わんだふる カナディアンロッキーズ (1)

はじめに

 7月13日(金)から21日(土)の9日間、カナディアンロッキーズをトレッキングしてきました。歩いたところは、マウント・ロブソンの麓(2泊)とマウント・ボール麓のシャドーレイク周辺(3泊)です。特に、シャドーレイクは、3泊分の着替え等をザックに詰めて、山道を5時間ほど歩いたところにある山小屋に泊まります。お花畑の中を歩いたり、トレッキング中に熊(グリズリー)に出会うなど、すばらしい体験をすることができました。これらの体験をご報告します。
 今回の報告は、昨年の「わんだふるスイスアルプス」に続くものです。今後、章立てに従って日記風に述べていきますが、一部創作もありますのでご了承ください。よろしかったら、最後までお付き合い願います。

                                                           2000年8月4日(日)


  
1.プロローグ 
  2.カナダへ向けて出発 : 7月13日(金) 
  3.マウント・ロブソン山麓 : 7月14日(土) 
  4.アイスフィールド・パークウェー : 7月15日(日) 
  5.シャドー・レイクへ : 7月16日(月) 
  6.シャドー・レイク(ボール・パス) : 7月17日(火) 
  7.シャドー・レイク(ギボン・パス) : 7月18日(水) 
  8.バンフへ : 7月19日(木) 
  9.さよならカナディアン・ロッキーズ : 7月20日(金)
 

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1.プロローグ

 5月末に仕事が一段落し、ほっとしたとき、「また海外の山を歩いてみたい」という思いが高まってきた。昨年のスイスアルプスの素晴らしい記憶は、今でもときどき思い出す。最近は、この先の生活がどうなるかという不安もあるので、行けるときにはチャンスを逃してはならないと考えている。
 今回はどこへ行こうかと、家内といろいろと資料などを見ながら考えた。私自身は、ネパール・ヒマラヤかアフリカのキリマンジャロに行ってみたかったが、ヒマラヤの場合、夏はモンスーンの季節にあたり、天候がよくないとのことだった(ヒマラヤは10月以降が適しているとのこと)。アフリカはちょっと遠くて、お金も日程の余裕もないので、断念した。家内は、ニュージーランドかカナディアン・ロッキーズといったポピュラーな場所がよいという。ヒマラヤやキリマンジャロでは、体力や高山病に自信がもてないともいう(実は、心の中では、私自身も体力や高山病に対し、多いに不安に思ってはいたのだが)。
 あれやこれやと思案をした挙句に、カナディアン・ロッキーズが手ごろでよいだろうということになった。それから、カナダに関するパンフレットを集めたり、カナディアン・ロッキーズのトレッキングガイドを買って、情報収集に努めた。しかし、カナディアン・ロッキーズといっても広過ぎ、地理的イメージもまったくわからなく、どこがよいのか決めることができなかった。
 カナディアン・ロッキーズは、言うまでもなく、北米大陸西部のロッキー山脈の一部であるが、そのカナダの部分であるカナディアン・ロッキーズは、縦1450Km、幅150Kmもあるという。そこには、3000m級の岩と氷に覆われた山々が連なっており、およそ2000m付近で氷河を見ることができる。カナディアン・ロッキーズには、5つの山岳国立公園(バンフ(Bunff)、ジャスパー(Jasper)、ヨーホー(Yoho)、クートニー(Kooteney)、ウォータトン・レイク(Waterton Lakes))とマウント・ロブソン(Mt.Robson)、マウント・アシニボイン(Mt.Assiniboine)、ピーター・ローヒー(Peter Lougheed)などの多くの州立公園がある。日本の本州がすっぽりと覆われるようなイメージの広大なカナディアン・ロッキーズ中から、ほとんど情報のない者がどこへ行きたいかなどは、決めることが出きるはずがなかった。
 最後は、いろいろな旅行会社のツアーコースと休暇の日程、それに費用と勘案して、ある旅行会社の「マウント・ロブソン山麓とシャドー・レイクのハイキング」ツアーを選択した。このコースは、カナディアン・ロッキーズの山頂を登るといったコースがなく、ちょっと残念であったが、できるだけ観光旅行は避け、ゆったりとしたトレッキングを楽しむという目的にはかなっているとも考えた。その後も、マウント・ロブソンやシャドー・レイク周辺の情報を集めようとしたが、地図上で場所やコースは確認できたが、その他の情報がほとんどとれなかった(それほで積極的に情報収集に努めたわけではないが)。まあ、どんなところか分からないなりにも、「岩と氷河に覆われた山々を見ながらのトレッキング」、「原生林やアルパイン・メドウ(亜高山植物帯)の中のトレッキング」、をたっぷりと楽しめると、かってに夢を大きくふくらませていった。


