home桜井>聖林寺


聖林寺
Shourinji

34 29 31.20,135 51 06.31

 奈良の仏で昔から気になっていたのが聖林寺の十一面観音でした。桜井のはずれにある小さな寺に、美しい仏が人知れず鎮座している、と知ったのはもう大昔のことでしたが、なかなか行く機会もなかったもので。今回は万全を期して桜井宿泊とした訳です。

 バスで行く距離なのですが、なかなか時間が合わない。では歩いて行ってしまおう、と8時頃宿を出て南に向かいます。途中談山神社の一の鳥居があったりして、雰囲気を高めてくれます。談山神社に来たのは中学生の終わりの時で、当時はそこから石舞台までの道を歩いたのを思い出します。

 だんだん山に近づき、少しずつ高度を上げていくと程なく聖林寺に到着。本日の最初の参拝客となりました。
 私の後に訪れる人もほとんどなく、じっくりと十一面観音と一対一で時を忘れ対面することができました。実に静かな寺です。

 この仏がここに鎮座するのも、廃仏毀釈の影によるものだそうです。かつては三輪山・大御輪寺の本尊であったものが、避難のため、大八車に乗せられこの寺に至ったそうです。そしてこの寺自体も神社に改装し、難を逃れたとか。どこかで読みましたが、鹿児島県には殆どお寺が無くなってしまったようで、薩摩恐るべしですね。その点長州はいい寺が残っていますが大丈夫だったのでしょうか。

 十一面観音の第一印象は、東大寺法華堂の不空羂索観音に近いというものでした。両方とも奈良時代末期の作、乾漆造であり、金箔の剥げ具合が似ているというのもあるでしょう。そもそも造ったのが東大寺司造仏所という、当時の仏を作る仏師専門家集団が手がけたからというのもあるでしょう。天平の仏は本当に美しいものです。それが三月堂のようにオールスターの圧倒される配置もあれば、こうして一体だけ密かに鎮座しているのもある。歴史の荒波を越えた仏の姿です。

 この仏をこれからも維持していくのはなかなか大変なことでしょう。廃仏毀釈の嵐は避けることができましたが、何時また天変地異が襲うかもわからない時代、しっかりと保存し、次世代に受け継いでいってください。とても貴重な時を過ごすことが出来ました。

寺の入り口は、斜面を折り返し、南から入ります。本当に小さな寺でした。
堂内は撮影禁止なもので、お寺の絵葉書をスキャンしています。本堂の上に鉄筋の宝物館を建て、その中に安置されています。
本堂から奈良盆地方面を見ています。冒頭の箸墓古墳が見えたのがここからでした。結構登ってきたのですね。