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2.チア男子!! 3.星やどりの声 5.少女は卒業しない 6.何者 7.世界地図の下書き 8.スペードの3 9.武道館 10.世にも奇妙な君物語 |
ままならないから私とあなた、何様、風と共にゆとりぬ、死にがいを求めて生きているの、どうしても生きてる、発注いただきました!、スター、正欲、そして誰もゆとらなくなった、生殖記 |
●「桐島、部活やめるってよ」● ★★ 小説すばる新人賞 |
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2012年04月
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本書題名からすぐ思い浮かぶのは、朝倉かすみの逸品「田村はまだか」。 題名を別にして、本書は先鋭的な、高校青春オムニバス小説。 同じ高校の生徒であっても、かっこ良さで注目を集める「上」の連中と、女子生徒からダサイと言われてしまう「下」のランクに位置する生徒という、歴然としたランクがある。 菊池宏樹/小泉風助/沢島亜矢/前田涼也/宮部実果/菊池宏樹 |
※映画化 → 「桐島、部活やめるってよ」
●「チア男子!!」● ★★☆ |
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2013年02月
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大学1年、ずっと続けてきた柔道を突然辞めたと思ったら、男子2人いきなり男子チアリーディングチームを立ち上げ、仲間を募り本気で全国大会出場を目指す、というストーリィ。 青春、スポーツ、個性的な仲間たちという文字が揃えば面白くない訳がない、というような筋書きです。 三浦作品と本書を比較すると、「風」は皆が一丸となってゴールを目指すという力強いストーリィだったのに対し、本書は仲間内で時に激しくぶつかり合いながらも、各々が抱えていたトラウマをチームとして一体となる過程の中で乗りこえていく、というストーリィだと思います。 最後、僅か2分30秒という短い時間の中での演技を凝縮して緻密に、迫真に迫って描いていく場面、そして同時に、一人一人の思いが炸裂するかのように去来していくというその展開は、チアリーディング競技の興奮と相まって真に圧巻。 |
3. | |
●「星やどりの声」● ★★ |
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2014年06月
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父親が癌で死去して約7年。遺された6人の子供たちは、今も父親のことを忘れることが出来ず、その面影を引きずっている。 舞台は海に近い街=連ヶ浜。おそらく江の島がモデルでしょう。 就職活動で内定がとれず焦慮する長男、小学生の末っ子、対照的な双子の姉妹、やたら元気な次男、母親を助けて弟・妹たちをしっかりサポートしているのが既婚の長女。 長男 光彦/三男 真歩/二女 小春/二男 凌馬/三女 るり/長女 琴美 |
4. | |
●「もういちど生まれる」● ★ |
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2014年04月
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学生という自由な身分の時間の中で、自分を持て余しているような若者たち。そんな若者たちの群像を描いた連作短篇集。 「ひーちゃんは線香花火」:寝ていた間にキスした相手と、彼氏との間で心揺れる汐梨を描く篇。 冒頭2篇を読んだ時点で、なんかつまらない、読むのを止めようかと思ったのですが、何とか読み通して判ったこと。それは本作品が、ひとつひとつのストーリィに意味が置かれているのではなく、5篇全てを読み終えた後に俯瞰的に見えてくる若者群像に意味があること。それを現すかのように、登場人物たちは各篇に交錯して登場します。 ひーちゃんは線香花火/燃えるスカートのあの子/僕は魔法が使えない/もういちど生まれる/破りたかったもののすべて |
5. | |
●「少女は卒業しない」● ★★☆ |
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2015年02月
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高校の統合により明日から校舎の取り壊しが始まるという前日の3月25日、この高校最後の卒業式が行われる。 本書、デビュー作「桐島、部活やめるってよ」が発売になる前から小説すばるで書き留めてきたものだそうです。「桐島」と対になる、朝井さんの学生時代の集大成となる連作短篇集とのこと。 卒業式にかける少女たちの想いは様々、したがって描かれる7つの物語も様々。 エンドロールが始まる/屋上は青/在校生代表/寺田の足の甲はキャベツ/四拍子をもう一度/ふたりの背景/夜明けの中心 |
6. | |
●「何 者」● ★★ 直木賞 |
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2015年07月
