わんだふる ニュージーランドアルプス (1)

はじめに

 2002年12月22日(日)から2003年1月1日(水)の11日間、ニュージーランド・アルプスをトレッキングしてきました。歩いたところは、マウント・クックの麓(2泊)とミルフォード・トラック(4泊)です。特に、ミルフォード・トラックは、3泊分の着替え等をザックに詰めて、3日間、毎日6〜8時間歩くトレッキングです。トレッキングのハイライトは、マッキノン・パス(1,073m)の峠越えで、そこからの360度のパノラマは素晴らしいものでした。また、マウント・クック山麓のマウントクックりリーやマウントデージーなどの美しい花にも感動しました。トレッキング中は、一時雨や雪に見舞われましたが、比較的好天に恵まれ、すばらしい体験をすることができました。これらの体験をご報告します。
 今回の報告は、一昨年の「わんだふるカナディアンロッキーズ」、昨年の「わんだふる台湾山脈」に続くものです。今後、章立てに従って日記風に述べていきますが、一部創作もありますのでご了承ください。よろしかったら、最後までお付き合い願います。

                                                           2003年1月5日(日)

  
1.プロローグ 
  2.ニュージーランドへ向けて出発 : 12月22日(日) 
  3.マウント・クック山麓へ : 12月23日(月) 
  4.マウント・クック山麓(セアリー・ターンズ) : 12月24日火) 
  5.マウント・クック山麓(フッカー谷) : 12月25日(水) 
  6.ミルフォード・トラック(グレイド・ハウスへ) : 12月26日(木) 
  7.ミルフォード・トラック(ポンポローナ・ロッジへ) : 12月27日(金) 
  8.ミルフォード・トラック(クインティン・ロッジへ) : 12月28日(土) 
  9.ミルフォード・トラック(ミルフォード・サウンドへ) : 12月29日(日) 
  10.ミルフォード・サウンドとクライストチャーチ : 12月30日(月) 
  11.さよならニュージーランド・アルプス : 12月31日(火)
 

                                             => わんだふる山中湖(戻り)

1.プロローグ

 今年は春に台湾旅行をしたので、海外旅行はもう行かない予定でいた。ところが、ちょうど秋頃に仕事が一段落したのと、まだ歩ける体力のある今のうちにできるだけ海外の山々を歩いておきたいという気持ちが高まり、家内と相談し、長年の夢を実現しようと、ニュージーランドのトレッキングに行くことにした。
 トレッキング専門の旅行会社からパンフレットを送ってもらい、休暇との関連で年末のニュージーランドのトレッキングツアーをいろいろと検討した。しかしニュージーランドのトレッキングツアーは、カナディアン・ロッキーズなどに比べてとても費用が高く、家内と顔を見合わせてため息をつくばかりになった。ところが、費用が高いのは、ニュージーランド航空で直接飛ぶためらしく、シンガポール航空でシンガポール経由で行くツアーは大幅に安くなることがわかった。そのため、休暇の取れる日程に合わせて、かつ何とかなる費用の範囲内でということで、今回の「ミルフォードトラックとマウントクック」を組み合わせた11日間のツアーに参加することにした。
 このツアーは、当初名古屋の小牧からの出発ということであったが、交渉によって成田出発としてもらった。また、最小催行人員が10名にも関らず、ツアー参加希望者は我々を含め数人ということで、ツアー中止が危ぶまれたが、旅行会社は我々を含めて参加者5名で実施してくれることになった。旅行会社に、感謝、感謝である。
 年末の仕事は余裕があると思っていたところ、急に多忙な仕事が入り、また家庭の事情なども重なり、心身ともに疲れ果て、ツアー出発の直前頃には風邪をひいてしまった。この体で11日間のトレッキングに耐えられるだろうかと不安になってきたが、とにかく風邪薬を飲み、体をだましながら、旅行出発を迎えた次第である。
 ニュージランドは、日本の南東約9,000Kmの南半球にあり、北島と南島から成っている。面積は、北と南を合わせておよそ27万平方Kmで、日本の本州と九州を合わせたくらいの大きさである。今回のツアーは、南島の西側に位置する、マウントクック山麓のトレッキングとテアナウからミルフォードサウンズまでのミルフォード・トラックを3泊4日で歩くトレッキングツアーである。
 12月はニュージーランドの夏にあたるが、海洋性気候のため年間を通じて寒暖の差が少なく、四季の変化がはっきりしていないという。しかし、天気や風向きが変りやすく、一日の温度の変化は大きく、「一日の中に四季がある」と言われるほど、天候の変化が激しい国ということである。また、南部は雨も多く、晴天が続くことはないようだ。
 マウントクックは、アラオキ・マウントクック国立公園内にあるニュージーランドの最高峰(3,754m)であり、周りには3,000m級の山々が連なり、多くの氷河が広がっている。
 他方、ミルフォード・トラックは、フィヨルドランド国立公園内にあり、シダとコケ類と変化に富んだ深い森林の中を歩くトレッキングコース(全長55Km)である。




