わんだふる ニュージーランドアルプス (4)

  1.プロローグ 
  2.ニュージーランドへ向けて出発 : 12月22日(日) 
  3.マウント・クック山麓へ : 12月23日(月) 
  4.マウント・クック山麓(セアリー・ターンズ) : 12月24日火) 
  5.マウント・クック山麓(フッカー谷) : 12月25日(水) 
  6.ミルフォード・トラック(グレイド・ハウスへ) : 12月26日(木) 
  7.ミルフォード・トラック(ポンポローナ・ロッジへ) : 12月27日(金) 
  8.ミルフォード・トラック(クインティン・ロッジへ) : 12月28日(土) 
  9.ミルフォード・トラック(ミルフォード・サウンドへ) : 12月29日(日) 
  10.ミルフォード・サウンドとクライストチャーチ : 12月30日(月) 
 
11.さよならニュージーランド・アルプス : 12月31日(火) 

                                             
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7.ミルフォード・トラック(ポンポローナ・ロッジへ) : 12月27日(金)

 朝6時30分頃、目が覚めた。窓の外を見ると、曇り空ではあったが、雨は降っていなかった。ようやく体も慣れて、体調もよくなってきたが、これから3日間かけておよそ50Kmのトレッキングである。もし峠越えで雨や雪に降られたらなどと考えると、ちょっと心配になってしまう。私も老いてきたものだとつくづく思ってしまった。
 8時から朝食だが、その前に自分で当日のランチ・パックを作るシステムになっていた(カナディアン・ロッキーズでも同様であった)。ランチ・パックは、パンにハム、チーズ、野菜などをはさんだサンドウィッチとスナック菓子、それに果物である。コーヒーやジュースは、途中のランチを食べる場所で飲めるようになっている。朝食は8時ころにとった。

 9時、いよいよ出発である。ちょっと涼しい感じだが、とりあえず長袖シャツ1まいでも大丈夫であった。我々はスタートが遅いようで、他のほとんどの人は出発してしまったようである。今日はクリントン川(Clinton River)に沿って、ポンポローナ・ロッジ(Pompolona Lodge)まで、およそ16Kmの歩きである。標高差はほとんどないので、ゆっくり歩いても問題はないはずである。グレイド・ハウス(Grade House)を出るとすぐに吊り橋を渡る。
 少し川沿いに歩くと、湿地帯(Wet Land)への分かれ道に着いた。ここで荷物を置いて、10分くらい横道に入ると、広い湿地帯に出た。ここは尾瀬のように木道がつけられており、マヌーカの花やモウセンゴケなどが見られた。遠くには上半分が白いセンティネル山(Mt. Sentinel)が見えた。
Clington River マヌーカ(Manuka)

 分かれ道に戻り、またクリントン川沿いを歩く。まわりはうっそうとした森林に覆われ、冷温帯の’ジャングル’の中を歩いているような感じがする。ブナ(Beech)が多いということだが、こちらのブナは葉が小さく、また常緑樹である。それに、銀ブナ、赤ブナ、山ブナなどがあるということで、日本のブナとはまったく異なった木としか思えなかった。シダは180種類くらいあるとのことで、ニュージーランドのラグビー・チームのマークがシダの葉をイメージしたものであることを教わった。

 歩いている途中で、ニュージーランドの飛べない鳥’ウェッカ’(Weka)が道に沿って向かってくるのに遭遇した。西表島の’ヤンバル・クイナ’の仲間だそうで、黒っぽく、ニワトリをやや小さくしたような大きさであった。後で、インドネシアからきていた若者がそれをChickenと呼んでいたと聞いて、大笑いした。あまり人間を見ても驚かないようで、我々の手前数メートルのところで、脇の茂みにもぐり込み、我々が通り過ぎるとまた道に出て、去って行った。
 10時半に、クリントン小屋(Clington Hut)に到着した。ゆっくりと、あちこちを見ながら歩いているので、まだ4Kmも歩いていない。ここでトイレ休憩である。

