5 騙して守ろう久留里線
久留里駅にやっとの思いで着くと、あちこちに看板が掛かっている。
「みんなで久留里線を守ろう!」…おぃおぃ、この電車は廃線寸前なのか…。
もしかして…、と、思う。もしかして、瀬川さんは久留里線の乗車人員を増やす為に久留里周りでマザー牧場に行くように勧めたのだろうか??
やっとの事で、来た電車に乗り込む。
小湊鉄道も、この久留里線も、送電線がない。
乗ってみればうるさいのですぐに分かるのだが、ディーゼルエンジンなのだ。当然のろい。日比谷線なんかより、全然のろい。のろい上に駅と駅の間はけっこう距離があるので、何だか間延びした感じになる。だらだら。
木更津で内房線に乗り換える。向かいのホームで電車は待機しており、乗り換えた瞬間に走り出す。意外に乗客多し。
佐貫町(内房線には「佐貫」という駅もある。マザー牧場があるのは「佐貫町」)で下車。
そこからバスに乗り換えていく。…が、1時間半先までバスが来ない。仕方なく、タクシーに乗る。
かなり距離がある。メーターにして2,800円強。時間でいうと15分くらい(ものすごいスピードで飛ばしている)。
マザー牧場に着いたとき、あたりは薄暗くなってきたところだった。14:00(旅館を出たのが10:30前だったのに、何でこんな時間になってるんだ?!)。
お腹が空いたので、着いてからまずお昼を食べる。
一人淋しくジンギスカン鍋をやっても仕方ないので、展望台みたいなにょきっと生えた建物の3階で、牛乳(150円)と和牛ハンバーグ(700円)、ご飯(200円)を食べる。
…これが、エラいヤクザな代物だった。
牧場のハンバーグだし、わざわざ「和牛」って銘打ってあるし、ものすごく期待するじゃない!
…でも、はっきり言ってデニーズのハンバーグの方が100倍美味しい。
牛乳は、さすがに美味しかった。
瓶で出てくるんだけど、瓶の口のところにクリーム状のものがこびりついていて、脂肪分の多さを感じる。飲み口もこっくりしていて、濃いぃ感じ。
小岩井牧場など大きな牧場になると、出てくる牛乳もその辺のスーパーで売っているのと味が変わらないことがある(つまり、薄い)。
マザー牧場は観光化されつつも本業に手を抜いていない感じがして少し嬉しくなった。
…それにしても平日の午後3時に、何で制服着てルーズソックス履いた女子高生2人組がこんなところでご飯食べてるんだろう??
…って、当然学校さぼったんだろうなぁ。
私も高3の時「学校行く」って言って(もぉ受験シーズンだったから、学校はお休みだったのさっ)家を出ていって、内房線・外房線を乗り継いで千葉をぐるっと回って帰ってきたり、各駅停車で掛川(掛川城に行ったら、工事中で登れなかったっけ…)行ったりしたなぁ、なんてぼんやり思い出した。
すっかりお腹がいっぱいになったところで、牧場内をぶらぶらすることに。
…お腹いっぱい、とか言いながら、しっかりソフトクリーム(250円)を食べちゃった。
ちゃぁぁんとミルクの優しい味がして、こくがあって美味しかった。口当たりは多少ざらざらしていた。でも、そこが昔懐かしのアイスクリンみたいで、またそれが良かった。
園内では「大モンゴル展」をやっていて、ゲル(モンゴル人の移動式住居のこと。テントの大きい版のような物)があちこちに建てられ(自由に入ってみることが出来る)、パビリオンでは遊牧民の暮らしぶりが写真入りで紹介されている。
歴史についてはあまり触れられていない。現在の暮らしぶりのみ。
冬の間は山あいのところに定住(大地を吹きすさぶ風を避ける為)し、春になると平原に出てきて家畜の出産を迎え、夏は放牧しながらあちこちを放浪し、秋は川沿いでゆったりする。
…その繰り返しなのだそうだ。
春〜夏は乳製品を主に食べ、秋〜冬は肉製品を主に食べている。
肉製品は、秋にまとめてほふって(早い話が「殺す」ということ。何故か遠回しに表記してあった)干し肉などを作り貯めし、ちまちま食べて越冬するらしい。
…偏った食生活よね。すごく。
おみやげを見始めた辺りでアナウンス。
「本日はご来場ありがとうございました。云々…」(B.G.M.はもちろん「蛍の光」)
…う、嘘でしょ!?
15:47にバスは行ってしまい、次のバスは16:50である。現在16:00。
…まさかこんなに早く閉園になるとは思っていなかったので、途方に暮れてしまった。日が落ちて寒いし、当然タクシーなんて1台もいないし、ケータイも通じない。
…どうする!どうなる?
以下次号(笑)。
1 一種の家出 2 たおやかな滝時間 3 素朴な養老魂
4 半信半疑の久留里城 5 騙して守ろう久留里線 6 田舎電車そして日常