森 絵都
(えと)作品のページ No.


1968年東京都生。日本児童教育専門学校、早稲田大学第二文学部卒。児童文学創作の傍らアニメーションのシナリオを手がける。90年「リズム」にて90年度第31回講談社児童文学新人賞を受賞し、作家デビュー。翌年同作にて第2回椋鳩十児童文学賞、「宇宙のみなしご」にて第33回野間児童文芸新人賞・第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、「アーモンド入りチョコレートのワルツ」にて第20回路傍の石文学賞、「つきのふね」にて第36回野間児童文学賞、「カラフル」にて第46回産経児童出版文化賞、2003年「DIVE!!」にて第52回小学館児童出版文化賞、06年「風に舞いあがるビニールシート」にて 第135回直木賞を受賞。 


1.リズム

2.ゴールド・フィッシュ

3.宇宙のみなしご

4.アーモンド入りチョコレートのワルツ

5.つきのふね

6.カラフル

7.ショート・トリップ

8.DIVE!! 1−前宙返り3回半抱え型

9.DIVE!! 2−スワンダイブ

10.DIVE!! 3−SSスペシャル'99

11.DIVE!! 4−コンクリート・ドラゴン


あいうえおちゃん、永遠の出口、いつかパラソルの下で、屋久島ジュウソウ、風に舞いあがるビニールシート、ラン、架空の球を追う、この女、異国のおじさんを伴う

 → 森絵都作品のページ bQ


気分上々、漁師の愛人、クラスメイツ、みかづき、出会いなおし、カザアナ

 → 森絵都作品のページ bR

 


     

1.

●「リズム」● ★★
        
90年度第31回講談社児童文学新人賞・第2回椋鳩十児童文学賞

リズム画像

1991年05月
講談社刊

2006年06月
青い鳥文庫化

2009年06月
角川文庫化

2002/08/18

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子供の頃から一緒で、ずっと一緒だと思っていたものが、成長するに従い、そうではないことが判ってきます。
ずっとそのまま守っていたいけれど、いつしか別れざるを得ないことがある。それを越えて、新しいことの中に足を踏み入れることが、成長するということであった。
誰しも振り返ると、大切にしまった幾つかのことがある筈。

本作品は、そんな境目の時期を迎えた中学一年生、さゆきの揺れる思いを描くストーリィ。

自分の家と同一視していた伯父さんの家、大好きだった従兄の真ちゃん。また、幼馴染で、弱虫のテツ
家を出て自立する真ちゃんがさゆきに贈ったものは、リズムを大切に、ということ。自分のリズムを大切にしていれば、周りが変わっても、自分のままでいられるかもしれない、と言う。

さゆきのすくすくした心根に、懐かしさも加わって、心が洗われるような気持ち良さがあります。

    

2.

●「ゴールド・フィッシュ 続リズム」● 


ゴールド・フィッシュ画像


1991年11月
講談社刊
2002.02
第8版

(1100円+税)

2009年06月
角川文庫化

 2002/09/01

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リズムの続編。前作から2年後、さゆきは15歳になっており、高校入試を控える受験生。
それなのに、さゆきが慕う従兄の真ちゃんは、行方が知れない。真ちゃんの夢に、自分の夢もかけていたさゆきの心は揺れ動きます。
さゆきが未だに真ちゃん、真ちゃんと慕う一方で、いつの間にか周囲は変わりつつあります。
幼馴染で弱虫だったテツは、もう苛められることもなく、さゆきが驚く程しっかりとした意見を言うようになっている。しかも、自分の夢をきちんと持っている。そして、同級生たちは既に受験生モードにはいっています。
さゆき一人が立ち遅れているような状況。

まだ少女だった中学生から、大人の入り口となる高校生へと、変わりゆく季節。揺れ動くさゆきの心理を、絵都さんは優しく包み込むように語っていきます。さゆきの周囲の大人たち、姉のみゆき、従兄の高志、用務員の林田さん、担任の大西先生らも、優しくさゆきを見守っています。
そんな優しさが快い。
本書は「リズム」のさゆきの決着版と言って良いでしょう。前作ではぼんやりしていた“自分のリズム”を、もう少しはっきりとした形に表そうとした作品、とも言えます。
自分のリズムを大切にというメッセージは、本書でも少しも変わっていません。

    

3.

