森 絵都
(えと)作品のページ No.



21.気分上々

22.漁師の愛人

23.クラスメイツ

24.みかづき

25.出会いなおし


【作家歴】、リズム、ゴールド・フィッシュ、宇宙のみなしご、アーモンド入りチョコレートのワルツ、つきのふね、カラフル、ショート・トリップ、DIVE!!(1〜4)

森絵都作品のページ bP


あいうえをちゃん、永遠の出口、いつかパラソルの下で、屋久島ジュウソウ、風に舞い上がるビニールシート、ラン、架空の球を追う、この女、異国のおじさんを伴う

森絵都作品のページ bQ

 


                

21.

●「気分上々 KIBUN-JOJO」● ★★


気分上々画像

2012年02月
角川書店刊
(1500円+税)

2015年01月
角川文庫化



2012/03/31



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ショートショート、短篇、中篇とヴァラエティに富み、たっぷり楽しめる作品集になっています。
恋の失敗談から、恋の駆け引きという一幕、結末に落ち有りの再会劇、一族の因習から逃れようと苦闘した女優が生まれてくる子供に語りかける一篇等々。
一部、本書の印象がその前に読んだ
朝井リョウ「少女は卒業しないと重なって、ちょっと混乱したところがあります。

「彼女の彼の特別な日・彼の彼女の特別な日」は、都会のバーでの洒落た一幕。ショートショートですが、この洒落っ気、私が好きなパターンです。
「17レボリューション」は、高校生女子のドタバタ恋愛劇。この篇が「少女は卒業しない」と重なってしまって混乱した次第。恋愛を成就させるため親友に一年間の絶交を頼み込むという主人公の暴走がユーモラスで、楽しい。この篇は中篇とあって、たっぷり楽しめます。
「東の果つるところ」「ブレノワール」は、共に因習にとらわれた一族から逃れようとする主人公の苦闘が底辺にありますが、その結末は徹底的な抗戦と和解と対照的。語りという構成は常に好きですが、後者ストーリィも好きだなぁ。
最後を飾る表題作
「気分上々」は中学生の成長&恋愛といった一幕を描く楽しい篇。主人公も気分上々、読後感も爽快です。

ウェルカムの小部屋/彼女の彼の特別な日・彼の彼女の特別な日/17レボリューション/本物の恋/東の果つるところ/本が失われた日、の翌日/ブレノワール/ヨハネスブルグのマフィア/気分上々

    

22.

「漁師の愛人」 ★★☆


漁師の愛人画像

2013年12月
文芸春秋刊
(1300円+税)



2014/01/07



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表題作「漁師の愛人」は、不倫関係の長尾が勤務先倒産を気に故郷に戻り漁師になると言い出し、一緒に付いてきて1年半という紗江が主人公。しかし集落の人々は紗江を疎外して「二号丸」と陰口を叩いたり。特に女たちは紗江に敵意の目を向け、おかげで紗枝はすっかり疲弊。
それでも長尾は、ここで暮らしていくためには住人との繋がりが不可欠と、喜寿祝が行われる際に紗江を皆に紹介しようとする。
繋がりは必要なのかどうか。
本書もまた、居場所を得られるかどうか、をテーマにした作品ではないかと思います。紗江の立場には極めて辛いものがありますが、作者の温かい目線がある故に、開き直れたような快さを感じます。居場所を掴むためには開き直りも必要と、何処かからそんな声が聞こえてきそうで、気持ちの安らぐ思いです。お薦め。

「あの日以降」は、3.11後の物語。一軒家をシェアして暮す30代の女性3人を描いた作品。
3.11直後、被害地域ではなかったというのに、日常生活においても動揺させられ、平静を取り戻すまでに暫し時間をかかったことを思い出すと、本作品に共感を覚えること大です。
さらに本ストーリィは、男女関係にまで影響が及んだ様子を描いており、女性たちの当惑と男たちに対する呆れがユーモラス。

上記中篇2作の他に、
プリンを題材にした掌編3作。それぞれ一幕劇のような面白さがあります。

少年とプリン/老人とアイロン/あの日以降/ア・ラ・モード/漁師の愛人

          

23.

「クラスメイツ」 ★★☆


クラスメイツ画像

2014年05月
偕成社刊
前期・後期
(各1300円+税)

2018年06月
角川文庫化
(前期・後期)



2014/07/20



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中学一年A組、生徒24人を一人ずつ主人公にしたドラマを描き連ねることにより、彼ら中一の1年間を描いた連作短篇集。

本作品が秀でている点は、作者の視線が中学一年生たちと同じ高さにあることでしょう。
各章では一人一人の生徒が主人公ですが、他の生徒が主人公になった章から見ると、皆ごく普通の生徒の一人にしか過ぎない。そのバランスが絶妙です。
作者の森絵都さん自身、生徒24人を均等に描くことに苦労した、とのことです。
冒頭の導入部分が好い。
千鶴、しほりん。中学に入学して初めてのクラス、同級生たちと仲良くできるか不安なところで、お互いに仲良くなれそうな相手を見つける。どんなにホッとするか。居場所をみつけた、そんな気持ちではないでしょうか。
そこから一人一人が描かれていきます。どの生徒にもその生徒らしい個性があり、でもそんな個性の違いも当たり前のこと、それがごく普通の中学生の姿、中学生群像として見えてきます。
そして、個性があるからこそ愉快。
その一方で悩みを抱えこむ生徒もいますが、生真面目過ぎる生徒がいれば、ずっこけ的な愉快な生徒も、御し難い生徒もいるといった具合で、如何にも中学生らしい。

