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1.リズム 3.宇宙のみなしご 5.つきのふね 6.カラフル 8.DIVE!! 1−前宙返り3回半抱え型 9.DIVE!! 2−スワンダイブ 10.DIVE!! 3−SSスペシャル'99 11.DIVE!! 4−コンクリート・ドラゴン |
あいうえおちゃん、永遠の出口、いつかパラソルの下で、屋久島ジュウソウ、風に舞いあがるビニールシート、ラン、架空の球を追う、この女、異国のおじさんを伴う |
気分上々、漁師の愛人、クラスメイツ、みかづき、出会いなおし、カザアナ、できない相談、獣の夜 |
●「リズム」● ★★ |
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2006年06月 2009年06月 2002/08/18 |
子供の頃から一緒で、ずっと一緒だと思っていたものが、成長するに従い、そうではないことが判ってきます。 ずっとそのまま守っていたいけれど、いつしか別れざるを得ないことがある。それを越えて、新しいことの中に足を踏み入れることが、成長するということであった。 誰しも振り返ると、大切にしまった幾つかのことがある筈。 本作品は、そんな境目の時期を迎えた中学一年生、さゆきの揺れる思いを描くストーリィ。
自分の家と同一視していた伯父さんの家、大好きだった従兄の真ちゃん。また、幼馴染で、弱虫のテツ。 さゆきのすくすくした心根に、懐かしさも加わって、心が洗われるような気持ち良さがあります。 |
●「ゴールド・フィッシュ 続リズム」● ★ |
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2009年06月 2002/09/01 |
「リズム」の続編。前作から2年後、さゆきは15歳になっており、高校入試を控える受験生。 それなのに、さゆきが慕う従兄の真ちゃんは、行方が知れない。真ちゃんの夢に、自分の夢もかけていたさゆきの心は揺れ動きます。 さゆきが未だに真ちゃん、真ちゃんと慕う一方で、いつの間にか周囲は変わりつつあります。 幼馴染で弱虫だったテツは、もう苛められることもなく、さゆきが驚く程しっかりとした意見を言うようになっている。しかも、自分の夢をきちんと持っている。そして、同級生たちは既に受験生モードにはいっています。 さゆき一人が立ち遅れているような状況。 まだ少女だった中学生から、大人の入り口となる高校生へと、変わりゆく季節。揺れ動くさゆきの心理を、絵都さんは優しく包み込むように語っていきます。さゆきの周囲の大人たち、姉のみゆき、従兄の高志、用務員の林田さん、担任の大西先生らも、優しくさゆきを見守っています。 |
●「宇宙のみなしご」● ★★ 画:杉田比呂美 |
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2010年06月 2001/04/28 |
中学生の姉弟を主人公にした児童書。
陽子の同級生で大人しげな七瀬綾子が、リンに誘われて陸上部に入ったと思ったら、一緒に屋根に登りたいと仲間に加わってきます。さらに、「キオスク」と呼ばれて皆から馬鹿にされている相川までも....。 |
●「アーモンド入りチョコレートのワルツ」● ★★ |
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2005年06月
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中学生を主人公にした三つの物語。どの作品も、ピアノ曲がモチーフになっています。 子供は眠る ロベルト・シューマン〈子供の情景〉より/彼女のアリア J・S・バッハ〈ゴルトベルグ変奏曲〉より/アーモンド入りチョコレートのワルツ エリック・サティ〈童話音楽の献立表〉より |
●「つきのふね」● ★★ 第36回野間児童文芸賞 |
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2005年11月
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どんな内容の本なのか、表紙と帯文句を見ただけでは、またページをパラパラとめくっただけでは、とても窺い知ることはできません。本作品の中に入り込んで初めて感じることができるのですが、それはとても切ない気持ちです。 主人公のさくらは、中学生の女の子。親友だった梨利と気まずくなり、現在と未来に何の希望も見出せなくなっています。そんなさくらが逃げ込んだのは、智という24歳の青年のところ。彼は優しい心の持主ですが、宇宙船の絵を書き続けている不思議な人。 そんなさくらと智の間に押し入ってきたのは、梨利を含めた3人組として仲の良かった勝田尚純。 ふとしたことで互いに傷ついてしまったさくらと梨利の2人も切ないのですが、終盤もっと切なくなるのは智のこと。優しい心の持主だからこそ、「人より壊れやすい心にうまれついた」人物です。智の親友の言葉を借り、森さんは更に語り続けます。「それでも生きていくだけの強さも同時にうまれもっている」と。 この箇所に行き当たった時、この言葉が珠玉の宝石のように感じられました。そっと大事にしておきたい、という気持ち。そして、最後を飾る少年時代の智の手紙も印象的です。 月の船は遠ざかりましたが、4人の心のスクラムは残った。そんな結末がいとおしいストーリィです。 |
