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        天才画家フィンセント・フォン・ゴッホの晩年を描いた伝記映画。 
         
        今ならゴッホといえば大画家であることに誰も異論はないでしょうが、ゴッホが生きていた当時、その画風はまるで理解されず、暴言さえも投げかけられるような状況。 
        唯一の理解者で支援者である弟テオも、画商という仕事に邁進せざるをえないことから、ゴッホの傍らにいられるわけではない。 
        唯一の救いだったのは、画家仲間であるゴーギャンと南仏アルルで共に過ごしたことですが、それも一時期で終わってしまう。 
        本作におけるゴッホに、絵によって名声を得ようとか、金を稼ごうとかいう思いは見受けられません。ただ、絵を描きたかった、絵を描くこと以外に自分には何もできない、その意味で自分は画家である、という思いだけ。 
        それ故、生前のゴッホに幸せなど全く縁がなかったのではないか、常に不安と孤独ばかりで。そして最後は、精神病院にまで収監されたのですから。 
        そこまでしても絵を描き続けるのか、画家という性、その痛烈な人生をまさに目にする思いです。 
         
        一方、本作の特徴は、しばしば光景がスケッチ的にゴッホの視点から映し出されること。 
        それがゴッホの見た光景、ゴッホが絵として描くことによって永遠に残したいと思った光景ということなのでしょう。 
        その点が強く印象に残ります。 
        また、ゴッホを演じたウィレム・デフォー、名演というに尽きます。 
         
        2019.11.17 
         
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