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 ふと、名前を呼ばれた気がしてマコトは振り向いた。普段と変わらぬ街の雑踏の中、声の主と思しい人物は居ない。
(……気の所為か)
 最近、ここ1週間位だろうか。こんな事が増えて来た。聞こえるか聞こえないかの間の声で、自分の名前を呼ぶ声がする。
(ある訳、ないんだけどさ)
 マコトの口に浮かぶ笑いはほろ苦い。KKに振られて、縁まで切られてもうふた月。自分を呼ぶ声は必ずと言っていい程KKの声なのだ。
 確かに、裏の顔の時のKKには一般人の自分は足手纏いにしかならないだろう。それでも、別れた今でも、諦めた訳ではない。KKにもそれは伝えてある。
 マコトより遥かに強いはずなのに、どこか脆くて放っておけないKK。
(だって、危ない時は俺なんか捨てていけば足手纏いにならないのにね?)
 KKはわざわざマコトに別れ話を切り出し、口封じも、逆に裏の世界に引き込む事もしなかった。そうやって、マコトの日常を守ってくれようとしたのだろう。狙撃の名手として、恐らく何人もの命を奪って来た男にしては、KKは優しすぎる。
 マコトは目の裏に、表情を隠してぼそりと別れ話を切り出したKKの姿を思い出す。無表情の裏に隠したものが何か、マコトは知っている。
 ほんとは、俺よりKKの方が辛かったんだよね?

 知っているからこそ、声が聞こえた時は心配になる。もしかして泣いているんじゃないかと、それとも怪我でもしたんじゃないかと。諦めた訳では無いけれど、まだ側に戻るには早すぎるから、もどかしい。
 マコトは立ち止まって目を伏せた。もし、さっき聞こえた声がKKの涙だとしたら届けばいい。
 いつだって、心は君の側にいるんだよ、KK。

 歩き出し、ふと目を上げれば染みる程に空が青かった。


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