2.カナダヘ向けて出発 : 7月13日(金)

 今回は、2度目の海外トレッキングとなるので、準備にはまったく手間取ることはなかった。前回のスイスアルプスと違うところといえば、3泊4日の山小屋泊まりがあったので、雨の中の行動も想定し、雨具やスパッツを揃えたくらいである。防寒については、スイスアルプスと同様、十分な防寒具を用意をした(実際、吹雪に見舞われ、利用することになった)。気持ちも、昨年スイスアルプスへ行った時ほどの高ぶりはなかったが、もうすぐに、スイスアルプスとは違った広大なロッキー山脈の自然を満喫できるだろうという思いは次第に強まってきた。後は、天気のよいことを願うばかりである。
 お昼頃に家を出て、成田で出国手続きを行い、17時45分発のバンクーバー(Vancouver)行きのエアーカナダに乗り、成田を出発した。日付変更線を越えるため、同日の朝10時(サマータイムのため、1時間時計の針を進める)にバンクーバーに到着した。およそ8時間のフライトである。入国手続き後、初めてツアーガイドとツアーのメンバーが顔を合わせる。ツアーガイドは、ニュージーランドの元気な娘さんで、とても日本語がうまい(日本で2、3年滞在していたとのことである)。ツアーメンバーは、ガイドを除いて10名である。そのうち、ペアーは3組。シングル組の一人は、69歳のおばあさんであった。70歳では足手まといになるのではないかと心配になった。

 バンクーバーは快晴で、爽やかであり、これはとても幸先がよいと思った。空港でランチをとり、次の目的地であるカムループス(Kamloops)行きの便に乗った。飛行機の中からは、ところどころ雪に覆われた広大なコロンビア山脈の山々が見えたが、名前がわかるわけでもない。午後3時半頃にカムループスに到着した(右写真)。カムループスでは、やや雲が多く、一抹の不安がよぎった。とにかく晴れますように!!
 いよいよカナディアン・ロッキーズの山の中へ出発である。専用の小型バスに乗り、ハイウェー5号線を、今日の宿泊地であるマウント・ロブソン・ランチ(Mount Robson Ranch)へ向かって北へ走り出した。およそ350Kmのドライブである。


 道路はがら空きで、バスは緩やかな登りを快適に走っていく。ハイウェーといっても、日本のようにフェンスがあるわけではなく、低い山並みと山並みの間の広い谷間に片側1車線の道路が作られているだけである。道路の脇には白、紫、黄色の花がたくさん咲いている。道路に並行して流れる川は白っぽく濁って薄緑色をしており、背景の針葉樹と相まって、まるで西部劇にでも出てくるような風景である。道路に沿ってカナダの大陸横断鉄道(CNR)も走っている。だんだんと標高が高くなるにつれて、車窓から高い山々が見え始め、山頂には白い雪がところどころに見える。残念なことに、標高が増すにつれだんだんと雲が多くなり、いやな雰囲気になってきた。
 6時半頃、休憩地点のブルー・リヴァー(Blue River)の町に到着、8時頃イエローヘッド・ハイウェー(Yellowhead Highway)と呼ばれる16号線に入った。ここからマウント・ロブソン州立公園である。しばらく走ると、ようやく今日の宿泊地であるマウント・ロブソン・ランチ(およそ標高850mで、山中湖よりはかなり低い))に到着した。およそ4時間半のバスの旅であった。

 夜8時といってもとても明るく、日本の感覚では5時か6時といった感じである。悪い予感が当たったのか、マウント・ロブソン(3954m、カナダの最高峰)の山頂は霧がかかっており、全体が見えなかった。 8時半から、カナダでの初めてのディナーである。ランチのオーナーが戸外の大きな炉でアルバータ牛肉を焼いており、そこでそれぞれが皿に受け取り、食堂に入って食べるという形式になっていた。長いフライトとバスツアーで疲れてはいたが、皆で楽しく食事をした。9時半に食事が終り、各自のキャビン(左写真)に入る。明日の準備を急いで、11時頃には就寝した。


                                                                2001年8月5日完

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