈める。 それですべてが終わったと思った芙佐ですが、それからが本当の危難の始まり。守谷の跡を追って、正体不明の武士、妻女と名乗る女が次々と芙佐を訪ねてきます。そして芙佐は、逃れのようない窮地に追い詰められていくというストーリィ。
当初諸田さん得意のサイコ・サスペンスかと期待していたのですが、時代小説には珍しい、女性主人公による現代的サスペンスと言うべき作品です。赤子を人質に取られた芙佐は、正体不明の武士と共に他藩の藩士宅へ偽名を騙って寄寓することになります。平穏無事な生活で一生を終える筈の平凡な妻女が、人を殺した挙げ句に怪しげな事件に巻き込まれ、正体不明の人物と共に他藩へ旅するなど、本来有り得ないこと。 |
●「月を吐く」● ★★ |
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2003年11月
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悪女と名高い、家康の正妻・築山御前の生涯を描いた意欲作。 家康の正妻・築山殿と言えば、悪妻というのが定評。しかし、こうして築山殿の生涯を辿ると、悪妻の真偽の程は別にして、そうならざるを得なかった経緯が納得できるのです。 |
●「お鳥見女房」● ★★ |
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2005年08月
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幕府御家人・御鳥見役は、鷹場の巡検と鷹狩の下準備を行う役職ですが、時に隠密の仕事を命じられることもある、という設定。 なんだかんだと生じる問題を、珠世が機転をきかせてさばいていくストーリィ。さしづめ、時代小説版“肝っ玉母さん”という風ですが、珠世は未だ未だ充分に若々しく魅力的です。 千客万来/柘榴の絵馬/恋猫奔る/雨小僧/幽霊坂の女/忍びよる影/大鷹狩 |
●「笠 雲」● ★☆ |
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2004年09月
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諸田さんによる清水次郎長もの作品のひとつ。 維新後、器用に転身を遂げて市中取締役となった清水次郎長。それに対し、転身することを拒んで自害した小政。 |
●「あくじゃれ瓢六」● ★★ |
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2004年11月
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北町奉行所の同心・篠崎弥左衛門が捕らえた博打うちの瓢六。 本作品の魅力は、まず主人公・瓢六のキャラクターにあります。役者のような男前で博覧強記、そのうえ江戸裏社会への人脈も持っているという、色男。 地獄の目利き/ギヤマンの花/鬼の目/虫の声/紅絹の蹴出し/さらば地獄 |
●「源内狂恋」● ★★ |
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2006年05月
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人を殺め、牢獄に入れられた平賀源内が、その半生および狂おしい自身の恋のことを回想して記述していくストーリィ。 残された26日という日数の中で、自らの生涯を語りつつ、その一方で恋の部分は相手の女性に成り代って書き綴っていく、というところが本作品の妙味でしょう。 本草学者、戯作者、発明家として名を高めながら、どれひとつとして完遂したものがない。結局成功者となりえなかった源内。それ故、その焦燥感は後年になる程高まっていく。その心理経過を諸田さんは見事に描きだしています。 |
●「髭麻呂」● ★★☆ |
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2005年05月
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飢饉や天変地異が続いて治安悪化した平安時代の京の都。その都を舞台に、治安を取り締まる検非違使(けびいし)の藤原資麻呂(すけまろ)を主人公とした平安朝ミステリー。
頬髯が濃いことから“髭麻呂”と通称されるこの主人公、偉丈夫かと思いきや、殺人現場で血を見ると卒倒しそうになるというくらいの臆病者。ミステリといっても、ハードサスペンスではなく、軽妙かつユーモラスなところが魅力です。 |
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