●「カラフル」● ★★ 第46回産経児童出版文化賞 |
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2007年09月
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死んだ筈の「ぼく」の魂は、プラプラという名のいい加減な天使から、抽選に当たったので生まれ変わり資格を得る再挑戦の機会が与えられた、と告げられます。 自殺した小林真という中3の少年の身体にホームステイし、その間にぼくが前世で犯した過ちを思い出さなくてはならないのだという。
一見ファンタジスティックなストーリィと思えますが、父・母・兄という真少年の家庭は、一見居心地よさそうにみえたものの、とんでもない裏面をかかえた家族でした。真少年が自殺したのも、その事実等に絶望感を深くしたからこそ。 灰谷健次郎作品と異なり、深刻な状況を含むストーリィでありながら、温かさに包まれているような雰囲気がある。そんなところが、本作品の魅力です。 |
●「ショート・トリップ」● ★ |
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2007年06月 2002/09/01 |
旅をめぐるショート・ショート、短篇集。 正直言って、各篇、とらえどころのないストーリィなのです。 少なくとも、宇宙ものストーリィは少なかったです。 |
●「DIVE!! 1−前宙返り3回半抱え型」● ★★ |
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2006年06月 2008年06月
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少年たちを主人公にした爽快なストーリィ。 児童書の範疇に入る本ですけれど、大人が読んでも充分に楽しめます。少年たちの思いが、すっと読み手の心の中に入り込んでくる、その爽快感が魅力です。 帯には「森絵都、初のスポ根小説」とありますが、昔のスポ根物語のような悲壮さはありません。飛び込み競技というマイナーなスポーツを題材にしている所為かもしれません。でも、高さ10m、時速60kmの降下、僅か 1.4秒の空中演技というこの競技は、なかなかダイナミック、躍動感に充ちています。
坂井知季は、ダイビングクラブ(MDC)に通う中学2年生。そのクラブに突然、新コーチ・麻木夏陽子が現れます。そして一転、クラブ存続を賭け、知季たちはオリンピックを目指すことになります。同時に、幻の高校生ダイバー・沖津飛沫(しぶき)も登場。 中学生らしい悩みを抱えつつ、ぐんと成長していく少年の姿が描かれていて、愛着を覚えます。お薦めしたい一冊です。 ※08年06月角川書店により単行本1巻化。大幅な手直しも入り、取材レポートも添えられたそうです。 |
●「DIVE!! 2−スワンダイブ」● ★★ |
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2006年06月 2001/05/27 |
中国で行われる強化合宿への参加を狙い、MDCの面々は選考競技会に臨みます。高校生の富士谷要一、沖津飛沫、中学生の坂井知季とその仲間2人。
前半部分は、その選考競技会の様子が描かれます。練習で上達していく楽しさと、競技における得点の厳しさは、全くの別もの。森さんはその辺りをきちんと描いています。 そして、第2巻の後半は、沖津飛沫がストーリィの中心となります。昔飛び込み選手でしたが、不運にもオリンピックという桧舞台に立つことができなかった祖父・沖津白波との因縁。 児童書故、1巻・2巻ともすぐ読み終えてしまう程度の厚さ。でも、2冊一度に読んだお陰で、充分な満足度が得られました。3巻目も楽しみです。 |
●「DIVE!! 3−SSスペシャル'99」● ★★ |
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2006年06月 2001/07/31 |
第1・2巻と異なり、本巻の主人公は知季ではなく、ダイミングクラブ(MDC)・飛込みチームのリーダー的存在である富士谷要一です。
その要一が、選考競技会もなしに、突然シドニー・オリンビックの出場選手に選ばれます。何故自分が選ばれたのか、親会社であるミズキと何か関係があるのか、唐突に指名された事による要一の戸惑い、逡巡、スランプ、というようにストーリィは展開します。 第1・2巻の新鮮で躍動感あふれるようなストーリィ展開に比べて、本巻はごく普通のスポーツ・ストーリィになってしまったような印象を受けます。 ちょっとダレ気味になった本シリーズへの興味を最後で再びかきたてられ、次巻への期待が大きく膨らむ、そんな巻です。 |
●「DIVE!! 4−コンクリート・ドラゴン」● ★★ |
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2006年06月 2002/08/10 |
シリーズ最終巻。 シドニー・オリンピックに向けた日本代表選考会における闘いが切って落とされます。 その意味でも、本巻はこれまでの要一、飛沫、知季の総決算。 その一方で、1回、1回毎に順位が入れ替わる試合展開に、ハラハラ、ドキドキします。誰が勝者となるのか? 彼の筈、と思いながらも、森絵都さんが最終的に誰を選ぶのか、最後まで確信は持てません。 “スポ根もの”と言っても、この明るさ、爽快さが、森絵都さんならではの魅力です。4巻読了して、充分満足。 |