そんな中で私が好ましく思えるのは、クラスの中心にいる生徒より、虫オタクの
や不登校生の田町のように、地味で目立たない生徒かな。こうした生徒の描き方も実に上手い。彼らがとても愛おしく感じられます。
なお、彼らの担任教師である若い
藤田ありみ、後半は結構したたかなところを見せ、生徒たちに加えてユーモラス。
中学一年、まだ始まりの季節。不安や友情や、初恋、ユーモアといろんな思いが詰まった24人の一年間、読むこと自体に嬉しさがあります。是非お薦め。

※趣向は少し異なるかもしれませんが、
椰月美智子「市立第二中学校2年C組」、豊島ミホ「初恋素描帖も多くの中学生たちと一気に描いた作品。興味を惹かれましたら是非どうぞ。

【前期】1.鈍行列車はゆく(千鶴)/2.光のなかの影(しほりん)/3.ポジション(蒼太)/4.愛と平和のシメジ(ハセカン)/5.1001人目の女の子(里緒)/6.神さまのいない山(アリス)/7.Pの襲来(吉田くん)/8.夏のぬけがら(陸)/9.言えなくてごめん(ゆうか)/10.ゆらぎ(美奈)/11.悲しいことを悲しむ(敬太郎)/12.炎のジャンケンバトル(タボ)
【後期】13.秋の日は・・・・(久保由佳)/14.伴奏者(心平)/15.見いつけた(田町)/16.マンホールのふた(日向子)/17.イタル更生計画(ノムさん)/18.プラタナスの葉が落ちるころ(このちゃん)/19.彼がすぐにキレるわけ(近藤)/20.ジョーカー、あるいは戦士(楓雅)/21.バレンタインのイヴ(レイミー)/22.約束(真琴)/23.イタルが至る(イタル)/24.その道のさき(ヒロ)

     

24.
「みかづき Crescent Moon ★★★


みかづき

2016年09月
集英社刊

(1850円+税)

2018年11月
集英社文庫化



2016/09/25



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昭和36年、千葉県習志野市にある公立小学校の用務員だった大島吾郎は、勉強が分らないという子供たちの面倒を見ていた処はっきりその成果が出ていたため、用務員室は“大島塾”という異名を貰うことに。そこに目を付けたのが、蕗子という生徒のシングルマザーである赤坂千明
学習塾を立ち上げるのに力を貸してほしいという千明の強引な手段に追い込まれ、吾郎は元に手を携え、学習塾経営に入り込むことになります。

本書は、吾郎・千明の夫婦から始まり大島家3代に亘る、昭和から平成の時代にかけた学習塾の興隆と変遷、生存競争、存亡淘汰を背景にした色濃い人間ドラマ。
そしてその背景に置かれているのは、学習塾の意義、正式な小中学校との関係是非を通じて、子どもの教育とはどうあるべきなのか、という問い掛けです。

とにかく凄い!という他言いようのない長編大作。本作に込められた熱量はとんでもないものです。
吾郎も独特な個性をもった魅力ある人物ですが、それと対照的な迫力を発揮するのが、妻となる千明。
そしてその千明の、
蕗子(連れ子)・蘭・菜々美という3人の娘もそれぞれに異なる個性の持ち主。その一人一人のドラマだけでも充分読み応えがあります。
しかし、本書はそこに留まりません。最終章では、千明の孫かつ蕗子の息子である
一郎が、思いがけない活躍を見せます。

森絵都さん、渾身の力作であり大作であると言って間違いないでしょう。それだけでなく、子どもの教育という問題を学習塾に軸足を置きながら、極め尽くそうとするかのようなストーリィ。

内容の大きさ・深さ、ストーリィの面白さ、お薦めです!


1.瞳の法則/2.月光と暗雲/3.青い嵐/4.星々が沈む時間/5.津田沼戦争/6.最後の夢/7.赤坂の血を継ぐ女たち/8.新月

             

25.

「出会いなおし ★★☆


出会いなおし

2017年03月
文芸春秋刊

(1400円+税)



2017/04/04



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「出会いなおし」という言葉からは、恋愛小説によくあるパターンで、最初の出会いをいったんチャラにし、もう一度出会いをやり直すということかと思うのですが、本作の題名が意味するところはちと違うようです。
何度も出会いを重ねる、長い時をおいて再び会う、という意味での「出会いなおし」ということのようです。

「出会いなおし」:新人イラストレーターと出版社の編集者というのが最初の出会い、再会して7年後の再々会には温かでささやかな感動があります。
「カブとセロリの塩昆布サラダ」:カブと信じて買ったのに中身はダイコン。50代主婦が気後れしそうになる処をふんばり、電話で筋を通そうと頑張る姿が痛快。励まされます。
「ママ」:夫が語ってくれたママについての話はすべて偽りだったのか。ショックを受けた妻の頭によぎるのは・・・。
「むすびめ」:小6の時の同窓会に久しぶりに出席した主人公が確かめたかったことは、ずっとトラウマとなっていたある出来事の真相・・・。
「テールライト」:他の篇とは少々異なる趣向。
「青空」:小3の息子を遺して死去した妻。義父母は息子を預かろうと申し出てくれるのですが、主人公は今も思い悩む。そんな時に起きた出来事は・・・。

最初の篇は爽快にして、次の篇は痛快、そして3番目の篇では仰天と、一篇ずつ趣向が異なりますが、どれも出会いを繰り返す、再び出会う、ということの大切さを描いたストーリィ。
出会い重ねることによって人は、自らを振り返りながら成長し、それを通じて人生を実り豊かにしていくのでしょうか。

とくに後味が良かったのは、「出会いなおし」「むすびめ」「青空」の3篇。
一方、コミカルで楽しかったという点では「カブとセロリの塩昆布サラダ」が抜群。


出会いなおし/カブとセロリの塩昆布サラダ/ママ/むすびめ/テールライト/青空

 

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