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大学生5人のリアルなシューカツ・ストーリィ。 私の頃も就職活動というのは決して楽なものではなかったと思うのですが、それにしても昨今の大学生たち就職活動のニュースを見聞きすると、我々世代としては常軌を逸しているようにしか見えません。何でこうなってしまったのかと思いつつ、「シューカツ!」という言葉がまさに一つの現代用語になってしまったことを感じます。 就職活動期間が短くても長くてもおそらく共通なことは、自分自身がいつの間にか試されている、ということでしょう。 これまで読んだ就活小説には、三浦しをん「格闘する者に○」、羽田圭介「ワタクシハ」がありますが、最近就活を経験した朝井リョウさんだからこそのリアルさがあります。 |
7. | |
「世界地図の下書き」 ★★ 坪田譲治文学賞 |
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2016年06月
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児童養護施設に暮す5人の子供たちの姿を描いた長編小説。 こうした物語であるからには当然、個々の家庭事情が子供たちの上に陰を落していますし、通う小学校における苦労もあります。子供たちの切ない思い、ささやかながら必死な思いも様々に描かれます。 子供たちにとってシビアな物語、それでも彼らにだって進むべき道はあるんだという希望、可能性を訴える著者のメッセージが深く心に残ります。 三年前/晩夏/新涼/暮秋/初雪/春 |
8. | |
「スペードの3」 ★★ |
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2017年04月
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出版社の紹介文によると本書は、朝井リョウさんが「初めて社会人を主人公に描く野心作」とのこと。 当初、紹介されていたストーリィは余り興味を覚えるものではなかったため読むのを見送ろうかと思ったのですが、これまでずっと朝井リョウ作品を読んできたのであるから野心作も読んでおこうかと手に取った次第。 ストーリィ内容が気に入るかどうかは個人の好み次第。しかし、好き嫌いにかかわらず、本書がこれまでの作品以上に読み応えたっぷりであることは疑いありません。 1.スペードの3/2.ハートの2/3.ダイヤのエース |
9. | |
「武道館」 ★★ |
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2018年03月
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“アイドル”という言葉がごく自然に語られ、“アイドル”と呼ばれる少女たちが氾濫する現代において、そもそも“アイドル”とは何ぞや?と問うた“現代アイドル考”小説。 主人公は日高愛子。子供の頃から歌って踊ることが大好きな女の子だった彼女は、高校生となった今、“NEXT YOU”という女性アイドルグループのメンバー。 といっても AKB48のようなメジャーなアイドルグループには程遠い、まだまだ売出し中のグループです。 冒頭でツートップだった一人が結成一周年を機に突然卒業宣言、残された5人は引き続き武道館ライブを合言葉にメジャーになるための奮闘を続ける、というのがストーリィの主軸。 “アイドル”ってそもそも何なのでしょうか。どうも言葉だけが一人歩きしている気がします。芸能事務所やTV番組制作者たちが都合の良いプロトタイプとして作り上げた虚像ではないでしょうか。 本ストーリィでは、その“アイドル”という虚像を中心点にして2つの対立構図が描かれます。 ひとつはアイドルの少女たちとそのファン、もうひとつは作られたアイドル像を演じる少女たちと本来の彼女たちです。 アイドルで在り続けるために彼女たちは、望まれているアイドル像という演技を続けて行かなければならないし、それ故に本来の自分との乖離は次第に大きくなっていく。単に踊って歌うのが好きだからアイドル、という単純なことでは済まないのでしょう。 本書はそうした“アイドル”が抱える問題点、脆さ、矛盾を、小説という形を借りて考えようとした作品ではないでしょうか。 ※アイドルを題材にした小説で忘れ難い作品に小林信彦「極東セレナーデ」がありますが、30年近く前の作品ですから、同じ“アイドル”と言っても随分変わったものです。 |
10. | |
「世にも奇妙な君物語」 ★★ |
2018年11月
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TVドラマ「世にも奇妙な物語」の大ファンである朝井さんが、映像化を夢見て勝手に原作を書き下ろした5篇、とのこと。 どの篇も、ありふれた日常的なドラマと言えるストーリィなのですが、最後に至るとこれはもう何としたことか・・・と絶句せざるを得ない展開が待ち受けています。 これはもう、恐れ入ると言う以外に言葉はありません。 「シェアハウさない」は、ライター業の女性が偶然知ったシェアハウスに住むことになるのですが・・・・ゾゾッ。 「リア充裁判」、何と恐ろしい近未来社会が到来したものか、と思ったのですが・・・・。 「立て!金次郎」は、熱血幼稚園教諭の金山孝次郎を主人公にした幼稚園ストーリィなのですが、何とまぁ・・・・。教師は大変だ。 「13.5文字しか集中して読めな」は、ネット上に流す短いニュース文を書いている既婚女性ライターが主人公。ありきたりなストーリィだなァと思って読み進んでいたのですが、結末には絶句、こんな恐ろしいことがあるなんて・・・。 「脇役バトルロワイヤル」は、前4篇を総括するような篇。 最後のオチには、共感とちょっぴり可笑しさを感じます。 笑い、恐怖を問わず、オチのあるストーリィがお好きな方にはお薦めの短篇集。 1.シェアハウさない/2.リア充裁判/3.立て!金次郎/4.13・5文字しか集中して読めな/5.脇役バトルロワイヤル |