わんだふる カナディアンロッキーズ (6)

  1.プロローグ 
  2.カナダへ向けて出発 : 7月13日(金) 
  3.マウント・ロブソン山麓 : 7月14日(土) 
  4.アイスフィールド・パークウェー : 7月15日(日)  
  5.シャドー・レイクへ : 7月16日(月) 
  6.シャドー・レイク(ボール・パス) : 7月17日(火)
  7.シャドー・レイク(ギボン・パス) : 7月18日(水) 
  8.バンフへ : 7月19日(木) 
  9.さよならカナディアン・ロッキーズ : 7月20日(金) 


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7.シャドー・レイク(ギボン・パス) : 7月18日(火)

 また昨夜は雨が降った。朝起きて外へ出てみると、空は厚い雲に覆われており、マウント・ボールも下半分しか見えない。なんともさえない天気が続き、気分が晴れない思いである。今日は最後のトレッキングで、ギボン・パス(Gibbon Path(2,286m))を往復する。比較的距離は短く、また天気もよくないので、10時出発ということになった。全員、雨具と防寒具を用意している。家内は今回も熊に注意を与えるために、鈴を付けている。役には立ちそうもないのだが。

 今日は、昨日と違って、キャビンの裏からすぐに山道を登り始めた。道は針葉樹の間を登って行くが、そんなに急ではなく、やや広い道なので歩きやすい。日本の秩父の山を登っている感じである。途中は霧で見通しが悪く、時々雨が降ったりするが、そのとき傘をさすぐらいで、そんなに辛い登りではない。昨日の熊との出会いがあったので、今回は時々大きな声を出して、熊に出てこないようシグナルを送りながら歩いた。
 ゆっくりと1時間半ほど登ると、やや緩やかになり、道の両脇にインディアン・ペイントブラシやヒッピー・ヘアー(西洋アネモネ)などの花がたくさん咲き乱れていた。雨で濡れているのが残念であるが、晴れていればきっと素晴らしいだろうにと思ってしまう。


 さらに登って行くと、急に前方が開け始め、眼前には広い草原が広がった。霧に霞んではいるが、左手には、氷河を抱いたストーム山(Storm Mtn.(3,160m))がそびえている。右はコッパー山(Copper Mtn.(2,794m))へ続くガレ場の斜面が広がっている。また、峠の向こうにはトゥイン・レイクの一つも見ることができた。雨のせいか、草原は湿原になっており、まるで尾瀬が原を木道をはずれて好き勝手に歩き回っているような気分である。またまた、晴れていたらどんなに素晴らしいかと思ってしまう。残念!!!

Gibbon Path(2,286m) 左はガイドのLizさん お花畑の斜面を下る

 霧が出ていたが、比較的見通しはよいので、コッパー山に続く斜面を途中まで登ることにした。ほとんど道がない森林帯を、ヤブをかき分けたり、ガレた斜面をトラバースしたりして、およそ2,400m位の森林限界まで到達したが、このころから風が出始め、雪が横から吹き始めてくる。気温は3度くらいまで下がっているようだ。登るのはここで止め、針葉樹の中でランチをとることになった。日本でも、雪が降る中で食事をするなどの経験をしたことはない。ましてや、今は夏である。装備もしっかりしており、遭難ということは考えられなかったが、それにしても昨日といい、天候の急変はすごいものである。楽しい体験といえば言えるかもしれないが、注意は必要であろう。
 雪の中で震えながら食事をとり、急いで峠に向かって下り始めた。下りの斜面はインディアン・ペイントブラシやヒッピー・ヘアー(西洋アネモネ)などの花が一面に咲いており、花を踏まないでは通ることができないほどである。縦1列になって皆で下ると同じ花を踏みつけてしまうので、やむを得ず、横に広がって下らなければならない。お花畑の真中を堂々と歩くのはとても気分が良かったが、日本でやったら非難の的になってしまうことだろう。
 峠に着く頃は、雪はすでに止み、風もほとんどなくほっとした。そのまま休むこともなく、元来た道を下り始め、3時前にキャビンに戻った。

 雨はほとんど降っていないし、まだ時間もたっぷりあるので、見納めにとシャドウ・レイクまで出かけることにした。今回は、シャドウ・レイクの右側を奥の方まで行ってみた。途中に熊の糞があり、皆ちょっと緊張が走った。しばらく歩くと、やや開けた湖岸に出た。あいにくマウント・ボールは山頂が霧に覆われ見えないが、山の麓に近づいたせいもあり、目の前の大きな岩壁とその壁を滑り落ちそうに張りついている氷河の様子は、まるで大きな舌を出したように見えて、迫力満点である。湖の色はエメラルド・グリーンに変っており、静かにたたずむ姿はとてもきれいであった。


 夕方にはまた雨が降り始めた。夕食では、皆でビールで乾杯し、楽しかったことなどを思いだしながら、歓談した。トレッキングはこれで終り。明日は下山して、バンフへ戻ることになる。いつものことであるが、旅の最後はちょっと寂しい気持ちになってしまう。

                                                           2001年8月31日 完


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