2.ニュージーランドヘ向けて出発 : 12月22日(日)

 今回は、3度目の海外トレッキングとなるので、特別な準備をすることもなく、いつもの登山の用具を揃えただけである。ただ、ニュージーランドの気候は真夏と言えども寒暖の差が激しく、また雨も多いと聞いていたので、十分な防寒具と雨具を用意した(実際、山麓でも周りの山が真っ白になるくらい雪が降り、とても冷え込んだ)。
 22日早朝家を出て、成田に向かった。前日までの仕事の疲れと風邪気味の体調で眠気が残り、とてもルンルン気分の海外旅行出発とはいえなかったが、それでも夢のニュージーランドに行けるとあって、できるだけ気持ちを強くもつように努めた。8時過ぎには成田第2ターミナルビルに到着、出国手続きをとって、12時ちょうどのシンガポール航空SQ997便で成田を出発した。今回のツアーメンバーは、ツアーリーダーと我々を含めた6名であったが、我々以外の4名はすべて名古屋出発であり、シンガポール空港で落ち合うことになっていた。
 予定どおり18時20分(東京時間19時20分)にシンガポール空港に到着した。実フライト時間は7時間20分である。早速待ち合わせ場所まで行き、ツアーリーダーと他の参加メンバー3名と合流した。今回の3名の参加者はすべて女性で、個人参加(そのうち2人は友人)であった。日本の女性登山家?のパワーをあらためて実感させられた(日本の山は女性に占拠?されつつあるのが実態である)。
 ここで我々にハプニングが起きてしまった。すなわち、コンパクトカメラを機内あるいは成田に忘れてきたことに初めて気付いた(今回掲載する写真はデジタルカメラで撮影したものです)。すぐに空港内のインフォメーションに落し物のチェックを依頼したが、やはり見付からなかった。旅の初めのハプニングでがっかりし、体調の悪さも重なって、またまたクラーイ気持ちに陥ってしまったが、気を取り直して、空港のショップでインスタントカメラ(フラッシュなしの27枚撮りで11NZ$、およそ700円)を6本買って、これで難局?を切り抜けることにした。
 余裕があったはずのトランジット時間もなくなってしまったが、せめてシンガポール風ラーメンでも食べようと、急いで屋台風のラーメン屋へかけ込んだ。そして、クラーイ気持ちを吹き払うように、あわただしく次のシンガポール航空SQ297便に搭乗し、21時5分(東京時間22時5分)、ニュージーランドに向けて出発した。

3.マウント・クック山麓へ : 12月23日(月)

 日が変わって23日(月)、10時40分(東京時間:6時40分)、サマータイムで11時40分にニュージーランドのクライストチャーチ(Christchurch)空港に到着した。実質フライと時間はおよそ8時間半となる。
 ニュージーランド入国時の動植物検疫は、日本で事前に注意されていたが、厳重なものであった。登山靴を持っている者は自分で申告し、レッドコーナーへ行く。もし申告していないものが見付かると罰金(または懲役刑)だそうである。実際、レッドコーナーではスーツケースを開け、登山靴を出し、土が付着していないか一つ一つチェックされた。当然我々は日本でブラシをかけて洗ってきたので、直ちにOKであったが。また、果物やお菓子、インスタント食品なども申告対象で、我々は喉アメなども申告し、検疫官に開示して、通過した。また、動植物検疫のために、麻薬犬のような中型の犬が検疫官といっしょにフロアーにおり、旅行者が手荷物などに食品を持っていないかどうかチェックしていた。ある子供連れの母親が小さなリュックにリンゴ1個入れていたのを、犬がかぎつけ、リュックの中を全部開けさせられ、リンゴ1個を没収されるのを目撃した。ニュージーランドでも外来種の植物が入ってきて、繁殖しているものがあり(後で出てくるマウント・クック周辺のルーピンなど)、その防止を厳しくおこなっているとのことである。
 通関を済ませて空港のロビーに出ると、送迎の小型バスが待っていてくれた。長旅の疲れがあったが、ニュージーランドの夏の青空による歓迎で、気分も爽快になることができた。さあ、これから夢のニュージーランド・トレッキングの始まりである。

