3 素朴な養老魂
そんなこんなで滝から1.7キロほど歩いたところで遊歩道を離脱。
行きよろしく、急な階段をぜぇぜぇ言いながら登り切り、渓谷から一般道へ。
帰る途中、「幻の滝入り口→」…と、いう怪しい看板を見つける。
まだはぁはぁいっている私に向かって、垣根越しにわんわんと吠え盛る犬。
立ちつくしていたら、3匹の子犬が、きゃんきゃん言いながら飛び出してきた。どうやら、垣根の向こうにいるのは、この子たちのママらしい。
子犬に続いて、おばさんが出てくる。
「折角ここまで来たんだから、幻の滝も見てってよ。」
どぉやらただ(無料)らしいので、いぶかりながらも見に行ってみる。入り口を入ると意外に広く、テラスのようなものがもうけられ、40人くらいはそこで座って軽食を楽しめるようになっている。どうやら繁盛期だけ(?)軽食屋をやっているらしい。
「ズームイン朝で紹介された草餅」という、おそろしく色あせた紙がべたべたとあちこちに貼ってある。
それだけでなく、広口瓶に漬けられた、自家製のお酒・ジュースがあちこちに配置されている。
…もしかしたら、美味しいのかもしれないけど、理科実験室にあるホルマリン漬けを彷彿とさせて、とても(私は)飲む気になれなかった。
そんな怪しげな空間を抜けた先に広がる景色は、絶景であった。
真下に滝が見え、滝壺はプライベートビーチのような溜まりを作っている。
テラスから、滝壺に降りることが出来るようになっていて(足腰を鍛えてないとつらい落差だ)、夏に来て泳ぎたいなぁ、と思った。
その滝は、養老渓谷を流れる川に直接注いでおらず、この軽食屋を通ってしか見に行くことが出来ない。だからこそ付加価値をつける意味でも「幻の滝」なんてつけたのだろう。
おばさんにお礼を言って幻の滝を後にする。
後は旅館に向かって1本道を歩くのみ、だ。
辺りは耳が痛くなるほどの静けさに満ちている。時折通る車の音に、妙にほっとしてしまう。
だらだら歩いていたら、1匹の犬がどこからともなくやってきて、私の前を、てってって…と、軽快に歩いていく。
私は丁度淋しくなっていたこともあり、その犬(白と黒のブチ犬。その模様があまりにもホルスタインっぽいので、私は「ホル」と名付けた。首輪をしているので、どうやら飼い犬のようである)の後を急いで追うことにした。
ホルはあちこちでおしっこをしている。
いちいち砂をかけているので、大きい方かなぁ?と思ってのぞき込むと(当然いやな顔をされる)、毎回おしっこ。…どぉやら、きれい好きの犬のようである。
道中(2.5キロくらい一緒に歩いた)、あまりにもおしっこをするのでホルに聞いてみた。「おまえ、どんな膀胱してるわけ?!」
ホルはふんっと鼻を鳴らして、またてってって…、と小走りに走っていく。
「ホルぅ〜、待ってぇぇ〜」と、言って追いかけるが、つれない様子。嫌われたもんである。ちぇ。
そうこうしているうちに、「新川」に着いた。ホルは旅館のすぐ近くまでついてきたが、おしっこをまき散らしながら(と、いうのはホルの名誉を汚しているなぁ。相変わらずあちこちにマーキングをしながら、ということにしておこう)どこかへ行ってしまった。
「ただいまぁ…」と、言うと、おっさんが出てきた。
ダンナ「どぉだった?結構早かったね。」
かづよ「そぉですか?楽しかったですよ。…ところで、何か食べるものはありますか?」
ダンナ「ない。」(かなりきっぱり。)
…時間は14:00を回っている。歩いたせいもあって結構お腹が空いてしまった。
ダンナ「隣が食堂だから、聞いてみな。暖簾締まってても、やってることあるから。」
…かなりのボロ屋だったので乗り気はしなかったのだが、仕方なく聞きに行ってみる。
暖簾をしまっていたこともあって、主はいるけど、すげなく「準備中です」と、断られる。
すごすごと戻ってその旨をダンナに伝えると、「ちぇっ。商売っ気ねぇな…」なんて、悪態ついている。おぃおぃ、隣と仲良くしなさいよ。
ダンナに近くのコンビニもどきを紹介されて、そこでピザまんと、パンを買ってきて部屋でもそもそと食べた。
…何だかなぁ…。
旅館に来て、食べ物の持ち込みを推奨されたのは生まれて初めてのことである。
食べ終えて、お風呂に入って(その間、ダンナはゴルフの練習を熱心にやっていた)ブラックアウト。
起きたら18:00の夕飯の時間になっていた。
夕飯は昨日のステーキがウナギのたれ焼きにスライドしたくらいの感じ。
昨日のステーキ同様、このウナギも結構イケる。肉厚でやわらかく、骨が全くなかった。スバラシイ。
食べ終わってから、洞窟風呂へ。
あまりにもJAF MATEに載っている写真と違うので、人がいないのをいいことに男湯の方も覗いてみた。
「……。」
明らかに男湯の方が造りがいい。半分露天になっていて、広く、これは入る価値がある感じ。
思い切って男湯の方に入ってやろうかとも思ったが、一人だと意外に根性なくって(ヘタレ…)、やめました(笑)。
あとは、くったりして、寝ちゃっておしまい。明日へ続く。
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