●「宇宙のみなしご」● ★★   画:杉田比呂美
         第32回野間児童文芸新人賞・第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞


宇宙のみなしご画像

1994年11月
講談社刊

2010年06月
角川文庫化

2001/04/28

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中学生の姉弟を主人公にした児童書。
飯島陽子・リンの姉弟は、両親が自営の印刷業で忙しく、年中家にいないことから、殆ど2人きりで過ごすことが多い。勝気な性格の姉・陽子と、のんびりと朗らかな性格のリンとは好対照ですが、2人に共通するのは面白いことを2人で考え出す、という習慣。そんな2人が新たに考えついたのは、他人の家の屋根に登ることでした。

陽子の同級生で大人しげな七瀬綾子が、リンに誘われて陸上部に入ったと思ったら、一緒に屋根に登りたいと仲間に加わってきます。さらに、「キオスク」と呼ばれて皆から馬鹿にされている相川までも....。
「ぼくたちはみんな宇宙のみなしごだから。(中略)自分の力できらきら輝いていないと、宇宙の暗闇にのみこまれて消えちゃうんだよ」 でも、時々は「手をつないで、心の休憩ができる友だちが必要なんだよ」って。陽子の前の担任が残したそんな言葉に強く励まされる思いがします。
中学生の自立心、踏ん張りに、エールを送っているような作品です。

      

4.

●「アーモンド入りチョコレートのワルツ」● ★★
    
       絵:いせひでこ           第20回路傍の石文学賞


アーモンド入りチョコレートのワルツ画像

1996年10月
講談社刊

2005年06月
角川文庫化


2001/04/28

中学生を主人公にした三つの物語。どの作品も、ピアノ曲がモチーフになっています。
最初の作品は、5人の従兄弟が、例年の如く夏休みにくんの別荘に集まるストーリィ。これまでずっと、年長の章くんの指示に皆が従うだけでしたが、それにも変化が生じてきます。少年たちの成長をはっきりとした形で描いた作品。
2作目は、思春期のほろ苦いような出会いを描いた作品です。不眠症に悩んでいたぼくは、古い校舎でピアノ曲を弾いていた藤谷りえ子に出会います。そして、同じ不眠症に悩んでいるという彼女との間に、2人だけの逢瀬が繰り返されます。しかし、ある事から一転して、彼女への思いは疑念、嫌悪に変わります。
そして、卒業を迎えた時、彼女への共感が再び芽生えます。甘酸っぱいような青春ストーリィに、快い後味があります。
3作目は、前の2作に比べると、ちょっと複雑で判りにくい。奈緒君絵が通う絹子先生のピアノ教室。或る日からそこにフランス人のサティおじさんが加わります。そして、それは4人の間に様々な問題を引き起こす、というストーリィ。
モチーフとなった音楽が、爽やかな印象をもたらしています。

子供は眠る ロベルト・シューマン〈子供の情景〉より/彼女のアリア J・S・バッハ〈ゴルトベルグ変奏曲〉より/アーモンド入りチョコレートのワルツ エリック・サティ〈童話音楽の献立表〉より

      

5.

●「つきのふね」● ★★      第36回野間児童文芸賞


つきのふね画像

1998年07月
講談社刊

2005年11月
角川文庫化


2001/06/02

どんな内容の本なのか、表紙と帯文句を見ただけでは、またページをパラパラとめくっただけでは、とても窺い知ることはできません。本作品の中に入り込んで初めて感じることができるのですが、それはとても切ない気持ちです。
主人公のさくらは、中学生の女の子。親友だった梨利と気まずくなり、現在と未来に何の希望も見出せなくなっています。そんなさくらが逃げ込んだのは、という24歳の青年のところ。彼は優しい心の持主ですが、宇宙船の絵を書き続けている不思議な人。
そんなさくらと智の間に押し入ってきたのは、梨利を含めた3人組として仲の良かった勝田尚純
ふとしたことで互いに傷ついてしまったさくらと梨利の2人も切ないのですが、終盤もっと切なくなるのは智のこと。優しい心の持主だからこそ、「人より壊れやすい心にうまれついた」人物です。智の親友の言葉を借り、森さんは更に語り続けます。「それでも生きていくだけの強さも同時にうまれもっている」と。
この箇所に行き当たった時、この言葉が珠玉の宝石のように感じられました。そっと大事にしておきたい、という気持ち。そして、最後を飾る少年時代の智の手紙も印象的です。
月の船は遠ざかりましたが、4人の心のスクラムは残った。そんな結末がいとおしいストーリィです。

     

6.