 クライストチャーチ空港から市内に入ることなく、ただちにルート1に入り、南西方面へ向かった。道路は日本の一般自動車道路と同じで、特に高速道路といったものはないようだ。車は少なく、また左側通行なので、日本人にも簡単にドライブできるようだ。
 ジェラルディン(Geraldine)という小さな町で休憩し、そこから西へ、フェアリー(Fairlie)を通って、テカポ湖(Lake Tekapo)に向かう。途中では紫、黄、ピンク、赤紫、白などいろとりどりのルーピンが咲き誇っていた。あまりにもすばらしい風景なので、皆の希望で道端に車を止めてもらい、写真を撮った。日本では花を取ってはいけないが、このルーピンの花は雑草ということで、ドライバーが皆にプレゼント?してくれた。その他には黄色のエニシダが小高い丘の斜面一杯に咲いているのが印象的であった。
 周りの風景と言えば、ほとんど牧草またはむき出しの土の小高い山が連なるだけで、日本のような森林はまったく見られなかった。羊や鹿、牛などが点在しており、放牧中心の農業国の様子がよくわかった。

 車が西に進むにつれて雲が広がりはじめ、どんよりとした天気になってきた。明日の天気が心配である。4時ころ、テカポ湖(Lake Tekapo)に到着した。ここには有名な?善き羊飼いの教会(Church of Good Shephard)があり、教会の窓からテカポ湖と真っ白なサザンアルプス(Southern Alps)の山並みが見える趣向になっていた。
 ここからさらに西南に向かうとプカキ湖(Lake Pukaki)である。ここからは、今日の目的地であるマウント・クックの姿がはっきりと見えた。先ほどのテカポ湖もこのプカキ湖も氷河から流れる水を集めた自然の湖である。

Church of Good Shepherd Lake Pukaki & Mt. Cook
 プカキ湖からルート80を北上し、ようやく6時に目的地のマウント・クック村(Mount Cook Village)のハーミテージ・ホテル(Hermitage Hotel)に到着した。ホテルは標高はおよそ740mの広い氷河谷の西側の丘の上にあった。
 幸いにも、空は晴れ渡り、真正面にニュージーランドの最高峰マウント・クック(Mt. Cook: 3,754m)の神々しい真っ白な山容を見ることができた。ホテルで少し休憩していると、マウント・クックが夕日を浴び、赤く輝くき始めた。初日からこんなにすばらしい光景に出会え、最高の気分に浸ることができた(ニュージーランドは緯度が高いため、夜の10時頃までは外が明るい)。

Mount Cook (3,175m)  夕日に映えるMount Cook

 ホテルの前からは、南側に懸垂氷河をもったセフトン山(Mt. Sefton: 3157m)やフットスツール山(Mt. Footstool: 2,764m)が眼前に迫り、我々を圧倒してくる。体調が悪いが、こんなすばらしい山を見ては、絶対に寝込んではいられないと、明日への期待を胸にしまい込んだ。
 7時から夕食が始まった。食事はバイキング方式であった。明日からのトレッキングに供え、腹いっぱいおいしい料理を食べた。なお、このホテルのレストラン、パノラマルームレストランは、窓側が大きな一枚ガラスとなっており、レストランの中から写真のようなマウント・クックの姿を見ることができるようになっていた。マウント・クックを見ながらワインを飲み、食事ができるなど、ちょっと日本では考えられない趣向であり、感心させられた。

                                                               2003年1月13日完

                                               => Next Page
                                              => わんだふる山中湖(戻り)