半信半疑の久留里城

 NHKの朝の連続テレビ小説「あすか」を見逃しつつ、朝風呂へ。
 上がってきて帰る支度をしている頃に、朝ご飯。昨日の朝食の鰆の焼き物を、鮭に変えただけのまったく同じごはん。


 食べて、10:00にチェックアウト。タクシーを呼んでもらって(バスが全然来ないので)、駅へ行く。


 タクシーは、町に1台しかないらしい。来たのは、75歳くらいのおじいちゃんドライバー。
 ふごふご言ってて、言ってることの半分くらいしか理解できなかったが(しかも思いついたことを思いついた時にいきなり大声で言うもんだから、結構びっくりする)お世話好きのいい人らしい。

 せっかくの早起きだし、電車もすぐ来るみたいだし、近くにあるらしいマザー牧場に行ってから帰ろうかな、と思う。

 どうやって行ったらよいか分からないので、駅の係員(瀬川瑛子にそっくりのおばちゃん)に聞いてみる。


 何だか分からない内におおごとになってしまった。

 瀬川さんが他の係員に聞いて→タクシーの運ちゃんまでそれに巻き込んで→運ちゃんはその辺を通りかかった知り合いに片っ端から「この人、マザー牧場に行きたいんだって。どぉすればいいのかねぇ…」って、やってる。

 まるで「大きなカブ」の話のようである。

 色々説明してもらった挙げ句、このまま電車に揺られてマザー牧場まで行ったのと、タクシーで久留里まで行って、そこで久留里城を1時間くらい見てから久留里線を使って木更津に出て、そこから内房線に乗ってマザー牧場に行くのと、時間的に変わらないから久留里に寄ってからマザー牧場に行きなさい、と、多少強引に勧められる。


 わけ分からん養老渓谷民のオーラに圧されて、またタクシーに詰め込まれる。
 そのまま久留里へ…。


 おっちゃんにまずは駅に連れて行ってもらう。そこで電車の時間を確認すると、その足で久留里城に連れて行ってもらった。

 ここは城門から天守閣まで、急な坂道を700m以上登らなくてはならない。
 入り口に鎖がしてあり「関係者以外車の乗り入れ禁止」と、書かれている。


 おっちゃんは「そういうの、かんけぇーないの!村の役人とか、ここで勤めてる人はみぃぃんな車で上がっちゃうんだから」と、言いながら2速でがんがん引っ張って坂道を登っていく(かなり古いマニュアルの車だった!)。

 おっちゃんに感謝したのは、帰り道のことだった…。


 久留里城に行って天守閣に登り、博物館を見る。

 博物館は、この辺りで取れた縄文時代の遺跡発掘の様子や、江戸時代に実際使われた駕籠などが展示されていた。
 天守閣からの眺めは、最高だった。高い山のてっぺんに位置しており、久留里市内が一望できる。良く晴れていたので、遠くまで見渡せて綺麗だった。

 …ちなみに、久留里城は一回焼け落ちていて、最近になって建て直したのだそう。
 よっぽど観光名所にしたかったんでしょうね。

 急な坂道を下って(これは、登るのかなりしんどいと思う!)、元来た道を今度は歩いて駅まで戻る。距離はだいたい3キロくらい。


 私が久留里に来た本当の目的は、これからにある。

 養老渓谷の瀬川瑛子もどきによると、「久留里は水の綺麗なところで、名水100選にも選ばれているのよ。地酒づくりも盛んだし。」

 …これはもぉ、行くしかないでしょぉ!!

 確かに、町内のあちこちに水が湧いており、そこここで水を汲んでいる人に出くわす。そして酒屋の多いこと!一世も歩けば酒屋に当たるって感じである。

 しかし悲しいかな、電車の時間が刻一刻と近づいていて、とても全部回りきれない。
 1軒選んで入ってみる。(藤平酒造)

 げ。試飲させてくれないの?(がっかり…)

 仕方なく冷酒用の「ふくいわい」という純米吟醸酒を買った。
 このお酒、純米なのに米っぽくなく、するすると入っていってしまうものすごく飲みやすいお酒だった。旨味、というものはあまりないような気がする。

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