●「カラフル」● ★★        第46回産経児童出版文化賞


カラフル画像

1998年07月
理論社刊
2001.10
第30刷
(1500円+税)

2007年09月
文春文庫化


2002/01/03

死んだ筈の「ぼく」の魂は、プラプラという名のいい加減な天使から、抽選に当たったので生まれ変わり資格を得る再挑戦の機会が与えられた、と告げられます。
自殺した小林真という中3の少年の身体にホームステイし、その間にぼくが前世で犯した過ちを思い出さなくてはならないのだという。

一見ファンタジスティックなストーリィと思えますが、父・母・兄という真少年の家庭は、一見居心地よさそうにみえたものの、とんでもない裏面をかかえた家族でした。真少年が自殺したのも、その事実等に絶望感を深くしたからこそ。
手探りでのホームステイを経て、ぼくは真少年が自殺した真の理由、この家族の本当の姿を見出すに至ります。それは、まさしくぼくが再び人生にチャレンジする道筋となるものです。さて、その経緯・結果は如何?
あっさりした印象を受けるのは、中学生向きに書かれた所為でしょう。でも、じーんとする場面は所々にあり。また、現代の少年たちが抱え込んでいそうな問題を、ファンタジスティックかつユーモラスにきちんと描きだしています。

灰谷健次郎作品と異なり、深刻な状況を含むストーリィでありながら、温かさに包まれているような雰囲気がある。そんなところが、本作品の魅力です。

           

7.

●「ショート・トリップ」●


ショート・トリップ画像

2000年06月
理論社刊
(1300円+税)

2007年06月
集英社文庫化

2002/09/01

旅をめぐるショート・ショート、短篇集。
本書は 「further sight」というタイトルで、毎日中学生新聞に1年間に渡って連載された短篇52篇のうち、40篇をまとめたものだそうです。
絵都さんのあとがきによると、「連載中、とうとう最後まで1通も読者からの手紙が届かず、たいへん孤独」だったそうですが、さもありなん、と思わぬでもない。

正直言って、各篇、とらえどころのないストーリィなのです。
旅そのものの話ではないし、ユーモア小説でもなく、星新一さんのショート・ショートのようにアイデアや諧謔がいっぱい詰まっている訳でもない。
いろいろな角度から“旅”をとらえた本。童話のように、旅を人生と重ね合わせたストーリィが、幾つも在ります。そして、時々これはユーモラス、と思う篇もあり。

少なくとも、宇宙ものストーリィは少なかったです。

        

8.

●「DIVE!! 1−前宙返り3回半抱え型」● ★★


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2000年04月
講談社刊
(950円+税)

2006年06月
角川文庫化
DIVE!!(上)

2008年06月
角川書店刊
(2500円+税)


2001/05/27

少年たちを主人公にした爽快なストーリィ。
児童書の範疇に入る本ですけれど、大人が読んでも充分に楽しめます。少年たちの思いが、すっと読み手の心の中に入り込んでくる、その爽快感が魅力です。

帯には「森絵都、初のスポ根小説」とありますが、昔のスポ根物語のような悲壮さはありません。飛び込み競技というマイナーなスポーツを題材にしている所為かもしれません。でも、高さ10m、時速60kmの降下、僅か 1.4秒の空中演技というこの競技は、なかなかダイナミック、躍動感に充ちています。

坂井知季は、ダイビングクラブ(MDC)に通う中学2年生。そのクラブに突然、新コーチ・麻木夏陽子が現れます。そして一転、クラブ存続を賭け、知季たちはオリンピックを目指すことになります。同時に、幻の高校生ダイバー・沖津飛沫(しぶき)も登場。
何の為に自主トレに励むのか、何故他の中学生らしい楽しみよりダイビングを選ぶのか。知季は前宙返り3回半という難演技を成功して喜ぶ一方で、手酷い失恋を味わいます。

中学生らしい悩みを抱えつつ、ぐんと成長していく少年の姿が描かれていて、愛着を覚えます。お薦めしたい一冊です。

※08年06月角川書店により単行本1巻化。大幅な手直しも入り、取材レポートも添えられたそうです。

      

9.