川沿いの樹林 クリントン小屋
 休憩後、再び川沿いをぶらぶらと歩いた。このため、ランチ場所であるヒレレ・フォールズ小屋(Hirere Falls Hut)に着いたときには13時を過ぎていた。ここは、出発地からおよそ11Kmのところである。
 小屋の側にはヒレレ・フォールズ(Hirere Falls)があり、豊富な融雪の水が山の中腹から落ちていた。



ヒレレ・フォールズ小屋 泥棒 Kea
 <=Hirere Falls  

 ここでは、ガイドが小屋のカウンターでコーヒーあるいはジュース等を用意して待っていてくれた。早速、コーヒーを一杯いただいた。小屋のテラスで、今朝各自で作ったランチ・パックを開け、サンドウィッチを食べた。欲張ってサンドウィッチを2つ作ってきたが、量が多くて、食べるのに苦労してしまった。このテラスの周りに、オームの一種であるケア(Kea)が2羽いた。好奇心が強く、また人をまったく恐れない。そのため、人の側に寄ってきて、何でも持ち去ろうとするので、注意しなければならないとのことである。それで、泥棒ケアともいった、ありがたくない名前をもらっている。

 大分遅くなったので、ランチを食べた後はやや急いで歩いた。しばらく歩くと開けた渓谷に出た。空模様が少し霞んできたと思っていたら、小雨が降り始めた。やむを得ずレイン・ウェアを着て、かさをさしながら歩くことにした。すると前の方に白い壁のような物が見えてきた。’アッ!マッキノン峠(Mackinnon Oass)が見えた!と思わず叫んでしまった。正面の渓谷の間に、屏風のように広がった真っ白な岩壁が、明日越える峠であった。最悪のシナリオ、雨または雪の中を峠越えするシナリオが浮かんでしまった。ついていない!やばいなー!と、気が滅入ってくるのが分かった。
 小雨の中を急いで歩き、15時過ぎにようやく今日の宿泊地であるポンポローナ・ロッジ(Ponpolona Lodge)に着くことができた。着いた頃には、雨もかなり強くなり、気温も少し冷えてきたようである。入口で、ロッジのスタッフ(女性で、日本語が話せた)がジュースを用意して待っていてくれた。サービスがよいのに驚かされてしまった。


Mackinnon Pass
 
今晩の部屋は、我々グループ6人の相部屋であった。体が冷えているので、すぐに温水シャワーを浴び、体を温めた。こんな山奥にまで温水シャワーが用意されているのは、日本では考えられず、とてもありがたかったが、でもこれが本当に必要なものなのかとも考え込んでしまった。乾燥室も用意されており、濡れたものは乾わかすことができたが、靴やレイン・ウェア等はだめということであった。落ち着いたときはまだ4時頃なので、ロッジのロビーへ行き、コーヒーを飲んでくつろいだ。こうしている間にも雨脚は強まり、ますます最悪のシナリオが頭の中をかけめぐっていた。
 夕食は7時からであった。今日の夕食は、ベイクド・チキンの生姜・ベイクドポテト添えとペンネパスタのビーフボロネーゼ添えのどちらかであったが、私はベイクド・チキンを選んだ。本当に山小屋の食事とは思えないほどおいしいく、ワインを飲み、今日のトレッキングを振り返りながら会話をし、とてもハッピーな夕食であった。
 食後は、雨も土砂降りのように強くなり、また緊張のせいかやや疲れもあったので、明日の雨中または雪中行のことも考えて、早めに寝ることにした。夜中には時々目が覚めるのだが、ケア君がロッジの回りに多くいるようで、夜の間ずっと大きな声で鳴いたり(’ケアー’と鳴く)、さらには小屋の壁か屋根をたたいたりして騒いでいるのには驚かされてしまった。でも、奴は騒がしいが、日本のカラスのようなイメージはなく、なんとなくいたずら好きの愛嬌者のように思えてしまったのは私だけだろうか。

                                                                  2003年2月2日完

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