home桜井>宇太水分神社


宇太水分神社
Uda Mikumari Shrine

34 28 28.89,135 58 15.02

拝殿の後に登場する本殿。三棟が殆どくっつくばかりに配置されています。

 桜井から榛原まで電車に乗り、そこからバスで約15分も乗ると古市場水分神社というバス停に着きます。概ね1時間に1本あるから、ローカルバスとしてはまずまずの本数でしょう。こうして山の中で不便だと思っていた宇太水分神社も、よし行こうという気になれば、結構簡単に訪れることができるものです。(地名は宇陀ですが神社は宇太というそうです)

 主なお寺には大体行ってしまったから次は神社にスポットを、という気も無い訳でもないのですが、数十年ぶりの神魂神社、出雲大社、そして思わぬ発見だった美保神社を訪ねたあたりから、それまであまり興味がなかった神社に関心が向き、それ以降吉備津神社、豊国神社など、確かに国宝建築物もあるものだと思いながらあちこち足を向けてきました。

 で、ここを知ったのが何時の事だったかもう覚えていませんが、辺境の地と言っては失礼ですが、かなり以前から山の中に国宝の神社があると気になっていたので、聖林寺とのセットで訪ねた訳です。

 バス停から川を渡ると程なく大きな鳥居が見えてきます。これは戦後建てられたもので、かつてあった鳥居は永和15年に流されたとか。500年以上の前の事か。そして旧街道を渡ると境内です。

 大きな神社では、先ずは拝殿がありその奥に本殿が配置されるため、そう簡単に本殿に近づけないものですし、春日大社に至ってはまずは南門を入り、次に中門を通らないと本殿に行き着かないようになっています。それがここでは何と言ったらいいのでしょうか。大きな境内にポツンと拝殿があり、その奥の山際にある本殿はどこからでも見ることができる。広い境内は子供達が遊んでいても全く違和感のない、半ばあっけらかんとした配置でした。確かにここに国宝の本殿があるという予備知識無しに訪れたとしたら、まあ田舎のちょっと規模の大きな神社と思って終わってしまうかもしれません。

 拝殿は昭和47年の台風の際に、欅の倒木により下敷きになって倒壊したそうで、ここは水の神様を祀っていますが、いろいろ災害がこの地でも起こっているようです。

 そしてその後ろに控えているのが本殿です。ここは神様が3柱ということで本殿が3棟並んでいます。全く一神教の人たちから見れば一体何のことだとなるでしょうが、日本では至る所に神様がいますし、この連棟方式もあちこちにあります。春日大社は第四殿まであるし、熊野本宮大社も同じく第四殿です。そもそも神様の数だけ社を建てるというのは、どういう発想だったのでしょうか。皆それぞれにお祀りしたい、それも平等に、そんな発想だったのでしょうか。

 ここでは特別拝観を申し出ると、本殿の境内まで入れてもらい、説明を受けることができます。まさに貸切状態で説明をして頂き、からそれじっくりと、また間近で本殿を見ることができました。

 この本殿は鎌倉時代末期、春日造としては日本最古のものだそうで。確かに春日大社自体は式年造替を行ってきた結果、今の本殿は文久年間(1863)だそうですから。これは出雲大社より神魂神社の方が古い状態に似ています。すなわち財力がたっぷりある神社は造替をきちんとやり、そうでない所はしっかりと昔の本殿を残しつつ大切にしていく、その違いです。

 それでもここでは2004年に大造営を行っており、実に綺麗になった色彩がみられます。神社建築をこんなに間近で見られるのはそうはないことですし、ここは社が小さいものだから更に近くで見ることができます。三棟がほぼ同じ様式で建っている様は春日造りの特徴なのでしょう。寺院と違って仏像を安置するわけでなく、神様がお出ましになった時の仮の滞在所ですから大きさは必要ありません。でもここまで小さいと、内部空間は小さな物置くらいしかないかもしれません(失礼しました)。でもそのミニアチュアの様が心地いいのです。
 
 装飾は3棟で違えています。特に蟇股が楽しい。龍は愛嬌あるし、仙人は魚に乗っているし、この奔放さが何とも言えません。こういう社を持った集落の人たちはこれからも誇りを持って暮らしていくことでしょう。維持していくのは大変でしょうが、その点は東京では決して出来ない訳で、ちょっと羨ましいことです。

本殿の一帯とも言うべき一枚。三棟の本殿とその右の小振りの春日神社です。そして国宝を知らせる日立の看板が写っています。デビットアトキンス氏に酷評されているやつです。
本殿の境内と言っていいのでしょうか。入ったところから奥を見ています。本当に春日大社本殿の雰囲気に似ていますね。実際に脚を運んでいませんが。 三棟の一番奥ですから国水分神が祀られています。寄せて建てられているので全貌がよく分かりません。
三棟の本殿の奥にある春日神社。重要文化財だそうです。こうなると全体がよく見えます。本殿より一回り小さいため、かがまないと内陣には入れない大きさです。 蟇股をアップで撮ってみました。竹と虎。これは結構普通の題材です。
魚と仙人。結構シュールですね。仙人だから出来る? 龍は青龍だそうです。愛嬌のある姿でした。