●「DIVE!! 2−スワンダイブ」● ★★


DIVE!!2画像

2000年12月
講談社刊
(950円+税)

2006年06月
角川文庫化
DIVE!!(上)

2001/05/27

中国で行われる強化合宿への参加を狙い、MDCの面々は選考競技会に臨みます。高校生の富士谷要一、沖津飛沫、中学生の坂井知季とその仲間2人。

前半部分は、その選考競技会の様子が描かれます。練習で上達していく楽しさと、競技における得点の厳しさは、全くの別もの。森さんはその辺りをきちんと描いています。

そして、第2巻の後半は、沖津飛沫がストーリィの中心となります。昔飛び込み選手でしたが、不運にもオリンピックという桧舞台に立つことができなかった祖父・沖津白波との因縁。
心ならずもMDCに加わった飛沫が、自らの意思で再び津軽から東京に戻るまでが描かれます。
第1巻に比べ、高校生だけに飛沫の悩みは大人っぽく感じられます。

児童書故、1巻・2巻ともすぐ読み終えてしまう程度の厚さ。でも、2冊一度に読んだお陰で、充分な満足度が得られました。3巻目も楽しみです。

         

10.

●「DIVE!! 3−SSスペシャル'99」● ★★


DIVE!!3画像

2001年07月
講談社刊
(950円+税)

2006年06月
角川文庫化
DIVE!!(下)

2001/07/31

第1・2巻と異なり、本巻の主人公は知季ではなく、ダイミングクラブ(MDC)・飛込みチームのリーダー的存在である富士谷要一です。

その要一が、選考競技会もなしに、突然シドニー・オリンビックの出場選手に選ばれます。何故自分が選ばれたのか、親会社であるミズキと何か関係があるのか、唐突に指名された事による要一の戸惑い、逡巡、スランプ、というようにストーリィは展開します。

第1・2巻の新鮮で躍動感あふれるようなストーリィ展開に比べて、本巻はごく普通のスポーツ・ストーリィになってしまったような印象を受けます。
ところが、最後の部分で急に緊迫感は高まり、思わず息を呑むような展開になります。その辺りはさすが、というところ。

ちょっとダレ気味になった本シリーズへの興味を最後で再びかきたてられ、次巻への期待が大きく膨らむ、そんな巻です。

       

11.

●「DIVE!! 4−コンクリート・ドラゴン」● ★★


DIVE!!4画像

2002年08月
講談社刊
(950円+税)

2006年06月
角川文庫化
DIVE!!(下)

2002/08/10


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シリーズ最終巻。
シドニー・オリンピックに向けた日本代表選考会における闘いが切って落とされます。

その意味でも、本巻はこれまでの要一、飛沫、知季の総決算。
過去3巻ではそれぞれ、知季、飛沫、要一が代わる代わる主人公を務めましたが、大詰めとなった本巻では誰が主人公ということはありません。
上記3人だけでなく、麻木夏陽子コーチ、富士谷コーチ、同じくMDCメンバーのレイジら、その周辺にいる人々も、フラッシュバックのように、主人公の一人としてこの一戦に臨む姿が描かれています。したがって、過去3巻のようなまとまったストーリィでなく、断片的に繋ぎ合わせたような構成であるため、過去3巻に比べて物足りなさがあります。

その一方で、1回、1回毎に順位が入れ替わる試合展開に、ハラハラ、ドキドキします。誰が勝者となるのか? 彼の筈、と思いながらも、森絵都さんが最終的に誰を選ぶのか、最後まで確信は持てません。
しかし、最後の幕引きはさすがに森絵都さん!
選考大会の暗がりから一気に青空の下に出たような、爽快感が溢れます。主人公3人と一緒に、大笑いしたいくらい。

スポ根もの”と言っても、この明るさ、爽快さが、森絵都さんならではの魅力です。4巻読了して、充分満足。

  

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